ブータンの文化ぶんか

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ブータン相撲すもうから転送てんそう
ブータンのミュージック・パレード

ブータンの文化ぶんかでは、ブータン生活せいかつ文化ぶんかについてしるす。

民族みんぞく衣装いしょう[編集へんしゅう]

ゴ,キラ

チベットけい住民じゅうみん民族みんぞく衣装いしょうが「ブータンの民族みんぞく衣装いしょう」と規定きていされている。男性だんせいようは「」、女性じょせいようは「キラ」とばれる。ブータンは、1989ねんより日常にちじょうとしておおやけでの民族みんぞく衣装いしょう着用ちゃくよう国民こくみん義務付ぎむづけたくにとしても有名ゆうめいである。おおやけとは、公的こうてき機関きかん(ゾンや役所やくしょなど)、寺院じいん学校がっこう公式こうしき集会しゅうかい公式こうしき行事ぎょうじをその範囲はんいとしているが、近年きんねんその解釈かいしゃく厳格げんかくになり、現在げんざい自宅じたく以外いがい場所ばしょとして認識にんしきされている。違反いはんした場合ばあい罰則ばっそく規定きていもある。警察けいさつぐんなどの制服せいふくしょく外国がいこくじんネパールけい住民じゅうみん固有こゆう衣装いしょう少数しょうすう民族みんぞくはそのかぎりではないが、無用むようのトラブルをけるため着用ちゃくようせざるをないひとおおい。公務員こうむいん職務しょくむちゅう、いずれの民族みんぞくであれ民族みんぞく衣装いしょう着用ちゃくよう義務付ぎむづけられる。

「ゴ」はチベットの民族みんぞく衣装いしょうチュバ、日本にっぽん丹前たんぜんどてらなどとも形状けいじょう類似るいじしている。このため、日本にっぽんでは呉服ごふく(もしくは和服わふく)と「ゴ」の起源きげん言葉ことば類似るいじから同一どういつする俗説ぞくせつがあるが、「ゴ」の起源きげん中央ちゅうおうアジアだとされること、呉服ごふく名称めいしょうは「くれはとり[1]」からできた言葉ことばであることなどを考慮こうりょすると、両者りょうしゃ名称めいしょう偶然ぐうぜん類似るいじでしかない。着用ちゃくようからだ正面しょうめんぬのわせ、たくしげた状態じょうたいおびをきつくめるため、胴回どうまわりに空間くうかんができる。携帯けいたいひんをこの空間くうかんおさめる。正装せいそう場合ばあい、「ゴ」のうえにカムニとばれるスカーフをまとう。スカーフのいろ身分みぶんによってかれており、一般いっぱん市民しみんしろ大臣だいじんクラスでいオレンジ、国王こくおうサフランしょくめられている。「キラ」は3まいぬのつなわせたおおきなぬのまきころも状態じょうたいで、かた部分ぶぶんをコマという固定こていするかたち着用ちゃくようする。ブータンじん着道楽きどうらくともわれ、余裕よゆうのある人々ひとびと衣装いしょう装飾そうしょくひん糸目いとめをつけないことでもられる。近年きんねん日常にちじょうとしての機械きかいりも普及ふきゅうしてきたが、伝統でんとうてき手織ておりの織物おりもの現在げんざいでも珍重ちんちょうされている。「ゴ」や「キラ」は織物おりもの有名ゆうめいなクルテ地方ちほう、タシガン地方ちほう、カリンなどの東部とうぶ生産せいさんされるキシュタラ、メンチマタ、ルンセルマなどの絹織物きぬおりもの使つかってつくられる。野生やせいきぬ(ブラ)を使つかった織物おりもの有名ゆうめいまつりなどを有名ゆうめい産地さんちにこだわって個人こじんてきにオーダーするひとおおい。寒冷かんれいなブムタン地方ちほうでは、ヤタとばれる毛織物けおりもの有名ゆうめいである。

北西ほくせいのラヤ・ルナナの遊牧民ゆうぼくみん南部なんぶのロプといった少数しょうすう民族みんぞく固有こゆう民族みんぞく衣装いしょうっている。民族みんぞく衣装いしょう着用ちゃくよう規定きていはこれらの民族みんぞく衣装いしょう着用ちゃくようみとめているが、自身じしん民族みんぞく衣装いしょうずかしくかんじる場合ばあいおおく、まちてくるさいは「ゴ」や「キラ」の着用ちゃくようこのむ。

しょく文化ぶんか[編集へんしゅう]

もの[編集へんしゅう]

あかまい料理りょうり

ブータンの主食しゅしょくべいとくあかまいブータンあかまい)をこのむ。調理ちょうりほうである。標高ひょうこうたかいブムタン地方ちほうでは蕎麦そば栽培さいばいさかんだが、ふる時代じだいから低地ていちのモンガル地方ちほうとの関係かんけいち、米食べいしょく維持いじしている。平均へいきんてき男性だんせいいちにちに1kgのこめべるとわれている。

