警察けいさつほう

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警察けいさつほう
日本国政府国章(準)
日本にっぽん法令ほうれい
法令ほうれい番号ばんごう 昭和しょうわ29ねん法律ほうりつだい162ごう
種類しゅるい 行政ぎょうせい組織そしきほう
効力こうりょく 現行げんこうほう
成立せいりつ 1954ねん6がつ7にち
公布こうふ 1954ねん6がつ8にち
施行しこう 1954ねん7がつ1にち
所管しょかん 国家こっか公安こうあん委員いいんかい
警察庁けいさつちょう
国家こっか地方ちほう警察けいさつ本部ほんぶ総務そうむ長官ちょうかん官房かんぼう
おも内容ないよう 警察けいさつ組織そしき管理かんり運営うんえい
関連かんれん法令ほうれい 警察官けいさつかん職務しょくむ執行しっこうほう警察けいさつほう施行しこうれい警察けいさつほう施行しこう規則きそく
条文じょうぶんリンク 警察けいさつほう - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
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警察けいさつほう(けいさつほう、昭和しょうわ29ねん法律ほうりつだい162ごう)は、「個人こじん権利けんり自由じゆう保護ほごし、公共こうきょう安全あんぜん秩序ちつじょ維持いじするため、民主みんしゅてき理念りねん基調きちょうとする警察けいさつ管理かんり運営うんえい保障ほしょうし、かつ、能率のうりつてきにその任務にんむ遂行すいこうするに警察けいさつ組織そしきさだめること」(1じょう)を目的もくてきとする、日本にっぽん法律ほうりつである。

1947ねん昭和しょうわ22ねん)に制定せいてい、1954ねん昭和しょうわ29ねん)の全部ぜんぶ改正かいせいにより現在げんざい法律ほうりつとなる。改正かいせいまえ警察けいさつほう昭和しょうわ22ねん法律ほうりつだい196ごう)は、きゅう警察けいさつほう(きゅうけいさつほう)ともいう。全部ぜんぶ改正かいせいによって、国家こっか地方ちほう警察けいさつ自治体じちたい警察けいさつ廃止はいしされ、警察庁けいさつちょう都道府県とどうふけん警察けいさつ設置せっちされた。

沿革えんかく[編集へんしゅう]

きゅう警察けいさつほう制定せいてい[編集へんしゅう]

戦前せんぜん日本にっぽん警察けいさつは、内務省ないむしょう警保きょくによる中央ちゅうおう集権しゅうけん体制たいせい運営うんえいされており治安ちあん警察けいさつほうなど旧法きゅうほうもとづいて活動かつどうした。しかし、だい東亜とうあ戦争せんそう太平洋戦争たいへいようせんそうだい世界せかい大戦たいせん)で日本にっぽん敗戦はいせんし、連合れんごう国軍こくぐん統治とうちかれると、GHQ民政みんせいきょく日本にっぽん警察けいさつ機構きこう天皇てんのうせい維持いじ擁護ようご目的もくてきとした民主みんしゅてき警察けいさつ体制たいせいであると断罪だんざいし、内務省ないむしょう廃止はいしふくめた全面ぜんめんてき見直みなおしを要求ようきゅうしてきた。

1947ねん昭和しょうわ22ねん9月3にちだい46だい内閣ないかく総理そうり大臣だいじん片山かたやまあきらが「公安こうあんちょう設置せっち法案ほうあん」をじくとする「警察けいさつ制度せいど改組かいそ計画けいかく」をGHQそう司令しれいかんダグラス・マッカーサー提出ていしゅつした。これにたいして、マッカーサーは同月どうげつ16にちづけ書簡しょかんおくり、警察けいさつ法案ほうあん起草きそう指示しじした。書簡しょかん内容ないようもとづいて起草きそうされた[1]警察けいさつ法案ほうあんだい1かい特別とくべつ国会こっかい可決かけつ成立せいりつし、同年どうねん12月17にちづけ官報かんぽう公布こうふ内務省ないむしょう同年どうねんまつ業務ぎょうむ終了しゅうりょうして、うちこときょく改組かいそされ、1948ねん昭和しょうわ23ねん3月6にち本法ほんぽう施行しこうともうちこときょく解体かいたいされた。

