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行政ぎょうせい機関きかん

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中央ちゅうおう省庁しょうちょうから転送てんそう

行政ぎょうせい機関きかん(ぎょうせいきかん)とは、行政ぎょうせいけん行使こうしにたずさわるくに地方ちほう機関きかんをいう。立法りっぽう機関きかん立法府りっぽうふ)、司法しほう機関きかん裁判所さいばんしょ)と対比たいひされる。

欧米おうべい行政ぎょうせい法学ほうがくじょう概念がいねん

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行政ぎょうせい法学ほうがくにおいて行政ぎょうせい活動かつどうおこな行政ぎょうせい主体しゅたい行政ぎょうせい組織そしき認識にんしきするための手段しゅだんとして、アメリカの行政ぎょうせい法学ほうがくでは「行政ぎょうせい機関きかん」(英語えいご: agency概念がいねんもちいてきたのにたいし、ドイツでは「行政ぎょうせいちょう」(ドイツ: Behörde概念がいねん中心ちゅうしんとする行政ぎょうせい官庁かんちょうろんもちいられてきた[1][2]

アメリカ行政ぎょうせいほうにおける行政ぎょうせい機関きかん概念がいねん

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アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽうのもとでの行政ぎょうせい機関きかん位置いちづけは複数ふくすうのアプローチで理解りかいされることが通例つうれいである[3]。ピーター・ストラウス教授きょうじゅ行政ぎょうせい機関きかん位置いちづけを3つに区分くぶんし、だいいち専制せんせい政府せいふふせぐために三権さんけん別々べつべつ場所ばしょ権力けんりょく分立ぶんりつだい手続てつづきてきデュープロセスにもとづく機能きのう分離ぶんりだいさん政府せいふない複数ふくすうちょういて専制せんせいふせ抑制よくせい均衡きんこうのアプローチがあるという[3]

ドイツ行政ぎょうせい法学ほうがくじょう行政ぎょうせいちょう概念がいねん

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ドイツ行政ぎょうせい法学ほうがくでは「機関きかん」とは区別くべつして、または「機関きかん」とはべつのメルクマールで定義ていぎされる「行政ぎょうせいちょう」という概念がいねんもちいられてきた[2]。「機関きかん」と「行政ぎょうせいちょう」の関係かんけい学者がくしゃによりことなり、O.マイヤーやW.イェリネックは「行政ぎょうせいちょう」とはべつの「機関きかん」の概念がいねんはいしていたが、F.フライナーは「行政ぎょうせいちょう」と「機関きかん」を別々べつべつろんじたほか、E.Rフーバーは「機関きかん」を前提ぜんていに「行政ぎょうせいちょう」をろんじた[2]

日本にっぽんほうじょう行政ぎょうせい機関きかん概念がいねん

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日本にっぽんほうの「行政ぎょうせい機関きかん概念がいねんには、権限けんげん分配ぶんぱい単位たんいとしてもちいられるこうがくじょう行政ぎょうせい機関きかん行政ぎょうせい官庁かんちょう法理ほうりろんじょう行政ぎょうせい機関きかん)と、行政ぎょうせい事務じむ分配ぶんぱい単位たんいとしてもちいられる国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほううえ行政ぎょうせい機関きかんがある[4]

だい世界せかい大戦たいせんまえ日本にっぽん行政ぎょうせいほう法理ほうりろんはドイツから移入いにゅうされた行政ぎょうせい法学ほうがくとりわけ美濃部みのべ達吉たつきち行政ぎょうせいほう体系たいけいっていたものがおおきい[1]。ただし、ドイツから移入いにゅうされた「行政ぎょうせいちょう」の概念がいねん行政ぎょうせい官庁かんちょうろんは、日本にっぽん行政ぎょうせい法学ほうがくではドイツの行政ぎょうせい法学ほうがくとは相当そうとうことなる変容へんようもみられると指摘してきされている[1]だい世界せかい大戦たいせん日本にっぽん国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほうはアメリカがたの「行政ぎょうせい機関きかん概念がいねん採用さいようしたため、それまでの「行政ぎょうせいちょう概念がいねん行政ぎょうせい官庁かんちょうろん有用ゆうようせいについては議論ぎろんがある[1]

