地底ちていこく怪人かいじん

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地底ちていこく怪人かいじん』(ちていこくのかいじん)は、1948ねん手塚てづか治虫おさむ発表はっぴょうした漫画まんが作品さくひんほんこうでは、リメイク作品さくひんである『アバンチュール21』もふくめて解説かいせつする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

地底ちていこく怪人かいじん』は、1947ねん発表はっぴょうされた『しん宝島たからじま』『火星かせい博士はかせ』につづく、手塚てづか治虫おさむ長編ちょうへん漫画まんが単行たんこうほんだい3さくである。ただし手塚てづか自身じしんは、ぜん2さく太平洋戦争たいへいようせんそう以前いぜんふる漫画まんが様式ようしききずっているとして、ほん作品さくひんを「いわゆるストーリー漫画まんがだいいちさく」と位置いちづけている[1]。この作品さくひんは、発売はつばい当時とうじ漫画まんが作品さくひん一般いっぱんにはられなかった、「主人公しゅじんこうきゅう登場とうじょう人物じんぶつ死亡しぼうする」というアンハッピーエンド要素ようそれたとして話題わだいになった。本来ほんらい作品さくひんタイトルは、ベルンハルト・ケラーマン英語えいごばん小説しょうせつトンネル英語えいごばん[2]にちなんだ「トンネル」であったが、出版しゅっぱんしゃがわ要望ようぼうによって現在げんざい題名だいめい変更へんこうされ、「トンネル」は副題ふくだいとして記載きさいされるにとどまった。ただし、のち手塚てづかがまとめたスター名鑑めいかんなかでは、ほん作品さくひん商業しょうぎょうデビューしたハム・エッグのデビューさくは「地底ちていこく怪人かいじん」ではなく「トンネル」としるされている。

なお、ほん作品さくひんは2リメイクされている。1951ねん学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃよんねん学習がくしゅう』・『ねん学習がくしゅう連載れんさいされた『地球ちきゅうトンネル』、および1970ねんに『少年しょうねん少女しょうじょ新聞しんぶん』で連載れんさいされた『アバンチュール21』である。このうち『地球ちきゅうトンネル』は、『手塚てづか治虫おさむ漫画まんが全集ぜんしゅう』をふくめ単行本たんこうぼんされていなかったが、2020ねん11月に888ブックスより発刊はっかん手塚てづか治虫おさむコミックストリップス』はつ単行本たんこうぼんとなった。

地底ちていこく怪人かいじん[編集へんしゅう]

あらすじ[編集へんしゅう]

飛行機ひこうき事故じこ父親ちちおやくしたジョン少年しょうねんは、安全あんぜんものあらたにつくろうとちかい、地球ちきゅう貫通かんつうしたトンネルのなかはしる「ロケット列車れっしゃ」を設計せっけいかれ助手じょしゅとなったウサギのみみおとことともにロケット列車れっしゃり、トンネルをっていくが、地底ちてい遭難そうなんしてしまう。列車れっしゃ工場こうじょうのビル工場こうじょうちょうはジョンの救助きゅうじょかうが、途中とちゅうで「地底ちていじん」の襲撃しゅうげき捕虜ほりょとなった。地上ちじょうじんにく地底ちていこく女王じょおうは、救助きゅうじょたいのひとりハム・エッグ技師ぎしちょう宝石ほうせき買収ばいしゅうし、地上ちじょう攻撃こうげきのための手下てしたとする。一方いっぽうジョンとみみおとこ独自どくじ地底ちていこくへたどりき、ビルたちを救出きゅうしゅつして地上ちじょうかえった。

地上ちじょう帰還きかんしたジョンたちを、ハム・エッグひきいるテロ組織そしきおそう。たたかいのなかみみおとこ判断はんだんミスでロケット列車れっしゃ設計せっけいうばわれ、ジョンははらててみみおとこす。これを地底ちていこくとの全面ぜんめん対決たいけつめたジョンは、大学だいがくから派遣はけんされたという少女しょうじょ技師ぎしミミーや警察けいさつ協力きょうりょくしてハム一味いちみ逆襲ぎゃくしゅうし、かれ女王じょおう密談みつだんする秘密ひみつ基地きちめた。女王じょおうはハムを見捨みすてて逃走とうそうするが、なぞ少年しょうねんはばまれ死亡しぼうする。設計せっけいもどし、ロケット列車れっしゃ2ごう完成かんせいさせたジョンは、ビルやミミーと再度さいど地底ちてい探検たんけんいどむが、溶岩ようがんりゅうまれてしまう。ジョンたちがたおれたなかでミミーはひとり列車れっしゃ運転うんてんし、トンネルを貫通つらぬきとおさせるが、高熱こうねつだいやけどをってしまった。病院びょういんにミミーを見舞みまったジョンは、ミミー、そして女王じょおうたおしたなぞ少年しょうねんみみおとこ変装へんそうだったことをる。ジョンの謝罪しゃざい感謝かんしゃ言葉ことばきながら、みみおとこいきる。

