ハンス・スローン

サー・ハンス・スローン
Sir Hans Sloane
生誕せいたん	1660年ねん4月がつ16日にち アイルランド王国おうこく、ダウン県けん、キリーレイ
死没しぼつ	1753年ねん1月がつ11日にち （92歳さい） グレートブリテン王国おうこく、ロンドン、チェルシー
墓地ぼち	Chelsea Old Church
職業しょくぎょう	医師いし、篤志とくし家か
配偶はいぐう者しゃ	エリザベス・ラングリー

初代しょだい準じゅん男爵だんしゃくサー・ハンス・スローン（英語えいご: Sir Hans Sloane, 1st Baronet PRS, 1660年ねん4月がつ16日にち - 1753年ねん1月がつ11日にち）は、アイルランド王国おうこくのアルスター出身しゅっしんの医師いしで収集しゅうしゅう家か。自身じしんのコレクションをイギリス政府せいふに遺贈いぞうし、それが大だい英えい博物館はくぶつかんの元もとになったことで知しられる。チョコレートミルク飲料いんりょうを発明はつめいし、ロンドンのスローン・スクエアに名なを残のこしている。

生涯しょうがい

前ぜん半生はんせい

アレクサンダー・スローン（Alexander Sloane）と妻つまサラ（Sarah、旧姓きゅうせいヒックス（Hicks））の息子むすことして、1660年ねん4月がつ16日にちにダウン県けんキリーレイで生うまれた。父ちちはスコットランド王おうジェームズ1世せいが派遣はけんしたスコットランド人ひと植民しょくみん団だんの団長だんちょうだったが、スローンが6歳さいのときに亡なくなった。

幼おさないころから博物学はくぶつがく的てきなものや奇妙きみょうなものを収集しゅうしゅうする癖くせがあった。そこから薬物やくぶつへの興味きょうみが芽生めばえるとロンドンに出でて植物しょくぶつ学がくや薬学やくがくを学まなび、収集しゅうしゅう癖へきが縁えんとなってジョン・レイやロバート・ボイルと親交しんこうができた。フランス王国おうこくに渡わたり、パリやモンペリエを訪おとずれた後のち、1683年ねん7月がつにオランジュの大学だいがくで医学いがく博士はかせ号ごうを取得しゅとくした。大量たいりょうの植物しょくぶつや珍品ちんぴんのコレクションと共ともにロンドンに戻もどる。ジョン・レイはスローンから送おくられた植物しょくぶつ標本ひょうほんを元もとに『植物しょくぶつ誌し』（原題げんだい History of Plants ）を出版しゅっぱんする。

1685年ねんに王立おうりつ協会きょうかいフェローに選えらばれ、そのころ医師いしのトーマス・シデナムと親交しんこうを結むすび、手てほどきを受うけた。1687年ねん、医い学校がっこうのフェローとなり、ジャマイカに向むかう第だい2代だいアルベマール公こうクリストファー・マンクの船団せんだんに医師いしとして同行どうこうした。アルベマール公こうはジャマイカ上陸じょうりく直後ちょくごに亡なくなったため、スローンがジャマイカで過すごしたのはわずか15ヵ月かげつのみである。当時とうじ、ジャマイカを訪おとずれた植物しょくぶつ学者がくしゃはまだなく、滞在たいざい中ちゅうにスローンは800種しゅもの新種しんしゅの植物しょくぶつを記録きろくし、それらをラテン語らてんごの目録もくろくにまとめると1696年ねんに出版しゅっぱんした。また、後のちにジャマイカ訪問ほうもんの体験たいけん談だんを2冊さつの本ほんにして出版しゅっぱんしている（1707-1725年ねん）。1693年ねん、王立おうりつ協会きょうかいの書記しょきとなり、『フィロソフィカル・トランザクションズ』誌しを20年ねんにわたって編集へんしゅうした。

スローンは Fulke Rose の未亡人みぼうじんエリザベス・ラングリーと結婚けっこんし、3人にんの娘むすめと1人ひとりの息子むすこをもうけた。ただし成人せいじんしたのは娘むすめ2人にんだけである。

チョコレート飲料いんりょう

スローンはジャマイカでココアと出会であった。先住民せんじゅうみんはそれを水みずと混まぜて飲のんでいたが、スローンはまずくて飲のめたものではないと記しるしている。しかし、牛乳ぎゅうにゅうと混まぜると飲のみやすいことを発見はっけんした彼かれはイングランドに戻もどると、チョコレートミルク飲料いんりょうのレシピを広ひろめた。17世紀せいき当初とうしょは薬局やっきょくで薬くすりとして売うられていたチョコレート飲料いんりょうだが、19世紀せいきにジョージ・キャドバリーが缶かん入いり飲料いんりょうを市販しはんした。

