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数量すうりょう比較ひかく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数量すうりょう比較ひかく(たすうりょうひかく、mass comparison, multilateral comparison)とは、言語げんごあいだ遺伝いでんてき関係かんけいのレベルを決定けっていするために、ジョセフ・グリーンバーグによって開発かいはつされた方法ほうほうである。

方法ほうほう[編集へんしゅう]

数量すうりょう比較ひかく命題めいだいは、「代名詞だいめいし形態素けいたいそふく語彙ごい多数たすう類似るいじせいしめすとき、言語げんごのグループには類縁るいえん関係かんけい存在そんざいする」というものである。比較ひかく方法ほうほうとはことなり、数量すうりょう比較ひかくでは、比較ひかくする言語げんごあいだ規則きそくてき体系たいけいてき対応たいおう必要ひつようい。必要ひつようなのは、印象いんしょうてき類似るいじせい感覚かんかくだけである。グリーンバーグは、関連かんれんせい判断はんだんするための明確めいかく基準きじゅん確立かくりつしておらず、かれが「類似るいじ」となすもの、または関係かんけい証明しょうめいするために必要ひつよう類似るいじかず基準きじゅん設定せっていしていない[1]

数量すうりょう比較ひかくは、類似るいじせい比較ひかくする言語げんごあいだにおいて、ひょうつくって基本きほんてき語彙ごい比較ひかくする方法ほうほうおこなわれる。このひょうには一般いっぱんてき形態素けいたいそふくめることもできる。したひょうはこの手法しゅほう説明せつめいするためにGreenberg(1957、p.41)[2]によって使用しようされたものである。これは、文字もじ識別しきべつされる9つのことなる言語げんごの6種類しゅるい基礎きそ語彙ごいしめしている。

A B C D E F G H I
あたま kar kar se kal tu tu to fi pi
min ku min miŋ min min idi iri
はな tor tör ni tol was waš was ik am
1 mit kan kan kaŋ ha kan kεいぷしろんn he čak
2 ni ta ne kil ne ni ne gum gun
kur sem sem šam i sem sem fik pix

グリーンバーグは、かなり密接みっせつ関連かんれんしている言語げんご場合ばあい基本きほんてき関係かんけい経験けいけんがなくても決定けっていできると主張しゅちょうしているが、おと変化へんか可能かのうせいのある経路けいろっていると、さらにはやすすむことができる。経験けいけん豊富ほうふ類型るいけいがくもの(グリーンバーグはこの分野ぶんやのパイオニアであった)は、このひょうないのいくつかについて、それが同根どうこんである可能かのうせい有無うむについて即座そくざ判断はんだんし、認定にんていまたは棄却ききゃくできる。たとえば、 p>f の変化へんか非常ひじょう頻繁ひんぱんこるのにたいし、 f>p はそれほど頻繁ひんぱんにはこらないため、 fi:pi と fik:pix は実際じっさい関連かんれんしていると仮定かていし、がた *pi と *pik/x をさい構できる。k>xは非常ひじょう頻繁ひんぱんこる変化へんかで、x>kの変化へんかこる頻度ひんどがはるかにすくないため、がたは *pix ではなく *pik を選択せんたくできる。数量すうりょう比較ひかくでは祖語そごさい構成こうせい目指めざすものではない(Greenberg(2005:318)[3]によれば祖語そごさい構成こうせい後段こうだんかいおこなうとする)が、音韻おんいんろんてき考察こうさつ最初さいしょ段階だんかいからもとめられる。

実際じっさい多数たすうりょう比較ひかく使用しようされるひょうには、これよりもはるかにおおくの項目こうもく言語げんごふくまれる。ふくまれる項目こうもくは、「」、「そら」、「く」などの語彙ごい、または複数ふくすうがた文法ぶんぽうせいなどの形態けいたいてき要素ようそである(Ruhlen 1987、p.120)[4]

Greenbergは、数量すうりょう比較ひかくによって達成たっせいされた結果けっか確実かくじつちかづいたとかんがえ、こうべている(Greenberg 1957、p.39)[2];「基本きほんてき語彙ごい類似るいじせいと、文法ぶんぽう機能きのうそなえた項目こうもく類似るいじせい存在そんざいすることは、とくにそれがおおくの言語げんごかえられる場合ばあいは、遺伝いでんてき関係かんけいたしかな指標しひょうである。」

現状げんじょう[編集へんしゅう]

この方法ほうほうによって分類ぶんるいされた言語げんご分類ぶんるいぐんは、言語げんご学者がくしゃによってすで主張しゅちょうされていたものであり一般いっぱんてきすべての言語げんご学者がくしゃれられているもの(れいアフロ・アジア語族ごぞくニジェール・コンゴ語族ごぞく)、おおくの研究けんきゅうしゃれているが一部いちぶ論争ろんそうがあるもの(ナイル・サハラ語族ごぞく)、おおくの学者がくしゃ否定ひていされているが一部いちぶ支持しじしゃがいるもの(ユーラシアだい語族ごぞく)がある。

なお、ほとんどの言語げんご学者がくしゃすべてではない)はこの方法ほうほう拒否きょひしている(Campbell 2001, p. 45)[5]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Campbell, Lyle; Poser, William J. (2008). Language Classification: History and Method. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 978-0-511-41381-0 
  2. ^ a b Greenberg, Joseph H. (1957). Essays in Linguistics. Chicago: University of Chicago Press.
  3. ^ Greenberg, Joseph H. (2005). Genetic Linguistics: Essays on Theory and Method, edited by William Croft. Oxford. Oxford University Press.
  4. ^ Ruhlen, Merritt (1987). A Guide to the World's Languages. Stanford: Stanford University Press.
  5. ^ Campbell, Lyle (2004). Historical Linguistics: An Introduction (2d ed.). Cambridge, Massachusetts: MIT Press.