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ペソ

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  ペソ流通りゅうつうこく
  かつてのペソ流通りゅうつうこく

ペソ (peso) はきゅうスペイン植民しょくみん諸国しょこく使つかわれている、あるいは使つかわれていた通貨つうか単位たんい。「$」の語源ごげんとなる言葉ことばである[1][2][3][4][5]

採用さいようじょうきょう[編集へんしゅう]

かつてはきゅうスペイン植民しょくみんのほとんどの地域ちいきもちいられていた単位たんいであったが、インフレともな減価げんか(→桁数けたすう増加ぞうか)の常態じょうたいなどを理由りゆうに、通貨つうか単位たんい変更へんこう桁数けたすうをカットするためデノミ)が周期しゅうきてきかえされた結果けっか現在げんざいではべつ名称めいしょうえられているくにおおい(たいしてアルゼンチンチリように、一旦いったんデノミでペソ貨をはいするも、つぎのデノミで復活ふっかつさせたケースも存在そんざいする)。

おなじペソ採用さいようこくであっても、為替かわせレートはくにによっておおきくことなる。くわえて、かれている経済けいざいてき位置いち為替かわせ管理かんり有無うむなどにより、ハードカレンシー対外たいがいてき交換こうかんせい保証ほしょうされた通貨つうか)からのペソへの交換こうかん自由じゆうであっても、ペソをってそれらの通貨つうか購入こうにゅうするさいにはきびしい制限せいげんもうけているくにもある。しかし「メルカード・ネグロ」とばれる個人こじんあいだ取引とりひきでは実勢じっせいレートを基準きじゅんとした売買ばいばい自由じゆうおこなわれており、公的こうてき為替かわせ管理かんりはいずれの場合ばあいもほとんど機能きのうしていない。また、キューバでは、通常つうじょうのペソ(人民じんみんペソ)とはべつに「兌換だかんペソ」とばれるもう1つの通貨つうか存在そんざいした。「1兌換だかんペソ=24人民じんみんペソ」のレートで兌換だかんペソを入手にゅうしゅすれば、人民じんみんペソのりを一切いっさいみとめない外貨がいか商店しょうてんでも「1兌換だかんペソ=1アメリカ・ドル」のレートで国産こくさんひんよりこう品質ひんしつ輸入ゆにゅう雑貨ざっか耐久たいきゅう消費しょうひざいなどを自由じゆうえるだけでなく、手数料てすうりょうによる若干じゃっかん目減めべりはともなうもののアメリカ・ドルなどハードカレンシーへのさい交換こうかん可能かのうであるため、一般いっぱんのキューバじんあいだでは使つか勝手がってわる人民じんみんペソより必然ひつぜんてき人気にんきたかかった。もっとも、この兌換だかんペソも物品ぶっぴん・サービスの自由じゆう購入こうにゅう外国がいこく通貨つうかへの交換こうかん約束やくそくされているのはあくまでもキューバ国内こくないかぎってのみであり、国外こくがいでは人民じんみんペソ同様どうよう一切いっさい通用つうようりょくたなかった。なお、兌換だかんペソは2020ねん人民じんみんペソに統合とうごうされた。

国際こくさいてきもっと流通りゅうつうりょうおおいペソはメキシコ・ペソ(2022ねん6がつ現在げんざい、1ペソ = やく7えん)である。

語源ごげん[編集へんしゅう]

ラテン語らてんごで「計量けいりょう」を意味いみする"pendere"(元々もともと本位ほんい貨幣かへい基準きじゅんである貴金属ききんぞくおもさを天秤てんびんはか行為こういしていたが、のちに「支払しはらい」のふくようになった)が語源ごげんであり、スペインけんでは「重量じゅうりょう」を名詞めいし英語えいごでは"weight"に相当そうとう)として、現在げんざいはペソを通貨つうか単位たんいとしては採用さいようしていないくにでも使つかわれている。

なお、ポンド英語えいご:"pound")・リライタリア:"lira")・リーヴルフランス語ふらんすご:"livre")など欧州おうしゅう使用しようされていたいくつかの単位たんいラテン語らてんごの"libra"(天秤てんびん)より派生はせいしている。