きゅう警察けいさつほう理念りねん特徴とくちょうは、つぎのようなものであった[2]

地方ちほう分権ぶんけん
従来じゅうらい中央ちゅうおう集権しゅうけんてき国家こっか警察けいさつ制度せいどあらため、およ人口じんこう5,000にん以上いじょう市街しがいてき町村ちょうそんかれた自治体じちたい警察けいさつ基本きほんとして、国家こっか地方ちほう警察けいさつとの二本立にほんだての制度せいどとなった。
民主みんしゅてき管理かんり
市民しみん代表だいひょうしゃによって構成こうせいされる合議ごうぎたい機関きかんである公安こうあん委員いいんかい制度せいど採用さいようし、警察けいさつ管理かんり民間みんかんじんゆだねることにした。
責務せきむ限定げんてい
警察けいさつ責務せきむが「国民こくみん生命せいめい身体しんたいおよ財産ざいさん保護ほごにんじ、犯罪はんざい捜査そうさ被疑ひぎしゃ逮捕たいほおよ公安こうあん維持いじたること」に限定げんていされた。

きゅう警察けいさつほう改正かいせい[編集へんしゅう]

警察けいさつ地方ちほう分権ぶんけんとしての自治体じちたい警察けいさつは、自治体じちたい財政ざいせい負担ふたんおおきく、ぎた警察けいさつ組織そしき細分さいぶん過度かど縄張なわばあらそいをまねき、広域こういき捜査そうさ困難こんなんをもたらした。また、国家こっか地方ちほう警察けいさつ自治体じちたい警察けいさつ独立どくりつ対等たいとうのためくに治安ちあんたいする責任せきにん不明ふめいかくになるとう問題もんだい発生はっせいした[2]。そのほか、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく建国けんこく東西とうざい冷戦れいせん激化げきかにより、自治体じちたい警察けいさつみのおやであるGHQの占領せんりょう政策せいさく急速きゅうそくみぎ旋回せんかいはじめ、警察けいさつ制度せいど中央ちゅうおう集権しゅうけん復活ふっかつさせるうごきがはじめていた(ぎゃくコース参照さんしょう)。

そこで、1951ねん昭和しょうわ26ねん)6がつ12にちほう改正かいせいでは、人口じんこう5000にん以上いじょう住民じゅうみん投票とうひょう付託ふたくにより、自治体じちたい警察けいさつ存廃そんぱいめることができるようになり、小規模しょうきぼ町村ちょうそん自治体じちたい警察けいさつ国家こっか地方ちほう警察けいさつ吸収きゅうしゅうすることが可能かのうになった。その結果けっか、ほんのすうねんで1せん以上いじょう自治体じちたい警察けいさつ廃止はいしされ、のこるは財力ざいりょく余裕よゆうのある大都市だいとし自治体じちたい警察けいさつのみとなっていた。警察けいさつ維持いじする市町村しちょうそんすうは1951ねん10がつに560、1954ねん1がつに406と減少げんしょうした。

また、この改正かいせいにより国家こっか地方ちほう警察けいさつ自治体じちたい警察けいさつとのあいだ人事じんじ交流こうりゅう解禁かいきんされ、公安こうあん警察けいさつ事実じじつじょう一体いったい運用うんようと、それにともな国家こっか地方ちほう警察けいさつから自治体じちたい警察けいさつへの裏金うらがね移動いどうおこなわれるようになった[3]

1954ねん全面ぜんめん改正かいせい[編集へんしゅう]

