マンセル表ひょう色しょく系けい

マンセル表ひょう色しょく系けい (まんせるひょうしょくけい、英えい: Munsell color system) とは、色いろを正確せいかくに表示ひょうじすることを目的もくてきとした表ひょう色しょく系けい（顕あらわ色しょく系けい）。

概要がいよう

アメリカの画家がか・美術びじゅつ教育きょういく者しゃであるアルバート・マンセル（1858-1918）によって作つくり出だされた表ひょう色しょく系けいで、1898年ねんに研究けんきゅうを始はじめ、1905年ねんにその成果せいかとして『A Color Notation』（色彩しきさいの表記ひょうき）という本ほんを著あらわして発表はっぴょうした。ただしこれは個人こじんが作成さくせいした色いろ体系たいけいであったため使つかう上うえでは整理せいりが必要ひつようとなり、1943年ねんにアメリカ光こう学会がっかいが視み感かん評価ひょうか実験じっけんによって修正しゅうせいを加くわえた。修正しゅうせいしたものは「修正しゅうせいマンセル表ひょう色しょく系けい」とも呼よばれるが、現在げんざい一般いっぱん的てきに「マンセル表ひょう色しょく系けい」と言いった場合ばあいは修正しゅうせいしたものを意味いみする。なお、マンセルの後のちに著あらわした新あたらしい書籍しょせき『Munsell Book of Colors』は現在げんざいでも使用しようされている。

色いろを色いろの三さん属性ぞくせい（色相しきそう、明度めいど、彩いろどり度ど）という理解りかいしやすい属性ぞくせいで表現ひょうげんしている点てんが特徴とくちょう。色いろを系統的けいとうてきに整理せいりし、三さん属性ぞくせいを尺度しゃくど化かして、数値すうちや記号きごうを用もちいることで正確せいかくに表示ひょうじすることを目的もくてきとしている。国際こくさい的てきに通用つうようする表ひょう色しょく系けいの1つであり、日本にっぽんではJIS Z 8721（三さん属性ぞくせいによる色いろの表示ひょうじ方法ほうほう）の規格きかくとして採用さいようされている。カタログなどの参考さんこう色しょくの表記ひょうきとしても用もちいられるなど最もっとも一般いっぱん性せいの高たかい表ひょう色しょく系けいであるといえるが、反面はんめん色いろ見本みほんを前提ぜんていとしたシステムであり、色いろ表記ひょうきから実際じっさいの色いろをイメージする際さいの正確せいかくさに欠かけるという意見いけんもある。同おなじ表記ひょうきであっても再現さいげんされる色いろには幅はばがあるため参考さんこう値ちと考かんがえるのが現実げんじつ的てきであり、日本にっぽんにおける工業こうぎょう分野ぶんやの色いろ指定していにはDICや日本にっぽん塗料とりょう工業こうぎょう会かいが作成さくせいした色いろ見本みほんが用もちいられることも多おおい。

色相しきそう (Hue)

マンセル表ひょう色しょく系けいの色相しきそう環たまき

マンセルは色いろを基本きほんとなる5つの色相しきそう (R・Y・G・B・P) に分わけ、それぞれの中なか間あいだを5つの色相しきそう (YR・GY・BG・PB・RP) を加くわえて補完ほかんすることで、大おおまかな10色相しきそうを設定せっていした。

色いろ
略号りゃくごう	R	YR	Y	GY	G	BG	B	PB	P	RP
名称めいしょう	赤あか	黄き赤あか	黄き	黄き緑みどり	緑みどり	青あお緑みどり	青あお	紫むらさき青あお	紫むらさき	赤あか紫むらさき

各かく色相しきそうをさらに10分割ぶんかつし、計けい100色相しきそうの細こまかな色相しきそうを設定せっていした。分割ぶんかつされた色相しきそうは左ひだりから順じゅんに数字すうじが割わり振ふられ、色相しきそう「R」の2番目ばんめであれば『2R』のよう表記ひょうきされる。以下いかは5RPから5YRまでの範囲はんいの奇数きすう番号ばんごうのみを抽出ちゅうしゅつしたもの。

