動物どうぶつ性せい脂肪しぼう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ラード

動物どうぶつ性せい脂肪しぼう（英えい:Animal fat）は、動物どうぶつの体内たいないに含ふくまれている脂肪しぼうである。

食用しょくよう成分せいぶんとして、

概説がいせつ[編集へんしゅう]

食肉しょくにく、バター、ラード、乳ちち脂肪しぼうの含ふくまれる牛乳ぎゅうにゅうや乳製品にゅうせいひん、バターや乳ちち脂肪しぼうを使つかった菓子かしが主おもな供給きょうきゅう源げんである。健康けんこうへの悪影響あくえいきょうが考かんがえられる飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんの主おもな供給きょうきゅう源げんであり、その摂取せっしゅ量りょうの削減さくげんが目標もくひょうとされてきた。動物どうぶつ性せい脂肪しぼうよりは飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんとして言及げんきゅうされることが多おおいので、より詳くわしい健康けんこうへの影響えいきょうについてはこちらを参照さんしょうされたい。

1977年ねんに「米国べいこくの食事しょくじ目標もくひょう」が策定さくていされたときに、総そうカロリーの30 %に脂肪しぼうの摂取せっしゅ量りょうを抑おさえるために動物どうぶつ性せい脂肪しぼうの摂取せっしゅを減へらしたり、アメリカ人じん全体ぜんたいの飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんの72 %を供給きょうきゅうしている大おおきな摂取せっしゅ源げんである動物どうぶつ性せい脂肪しぼうの消費しょうひ量りょうを減へらすことが目的もくてきとなった[2]。そうして指針ししんへと至いたる議論ぎろんの中なかで「動物どうぶつ性せい脂肪しぼうの消費しょうひ量りょうを減へらし、飽和ほうわ脂肪しぼうの摂取せっしゅ量りょうを減へらす肉にく、鶏肉とりにく、魚さかなを選択せんたくすること」という目標もくひょうが決定けっていされた[2]。これに刺激しげきを受うけて日本にっぽんでは1980年ねん（昭和しょうわ55年ねん）に農政のうせい審議しんぎ会かいが「日本にっぽん型がた食生活しょくせいかつ」に触ふれ、1983年ねん（昭和しょうわ58年ねん）に8項目こうもくの指針ししんとして提案ていあんされ、要ようは米こめを中心ちゅうしんとし多種たしゅ多様たような食品しょくひんを摂とることによって動物どうぶつ性せい脂肪しぼうや砂糖さとうの摂とりすぎを避さけるという内容ないようである[3]。続つづく1985年ねんと、改定かいていされた2000年ねんの日本にっぽんの食生活しょくせいかつ指針ししんには動物どうぶつ性せい脂肪しぼうに関かんする指針ししんが含ふくまれる。

  • 動物どうぶつ性せいの脂肪しぼうより植物しょくぶつ油ゆを多おおめに「健康けんこうづくりのための食生活しょくせいかつ指針ししん」1985年ねん[4]
  • 脂肪しぼうのとりすぎをやめ、動物どうぶつ、植物しょくぶつ、魚さかな由来ゆらいの脂肪しぼうをバランスよくとりましょう「食生活しょくせいかつ指針ししん」2000年ねん[5][6]
「脂肪しぼう#食品しょくひん中ちゅうの脂質ししつ」も参照さんしょう

動物どうぶつ性せい脂肪しぼうを供給きょうきゅうする食品しょくひんには、牛うし、豚ぶた、羊ひつじといった食肉しょくにく、鶏肉とりにく、卵たまご、バター、ラード、乳ちち脂肪しぼうの含ふくまれる牛乳ぎゅうにゅう、チーズ、アイスクリームなどがある[2]。乳ちち脂肪しぼうは飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんの比率ひりつが高たかい食品しょくひんであり、低てい脂肪しぼう牛乳ぎゅうにゅうとして除去じょきょされた脂肪しぼうはプレミアムアイスクリーム、バターとして、またそうしてベーカリーなどに使つかわれる[7]。牛うしや豚ぶたよりも、鶏肉とりにくや魚さかなは飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんが少すくなく不ふ飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんが多おおい[8]。