こうがくじょう行政ぎょうせい機関きかん概念がいねん

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行政ぎょうせいは、くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたいなどの公法人こうほうじんが「行政ぎょうせい主体しゅたい」となり、その名義めいぎ)と責任せきにんにおいて実施じっしする。この行政ぎょうせい主体しゅたい法人ほうじんであるため、実際じっさいにその手足てあしとなって行為こういするのは、自然人しぜんじんによって構成こうせいされるその機関きかんである。これをこうがくじょう行政ぎょうせい官庁かんちょう法理ほうりろんじょう)、「行政ぎょうせい機関きかん」という[4]行政ぎょうせい機関きかん後述こうじゅつ行政ぎょうせいちょう行政ぎょうせい官庁かんちょうといったかたりは、一般いっぱんてき用法ようほうでは組織そしき建物たてものすが、ここでは法律ほうりつにより一定いってい行政ぎょうせいじょう権限けんげんおよび責務せきむあたえられた自然人しぜんじんまたはその合議ごうぎたいす。たとえば「財務省ざいむしょう」といえば行政ぎょうせい機関きかんとしては「財務ざいむ大臣だいじん」のしょくにある自然人しぜんじんであり、都道府県とどうふけんであれば知事ちじしょくにある自然人しぜんじんが「行政ぎょうせい機関きかん」である[4]

行政ぎょうせい機関きかんは、その機能きのうからつぎの6しゅ分類ぶんるいされる[よう出典しゅってん]

  1. 行政ぎょうせいちょう - 伝統でんとうてき理解りかいによれば、行政ぎょうせい主体しゅたい法律ほうりつじょう意思いし決定けっていし、外部がいぶ表示ひょうじする権限けんげん機関きかんとされる[4][5]公権力こうけんりょく行使こうし場面ばめんもちいられる。とくくに行政ぎょうせいちょう(すなわち官庁かんちょうである行政ぎょうせいちょう)を行政ぎょうせい官庁かんちょうという。
    どくにんせいくににおける内閣ないかく総理そうり大臣だいじん各省かくしょう大臣だいじんかくちょう長官ちょうかん検察官けんさつかん[よう出典しゅってん]など、地方ちほう公共こうきょう団体だんたいにおける都道府県とどうふけん知事ちじ市町村しちょうそんちょうなど、ほとんどの行政ぎょうせいちょう
    合議ごうぎせいくににおける内閣ないかく国家こっか公安こうあん委員いいんかい公正こうせい取引とりひき委員いいんかい人事院じんじいんなど、地方ちほう公共こうきょう団体だんたいにおける教育きょういく委員いいんかい選挙せんきょ管理かんり委員いいんかい公安こうあん委員いいんかい など。
  2. 諮問しもん機関きかん - 行政ぎょうせいちょうから諮問しもんけて、審議しんぎ調査ちょうさし、意見いけん答申とうしんする機関きかん[4][6]
    各種かくしゅ審議しんぎかい調査ちょうさかい公務員こうむいん制度せいど調査ちょうさかい)など。
    諮問しもん機関きかん意見いけん法的ほうてき拘束こうそくりょくいが、できるだけ尊重そんちょうされるべきとされている。
  3. 参与さんよ機関きかん- 行政ぎょうせいちょう意思いし決定けってい参与さんよし、法的ほうてき拘束こうそくする議決ぎけつおこな行政ぎょうせい機関きかん[4][7]
    電波でんぱ監理かんり審議しんぎかい電波でんぱほう94じょうもとづく総務そうむ大臣だいじん決定けってい拘束こうそくする)
    検察官けんさつかん適格てきかく審査しんさかい検察庁けんさつちょうほう23じょうもとづく法務大臣ほうむだいじん決定けってい拘束こうそくする)
    労働ろうどう保険ほけん審査しんさかいなど。
  4. 監査かんさ機関きかん - 行政ぎょうせい機関きかん事務じむ会計かいけい処理しょり検査けんさし、その適否てきひ監査かんさする機関きかん
    会計検査院かいけいけんさいん監査かんさ委員いいんなど。
  5. 執行しっこう機関きかん - 行政ぎょうせい目的もくてき実現じつげんするために必要ひつようとされる実力じつりょく行使こうしおこな機関きかん[注釈ちゅうしゃく 1][4]
    自衛じえいかん警察官けいさつかん海上かいじょう保安ほあんかん徴税ちょうぜい職員しょくいん消防しょうぼう職員しょくいんなど。
  6. 補助ほじょ機関きかん - 行政ぎょうせいちょうその行政ぎょうせい機関きかん職務しょくむ補助ほじょする機関きかん[4]日常にちじょうてき事務じむ遂行すいこうする。
    ふく大臣だいじん事務次官じむじかん局長きょくちょう課長かちょうから一般いっぱん職員しょくいんおおく。

