四国しこく同盟どうめい戦争せんそう

四国しこく同盟どうめい戦争せんそう
パッサロ岬みさきの海戦かいせん
戦争せんそう：四国しこく同盟どうめい戦争せんそう
年月日ねんがっぴ：1718年ねん - 1720年ねん2月がつ17日にち
場所ばしょ：シチリア島とう、サルデーニャ島とう、スペイン、スコットランド、スペイン領りょうフロリダ
結果けっか：四国しこく同盟どうめいの勝利しょうり、ハーグ条約じょうやくの締結ていけつ
交戦こうせん勢力せいりょく
スペイン ジャコバイト	グレートブリテン王国おうこく フランス王国おうこく ハプスブルク帝国ていこく ネーデルラント連邦れんぽう共和きょうわ国こく サヴォイア公国こうこく
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
レーデ侯ほうジャン・フランソワ・ド・ベット モンテマール公こうホセ・カリージョ・デ・アルボルノス ホセ・アントニオ・デ・ガスタニェータ オーモンド公こうジェームズ・バトラー ジョージ・マレー（戦傷せんしょう） シーフォース卿きょう（戦傷せんしょう）	ベリック公こうジェームズ・フィッツジェームズ ジャン＝バティスト・ル・モワーヌ・ド・ビヤンヴィル メルシー伯はくクロード・フロリモン コバム子爵ししゃくリチャード・テンプル ジョージ・ビング ヴィットーリオ・アメデーオ2世せい
戦力せんりょく
15,000-20,000	35,000
損害そんがい
死傷ししょう者しゃ数すう 4,350	死傷ししょう者しゃ数すう オーストリア 11,250 イギリス 6,000 フランス 3,000 サルデーニャ 2,250 ネーデルラント 1,500
四国しこく同盟どうめい戦争せんそう リスト イタリア サルデーニャ - パッサロ岬みさき - ミラッツォ - フランカヴィッラ スペイン、ポルトガル ラ・セウ・ドゥルジェイ - ビーゴ - ロザス - サン・ヴィセンテ岬みさき スコットランド アイリーン・ドナン城じょう - グレン・シール 新大陸しんたいりく ペンサコーラ - ナッソー - ビリャスルの遠征えんせい

四国しこく同盟どうめい戦争せんそう（しこくどうめいせんそう、英語えいご: War of the Quadruple Alliance）は、1718年ねんから1720年ねんまで行おこなわれた、スペインと四国しこく同盟どうめい（オーストリア、イギリス、フランス、ネーデルラント連邦れんぽう共和きょうわ国こく（オランダ）の4か国こく）およびサヴォイア公国こうこく（当時とうじシチリア王国おうこくを称しょうする）との間あいだで行おこなわれた戦争せんそう。

背景はいけい

スペインとヨーロッパ諸国しょこくの紛争ふんそう

スペイン継承けいしょう戦争せんそうを終結しゅうけつさせた1713年ねんのユトレヒト条約じょうやくおよび1714年ねんのラシュタット条約じょうやくにより、スペインはネーデルラント、ミラノ公国こうこく、ナポリ王国おうこく、サルデーニャ島とうを神聖しんせいローマ皇帝こうていカール6世せいに、シチリア王国おうこくをサヴォイア公こうヴィットーリオ・アメデーオ2世せいに割譲かつじょうした。スペイン王おうフェリペ5世せいは領土りょうど回復かいふくを追求ついきゅうしたが、当面とうめんの急務きゅうむは13年間ねんかんの戦争せんそうで荒廃こうはいしたスペインの国力こくりょくの回復かいふくであり、イタリア出身しゅっしんの枢機卿すうききょうであるジュリオ・アルベローニがそれを推進すいしんした。1714年ねん、アルベローニは寡夫やもめとなったフェリペ5世せいと21歳さいのエリザベッタ・ファルネーゼの縁談えんだんをまとめた。この縁談えんだんの途中とちゅうでアルベローニはエリザベッタの個人こじん的てきな顧問こもんになった。1715年ねん、アルベローニは首相しゅしょうに就任しゅうにん、スペインの財政ざいせいと陸軍りくぐんを改革かいかくしたほかスペイン艦隊かんたいを再建さいけんした（1718年ねんだけで戦列せんれつ艦かんを50隻せき建造けんぞうした）。一方いっぽうのエリザベッタもファルネーゼ家かの一員いちいんとしてイタリアのパルマ・ピアチェンツァ公国こうこく、ひいてはトスカーナ大公たいこう国こくの継承けいしょう権けんを有ゆうしていたため、自分じぶんの子供こどもであるドン・カルロス王子おうじのためにイタリアの君主くんしゅ位いを確保かくほしたいと望のぞみ、アルベローニの支持しじを得えてフェリペ5世せいとその息子むすこたちのイタリアに対たいする野心やしんを煽あおった。そして、スペインはオーストリアがオスマン帝国ていこくとの戦争せんそう（墺おう土ど戦争せんそう）にかかりきりになっている間あいだに、軍隊ぐんたいを派遣はけんして1717年ねん8月がつにサルデーニャを占領せんりょうした（スペインによるサルデーニャ侵攻しんこう）。