畜産ちくさん動物どうぶつの生産せいさん者しゃは霜降しもふり肉にくのように牛うしを肥こえ太ふとらせ、脂肪しぼうの割合わりあいが多おおいことに優良ゆうりょう品ひんの価値かちを与あたえてきた[9]。もともと野生やせい動物どうぶつでは、小しょう動物どうぶつより大型おおがた動物どうぶつの方ほうが脂肪しぼうを蓄たくわえており、また皮下ひかや腹部ふくぶに蓄積ちくせきする飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんは1年ねん中ちゅうほとんど枯渇こかつしており、筋肉きんにくや臓器ぞうきに蓄たくわえられる不ふ飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんが優勢ゆうせいである[10]。人類じんるいの間あいだに畜産ちくさん技術ぎじゅつが出現しゅつげんすると動物どうぶつの脂肪しぼうの減少げんしょうは軽減けいげんされ、チーズ、バター、塩漬しおづけ肉にくといった保存ほぞん技術ぎじゅつが発達はったつした[10]。19世紀せいきなると刈かり取とり機きや輸送ゆそう手段しゅだんとなる鉄道てつどうの発達はったつによって、それまでと異ことなる、主おもにトウモロコシを飼料しりょうとする畜産ちくさんが発達はったつし、1885年ねんまでには、牧草ぼくそう牛うしとも異ことなった2歳さいで545 kgにもなる牛うしが飼育しいくされるようになった。肥満ひまんで飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんが多おおいという特徴とくちょうを持もつこうした牛うしは、さらに体からだ脂肪しぼう率りつがピークの時ときに屠殺とさつされ、人間にんげんの食餌しょくじとなっていく[10]。21世紀せいき初頭しょとうにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくで飼育しいくされている牛うしの99 %は、およそ200年ねん前まえ以前いぜんには見みられなかったこうした牛うしである[10]。人類じんるいは効率こうりつ的てきに肥満ひまん動物どうぶつの飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんを摂取せっしゅするようになり、20世紀せいき後半こうはんには問題もんだいが発覚はっかくしてきたということになる。

動物どうぶつ性せい脂肪しぼうの組成そせいを変化へんかさせる試こころみは行おこなわれており、魚油ぎょゆを添加てんかした餌えさを与あたえた鶏卵けいらんでは心こころ疾患しっかんのリスク軽減けいげんに期待きたいできるωおめが-3脂肪酸しぼうさんの比率ひりつは増加ぞうかする[11]。このように生産せいさん方法ほうほうによって、動物どうぶつ性せい脂肪しぼう中ちゅうの脂肪しぼうの組成そせいは変化へんかする。

他方たほう、アメリカ人じん全体ぜんたいの残のこりの飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんの供給きょうきゅう源げんの残のこりは植物しょくぶつ油ゆであり、水素すいそ添加てんかされたショートニングやマーガリンその多おおくを占しめる[2]。これは、後ごの2000年ねん前後ぜんごにトランス脂肪酸しぼうさんとして言及げんきゅうされ、対策たいさくが取とられてきた。

動物どうぶつ性せい脂肪しぼうは飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんを多おおく含ふくむので植物しょくぶつ性せい脂肪しぼうと比較ひかくして一般いっぱんに融点ゆうてんが高たかい。そのため常温じょうおんで液体えきたいである多おおくの植物しょくぶつ油ゆと異ことなり、動物どうぶつ性せい脂肪しぼうは常温じょうおんで固体こたいとなりやすい。

なお、2015年ねん（平成へいせい27年ねん）にはIARC発はつがん性せいリスクにて、ベーコンなど加工かこう肉にくは発はつがん性せいありのグループ1に、牛うし豚ぶた羊ひつじ馬ばヤギなど赤あか肉にくはおそらくありのグループ2に指定していされた[12]。特とくに前者ぜんしゃではニトロソアミンというタンパク質たんぱくしつの関与かんよが知しられており、脂肪しぼうに限かぎったことではない。