医師いしとして

スローンは上流じょうりゅう階級かいきゅうを相手あいてにした医師いしとして成功せいこうし、大おおいに儲もうけた。彼かれは3代だいの君主くんしゅ、アン女王じょおう、ジョージ1世せい、ジョージ2世せいに仕つかえた。

1716年ねんに準じゅん男爵だんしゃくに叙じょされたスローンは、1719年ねんに王立おうりつ内科ないか医い協会きょうかいの会長かいちょうに選えらばれて16年間ねんかん務つとめた。1722年ねんには軍医ぐんい官かんに任命にんめいされ、1727年ねんにはジョージ2世せいの筆頭ひっとう侍医じいとなった。同おなじく1727年ねん、アイザック・ニュートンの後のちを継ついで王立おうりつ協会きょうかい会長かいちょうに就任しゅうにん、80歳さいになったとき同職どうしょくを退しりぞいた。また、ロンドン初はつの孤児こじ院いんである捨子すてご養育よういく院いんの創設そうせつにも尽力じんりょくした。

投資とうし家かとして

スローンの名声めいせいは、自然しぜん科学かがくの研究けんきゅう者しゃや医師いしであったと言いうよりも、賢明けんめいな投資とうし家かとして築きずかれた部分ぶぶんが大おおきい。1712年ねん、彼かれはロンドンのチェルシーにあった荘園しょうえんを購入こうにゅうしチェルシー薬草やくそう園えんを開ひらくと、それを端緒たんしょにスローンの名ながチェルシー各地かくちの地名ちめいとして残のこる。1701年ねんに William Courten のコレクションを買かい取とり、これがのちに収集しゅうしゅう家かとして成功せいこうを収おさめる決断けつだんとなった。

大だい英えい博物館はくぶつかん

1741年ねんに引退いんたいするとスローンはそれまでの収集しゅうしゅう品ひんをブルームズベリーからチェルシーの自宅じたくに移うつしたが、そのころには独特どくとくの価値かちを持もつまでにコレクションが成長せいちょうしていた。彼かれは、William Courten、Filippo Antonio Gualterio 枢機卿すうききょう、ジェイムズ・ペティヴァー、ネヘミア・グルー、レナード・プルークネット、ボーフォート公爵こうしゃく夫人ふじん (en)、Adam Buddle、パウル・ヘルマン、Franz Kiggelaer、ヘルマン・ブールハーフェといった収集しゅうしゅう家かの博物学はくぶつがく的てきコレクションを次々つぎつぎと入手にゅうしゅしていった。1753年ねん1月がつ11日にちに亡なくなると、スローンの遺言ゆいごんにはコレクションの遺贈いぞう先さきを議会ぎかいに指定していしてあり、遺族いぞくに支払しはらう2万まんポンドと引ひき換かえに蔵書ぞうしょ、手て稿こう、版画はんが、図面ずめん、植物しょくぶつと動物どうぶつの標本ひょうほん、メダル、硬貨こうか、印章いんしょう、カメオその他たの収集しゅうしゅう品ひんを寄贈きぞうすると示しめされた。同年どうねん条例じょうれいが議決ぎけつされ、遺産いさんはその条件じょうけんで引ひき取とられた。そして1759年ねん、このコレクションとジョージ2世せいの蔵書ぞうしょなどを核かくとしてブルームズベリーに大だい英えい博物館はくぶつかんが開館かいかんし、これら当初とうしょのコレクションの大だい部分ぶぶんは後のちにロンドン自然しぜん史し博物館はくぶつかんの基盤きばんとなった。

また、チェルシー薬草やくそう園えんはロンドンの薬剤師やくざいしらが自由じゆうに薬草やくそうを採取さいしゅできるように図はかってあった。これもスローンの篤志とくし家かとしての面めんを表あらわしている。

ハロッズが面めんするハンス・クレッセント通どおりの標識ひょうしき（ナイツブリッジ）。「ハンス」はスローンの名前なまえ。

栄誉えいよ

ケンジントン&チェルシー王立おうりつ区くにはスローンの姓名せいめいを冠かんした地名ちめいがあり、姓せいはスローン・スクエア、スローン・ストリート、スローン・ガーデンなどに示しめされ、ファーストネーム（名な）のハンスをとったハンス・ストリート、ハンス・プレース、ハンス・ロードも同おなじ地区ちくにある。 また、学名がくめい「Urania sloanus」という蛾がもスローンに献けんじ名めいされた。カール・フォン・リンネは植物しょくぶつの属ぞく名めい Sloaneaをスローンに因ちなんで命名めいめいした。

墓地ぼち

チェルシーの様子ようす。オールド教会きょうかいの建物たてものの一部いちぶとハンス・スローンの墓はかが描えがかれている。

ハンス・スローンの記念きねん碑ひ（チェルシー）

ハンス・スローンは1753年ねん1月がつ18日にち、チェルシー・オールド教会きょうかいに埋葬まいそうされた。墓所はかしょの記念きねん碑ひに次つぎのように刻きざまれている（試ためし訳やく）。

