ハニカム構造こうぞう

ハニカム構造こうぞう（ハニカムこうぞう、英語えいご：honeycomb structure）とは、正六角形せいろっかっけいまたは正せい六ろく角柱かくちゅうを隙間すきまなく並ならべた構造こうぞうである。ハニカムとは英語えいごで「蜂蜜はちみつ (Honey) の櫛くし (Comb) 」から「ミツバチの巣す」という意味いみであり、多おおくの蜂はちの巣すがこのような形かたちをしていることから名付なづけられた。

広義こうぎには、正せい六ろく角柱かくちゅうに限かぎらず立体りったい図形ずけいを隙間すきまなく並ならべたもの（3次元じげん空間くうかん充填じゅうてん）をハニカムと呼よぶ。

板いた状じょうの素材そざいに孔あなを開あければ、強度きょうどをあまり損そこなわずに必要ひつような材料ざいりょうを減へらすことができる。孔あなの大おおきさや数かずをどんどん増ふやせば、最終さいしゅう的てきには棒ぼう材ざいによる構造こうぞうが残のこる。同様どうように、塊状かいじょうの素材そざいに孔あなを開あければ、板材いたざいによる構造こうぞうが残のこる。これらがハニカムである。

ハニカムの形かたち

孔あなを小ちいさくすれば強度きょうどは増ますが、単位たんい面積めんせきあたり棒ぼう材ざいの量りょうは増ふえる。そこで、孔あなの面積めんせきを一定いっていにして、最もっとも棒ぼう材ざいの量りょうが少すくなくなる孔あなの開あけ方かたを考かんがえる。これは、

同おなじ面積めんせきの図形ずけいによる平面へいめん充填じゅうてんで、周しゅうの長ながさが最もっとも短みじかいのは何なにか

という数学すうがく的てき問題もんだいにできる。またこうすることで、強度きょうどと材料ざいりょうの量りょうの関係かんけいに限かぎらないさまざまな課題かだいに一般いっぱん化かできる。

同おなじ面積めんせきで最もっとも周しゅうが短みじかい図形ずけいは円えんである。しかし円えんで平面へいめんを充填じゅうてんしようとすると歪いびつな形かたちの隙間すきまが残のこり、円えんだけで充填じゅうてんすることはできない。平面へいめん充填じゅうてん可能かのうな図形ずけいには、三角形さんかっけい、四角形しかっけい、平行へいこう六角形ろっかっけいなどがあるが、最もっとも周しゅうが短みじかいのは正六角形せいろっかっけいである。これは、平面へいめん充填じゅうてん形がたの中なかで正六角形せいろっかっけいが最もっとも円えんに近ちかいことからも直感ちょっかん的てきに理解りかいできる。

同様どうように、3次元じげんでの

同おなじ体積たいせきの図形ずけいによる3次元じげん空間くうかん充填じゅうてんで、表面積ひょうめんせきが最もっとも狭せまいのは何なにか

という問題もんだい（「ケルヴィン問題もんだい」）を考かんがえることができる。この問題もんだいは未み解決かいけつだが、既知きちの最適さいてきな答こたえはウィア＝フェラン構造こうぞうと呼よばれる等とう体積たいせきの12面体めんていと14面体めんていからなる充填じゅうてんである（1993年ねんにこれが発見はっけんされるまでは切きり頂いただき八はち面体めんていがそうだった）。しかし、ある種しゅの制約せいやく（例たとえば、孔あなが貫通かんつうしていなければならない、問題もんだいとなる空間くうかんが薄うすっぺらい、複雑ふくざつな立体りったい加工かこうはできない、など）の下したでは、正せい六ろく角柱かくちゅうが答こたえとなる。

自然しぜん界かいのハニカム構造こうぞう

ハチの巣す。
昆虫こんちゅうの複眼ふくがん。
亀かめの甲羅こうら。
間あいだ質しつ性せい肺炎はいえんの病変びょうへん。
玄武岩げんぶがんの柱状ちゅうじょう節理せつりなどに見みられるように、ある程度ていどの量りょうのマグマがゆっくりと一様いちように冷却れいきゃくされた時ときに入はいる亀裂きれつ。

