人造じんぞう皮革ひかく

人造じんぞう皮革ひかくの靴くつ

人造じんぞう皮革ひかく（じんぞうひかく）は、皮革ひかく（レザー）に似にせて、石油せきゆなどを原料げんりょうに作つくられた人工じんこう素材そざい。模造もぞう品ひんの皮革ひかくという意味合いみあいを込こめて、別名べつめいでフェイクレザーとも呼よばれる。人造じんぞう皮革ひかくに対たいし、本来ほんらいの皮革ひかくを天然てんねん皮革ひかく、本ほん皮かわという。合成ごうせい皮革ひかく、人工じんこう皮革ひかくは別物べつものであるが一般いっぱん的てきに混同こんどうされており、ともに俗称ぞくしょうとして合ごう皮がわ（ごうひ）と呼よばれる。

安価あんかな素材そざいとして利用りようされるほか、動物どうぶつを犠牲ぎせいを避さけたいと望のぞむ菜食さいしょく主義しゅぎ者しゃなど向むけのヴィーガンレザーとして、植物しょくぶつ由来ゆらいや化学かがく合成ごうせいによる原料げんりょうを使つかう製品せいひんも増ふえているが、近年きんねんでは余剰よじょうとなった動物どうぶつの本ほん革かわが廃棄はいきされる問題もんだいも生しょうじている。

種類しゅるいと製法せいほう

合成ごうせい皮革ひかく（ごうせいひかく）と人工じんこう皮革ひかく（じんこうひかく）に分わけられる。

• 合成ごうせい皮革ひかくは、天然てんねんの布地ぬのじを基もと材ざいとし、合成ごうせい樹脂じゅしを塗布とふしたものである。
• 人工じんこう皮革ひかくは、マイクロファイバーの布地ぬのじ（通常つうじょう不織布ふしょくふ）に合成ごうせい樹脂じゅしを含浸がんしんさせたもの、またはそれを基もと材ざいとし合成ごうせい樹脂じゅしを塗布とふしたものである。衣類いるいや靴くつに使つかわれるのは主おもに人工じんこう皮革ひかくである（クラレ社しゃのクラリーノなど）。

塗布とふ剤ざいにはポリ塩化えんかビニル（ビニール、PVC、Polyvinyl chloride、ポリビニールクロライドと表記ひょうき）やポリウレタン（PUやPolyurethane、ウレタン樹脂じゅし、ウレタンゴムと表記ひょうき）が、含浸がんしん剤ざいにはポリウレタンがよく使つかわれる。

また、表面ひょうめん加工かこうにより、スエード（起毛きもう）と銀ぎん面めんに分わけられる。

特徴とくちょう

人造じんぞう皮革ひかくに対たいする特徴とくちょうは次つぎのとおり。

長所ちょうしょ

• 安価あんかである。
• 大おおきさや形かたちの制約せいやくがなく、品質ひんしつが均一きんいつである。
• 水みずをはじくため、汚よごれにくい。
• 洗濯せんたくが容易ようい。例外れいがいはあるが、通常つうじょうのドライクリーニングで洗濯せんたくできる。
• 動物どうぶつを殺ころさないため、動物どうぶつの権利けんりなどの倫理りんり上うえの問題もんだいがない。

短所たんしょ

• 寿命じゅみょうが短みじかい。素材そざいのポリウレタンやPVCが数すう年ねんで劣化れっかし、ひび割われたり割われたり、素材そざいどうしがくっついたりする。
• 風合ふうあいや感触かんしょく、使用しよう感かん（通気つうき性せいなど）が本ほん革かわと比くらべ劣おとる
• 製品せいひんの多おおくが石油せきゆ由来ゆらいであるため、火ひに弱よわい。ただし自動車じどうしゃや旅客機りょかくきの座席ざせきや内装ないそうに使つかわれる製品せいひんは難なん燃もえ性せいである。
• ポリエステルやポリウレタンに含ふくまれるマイクロプラスチックが、河川かせんや海うみを汚染おせんする可能かのう性せいがある。
• 自然しぜん分解ぶんかいしないため、焼却しょうきゃく処分しょぶんが必要ひつようとなる。

歴史れきし

人造じんぞう皮革ひかく

人造じんぞう皮革ひかくは、1850年代ねんだい頃ころから登場とうじょうした。初期しょきの人造じんぞう皮革ひかくでよく知しられたものはファブリコイド（Fabrikoid）で、当初とうしょはファブリコイド社しゃが、1910年ねんからはファブリコイド社しゃを買収ばいしゅうしたデュポンが製造せいぞうした。天然てんねんの布地ぬのじに多層たそうのニトロセルロースを塗布とふしたもので、自動車じどうしゃのシートや屋根やねなどに使つかわれた。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後こうは、ノーガハイド（Naugahyde）などの、PVCを塗布とふする合成ごうせい皮革ひかくが主流しゅりゅうになった。しかしまだ通気つうき性せいがなく、衣類いるいや靴くつには使つかえなかった。