補助ほじょ通貨つうか[編集へんしゅう]

ペソを使用しようしているくにでは、100ぶんの1の補助ほじょ単位たんい存在そんざいするが、インフレによる貨幣かへい単位たんい目減めべりでチリコロンビアウルグアイなどではすで役目やくめえている。その国々くにぐにでも少額しょうがく硬貨こうか廃止はいし低額ていがく紙幣しへい硬貨こうかへのえが随時ずいじ実施じっしされているため、1ペソ未満みまん使用しよう頻度ひんどすくなくなりつつある。

補助ほじょ単位たんいはスペインで1/100もしくはひゃく等分とうぶん意味いみする "ciento avos" より派生はせいした「センターボ」(centavo) であることがおおい。またフィリピン・ペソ補助ほじょ単位たんい「センティモ」(sentimo) も、スペインで1/100を意味いみする "centimo" の現地げんち表記ひょうきである。

呼称こしょう[編集へんしゅう]

ボリビア通貨つうかボリビアーノなど、デノミで通貨つうか名称めいしょうをペソ以外いがい変更へんこうしたくにでも、日常にちじょう会話かいわではもの値段ねだんをいいあらわとききゅう単位たんいのペソがもちいられることがある(エスクード貨時だいのチリ、アウストラル貨時だいのアルゼンチンなどでも同様どうよう傾向けいこうられた)。

現地げんちだいいち公用こうようでは「PISO」(ピソ)とばれているフィリピン・ペソ () をのぞき、おおくのペソ採用さいようこくでは通貨つうか単位たんいあらわ記号きごうとして、アメリカ・ドルとおなじ「$」が使用しようされている。双方そうほう区別くべつ明確めいかくにするために、アメリカ・ドルは「US$」もしくは「U$S」、現地げんち通貨つうかペソは「$」と表記ひょうきされることおおい。はげしいインフレでデノミが周期しゅうきてきかえされているくにでは、新旧しんきゅうりょう紙幣しへい一定いってい期間きかん併用へいよう余儀よぎなくされることめずらしくないため、これらのくにおとずれるさいには注意ちゅうい必要ひつようである。ただし、市民しみん生活せいかつへの影響えいきょうおおきさを考慮こうりょして、デノミを実施じっしするさいには、きゅう紙幣しへいのデザインを等価とうか額面がくめんじょうはゼロがデノミりつおうじてカットされている)のしん紙幣しへい継承けいしょうさせるなど、一定いってい対策たいさくこうじられることおおい。

各国かっこくのペソ[編集へんしゅう]

現行げんこう通貨つうか[編集へんしゅう]

  • アジア
    • フィリピン・ペソ(ピソ) : 当初とうしょは「1アメリカ・ドル=2ペソ」の固定こてい相場そうば適用てきようされていたが、フィリピン経済けいざい低迷ていめい対外たいがい債務さいむ膨張ぼうちょう慢性まんせいてきなインフレなどによりげが相次あいつぎ、1998ねん3がつからは変動へんどう相場そうばせい移行いこうしている。ただし、近隣きんりん諸国しょこくくら国外こくがいはたら出稼でかせ労働ろうどうしゃかずきんおおく、かれらからの本国ほんごくへの外貨がいか送金そうきんるわない国内こくない経済けいざい貿易ぼうえき取引とりひき補完ほかんするほど影響えいきょうりょくっているフィリピンでは外貨がいか備蓄びちく逼迫ひっぱくきにくいため、ペソから外貨がいかへの交換こうかんさいしてもとくきびしい制限せいげんもうけていない。
  • アフリカ
  • 南米なんべい
    • アルゼンチン・ペソ : 1992ねんの1/10,000デノミでアウストラルより改称かいしょう
    • ウルグアイ・ペソ : 1993ねんのデノミと同時どうじに1973ねん以前いぜん呼称こしょう復帰ふっき
    • チリ・ペソ : 1975ねんの1/1000デノミでエスクードより改称かいしょう
    • コロンビア・ペソ : 慢性まんせいてきなインフレで減価げんか目立めだつものの、独自どくじ単位たんいとして1810ねん導入どうにゅうされて以来いらいいちもデノミを経験けいけんしていない通貨つうか
  • 中米ちゅうべいカリブ海かりぶかい地域ちいき
    • メキシコ・ペソしんメキシコ・ペソ) : 通貨つうか名称めいしょうは19世紀せいきからつづくが、1993ねんに1/1000デノミされ現在げんざいいたる。デノミ当初とうしょは「しんペソ」(しんメキシコ・ペソ)としょうしていたが、1996ねんにペソにもどされた。
    • ドミニカ・ペソ : ながらくアメリカ・ドルと1たい1の交換こうかん比率ひりつ連動れんどうしていたが、のち変動へんどう相場そうばせい移行いこう( - 現在げんざい
    • 人民じんみんペソ(キューバ):1959ねん社会しゃかい主義しゅぎ革命かくめい対外たいがいてき交換こうかんせい喪失そうしつするまではアメリカ・ドルと連動れんどう関係かんけいにあった。