スペインはフランスとの火種ひだねも抱かかえていた。1715年ねん、フランス王おうルイ14世せいが死去しきょしてルイ15世せいが5歳さいで即位そくいしたが、夭折ようせつの可能かのう性せいもあり、フェリペ5世せいがユトレヒト条約じょうやくでフランスの王位おうい継承けいしょう権けんを放棄ほうきしたにもかかわらずフランス摂政せっしょうのオルレアン公こうフィリップ2世せいとルイ15世せいの継承けいしょう者しゃの位いを争あらそった。その裏うらにはメーヌ公おおやけ妃ひルイーズ・ベネディクト・ド・ブルボンが夫おっとを唆そそのかして参加さんかさせ、スペインの駐ちゅう仏ふつ大使たいしのチェッラマーレ公爵こうしゃくアントニオ・デル・ジューディチェが一いち枚まいかんでいたチェッラマーレ陰謀いんぼうもあり、オルレアン公こうを追放ついほうしてフェリペ5世せいを摂政せっしょうにつかせるという陰謀いんぼうがあった。

さらに、スペインはイギリスへの牽制けんせいとして、ジャコバイトとスチュアート家かを支援しえんした。1717年ねん、イギリスがスウェーデンに宣戦せんせん布告ふこくして大だい北方ほっぽう戦争せんそうに参戦さんせんしたが、スウェーデン王おうカール12世せいはジャコバイトを通とおしてアルベローニと連絡れんらくをとった。英えい仏ふつ同盟どうめいはスペインとスウェーデンの共通きょうつうした敵てきであり、イギリスのハノーファー朝あさ国王こくおうが追放ついほうされることでスウェーデンは敵国てきこくを1つ減へらし、スペインはフランスとの連合れんごうを促進そくしん、続つづいて東方とうほうでの戦闘せんとうに手間てまとっているオーストリアを簡単かんたんに屈服くっぷくさせるができる、と考かんがえたのだった。これに対たいしてフランスの外務がいむ大臣だいじんギヨーム・デュボワはイギリスからの圧力あつりょくで英えい仏ふつによる連合れんごう交渉こうしょうに同意どうい、スペインに和議わぎの条件じょうけんとしてシチリアとサルデーニャの交換こうかん、トスカーナ大公たいこう国こくとパルマ・ピアチェンツァ公国こうこくの継承けいしょう権けんをエリザベッタの長男ちょうなんドン・カルロスに戻もどすことの2条件じょうけんを出だした。イギリスはジブラルタルの返還へんかんまで持もちかけたが、スペインは和議わぎを拒否きょひした。スペインが強硬きょうこう策さくに踏ふみ切きった背景はいけいには、フランスにおける反はんオルレアン公こう・反はんデュボワ・親おやスペイン派はの存在そんざい、イギリスにおける反戦はんせん勢力せいりょくである商人しょうにん層そう（地中海ちちゅうかいと米州べいしゅうにおける貿易ぼうえきに悪影響あくえいきょうを与あたえるため）の存在そんざい、ならびに英えい仏ふつ同盟どうめいが長ながく維持いじされることはないという判断はんだんがあった。

