マウリキウス

マウリキウス Mauricius
東ひがしローマ皇帝こうてい
マウリキウスのノミスマ金貨きんか
在位ざいい	582年ねん - 602年ねん
全ぜん名な	フラウィウス・マウリキウス・ティベリウス・アウグストゥス
出生しゅっしょう	539年ねん
死去しきょ	602年ねん11月27日にち
配偶はいぐう者しゃ	コンスタンティナ（560年ねん - 605年ねん（606年ねん没ぼつまたは607年ねん没ぼつとも））
子女しじょ	マリア（マルヤム。長女ちょうじょ） テオドシウス（長男ちょうなん） ティベリウス（次男じなん） ペトルス（三男さんなん） パウルス（四男よつお） ユスティヌス（五男いつお） ユスティニアヌス（六男むつお） アナスタシア（次女じじょ） テオクティスタ（三さん女じょ） クレオパトラ（四よん女じょ）
王朝おうちょう	ユスティニアヌス王朝おうちょう
父親ちちおや	パウルス（実父じっぷ。515年ねん - 593年ねん。元老げんろう院いん議員ぎいん） （養父ようふ、舅しゅうと）ティベリウス2世せい
母親ははおや	不明ふめい

マウリキウス（Flavius Mauricius Tiberius Augustus,Mauricius, 539年ねん - 602年ねん11月27日にち）は、東ひがしロろーマ帝国まていこくユスティニアヌス王朝おうちょうの第だい5代だいにして最後さいごの皇帝こうてい（在位ざいい：582年ねん - 602年ねん）。在位ざいい20年ねんはユスティニアヌス王朝おうちょうの中なかでは、第だい2代だいユスティニアヌス1世せいの38年ねんに次つぐ2番目ばんめの長ながさである。また、ユスティニアヌス1世せいの3人にんの後継こうけい皇帝こうていの中なかでは最もっとも外交がいこう、内政ないせい両面りょうめんで実績じっせきを残のこしたが、ユスティニアヌス1世せいの時代じだいに起おこった領土りょうど拡大かくだいに端はしを発はっする財政ざいせい圧迫あっぱくの波なみには終始しゅうし苦くるしめられて忙殺ぼうさつされ対処たいしょすることができなかった。最終さいしゅう的てきにはその問題もんだいへの判断はんだんを誤あやまり、対処たいしょ方法ほうほうを間違まちがったことで軍ぐんの反乱はんらんを招まねき、自身じしんへの致命傷ちめいしょうとなって非業ひごうの最期さいごを遂とげ、ユスティニアヌス王朝おうちょうからの皇帝こうてい位いの世襲せしゅうはマウリキウス自身じしんの死しを以って断絶だんぜつした。

生涯しょうがい

誕生たんじょうと家族かぞく、即位そくい

539年ねんに後ごの元老げんろう院いん議員ぎいんパウルスの長男ちょうなんとして生うまれた。兄弟きょうだい姉妹しまいとしては、妹いもうとにテオクティスタ（542年ねん - 582年ねん以前いぜんに没ぼつ）、ゴルディア（550年ねん - 602年ねん以降いこう）がおり、弟おとうとにペトルス（545年ねん頃ごろ - 602年ねん）がいる。一説いっせつにダミアナという姉妹しまいがいたという。また、親族しんぞくにアナトリア生うまれのドミティアヌス（550年ねん頃ごろ/564年ねんとも - 602年ねん1月がつ12日にち（1月がつ10日にち頃ごろ?））という人物じんぶつ（コンスタンティノープルのシュナクサリオン（10世紀せいき（944年ねん - 959年ねん。コンスタンティノス7世せいの単独たんどく統治とうちの期間きかん中ちゅう）には存命ぞんめいしていた。彼かれが遺のこした原稿げんこうは『Menologion of Basil II』の一部いちぶを形成けいせいした）によると580年ねん頃ごろ（正確せいかくな年としは不明ふめい）に30歳さい頃ごろ?でメリテネ（現在げんざいのマラティヤ）で大司教だいしきょうになり、死去しきょするまで務つとめたという。580年ねんの周まわりでであれば、生年せいねんは550年ねんの周まわりと推定すいていできるが不明ふめい。大司教だいしきょうに任命にんめいされた時点じてんで若わかかったことは事実じじつで確たしかなようである）がいるが、甥おい（弟おとうとペトルスの息子むすこ）という説せつと父方ちちかたの叔父おじの息子むすこ（つまり従弟じゅうてい。叔父おじテオドルスとその妻つまエクディキアの子こ）という説せつがあるが、甥おい説せつが有力ゆうりょく視しされている。

先帝せんていティベリウス2世せいに男児だんじがいなかったため、娘むすめコンスタンティナの夫おっとであったマウリキウスが582年ねん、義父ぎふの死しにより即位そくいすることとなった。その為ため、ユスティニアヌス王朝おうちょうと直接ちょくせつの血縁けつえんは無ない。