廃止はいし通貨つうか[編集へんしゅう]

  • ヨーロッパ
  • アフリカ
  • 南米なんべい
    • ペソ・モネダ・ナシオナル(アルゼンチン) : 1888ねん通貨つうか改革かいかくから1970ねんの1/100デノミまで。
    • ペソ・レイ(アルゼンチン) : 1983ねんの1/10000デノミまで。
    • アルゼンチン・ペソ : 1985ねんの1/1000デノミできゅうアウストラルに改称かいしょう
    • きゅうウルグアイ・ペソ : 1973ねんの1/1000デノミまで。
    • しんウルグアイ・ペソ : 1993ねんの1/1000デノミでげんウルグアイ・ペソに改称かいしょう
    • パラグアイ・ペソ : 1944ねんの1/100デノミでげんグアラニー改称かいしょう
    • きゅうチリ・ペソ : 1960ねんの1/1000デノミできゅうエスクードに改称かいしょう
    • ボリビア・ペソ : 1987ねんの1/100まんデノミでげんボリビアーノに改称かいしょう
    • エクアドル・ペソ : のち導入どうにゅうされるきゅうスクレ貨の廃止はいし(2000ねん)でアメリカ・ドルけん編入へんにゅう(1ドル=2まん5000スクレ)。
    • ベネズエラ・ペソ : きゅうボリバルて、2008ねんの1/1000デノミでげんボリバル・フエルテ(「つよいボリバル」)に改称かいしょう
  • 中米ちゅうべいカリブ海かりぶかい地域ちいき
    • きゅうメキシコ・ペソ : 当初とうしょ[いつ?]は1アメリカ・ドル=2ペソ前後ぜんこう安定あんていしていたが、メキシコ経済けいざい悪化あっかにともないげがつづいた。とく累積るいせき債務さいむ問題もんだい表面ひょうめんした70年代ねんだい末期まっきから90年代ねんだい初頭しょとうにかけてはその傾向けいこう顕著けんちょで、1/1000デノミ(1993ねん)で廃止はいしされる直前ちょくぜん段階だんかいたいドル相場そうばすでに4けた(1ドル=2000ペソだい)にたっしていた。
    • コスタリカ・ペソ : 1896ねんげんコスタリカ・コロン改称かいしょう新旧しんきゅうりょう貨の交換こうかん比率ひりつは1たい1の等価とうか
    • エルサルバドル・ペソ : きゅうサルバドール・コロンて2001ねんにアメリカ・ドルけん編入へんにゅう(1ドル=8.75コロン)。
    • グアテマラ・ペソ : きゅうフランス・フランとの連動れんどう関係かんけい解消かいしょう下落げらくすすんだためげんケツァル改称かいしょうながらく1たい1の比率ひりつでアメリカ・ドルに連動れんどうしていたが、1979ねん変動へんどう相場そうばせい移行いこう
    • ホンジュラス・ペソ : 1931ねんげんレンピラ改称かいしょう(1たい1の等価とうか交換こうかん実施じっし)。アメリカ・ドルとの連動れんどうせいたか通貨つうか(1ドル=2レンピラで固定こてい)であったが、1980年代ねんだい後期こうき変動へんどう相場そうばせい移行いこう
    • ニカラグア・ペソ : 1912ねんに1きゅうコルドバ=12.5ペソのレートでデノミを実施じっし。1988ねんの1/1000デノミ(1しんコルドバ=1,000きゅうコルドバ)をて、1990ねんさいデノミで現在げんざいコルドバ・オロ改称かいしょう(1コルドバ・オロ=500まんしんコルドバ)。「オロ」(oro) はスペインで「かね」を意味いみするが、「コルドバ・オロ」そのものは金本位きんほんいせいとはまった無関係むかんけいである。すんでじゅつの「ボリバル・フエルテ」同様どうようはげしいインフレで紙切かみき同然どうぜんになったこれまでの単位たんいことなるつよ安定あんていした通貨つうかであること強調きょうちょうする目的もくてき付帯ふたいされたものとおもわれる。
    • 兌換だかんペソ(キューバ):直接的ちょくせつてき流通りゅうつう禁止きんしされたアメリカ・ドルにわる兌換だかん通貨つうかとして2004ねん導入どうにゅう