国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほうじょう行政ぎょうせい機関きかん概念がいねん

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国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほうじょうの「行政ぎょうせい機関きかん」は、しょうちょう委員いいんかいなど、事務じむ配分はいぶん単位たんいとしての官署かんしょそのものを[8]たとえば、総務そうむしょうであれば総務そうむしょうひとつの行政ぎょうせい機関きかんであり、法務省ほうむしょうなら法務省ほうむしょうひとつの行政ぎょうせい機関きかんである。国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほうじょう、「内閣ないかく統轄とうかつしたにおける行政ぎょうせい機関きかん内閣ないかくおよびデジタルちょう以外いがいのもの」を「くに行政ぎょうせい機関きかん」とし(どうほう1じょう)、どうほうにより組織そしき基準きじゅんさだめられる。内閣ないかく統轄とうかつにありながらどうほう適用てきようけない内閣ないかく・デジタルちょうなどは、どうほうにいう「くに行政ぎょうせい機関きかん」ではないものの、おおやけの「行政ぎょうせい機関きかん」と位置付いちづけられるものである[9]

また、会計検査院かいけいけんさいん行政ぎょうせい機関きかんであるが、これは内閣ないかくから独立どくりつした地位ちい保障ほしょうされた憲法けんぽう機関きかんであり、行政府ぎょうせいふたる内閣ないかくおよび内閣ないかく官房かんぼう内閣ないかく人事院じんじいんかく省庁しょうちょう委員いいんかいなどの内閣ないかくのすべての下部かぶ組織そしきのみだけでなく、司法しほう最高裁判所さいこうさいばんしょふくむすべての裁判所さいばんしょおよびその機関きかん)・立法府りっぽうふ衆議院しゅうぎいん参議院さんぎいんおよびその機関きかんのみならず、両院りょういんをもって組織そしきされる弾劾だんがい裁判所さいばんしょ裁判官さいばんかん訴追そつい委員いいんかいひとし機関きかんふくまれる)などをも会計かいけい検査けんさ権限けんげん行使こうし対象たいしょうとするてんで、行政ぎょうせい機関きかんことなる特質とくしつがある。

こうがくじょうどくにんせい行政ぎょうせい官庁かんちょうは、「行政ぎょうせい機関きかんちょう」とする[8]しょうちょう大臣だいじんであり、ちょうちょう長官ちょうかんである。合議ごうぎせい行政ぎょうせい官庁かんちょうである委員いいんかいについては、委員いいんちょうが「行政ぎょうせい機関きかんちょう」となる。しょうは「内閣ないかく統轄とうかつした行政ぎょうせい事務じむをつかさどる機関きかん」としてかれる行政ぎょうせい機関きかんであり、委員いいんかいちょうは、しょうにその外局がいきょくとしてかれる行政ぎょうせい機関きかんである。なお、会計検査院かいけいけんさいんちょうは「会計検査院かいけいけんさいんちょう」であり、人事院じんじいんちょうは「人事院じんじいん総裁そうさい」である。

行政ぎょうせい手続てつづきほうだい2じょうだい5こう定義ていぎされる行政ぎょうせい機関きかん行政ぎょうせい機関きかん保有ほゆうする情報じょうほう公開こうかいかんする法律ほうりつだい2じょうだい1こう定義ていぎされる行政ぎょうせい機関きかんもまた、国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほうじょう行政ぎょうせい機関きかん概念がいねんまえたものである。