登場とうじょう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

ジョン
ほん作品さくひん主人公しゅじんこう長距離ちょうきょり旅客機りょかくきルビイごう事故じこ父親ちちおやうしない、高速こうそく安全あんぜんもの開発かいはつちかう。初期しょき手塚てづか作品さくひんでたびたび主役しゅやくつとめた少年しょうねんスター「ケンいち」がえんじる。
みみおとこ(みみお)
ノートル大学だいがく発見はっけんされた知能ちのうたかいウサギ。さらに動物どうぶつ実験じっけんほどこされ、人間にんげん同等どうとう知性ちせいつにいたる。じこめられるのをきらって大学だいがくし、ジョンに出会であってかれ助手じょしゅとなった。自分じぶん人間にんげんだとかんがえており、人間にんげんたちからみとめてもらえないことをかなしむ。手塚てづか少年しょうねん時代じだいえがいていた漫画まんが作品さくひんから登場とうじょうした動物どうぶつスターであり、『ロストワールド』などにも登場とうじょうしている。
ビル
ロケット列車れっしゃ建造けんぞう工場こうじょう工場こうじょうちょう正義せいぎかんつよく、地底ちていじん陰謀いんぼう発覚はっかくもジョンをたすけて地底ちていじんかう。えんじているのは手塚てづかスターシステムを代表だいひょうするキャラクター「ヒゲオヤジ」。
ハム・エッグ
ロケット列車れっしゃ建造けんぞう計画けいかく技師ぎしちょうよくふかおとこで、女王じょおうから宝石ほうせきあたえられて仲間なかま裏切うらぎり、犯罪はんざい結社けっしゃくろだん」を組織そしきして地上ちじょう混乱こんらんさせる。終盤しゅうばんでは女王じょおうからようあつかいされて始末しまつされそうになったことで改心かいしんし、女王じょおうわなにかかったビルたちたすけるがいしにされる。そのビルが入手にゅうしゅした化石かせきダイヤによってもともどされ、ほうさばきをけることとなった。
ハム・エッグ」は手塚てづかスターシステムの有名ゆうめい悪役あくやくだが、ほん作品さくひん商業しょうぎょう作品さくひんでのデビューである。
女王じょおう
地底ちていじん王国おうこく支配しはいする女王じょおう地底ちていじんは、古代こだいにおいてほか動物どうぶつ地底ちていうつんだシロアリ進化しんかしたものである。ロケット列車れっしゃ計画けいかく地上ちじょうじん地底ちてい侵略しんりゃくかんがえ、ハム・エッグを買収ばいしゅうして地上ちじょうへの反攻はんこうをたくらむ。あらゆるものをいしえたりもともどしたりできる「化石かせきダイヤ」の指輪ゆびわ武器ぶきとする。終盤しゅうばん人間にんげん攻勢こうせいけ、くろだん少年しょうねん運転うんてんするくるまげようとしたが、少年しょうねん正体しょうたいみみおとこであり、地底ちてい列車れっしゃ設計せっけい化石かせきダイヤをうばわれたうえっていたくるまごとがけからとされ死亡しぼう。その地底ちていこく火山かざん活動かつどうまれ壊滅かいめつした。
地上ちじょうてくるときは仮面かめんをかぶって人間にんげん女性じょせいになりすますという設定せっていだが、この「人間にんげん変装へんそうした女王じょおう」は、手塚てづかスターシステムの女優じょゆうミッチイ」がえんじている。
ラムネ・ソーダ・カルピス
ロケット列車れっしゃ計画けいかく作業さぎょういんつとめるさん人組にんぐみ名前なまえからかるようにさんにんいちくみ活動かつどうするギャグキャラクターであるが、ほん作品さくひん以降いこうはソーダがいなくなり、ラムネとカルピスが「凸凹おうとつコンビ」としてなが手塚てづか作品さくひん登場とうじょうするスターとなっている。

アバンチュール21[編集へんしゅう]

あらすじ[編集へんしゅう]

最新さいしんがた旅客機りょかくき「ルナパーク1ごう」の事故じこ両親りょうしんうしなった少年しょうねん西谷にしたにイサミは、ルナパークの設計せっけいしゃサリバンと出会であい、かれ設計せっけいする「ルナパーク3ごう」が飛行機ひこうきではなく、地底ちていすす地球ちきゅう貫通かんつう列車れっしゃであることをる。ルナパーク3ごう革新かくしんてきものだったが、それゆえに批判ひはんおおく、サリバンをころしてでも開発かいはつめようとする勢力せいりょく存在そんざいしていた。その危険きけんりながらもイサミはルナパーク3ごうのテストパイロットに志願しがんする。改造かいぞう手術しゅじゅつけたウサギのみみおとこふくむ6めいのメンバーが試運転しうんてんむが、出発しゅっぱつしばらくしてからサリバンからの通信つうしんで「メンバーのなかてきのスパイがいる」との情報じょうほうつたえられる。疑惑ぎわくかかえたまま、6にんんだルナパーク3ごう不可思議ふかしぎ地底ちてい世界せかいすすんでいくことになった。