脚注きゃくちゅう・出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 酸化さんかが進すすみやすい動物どうぶつ性せい脂肪しぼうなど。また酸化さんか防止ぼうしを施ほどこした加工かこう肉にくなど。
  2. ^ a b c d 『米国べいこくの食事しょくじ目標もくひょう(第だい2版はん)-米国べいこく上院じょういん:栄養えいよう・人間にんげんニーズ特別とくべつ委員いいん会かいの提言ていげん』 食品しょくひん産業さんぎょうセンター、1980年ねん3月がつ。Dietary Goals for the United States (second edition)
  3. ^ 食料しょくりょう・農業のうぎょう政策せいさく研究けんきゅうセンター『提言ていげん 私わたし達たちの望のぞましい食生活しょくせいかつ―日本にっぽん型がた食生活しょくせいかつのあり方かたを求もとめて』農林のうりん統計とうけい協会きょうかい、1983年ねん。ISBN 4541004380。 
  4. ^ 厚生省こうせいしょう保健ほけん医療いりょう局きょく健康けんこう増進ぞうしん栄養えいよう課か『健康けんこうづくりのための食生活しょくせいかつ指針ししん-解説かいせつと指導しどう要領ようりょう』第だい一いち出版しゅっぱん、1986年ねん5月がつ。ISBN 978-4-8041-0327-3
  5. ^ 国立こくりつ健康けんこう・栄養えいよう研究所けんきゅうじょ監修かんしゅう『食生活しょくせいかつ指針ししん』 第だい一いち出版しゅっぱん、2版はん、2003年ねん9月がつ。ISBN 978-4-8041-1076-9。
  6. ^ 「食生活しょくせいかつ指針ししん」の策定さくていについて （厚生こうせい労働省ろうどうしょう）
  7. ^ “Calcium: What’s Best for Your Bones and Health?”. ハーバード公衆こうしゅう衛生えいせい大学院だいがくいん. 2017年ねん8月がつ12日にち閲覧えつらん。
  8. ^ W. C. ウィレット、M. J. スタンファー 著ちょ「ヘルシーな食事しょくじの新あたらしい常識じょうしき」、日経にっけいサイエンス編集へんしゅう部ぶ 編へん『エイジング研究けんきゅうの最前線さいぜんせん 心しんとからだの健康けんこう』日経にっけいサイエンス〈別冊べっさつ日経にっけいサイエンス 147〉、2004年ねん11月11日にち、116-125頁ぺーじ。ISBN 978-4-532-51147-0。http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0304/healthy.html。  Willett, Walter C.; Stampfer, Meir J. (2006). sp “Rebuilding the Food Pyramid”. Scientific American 16 (4): 12–21. doi:10.1038/scientificamerican1206-12sp. https://www.scientificamerican.com/article/rebuilding-the-food-pyramid/ sp. 
  9. ^ フランシス・ムア・ラッペ、奥沢おくさわ喜久栄きくえ・訳やく『小ちいさな惑星わくせいの緑みどりの食卓しょくたく』講談社こうだんしゃ、1982年ねん、21頁ぺーじ。ISBN 4-06-142668-0。 
  10. ^ a b c d Cordain L, Eaton SB, Sebastian A, et al. (2005). “Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century”. Am. J. Clin. Nutr. 81 (2): 341–54. PMID 15699220. http://ajcn.nutrition.org/content/81/2/341.long. 
  11. ^ 石川いしかわ伸一しんいち「「デザイナーエッグ」の最新さいしん開発かいはつ動向どうこう」月報げっぽう「畜産ちくさんの情報じょうほう」（国内こくない編へん）2005年ねん8月がつ
  12. ^ 国際こくさいがん研究けんきゅう機関きかん (26 October 2015). IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat (PDF) (Report). “WHO report says eating processed meat is carcinogenic: Understanding the findings”. ハーバード公衆こうしゅう衛生えいせい大学院だいがくいん (2015年ねん11月13日にち). 2017年ねん5月がつ6日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]


主要しゅよう項目こうもく
社会しゃかい問題もんだい
人物じんぶつ・書籍しょせき
市民しみん活動かつどう
関連かんれん分野ぶんや
カテゴリ カテゴリ
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=動物どうぶつ性せい脂肪しぼう&oldid=94135450」から取得しゅとく