1963年ねん、デュポンは通気つうき性せいの高たかいコルファム（Corfam）の靴くつを発売はつばいした。翌年よくねんのニューヨーク万博ばんぱくなどで大掛おおがかりな広告こうこくキャンペーンを展開てんかいしたが、大おおきく普及ふきゅうはしなかった。

人工じんこう皮革ひかくが登場とうじょうしたのはその後ごのことである。

人工じんこう皮革ひかく

日本にっぽんの人工じんこう皮革ひかくは1964年ねんにクラレがクラリーノとして販売はんばいを開始かいしし、1970年ねんに東とうレがエクセーヌを販売はんばい開始かいしした。

日本にっぽんでは旭化成あさひかせいせんい、クラレ、帝人ていじんコードレ、東とうレの4社しゃが人工じんこう皮革ひかくを製造せいぞう・販売はんばいしている。

人工じんこう皮革ひかくには本ほん革かわのように艶つやのある銀ぎん面めんタイプと起毛きもうしたスエードタイプがあり、代表だいひょう的てきな商品しょうひんではクラレの「クラリーノ®」と帝人ていじんコードレの「コードレ®」は銀ぎん面めんタイプ、旭化成あさひかせいせんいの「ラムース®」、クラレの「アマレッタ®」と東とうレの「エクセーヌ®」はスエードタイプを主力しゅりょくにしている。

スエードタイプは自動車じどうしゃ用よう内装ないそう材ざいとして多おおく用もちいられ、東とうレのエクセーヌ（イタリア製せいがアルカンターラ®、日本にっぽん製せいがウルトラスエード®のブランド名めいを使用しよう）、旭化成あさひかせいせんいのラムース®等ひとしがある。

植物しょくぶつ性せいの代替だいたいレザー

下記かきを含ふくめ、リンゴの搾しぼりかすやサボテンの粉末ふんまつなどが利用りようされている。

• コルク・レザー：コルクの樹皮じゅひから作つくられたコルクを布ぬのなどに張はり合あわせシート状じょうに加工かこうした革かわの代だい用品ようひん
• Ocean leather：Nanonix社しゃのSeaCellなど。ケルプ（昆布こぶ）のセルロースを添加てんかして作つくられた繊維素せんいそ材ざい。ケルプは主しゅ原料げんりょうではなく添加てんか剤ざいであり、Nanonic社しゃのSerCellの場合ばあいケルプセルロースの含有がんゆう量りょうは5％である
• Pinatex（en）：パイナップルの葉はの繊維せんいから作つくられた不織布ふしょくふ
• MuSkin：イタリアの研究けんきゅう組織そしき Grado Zero Espaceによる、キノコから作つくられたスウェード調ちょうの革かわの代だい用品ようひん
• Desserto（サボテンレザー）：ポリウレタン原料げんりょうにサボテン粉末ふんまつを混まぜた（含有がんゆう量りょうはサボテンが約やく35%、その他た天然てんねん成分せいぶんが約やく5%）、メキシコのAdrian and Marte社しゃによる革かわの代だい用品ようひん

関連かんれん項目こうもく

• アニマル柄がら
• 再生さいせい革かわ - 皮かわの切きれ端はしなどを細こまかく裁断さいだんし、ゴムなどで繋つなぎ合あわせた製品せいひん

擬革ぎかく（leathercloth、Imitation leather）

• Presstoff - 19世紀せいき初はじめにドイツで作つくられた紙かみパルプから作つくられた擬革ぎかく
• 擬革ぎかく紙し - 江戸えど時代じだいに作つくられた革かわに似にせた和紙わし
• 金唐革きんとうかく紙し
• 培養ばいよう皮革ひかく - 細胞さいぼう培養ばいよう技術ぎじゅつを使用しようした皮かわ細胞さいぼうを細胞さいぼう分裂ぶんれつさせて作つくった皮かわ。

外部がいぶリンク

• 日本にっぽん化学かがく繊維せんい協会きょうかい VOL.16 人工じんこう皮革ひかく
• 日本にっぽん化学かがく繊維せんい協会きょうかい VOL.23 自動車じどうしゃ資材しざい
• JIS　革かわ・レザーの用語ようご規定きてい見直みなおし　動物どうぶつ由来ゆらいに限定げんてい