各国かっこく行政ぎょうせい機関きかん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 地方ちほう自治じちほうでは、議会ぎかいを「議決ぎけつ機関きかん」とし、その対比たいひとして知事ちじ部局ぶきょくを「執行しっこう機関きかん」とさだめる。こうがくじょう言葉ことばづかいとはことなるので注意ちゅういようする。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d 小林こばやし博志ひろし行政ぎょうせい組織そしきほう行政ぎょうせい作用さようほうじょう基礎きそカテゴリーと「行政ぎょうせいちょう概念がいねん」『早稲田わせだほう学会がっかいだい35ごう早稲田大学わせだだいがくほう学会がっかい、1985ねん、57-86ぺーじISSN 05111951NAID 120000792262 
  2. ^ a b c 小林こばやし博志ひろし行政ぎょうせいちょう概念がいねん位相いそう」『早稲田わせだほう学会がっかいだい31ごう早稲田大学わせだだいがくほう学会がっかい、1980ねん3がつ、129-159ぺーじISSN 05111951NAID 120000792220 
  3. ^ a b 中川なかがわたけひさ行政ぎょうせい活動かつどう憲法けんぽうじょう位置いちづけ : 法律ほうりつ留保りゅうほろん多義たぎせい、およびアメリカ行政ぎょうせいほうにおける法律ほうりつ留保りゅうほについて」『神戸こうべ法学ほうがく年報ねんぽうだい14ごう神戸大学こうべだいがく法学部ほうがくぶ、1998ねん、125-225ぺーじdoi:10.24546/81000039ISSN 09123709NAID 110000491973 
  4. ^ a b c d e f g h 櫻井さくらい橋本はしもと(2011)42ぺーじ
  5. ^ "行政ぎょうせいちょう". 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん だいはん. コトバンクより2022ねん5がつ31にち閲覧えつらん
  6. ^ "諮問しもん機関きかん". ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん. コトバンクより2022ねん5がつ31にち閲覧えつらん
  7. ^ "参与さんよ機関きかん". ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん. コトバンクより2022ねん5がつ31にち閲覧えつらん
  8. ^ a b 櫻井さくらい橋本はしもと(2011)43ぺーじ
  9. ^ 国家こっか行政ぎょうせい組織そしきほう1じょう参照さんしょう。また、国家こっか公務員こうむいんほう4じょう4ごう

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん文献ぶんけん読書どくしょ案内あんない

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  • Barber, J. D. 1977. Presidental character. Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall.
  • Bass, B. M. 1981. Stogdill's handbook on leadership. New York: Free Press.
  • Blondel, J. 1980. World leaders. London and Los Angeles: Sage Publications.
  • Blondel, J. 1982. The organization of governments. London: and Los Angeles: Sage Publications.
  • Blondal, J. 1985. Government ministers in the contemporary world. London and Los Angeles: Sage Publications.
  • Blondal, J. 1987. Political leadership. London and Los Angeles: Sage Publications.
  • Burns, J. McG. 1978. Leadership. New York: Harper & Row.
  • Castles, F. C. ed. 1982. The impact of parties. London and Los Angeles: Sage Publications.
  • Cronin, T. E. 1975. The state of the presidency. Boston: Little, Brown & Co.
  • Finer, S. E. 1962. The man on horseback. London: Pall Mall Press.
  • Headey, B. 1974. British cabinet ministers, London: Allen & Unwin.
  • Heclo, H. 1977. A government of strangers. Washington, D.C.: Brookings Institution.
  • Hook, S. 1955. The hero in history. Boston: Beacon Press.
  • Kellerman, B. ed. 1984. Leadership. Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall.
  • Neustadt, R. 1960. Presidental power. New York: John Wiley.
  • Rose, R. 1984. Do parties make a defference? London: Macmillan.
  • Verney, D. V. 1959. the analysis of political systems. London: Routledge & Kegan Paul.

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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