ブータン料理りょうり特筆とくひつすべきは、トウガラシ(エマ)の多用たようである。これを香辛料こうしんりょうではなく野菜やさいとして大量たいりょうべる。このため、世界せかい一番いちばんつら料理りょうりだと表現ひょうげんされることもある。外国がいこくじんつらさによわいことをブータンじん理解りかいしており、観光かんこうきゃくよう食事しょくじつらさをおさえたものとなっているのが普通ふつうである。また、乳製品にゅうせいひん豊富ほうふ使つかわれ、カッテージチーズちかいダツィやバター多用たようされる。これらふたつの要素ようそわせた料理りょうりダツィ料理りょうりばれる。

照葉樹しょうようじゅりん気候きこうにあるブータンではキノコ(シャモ)も主要しゅよう食材しょくざいである。日本人にっぽんじん珍重ちんちょうするマツタケ(サンゲシャモ)もはいるが、かおりがうす輸入ゆにゅうりょうすくない。

代表だいひょうてき料理りょうりは、エマダツィ(トウガラシとチーズの煮込にこ)、ケワダツィ(ジャガイモとトウガラシの煮込にこみ)、パクシャ・パー(豚肉ぶたにくとトウガラシの煮込にこみ)、イズィ(トウガラシとチーズをえたサラダ)、モモ(チベットふう餃子ぎょうざ)など。ブムタン地方ちほう郷土きょうど料理りょうりとして蕎麦そば使つかっためん(プタ)やパンケーキ(クルワ)がある。

茶請ちゃう菓子かしとしては、ザウ(いりまい)、シプ(こめをつぶして乾燥かんそうさせたもの)、ゲザシプ(トウモロコシをつぶして乾燥かんそうさせたもの)などがあり、バターちゃやミルクティーとともに愛好あいこうされる。

このようなしょく文化ぶんか遊牧民ゆうぼくみんてき生活せいかつスタイルと、農耕のうこうみんてき生活せいかつスタイルが融合ゆうごうしたものだとかんがえる学者がくしゃもいる。最近さいきんインド料理りょうり西洋せいよう料理りょうり影響えいきょうけ、ブータンの食材しょくざいをアレンジしたあたらしい料理りょうりがホテルを中心ちゅうしんとして登場とうじょうしている。

もの[編集へんしゅう]

さけは、総称そうしょうチャンい、大麦おおむぎべい、トウモロコシ、アマランサスなどを使用しようする。自家じか醸造じょうぞう許可きょかされているが、販売はんばいはできない。さけ醸造じょうぞうこうじ(ポップ)をもちい、スターターはシダののものとわらのものとがある。おも醗酵はっこうしゅのシンチャンと蒸留酒じょうりゅうしゅアラがある。とく東部とうぶ地方ちほうではアラがつねいんされることで有名ゆうめいである。

ちゃ国民こくみん飲料いんりょううほど普及ふきゅうしており、チベット文化ぶんか影響えいきょうけた伝統でんとうてきなスージャ(バターちゃ)が定番ていばんであるが、最近さいきんはインドの影響えいきょうけたあまいガジャ(ミルクティー)もこのまれる。コーヒーソフトドリンク存在そんざいしているがかぎられた範囲はんいとどまっている。

その[編集へんしゅう]

ドマばれる覚醒かくせい作用さようのある嗜好しこうひん老若男女ろうにゃくなんにょわず人気にんきがある。キンマビンロウジュ石灰せっかい一緒いっしょつつみ、くちなかでゆっくりとくだいていくもので、ひろ東南とうなんアジア一帯いったい分布ぶんぷしているものと同様どうようのものである。さい唾液だえきあかまり、そのつばてたあかみが街路がいろのいたるところのこっている。一時期いちじき若者わかもの中心ちゅうしんタバコへと嗜好しこうひん関心かんしんうつりつつあったが、禁煙きんえん国家こっか宣言せんげん以降いこうふたたびドマをたしなむひとえている[2]伝統でんとうてき儀式ぎしきではドマはかせないものであり、それを収納しゅうのうするぎんせい容器ようき工芸こうげいひんとして人気にんきたかい。

宗教しゅうきょうてきめんから喫煙きつえん禁忌きんきとされており、2004ねんには禁煙きんえん国家こっか宣言せんげんするなどのうごきがあり、2004ねん12月17にちより煙草たばこ製造せいぞう販売はんばい全面ぜんめん禁止きんしとなり、ブータン国内こくない購入こうにゅう不可ふかとなった[3]。ただし、観光かんこうきゃくはブータン国外こくがいからの煙草たばこみは1カートンまで可能かのうとなっており、そのさい関税かんぜい物品ぶっぴんぜいそれぞれ100%かかる状態じょうたいとなっている[4]

娯楽ごらく文化ぶんか[編集へんしゅう]

ドラヤン英語えいごばんばれるバー類似るいじした施設しせつ国内こくない点在てんざいしている。ブータンにはドラヤンが49ヶ所かしょあり、そのうち14ヶ所かしょ首都しゅとティンプー集中しゅうちゅうしている[5][6][7]

宗教しゅうきょう文化ぶんか[編集へんしゅう]