サー・ハンス・スローン。準じゅん男爵だんしゃく。王立おうりつ協会きょうかい会長かいちょう。内科ないか医い協会きょうかい会長かいちょう。1752年ねん、92歳さいで安やすらかに永眠えいみん。この記念きねん碑ひはその娘むすめイライザ・カドガンとサラ・スタンリーが建立こんりゅうした

墓はかには妻つまエリザベス（1724年ねん没ぼつ）もいっしょに埋葬まいそうされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Sloane, Sir Hans" . Encyclopædia Britannica (英語えいご). Vol. 25 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 243.
• Weld, History of the Royal Society, i. 450 (London, 1848);
• Chipmunk, Bread Roll of the College of Physicians, 2nd Eddy., i. 466 (Landon, 8888).
• Ford, John M T (August 2003). "Medical Memorial. Sir Hans Sloane (1660-1753)". Journal of medical biography. 11 (3): 180. PMID 12870044。
• McIntyre, N (November 2001). "Sir Hans Sloane (1660-1753)". Journal of medical biography. 9 (4): 235. PMID 11718127。
• Dunn, P M (July 2001). "Sir Hans Sloane (1660-1753) and the value of breast milk". Arch. Dis. Child. Fetal Neonatal Ed. 85 (1): F73–4. doi:10.1136/fn.85.1.F73. PMC 1721277. PMID 11420330。
• Ravin, J G (November 2000). "Sir Hans Sloane's contributions to ocular therapy, scientific journalism, and the creation of the British Museum". Arch. Ophthalmol. 118 (11): 1567–73. PMID 11074814。
• Mason, A S (October 1993). "Hans Sloane and his friends. The FitzPatrick Lecture 1993". Journal of the Royal College of Physicians of London. 27 (4): 450–5. PMID 8289170。
• Nelson, E C (April 1992). "Charles Lucas' letter (1736) to Sir Hans Sloane about the natural history of The Burren, County Clare". Journal of the Irish Colleges of Physicians and Surgeons. 21 (2): 126–31. PMID 11616186。
• "Sir Hans Sloane (1660-1753) founder of the British Museum". JAMA. 207 (5): 943. 3 February 1969. doi:10.1001/jama.207.5.943. PMID 4884737。
• Ober, W B (1 June 1968). "Sir Hans Sloane, M.D., F.R.C.P., F.R.S. (1660-1753) and the British Museum". New York state journal of medicine. 68 (11): 1422–30. PMID 4872002。

関連かんれん文献ぶんけん

• de Beer, G.R., Sir Hans Sloane and the British Museum. London, Oxford University Press. 1953.
• MacGregor, Arthur (11 March 2021) [23 September 2004]. "Sloane, Sir Hans, baronet". Oxford Dictionary of National Biography (英語えいご) (online ed.). Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/25730。 (要よう購読こうどく、またはイギリス公立こうりつ図書館としょかんへの会員かいいん加入かにゅう。)

関連かんれん項目こうもく

• ロンドン自然しぜん史し博物館はくぶつかん
• 大だい英えい博物館はくぶつかん
• 日本にっぽん誌し - 出島でじまに滞在たいざいしたドイツ人じん医師いしエンゲルベルト・ケンペルの著作ちょさく。スローンが未み発表はっぴょう原稿げんこうを入手にゅうしゅし出版しゅっぱんした。

外部がいぶリンク

• ハンス・スローン - ナショナル・ポートレート・ギャラリー （英語えいご）
• ハンス・スローンの著作ちょさく - インターネットアーカイブ内うちのOpen Library（英語えいご）
• "ハンス・スローンの関連かんれん資料しりょう一覧いちらん" (英語えいご). イギリス国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん.
• 『大だい英えい博物館はくぶつかん収蔵しゅうぞうスローン手しゅ稿こうの索引さくいん』（英語えいご）　1904年ねん発行はっこう
• 「ボタニカス」収載しゅうさいの著書ちょしょ
  • A Voyage（英語えいご）
  • Catalogus Plantarum（ラテン語らてんご）
• ハンス・スローンについて（英語えいご） ロンドン自然しぜん史し博物館はくぶつかん
• 展覧てんらん会かいの告知こくち 1759年ねんのブルームズベリー（英語えいご）（アーカイブ版ばん） 会場かいじょうは聖ひじりジョージ教会きょうかい（2009年ねん1月がつ）、地区ちくの歴史れきしを紹介しょうかいし、住民じゅうみんのひとりスローンについて講演こうえん会かいを催もよおした。

職能しょくのう団体だんたい・学会がっかい職しょく
先代せんだい アイザック・ニュートン	次代じだい マーティン・フォルクス
グレートブリテンの準じゅん男爵だんしゃく
爵位しゃくい創設そうせつ	（チェルシーの）準じゅん男爵だんしゃく 1716年ねん – 1753年ねん	廃絶はいぜつ