1952ねん昭和しょうわ27ねん4がつ28にちサンフランシスコ講和こうわ条約じょうやく発効はっこうし、日本にっぽん独立どくりつ主権しゅけん回復かいふくすると、きゅう警察けいさつほう内在ないざいする問題もんだい根本こんぽんてき解決かいけつすべく、警察けいさつ制度せいど改革かいかくはじまり、1954ねん昭和しょうわ29ねん6月8にちきゅう警察けいさつほう全面ぜんめん改正かいせいしたしん警察けいさつほう公布こうふされ、同年どうねん7がつ1にちから施行しこうされた。しん警察けいさつほうでは、従来じゅうらい国家こっか地方ちほう警察けいさつ自治体じちたい警察けいさつによる本立ほんだての制度せいど廃止はいしし、あらたに警察庁けいさつちょう都道府県とどうふけん警察けいさつ発足ほっそくさせて、都道府県とどうふけん警察けいさつ警視けいしただし以上いじょう国家こっか公務員こうむいんとする地方ちほう警務けいむかん制度せいど導入どうにゅうするなど日本にっぽん警察けいさつ機構きこうふたた中央ちゅうおう集権しゅうけんし、また内閣ないかく責任せきにん明確めいかくすべく、国家こっか公安こうあん委員いいんかい委員いいんちょう国務大臣こくむだいじんてることになった。

1954ねん昭和しょうわ29ねん警察けいさつほう改正かいせいともな乱闘らんとう国会こっかい[編集へんしゅう]

1954ねん昭和しょうわ29ねん)6がつ3にち乱闘らんとう様子ようす
1954ねん昭和しょうわ29ねん)6がつ3にち丸腰まるごし介入かいにゅうした警官けいかんたい暴行ぼうこうけた

ほう改正かいせいあんは、1954ねん昭和しょうわ29ねん2がつ15にちだい5吉田よしだ内閣ないかくにより提出ていしゅつされた[4]

5月15にち法案ほうあん衆議院しゅうぎいん賛成さんせい254、反対はんたい127で可決かけつされ、参議院さんぎいん送付そうふされる[5]

6月3にち衆議院しゅうぎいんほん会議かいぎは、2日間にちかん会期かいき延長えんちょうをめぐりだい混乱こんらんとなる。ついには議長ぎちょうつつみ康次郎やすじろう議院ぎいん警察けいさつけん発動はつどう要請ようせいにより警官けいかんたいはじめて国会こっかいうちにはいった[6]

6月4にち社会党しゃかいとう左派さは社会党しゃかいとう右派うはは、会期かいき延長えんちょう無効むこうであると共同きょうどう声明せいめいした。以後いご社会党しゃかいとう両派りょうは日本にっぽん自由党じゆうとう労働ろうどうしゃ農民のうみんとう労農ろうのうとう)・日本にっぽん共産党きょうさんとう共産党きょうさんとう)は出席しゅっせきしなかった(参議院さんぎいんでは延長えんちょう議決ぎけつがなかった)。

6月5にち衆議院しゅうぎいんでは、社会党しゃかいとう両派りょうは日本にっぽん自由党じゆうとう労農ろうのうとう共産党きょうさんとう欠席けっせきのまま、10日間にちかん会期かいき延長えんちょう議決ぎけつした(参議院さんぎいんでは議決ぎけつがなかった)。

6月7にち参議院さんぎいんで、地方ちほう行政ぎょうせい委員いいんかいでの審議しんぎちゅうに、中間ちゅうかん報告ほうこくによりほん会議かいぎ審議しんぎにはいり、可決かけつ起立きりつ採決さいけつ)され成立せいりつした[5]よく8にち公布こうふ[4]。7月1にち施行しこう

会期かいき延長えんちょう議決ぎけつ混乱こんらんによって警察けいさつほう改正かいせい無効むこう事件じけん発生はっせいした。

6月15にち衆議院しゅうぎいんほん会議かいぎは、つつみツルヨら45議員ぎいんの30日間にちかん登院とういん停止ていし可決かけつ、つづいて全員ぜんいん協議きょうぎかいをひらき、乱闘らんとう事件じけんかんし、自粛じしゅく決議けつぎした。