即位そくい後ご

対外たいがい政策せいさく

即位そくい後ごは西にしのランゴバルド族ぞくの侵攻しんこうに対応たいおうするため、ラヴェンナとアフリカのカルタゴに総督そうとく府ふを設置せっちした。また、サーサーン朝あさペルシア帝国ていこくから亡命ぼうめいしてきたホスロー2世せいに娘むすめマルヤムを嫁とつがせて復位ふくいを助たすけ、ホスロー2世せいが復位ふくいを果はたすとサーサーン朝あさと和睦わぼくを結むすぶなど、対外たいがい政策せいさくに尽力じんりょくした。他たの対外たいがい政策せいさくとしては、579年ねんに発生はっせいした西にしゴート王国おうこくの内乱ないらん（カトリックに改宗かいしゅうしたヘルメネギルド王子おうじとその父ちちで西にしゴート王おうレオヴィギルドの戦たたかい）に介入かいにゅう、ヘルメネギルドと同盟どうめいを結むすび、その妻子さいし（イングンド・アタナギルド母子ぼし）の身柄みがらを預あずかっていた（事実じじつ上じょうの人質ひとじち）が、レオヴィギルドから3万まんソリドゥスで買収ばいしゅうされてヘルメネギルドを見捨みすてて、イングンドとアタナギルドをコンスタンティノープルへと移送いそうした（イングンドは途中とちゅうの北きたアフリカもしくはシチリア島とうで18歳さいで死去しきょし、アタナギルドのみがコンスタンティノープルへと到着とうちゃく）。アタナギルドは東ひがしローマ宮廷きゅうていで養育よういくされ、暫しばらくは西にしゴート王国おうこくやフランク王国おうこくの分ぶん王国おうこくアウストラシア（イングンドがアウストラシア王おうシギベルト1世せいとその王妃おうひブルンヒルドの長女ちょうじょ。ブルンヒルド自身じしんも西にしゴート王おうアタナギルドの次女じじょ）との外交がいこう交渉こうしょう・駆かけ引ひきで記録きろくに登場とうじょうする。後のちにマウリキウスの姪めい（弟おとうとペトルスの一人娘ひとりむすめ）フラウィア・ユリアナと結婚けっこんし、後のちに西にしゴート王おうに即位そくいするエルウィグの父ちちとなったアルデバルトという男子だんしを儲もうけている（アルデバルトは姪めいの息子むすこ（大だい甥おい）、エルウィグは大だい甥おいの息子むすこ（曽そ姪めい孫まご）となる）。

最期さいご

しかし、この頃ころになるとユスティニアヌス1世せいの時代じだいより相次あいついで続つづく戦争せんそうによる戦費せんぴのため、帝国ていこく財政ざいせいが悪化あっかの一途いっとをたどっていた。このため、マウリキウスは国費こくひ削減さくげんのため、軍隊ぐんたいに必要ひつような物資ぶっしを現地げんちで調達ちょうたつするよう命めいじ、これが軍隊ぐんたいの反発はんぱつを招まねいた。さらに帝国ていこくに侵入しんにゅうするスラヴ人じんやアヴァール人じんを討伐とうばつするためにドナウ川がわ北岸ほくがんでの越冬えっとう作戦さくせんを命めいじたが、この命令めいれいが致命ちめい的てきかつ命取いのちとりとなり、かねてから不満ふまんがたまっていた軍隊ぐんたいが下士官かしかん（百ひゃく人にん隊長たいちょう）フォカスを担かつぎ出だして反乱はんらんを起おこした。この反乱はんらんによってマウリキウスは廃位はいいされた上うえ殺害さつがいされ、彼かれの一族いちぞくも皆殺みなごろしにされた。

死後しご

フォカスが皇帝こうていに即位そくいしたが、娘むすめ婿むこホスロー2世せいは舅しゅうとであるマウリキウスの敵討かたきうちを大義名分たいぎめいぶんにして出兵しゅっぺい、ビザンティン・サーサーン戦争せんそうが開始かいしされた。フォカスは8年間ねんかん皇帝こうていの座ざにあったが、この間あいだに反乱はんらんを計画けいかくされたことなどから、次第しだいに猜疑心さいぎしんの虜とりことなり、次々つぎつぎと貴族きぞくの粛清しゅくせいを行おこなった（反乱はんらんを計画けいかくして処刑しょけいされた者ものの中なかには、修道院しゅうどういんに幽閉ゆうへいされていたマウリキウスの妃ひコンスタンティナとその3人にんの娘むすめ（次女じじょアナスタシア、三さん女じょテオクティスタ、四よん女じょクレオパトラ）、娘むすめをマウリキウスの長男ちょうなんテオドシオスに嫁とつがせる程ほどの権力けんりょくを持もっていた元老げんろう院いんの有力ゆうりょくな指導しどう者しゃかつパトリキウスの称号しょうごうを持もっていたゲルマヌスがいる）。やがて、フォカスの娘むすめ婿むこプリスクスをはじめとする多おおくの有力ゆうりょく者しゃがカルタゴ総督そうとくヘラクレイオスに内通ないつう、総督そうとくヘラクレイオスと同名どうめいの息子むすこヘラクレイオスが海路かいろから、総督そうとくヘラクレイオスの甥おいで息子むすこヘラクレイオスの従弟じゅうていニケタスがアエギュプトゥスなどを陸路りくろとする反乱はんらんがコンスタンティノープルに迫せまった。息子むすこヘラクレイオスと従弟じゅうていニケタスは互たがいにコンスタンティノープルに入場にゅうじょうをどちらかが果はたせばその者ものが皇帝こうていに即位そくいするという約束やくそくを交かわしており、610年ねん、息子むすこヘラクレイオスが先さきにコンスタンティノープルに入場にゅうじょう、フォカスを処刑しょけいして約束やくそく通どおり皇帝こうていへと即位そくいした（ヘラクレイオス1世せい。ヘラクレイオス王朝おうちょうの成立せいりつ）。