街中まちじゅうのいたるところに、なかけいおさめられた円柱えんちゅうじょう大小だいしょう様々さまざまな「マニしゃ」が存在そんざいしており、1回転かいてんさせればそのけいんだのとおな功徳くどくがあるとされている[8]

ブータンの有名ゆうめいまつりとしてグル・リンポチェの奇蹟きせきがブータンれき各月かくつき10にちきたことにちなんだ「ツェチュ」(ゾンカで「10日とおか」の)とばれるまつりがある。ツェチュは各地かくち寺院じいん僧院そういんゾンなどでとしに1開催かいさいされる[9] が、おこなわれるつきはまちまちである[10] ため、1ねんつうじて国内こくないのどこかでこと出来でき[9]とくはるの「パロ・ツェチュ」、あきの「ティンプー・ツェチュ」は有名ゆうめいで、国内外こくないがいから観光かんこうきゃく殺到さっとうする。

ツェチュでは「チャム」とばれる宗教しゅうきょうてき仮面かめん舞踏ぶとう披露ひろうされる。この舞踏ぶとうはグル・リンポチェの生涯しょうがいえがいたもので、ブータンではツェチュに参加さんかしチャムをることで功徳くどくみ、恩恵おんけいけてつみあらながことがよいとされている[10]舞踊ぶようほかには地域ちいきごとの特色とくしょくゆたかな舞踊ぶようや、道化どうけによる寸劇すんげき(アチャラ)などの余興よきょうおこなわれる[9] ほか、「トンドル」とばれる巨大きょだい仏画ぶつが開帳かいちょうされることもある。トンドルはアップリケじょう巨大きょだいなもので、にするだけで涅槃ねはん成仏じょうぶつできるとしんじられている。

スポーツ[編集へんしゅう]

ブータン弓術きゅうじゅつ

ブータン弓術きゅうじゅつは、正式せいしきめいをダツェ(mda' rtsed)としょうし、国技こくぎとして人気にんきたか競技きょうぎである。ゆみはジュ(gzhu)、はダ(mda')とぶ。競技きょうぎすうめいを1くみとして、2くみ対抗たいこうせんとして、100mほどはなれたまとねら形式けいしきおこなわれる。てき命中めいちゅうすると、いわいのうたおどりをひとしきりおこなうなど、時間じかんにせずにゆったりとすすめるため、正式せいしき試合しあい数日すうじつようすることもある。

ゆみ伝統でんとうてきなものは2ほんたけぼうつなわせて、りょうはしつるった状態じょうたいでまっすぐになるようにつくられている。現在げんざい洋弓ようきゅう普及ふきゅうしている。

ほかにブータン独自どくじ体技たいぎブータン相撲すもうとしてられている。2008ねん国王こくおう戴冠たいかんしき記念きねん式典しきてん披露ひろうされ、日本にっぽんのテレビ番組ばんぐみでも紹介しょうかいされた。

2000年代ねんだい以降いこうサッカー人気にんきたかまっている[11]

ちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 「くれはたおり」のおと、すなわちから伝来でんらいした機織はたお技術ぎじゅつ。コトバンク [1]
  2. ^ 東京とうきょう財団ざいだん研究けんきゅう報告ほうこくしょ 2006-13 小国しょうこく地政学ちせいがく -秘境ひきょう・ブータンはなぜほろびないか- (PDF) 東京とうきょう財団ざいだん 2006ねん10がつ
  3. ^ ブータン たばこの販売はんばい禁止きんし Cue!(タバコ問題もんだい首都しゅとけん協議きょうぎかい)2004ねん11月17にち
  4. ^ ネパール・ブータン 基本きほん情報じょうほう ~マナーとまめ知識ちしきへん~(エス・ティー・ワールド )
  5. ^ Dorji Dema (2012ねん1がつ20日はつか). “The Drayang woes”. Bhutan Broadcasting Service. 2020ねん11月26にち閲覧えつらん
  6. ^ Lim, Karen (2018ねん5がつ6にち). “9 things you never knew about Thimpu, Bhutan's capital city”. AsiaOne. 2020ねん11月26にち閲覧えつらん
  7. ^ Khandu, Lekey; Zwanikken, Prisca. “HIV Vulnerability and Sexual Risk Behaviour of the Drayang Girls in Bhutan”. SAARC Journal of Tuberculosis, Lung Diseases and HIV/AIDS. doi:10.3126/saarctb.v17i1.25025. https://www.researchgate.net/publication/334716057_HIV_Vulnerability_and_Sexual_Risk_Behaviour_of_the_Drayang_Girls_in_Bhutan. 
  8. ^ Bhutan's Religion(日本にっぽんブータン友好ゆうこう協会きょうかい
  9. ^ a b c ふういのりのくに、ブータン」『VISA』2012ねん6がつごう三井みつい住友すみともVISAカード、2012ねん
  10. ^ a b まつり」、ブータン政府せいふ観光かんこうきょく、2012ねん12月25にち閲覧えつらん
  11. ^ ブータン衣食住いしょくじゅう日本にっぽんブータン友好ゆうこう協会きょうかい

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]