登場とうじょう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

西谷にしたにイサミ
ほん作品さくひん主人公しゅじんこうきょだい旅客機りょかくきルナパーク1ごう事故じこ両親りょうしんうしなった。サリバンからルナパーク3ごう計画けいかくらされるが、当初とうしょ提示ていじされた「サリバンの養子ようしとなって身内みうち採用さいようわくでテストパイロットになる」あん拒否きょひし、自分じぶん意志いし実力じつりょくでテストパイロットをこころざす。
みみおとこ
イサミのペットとしてわれていたウサギ。科学かがくしゃだったイサミのちち研究けんきゅうによって、4歳児さいじ程度ていど知能ちのうていた。さらにフランケンシュタイン博士はかせ改造かいぞうけ、人間にんげん同等どうとう知能ちのう器用きようさをつにいたる。危険きけんをいちはや察知さっちする本能ほんのうそなえており、ルナパーク3ごう乗組のりくみいんとして採用さいようされる。
サリバン
ルナパークの設計せっけいしゃ地球ちきゅう貫通かんつう列車れっしゃ完成かんせいのぞまぬ勢力せいりょくいのちねらわれながらも、列車れっしゃ完成かんせい執念しゅうねんやす。ヒゲオヤジえんじている。
カーラ
サリバンのむすめ。ルナパーク3ごう乗員じょういん一人ひとり
ハム・エッグ
ルナパーク3ごう機長きちょうえんじているのはおなじく「ハム・エッグ」。
ナヒム
ルナパーク3ごうふく機長きちょうモヒカンぞく出身しゅっしん男性だんせいで、恐怖きょうふりっ冷静れいせいうことをむねとする。
ヘルマン
ルナパーク3ごう測量そくりょうがかり
フランケンシュタイン博士はかせ
先祖せんぞは「あの有名ゆうめい怪物かいぶつをつくったおとこ」だと豪語ごうごする科学かがくしゃみみおとこ頭蓋骨ずがいこつ人工じんこう頭蓋とうがいえることでのう発達はったつする空間くうかんてき余裕よゆうり、知能ちのうたかめる手術しゅじゅつほどこす(同様どうよう手術しゅじゅつが『ブラック・ジャック』にも登場とうじょうするが、ほん作品さくひんほう発表はっぴょう時期じきはやい)。手塚てづかスターシステムじょうでも「フランケンシュタイン」としてられるキャラクターがえんじている。
サユリ
ある病院びょういん入院にゅういんしていた不治ふじやまい少女しょうじょ大学だいがくしたみみおとこ出会であってかれをかわいがり、結果けっかとしてかれ初等しょとう教育きょういくほどこすこととなる。余命よめいいくばくもない自分じぶんわりにみみおとこ活躍かつやくしてほしいとねがい、このためみみおとこは「人間にんげんとしてみとめられたい」という願望がんぼうつようになる。

単行本たんこうぼん[編集へんしゅう]

地底ちていこく怪人かいじん[編集へんしゅう]

アバンチュール21[編集へんしゅう]

  • 手塚てづか治虫おさむ漫画まんが全集ぜんしゅう『アバンチュール21(講談社こうだんしゃ)』(1980ねんぜん1かん
  • 秋田あきた文庫ぶんこ『アバンチュール21(秋田あきた書店しょてん)』(1996ねんぜん1かん
  • サンデーコミックス『アバンチュール21(秋田あきた書店しょてん)』(1999ねんぜん1かん
  • 手塚てづか治虫おさむ文庫ぶんこ全集ぜんしゅう『アバンチュール21(講談社こうだんしゃ)』(2011ねんぜん1かん

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 手塚てづか治虫おさむ手塚てづか治虫おさむ漫画まんが全集ぜんしゅう 地底ちていこく怪人かいじん講談社こうだんしゃ、1982ねん
  2. ^ 1913年刊ねんかん日本語にほんごやくは、ケッラアマン、はた豊吉とよきちわけ世界せかい文学ぶんがく全集ぜんしゅう だい2だい12 トンネル がいへん』(新潮社しんちょうしゃ、1930ねん所収しょしゅう。2020ねん国書刊行会こくしょかんこうかいより復刻ふっこくISBN 978-4-336-06666-4)。大西洋たいせいよう横断おうだん海底かいてい鉄道てつどうトンネルの建設けんせつ工事こうじえがいたSFてき作品さくひん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]