開戦かいせん事由じゆう

これらの行動こうどうは諸国しょこくに警戒けいかいされ、1716年ねん末まつにデュボワがオランダの説得せっとくに成功せいこうすると翌よく1717年ねん1月がつ4日にちに英えい仏ふつ蘭らんの間あいだで三さん国こく同盟どうめいが結むすばれた。しかしオーストリア軍ぐんは全すべての資源しげんを墺おう土ど戦争せんそうに投入とうにゅうしており、総そう指揮しき官かんのプリンツ・オイゲンはイタリアにおけるスペインとの大戦たいせん争そうを避さけたかった。そのため、オーストリアの動うごきは鈍にぶかった。やがてスペインが打うって出でて、1718年ねん6月がつに今度こんどは3万まん人にんの指揮しきをレーデ侯こうに任まかせ、さらに船ふね350隻せきと大砲たいほう250門もん以上いじょうも加くわえて、シチリア島とうに侵攻しんこうすると、英えい仏ふつは7月がつ18日にちにロンドンで講和こうわ条件じょうけんを記しるした条約じょうやくを締結ていけつ、オーストリア、スペイン、サヴォイア公国こうこくに3か月げつ内ないの条約じょうやく加盟かめいを求もとめた。3日にち後ごの7月がつ21日にちにオスマン帝国ていこくとパッサロヴィッツ条約じょうやくを締結ていけつして講和こうわしたオーストリアは8月がつ2日にちになって条約じょうやくに加盟かめいし、四国しこく同盟どうめいが結成けっせいされた。戦争せんそうの名前なまえはこの同盟どうめいによる。英えい仏ふつ墺おうの計けい3か国こくしか加盟かめいしていないにもかかわらず、「四国しこく同盟どうめい」と呼よばれたのはオランダの加盟かめいが予想よそうされたためだったが、オランダはスペインとの貿易ぼうえきを維持いじしようとして条約じょうやく加盟かめいを拒否きょひした。サヴォイア公こうヴィットーリオ・アメデーオ2世せいはアルベローニと反はんオーストリア同盟どうめいの交渉こうしょうを始はじめたため、一時いちじは不ふ明確めいかくな立場たちばをとったが、11月に同盟どうめいに加くわわった。

戦闘せんとう

シチリア

イギリスは四国しこく同盟どうめいが締結ていけつされる前まえにジョージ・ビング提督ていとく率ひきいる艦隊かんたいを派遣はけんして、スペインのシチリア島とう奪取だっしゅを阻止そししようとしたが失敗しっぱいした。ビングは1718年ねん6月がつに地中海ちちゅうかい西部せいぶに到着とうちゃく、8月がつ11日にちのパッサロ岬みさきの海戦かいせんでスペイン艦隊かんたいを壊滅かいめつさせた。スペインはそれでも諦あきらめず、イギリスは1718年ねん12月に、フランスは1719年ねん1月がつに対たいスペイン宣戦せんせんに踏ふみ切きった。オランダは1719年ねん8月がつに宣戦せんせんした。

その後ご、イギリス艦隊かんたいの支援しえんを受うけたオーストリア軍ぐんはシチリアに上陸じょうりくしたが、ミラッツォの戦たたかい（1718年ねん10月がつ）とフランカヴィッラの戦たたかい（1719年ねん6月がつ）とスペイン軍ぐんに連敗れんぱいした。しかし、艦隊かんたいの支援しえんがなくなったスペイン軍ぐんの状況じょうきょうはそれ以上いじょうに悪化あっかしており、1719年ねんのミラッツォでの再戦さいせんはオーストリア軍ぐんが勝利しょうり、そのまま10月がつにはメッシーナも占領せんりょうされた。

スコットランド

詳細しょうさいは「1719年ねんジャコバイト蜂起ほうき」を参照さんしょう

アルベローニはイギリスへの妨害ぼうがいとして「アルベローニ計画けいかく」を立たて、ジャコバイトとハイランド地方ちほうにおけるジャコバイトを支持しじ、ジョージ1世せいを廃位はいいしてジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアートを王位おういにつかせようとした。これにより、スペインはスコットランドに海兵かいへい隊たい300人にんと第だい10代マーシャル伯爵はくしゃくジョージ・キースなどジャコバイトの指揮しき官かんをスコットランドに上陸じょうりくさせた。スペイン軍ぐんは蜂起ほうきを支援しえんするためにシーフォース卿きょうの住処すみかの1つであるアイリーン・ドナン城じょうに駐留ちゅうりゅう軍ぐんを配置はいちした。

しかしアイリーン・ドナン城じょうはジャコバイトが出払ではらっている間あいだにイギリス軍ぐんに占領せんりょう、破壊はかいされた（アイリーン・ドナン城じょう占領せんりょう）。また第だい2代だいオーモンド公こうジェームズ・バトラー率ひきいる軍勢ぐんぜい7千せんは1719年ねん3月がつにカディスから出航しゅっこうしたが、フィニステレ岬みさきで嵐あらしに遭あいグレートブリテン島とうに上陸じょうりくできなかった。スペイン軍ぐんとジャコバイト軍ぐんが糾合きゅうごうして戦たたかったグレン・シールの戦たたかいも政府せいふ軍ぐんの勝利しょうりに終おわり、「ザ・ナインティーン」または「1719年ねんの反乱はんらん」と呼よばれた1719年ねんジャコバイト蜂起ほうきは1回かいの戦闘せんとうで鎮圧ちんあつされた。

スペイン

シチリアでの戦闘せんとうの間あいだ、イギリスとオランダの艦隊かんたいがスペインの艦隊かんたいと通商つうしょうを攻撃こうげきし、沿岸えんがん攻撃こうげきも行おこなった。ジャコバイト蜂起ほうきの後のち、1719年ねん10月がつにはイギリスが報復ほうふくとしてフェロルとサントーニャに上陸じょうりく、さらにビーゴを占領せんりょう、スペイン政府せいふは動揺どうようした。