玄武岩げんぶがんの柱状ちゅうじょう節理せつり
トンボの複眼ふくがん
亀かめの甲羅こうら

応用おうよう

輸送ゆそう機器きき

航空機こうくうきにおいては、サンドイッチ構造こうぞうのコア材料ざいりょうの一種いっしゅとして、アルミニウム合金ごうきんやノーメックス製せいのハニカムが使用しようされている。モスキート爆撃ばくげき機きは戦時せんじの金属きんぞく原料げんりょう不足ふそくに対たいして、木製もくせいボディで挟はさんだペーパーハニカム構造こうぞうを採用さいようして、コストダウンと軽量けいりょう化かに成功せいこうした。
新幹線しんかんせんにおいて、500系けい新幹線しんかんせんの車体しゃたいには、世界せかい初はつとなる曲面きょくめんのアルミろう付づけハニカムパネルが採用さいようされ、N700系けい新幹線しんかんせんのガイシオオイ(パンタグラフカバー)にろう付づけハニカムパネルが採用さいようされた。
戦車せんしゃ等ひとしの複ふく合あい装甲そうこうのセラミックス製せい構造こうぞう材ざいに使用しようされる場合ばあいがある。例れい）英えい陸軍りくぐんチャレンジャー主力しゅりょく戦闘せんとう戦車せんしゃの「チョバム・アーマー」
F1を始はじめとするレーシングカーのモノコックや外そと板いた等とうにおいても、サンドイッチ構造こうぞうのコア材料ざいりょうの一種いっしゅとして、アルミやアラミド繊維せんいのハニカムが使用しようされている。以前いぜんは表おもて板いた/中ちゅう芯しんともアルミが主流しゅりゅうであった。1990年代ねんだい前後ぜんごより表ひょう板ばんは炭素たんそ繊維せんい強化きょうかプラスチックに取とって代かわられつつあるが、エントリーカテゴリのモノコック等とうには依然いぜんアルミが使用しようされている。
自動車じどうしゃの排気はいきガスを清浄せいじょう化かする触媒しょくばい担体。

建築けんちく材料ざいりょう

ハニカムビームは鉄骨てっこつのH型がた鋼材こうざいのウェブ部分ぶぶんを台形だいけいに切きり込こんで上下じょうげに溶接ようせつすることにより加工かこうされる梁はり材ざい（組くみ合あわされた時ときに六角形ろっかっけいのスリーブができ、設備せつび配管はいかんを通とおすことができる）。

音響おんきょう機器きき

スピーカー、アンプ、CDプレーヤーなどの一部いちぶの音響おんきょう機器ききに用もちいられている（とくに1980年代ねんだい後期こうきから1990年代ねんだい後期こうきまで販売はんばいされていたパイオニア・ダイヤトーン製せいの音響おんきょう機器ききが顕著けんちょ）。

その他た

サッカーゴールの網あみは従来じゅうらい、格子こうし状じょうの網あみを用もちいていたが、2000年ねん前後ぜんごよりシュートしたボールがネットに絡からめとられ、ゴールに突つき刺ささるように見みえると言いう演出えんしゅつ的てきな理由りゆうによりハニカム状じょうのネットが採用さいようされるようになった。
薄うすさと軽かるさと強度きょうどが求もとめられる一眼いちがんレフカメラ（特とくに高速こうそくなシャッター速度そくどを実現じつげんしている機種きしゅ）のシャッター幕まくでは、表面ひょうめんにハニカム構造こうぞうの採用さいようがみられる。
デジタルカメラでは、富士ふじフイルムが「スーパーCCDハニカム」というCCDイメージセンサ技術ぎじゅつを採用さいようしている。これは八はち角形かくがたのCCD素子そしを利用りようしたシステムである。
眼鏡めがねのレンズでは、株式会社かぶしきがいしゃレブラ（旧きゅうサクサンオプティカル）^[1]社しゃから「ネッツペックコーテング（NPコート）」が施ほどこされた、高機能こうきのうレンズRevra:レブラがある。これは、ハニカム構造こうぞうをした金属きんぞく膜まくをレンズ表面ひょうめんに貼はり、透過とうか率りつの異ことなった光ひかりの減げん光こう域いきを作つくる事ことで光ひかりを干渉かんしょうさせ、透過とうか率りつは従来じゅうらいのクリアレンズと同等どうとうでありながら、防ぼう眩まぶし効果こうかや高こうコントラスト性せいを高たかめたものである。
原子げんしレベルにおいてのハニカム構造こうぞうも考かんがえられており、六角形ろっかっけいに結合けつごうされた炭素たんそが他たの六角形ろっかっけいと結合けつごうされ円筒えんとう型がたの構造こうぞうを作つくり出だすことによってあらゆる原子げんし結合けつごうで最もっとも強つよい結合けつごうが生うみ出だされる。この新しん素材そざいは「カーボンナノチューブ」と呼よばれ、アルミニウムの約やく半分はんぶんの軽かるさ、鋼鉄こうてつの100倍ばいの強度きょうど、ダイヤモンドの２倍ばいの硬かたさを持もつ。この素材そざいは将来しょうらい、宇宙うちゅうへ行いくためのエレベーターを作つくり出だす上うえで必要ひつようになる素材そざいの一ひとつではないかとされている。

脚注きゃくちゅう

^ ネッツペックコート（イトーレンズ）

外部がいぶリンク

『ハニカム構造こうぞう』 - コトバンク
『ハニカム』 - コトバンク
ハニカムコアの特長とくちょう :: 新しん日本にっぽんフエザーコア株式会社かぶしきがいしゃ
強度きょうど抜群ばつぐんの「ハニカム」構造こうぞうとは？航空機こうくうきにも使用しようされる７ななつのメリット | 佳秀よしひで工業こうぎょう株式会社かぶしきがいしゃ

[1] ネッツペックコート（イトーレンズ）

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