色いろ
略号りゃくごう	5RP	7RP	9RP	1R	3R	5R	7R	9R	1YR	3YR	5YR

付ふされた数字すうじは数字すうじが小ちいさいほど左ひだり隣となりの色相しきそうに、大おおきいほど右みぎ隣となりの色相しきそうに近ちかい色いろであることを意味いみし、中心ちゅうしんの5番目ばんめ（黄色きいろであれば5Y）にはその色相しきそうの典型てんけい的てきな色いろが置おかれている。

明度めいどと彩いろどり度ど

明度めいど (Value)

マンセル表ひょう色しょく系けいの色いろ立体りったい

5PBと5Yの等とう色相しきそう面めん

無む彩色さいしきを基準きじゅんに尺度しゃくどが設定せっていされ、有ゆう彩色さいしきはそれに応おうじた値ねをとる。理想りそう的てきな黒くろを0、理想りそう的てきな白しろを10とする11段階だんかいで設定せっていしているが、理想りそう的てきな白しろや黒くろは物理ぶつり的てきに表現ひょうげんできないため、現実げんじつ的てきな数字すうじとして黒くろは1程度ていど、白しろは9.5程度ていどが用もちいられる。各かく色相しきそうにおける代表だいひょう色しょくの最高さいこう明度めいどは色相しきそうごとに異ことなり、最さい高値たかねは黄き（■ 5Y）の「8」、最低さいてい値ちは赤あか（■ 5R）や紫むらさき青あお（■ 5PB）の「4」である。

なお、アメリカ光こう学会がっかいが1943年ねんに発表はっぴょうしたレポートでは、マンセル表ひょう色しょく系けいの明度めいど（Value、V）とxyY表ひょう色しょく系けいの「Y」との間あいだには、反射はんしゃ率りつの観点かんてんから以下いかの関係かんけい性せいがあることを示唆しさしている。

$Y=1.2219V-0.23111V^{2}+0.23951V^{3}-0.021009V^{4}+0.0008404V^{5}.$

彩いろどり度ど (Chroma)

無む彩色さいしきを0とする。有ゆう彩色さいしきは鮮あざやかになるほど数値すうちは高たかくなるが、色相しきそうや明度めいどによって最大さいだい値ちは異ことなる。最大さいだい値ちはおおよそ8～14の範囲はんいで、最さい高値たかねの「14」は黄き（■ 5Y）、最低さいてい値ちの「8」は青あお緑みどり（■ 5BG）である。

以下いかは黄き緑みどり（■ 5YG）と青あお（■ 5B）を例れいにした場合ばあいの等とう色相しきそう面めんのイメージ。

明度めいど
9
7
5
3
1
	2	4	6	8	10	12	14	彩いろどり度ど

明度めいど
9
7
5
3
1
	2	4	6	8	10	12	14	彩いろどり度ど

色相しきそうごとに最高さいこう彩いろどり度どやその明度めいどが異ことなるため、マンセル表ひょう色しょく系けいの色いろ立体りったいはでこぼことした歪いびつな形状けいじょうとなっている。その形状けいじょうは自然しぜん界かいに自生じせいする樹木じゅもくのように見みえ、また技術ぎじゅつの進歩しんぽによって成長せいちょう（変化へんか）する可能かのう性せいを秘ひめたことから「カラー・ツリー」とも呼よばれる。

色いろの表記ひょうき方法ほうほう

基本きほん的てきな表記ひょうき方法ほうほうは「色相しきそう 明度めいど/彩いろどり度ど」であるが、無む彩色さいしきは色相しきそう・彩いろどり度どの表記ひょうきが不要ふようなためNeutralの頭文字かしらもじをとって「N 明度めいど」と記しるす。具体ぐたい的てきな表記ひょうき例れいは以下いかのとおり。

色いろ	表記ひょうき
	5R 4/14
	3GY 8.5/11
	N 5.5
	N 9.5
	N 1.5

日本語にほんごでは『5R 4/14』は「ごアール よんのじゅうよん」、『N 5.5』は「えぬごてんご」と読よむ。

この表示ひょうじは「マンセル値ち」「マンセル記号きごう」などとも呼よばれ、また有ゆう彩色さいしきの表記ひょうきは頭文字かしらもじをとって「HV/C」とも呼よばれる。アクリルガッシュなど一部いちぶの絵具えのぐなどに色いろはマンセル近似きんじとしてこれが表記ひょうきされている。

外部がいぶリンク

• Munsell Color（英語えいご）
• マンセル表ひょう色しょく系けいとは - DICカラーデザイン