フランス軍ぐんはベリック公こうジェームズ・フィッツジェームズがパンプローナの攻囲こういを主張しゅちょうしたが、物資ぶっしの準備じゅんびが追おい付つかなかったため、代かわりに1719年ねん6月がつ18日にちにオンダリビアを3週間しゅうかんの包囲ほういを経へて攻略こうりゃくした。フェリペ5世せい率ひきいるスペイン軍ぐんはその前日ぜんじつにオンダリビアから2リーグほどのレサカまで来きていたが、町まちが占領せんりょうされたことを知しると引ひき返かえした。ベリック公こうは続つづいて8月がつにサン・セバスティアンを降伏ごうぶくさせたが、背後はいごにパンプローナという強固きょうこな要塞ようさいを残のこして進軍しんぐんすることに危険きけんを感かんじて撤退てったい、カタルーニャに転てんじて8月がつ31日にちにラ・セウ・ドゥルジェイも攻略こうりゃくした。しかし、続つづくロザス包囲ほうい戦せんでは悪天候あくてんこうが続つづき、嵐あらしにより補給ほきゅう船せんが多数たすう破壊はかいされたためベリック公こうはやむなく撤退てったい、冬営とうえいに入はいった後のちパリへ戻もどった。

新大陸しんたいりく

新大陸しんたいりくにおいてはフランスが1719年ねん5月がつにペンサコーラを占領せんりょうした。同年どうねん8月がつ、スペインの大だい部隊ぶたいが救援きゅうえんに来きたためフランスの小規模しょうきぼな駐留ちゅうりゅう部隊ぶたいは降伏ごうぶくした。しかし、9月1日にちに今度こんどはフランス艦隊かんたいがきて、ペンサコーラを再ふたたび占領せんりょうした。1720年ねん2月がつ、スペイン軍ぐんはバハマのナッソーを占領せんりょうしようとしたが失敗しっぱい、略奪りゃくだつしただけに留とどまった。

1719年ねんに開戦かいせんの報しらせがスペイン植民しょくみん地ちのサンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコに届とどくと、植民しょくみん地ち政府せいふはグレートプレーンズのフランス勢力せいりょくの増長ぞうちょうを憂慮ゆうりょして、反撃はんげきとして1720年ねん6月がつにビリャスルの遠征えんせいを行おこなったがインディアン軍ぐんに敗やぶれた。一方いっぽうでイギリスは首脳しゅのう部ぶのスタンホープ伯爵はくしゃくとロバート・ウォルポールの両方りょうほうが植民しょくみん地ち遠征えんせいを支持しじしなかったため、スペインの植民しょくみん地ちへの遠征えんせい軍ぐんを派遣はけんすることはなかった。

和平わへい

スペインの勝かち目めが無ないことが明あきらかになると、アルベローニは責任せきにんを取とらされて1719年ねん12月に失脚しっきゃくした。イギリス、フランス、オーストリアは1719年ねん10月がつにスペインが四国しこく同盟どうめいの講和こうわ条件じょうけんを認みとめなければカルロス王子おうじのパルマ・ピアチェンツァ・トスカーナ三公みつきみ領りょうの継承けいしょう権けんを取とり上あげると決きめ、フェリペ5世せいは折おれて1720年ねん2月がつ17日にちにハーグ条約じょうやくを締結ていけつ、戦争せんそうが終結しゅうけつした。

その結果けっか、スペインはすべての占領せんりょう地ちを返還へんかんし、その代かわりパルマ公国こうこくの継承けいしょう権けんが認みとめられた。サヴォイア公こうヴィットーリオ・アメデーオ2世せいは神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこくのカール6世せいにシチリア王国おうこくを割譲かつじょうし、その代償だいしょうとして神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこくからサルデーニャ島とうを割譲かつじょうされた。神聖しんせいロろーマ帝国まていこくからサルデーニャ王おうの称号しょうごうも認みとめられ、サルデーニャ王国おうこくが成立せいりつした。

戦後せんご、パルマ・ピアチェンツァ・トスカーナ三さん公おおやけ領りょうの継承けいしょうについて1724年ねんにカンブレー会議かいぎが開催かいさいされたが全まったく進展しんてんせず、オーストリアとスペインは独自どくじに交渉こうしょうして1725年ねん4月がつのウィーン条約じょうやくに繋つなげた。

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関連かんれん項目こうもく

• サルデーニャ王国おうこく (1700年ねん-1720年ねん)