パタカとメキシコ・ペソ[編集へんしゅう]

パタカ各国かっこくでさまざまに使つかわれてきた通貨つうか名称めいしょうであるが、19世紀せいきポルトガル植民しょくみんではメキシコ・ペソ1993ねんのデノミまえきゅうペソ)の別名べつめいとなっていた。1894ねん当時とうじポルトガルりょうだったマカオポルトガルりょうティモールげんひがしティモール)では、事実じじつじょう流通りゅうつうしていたメキシコ・ペソの名称めいしょうとして制定せいていされた。

マカオでは、1906ねん独自どくじ通貨つうかマカオ・パタカ発行はっこうに、香港ほんこんドルペッグされた。ポルトガルりょうティモールでは、1912ねん発行はっこうされた独自どくじ通貨つうかポルトガルりょうティモール・パタカ当初とうしょはメキシコ・ペソに等価とうかだったが、1935ねんポルトガル・エスクードへのペッグにわった。そののこれらの通貨つうかは、メキシコ・ペソ(あるいはのペソ)と特別とくべつ関係かんけいにない。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Cajori, Florian (1993). A History of Mathematical Notations. 2. pp. 15–29. ISBN 9780486677668. https://books.google.com/books?id=7juWmvQSTvwC&pg=RA1-PA22 
  2. ^ Aiton, Arthur S.; Wheeler, Benjamin W. (May 1931). “The First American Mint”. The Hispanic American Historical Review 11 (2): 198. doi:10.1215/00182168-11.2.198. JSTOR 2506275. 
  3. ^ Nussbaum, Arthur (1957). A History of the Dollar. New York: Columbia University Press. p. 56. https://archive.org/details/historyofdollar0000nuss. "The foreign coins remained in circulation [in the United States], and the more important among them, especially the Spanish (including the Mexican) dollars, were declared by Congress on February 9, 1793, to be legal tender. The dollar sign, $, is connected with the peso, contrary to popular belief, which considers it to be an abbreviation of 'U.S.' The two parallel lines represented one of the many abbreviations of 'P,' and the 'S' indicated the plural. The abbreviation '$.' was also used for the peso, and is still used in Argentina." 
  4. ^ Riesco Terrero, Ángel (1983). Diccionario de abreviaturas hispanas de los siglos XIII al XVIII: Con un apendice de expresiones y formulas juridico-diplomaticas de uso corriente. Salamanca: Imprenta Varona. p. 350. ISBN 84-300-9090-8. https://archive.org/details/diccionariodeabr0000ries/page/350 
  5. ^ Bureau of Engraving and Printing. “What is the origin of the $ sign?”. Resources: FAQs. 2016ねん4がつ8にち閲覧えつらん