不祥事ふしょうじ頻発ひんぱつによる2000ねん警察けいさつほう改正かいせい[編集へんしゅう]

1999ねんごろから2000ねんにかけては各地かくち警察けいさつ不祥事ふしょうじ相次あいつぎ、警察けいさつたいする社会しゃかいてき信用しんよう失墜しっついし、国家こっか公安こうあん委員いいんかい警察けいさつ刷新さっしん会議かいぎ設置せっちするにいたった[7]どう会議かいぎ公安こうあん委員いいんかい制度せいどについても検討けんとうおこない、2000ねん7がつ13にち改革かいかく方針ほうしんとして「警察けいさつ刷新さっしんかんする緊急きんきゅう提言ていげん」を提言ていげんした[8]

それまで公安こうあん委員いいんかい委員いいんには任期にんき制限せいげんがなかったが、2000ねん改正かいせい警察けいさつほうは、国家こっか公安こうあん委員いいん再任さいにんは1かいまで、都道府県とどうふけん公安こうあん委員いいん再任さいにんは2かいまで回数かいすう制限せいげんもうけた(40じょう2こう)。

一方いっぽう公安こうあん委員いいんかい委員いいん非常勤ひじょうきんであることについて、「都道府県とどうふけん公安こうあん委員いいんかいについては、法律ほうりつじょう委員いいん非常勤ひじょうきんとされているが、地方ちほう実情じつじょうによって、適任てきにんしゃ確保かくほ可能かのうであるかとの問題もんだい考慮こうりょうえ常勤じょうきんとすることができるようにすることが適当てきとうである」と声明せいめいしたものの、改正かいせい法案ほうあんには反映はんえいされなかった。

日本にっぽん弁護士べんごし連合れんごうかいは2000ねん5がつ26にち、「警察けいさつ制度せいど抜本ばっぽんてき改革かいかくもとめる決議けつぎ」をおこない、公安こうあん委員いいんかい選任せんにん公選こうせんせいによるべきであること、民意みんい反映はんえいする方法ほうほう採用さいようすべきであると声明せいめいした[9]

構成こうせい[編集へんしゅう]

  • だい1しょう 総則そうそくだい1じょう - だい3じょう
  • だい2しょう 国家こっか公安こうあん委員いいんかいだい4じょう - だい14じょう
  • だい3しょう 警察庁けいさつちょう
    • だい1せつ 総則そうそくだい15じょう - だい18じょう
    • だい2せつ 内部ないぶ部局ぶきょくだい19じょう - だい26じょう
    • だい3せつ 附属ふぞく機関きかんだい27じょう - だい29じょう
    • だい4せつ 地方ちほう機関きかんだい30じょう - だい33じょう
    • だい5せつ 職員しょくいんだい34じょうだい35じょう
  • だい4しょう 都道府県とどうふけん警察けいさつ
    • だい1せつ 総則そうそくだい36じょうだい37じょう
    • だい2せつ 都道府県とどうふけん公安こうあん委員いいんかいだい38じょう - だい46じょうの2)
    • だい3せつ 都道府県とどうふけん警察けいさつ組織そしきだい47じょう - だい58じょう
    • だい4せつ 都道府県とどうふけん警察けいさつ相互そうごあいだ関係かんけいとうだい59じょう - だい61じょうの3)
  • だい5しょう 警察けいさつ職員しょくいんだい62じょう - だい70じょう
  • だい6しょう 緊急きんきゅう事態じたい特別とくべつ措置そちだい71じょう - だい75じょう
  • だい7しょう 雑則ざっそくだい76じょう - だい81じょう
  • 附則ふそく

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん
  1. ^ 田上たうえ穣治じょうじ(1958)『警察けいさつほう』(法律ほうりつがく全集ぜんしゅう12)有斐閣ゆうひかく、21ぺーじ以下いか
  2. ^ a b (2) きゅう警察けいさつほう制定せいてい」『平成へいせい16(2004)ねん 警察けいさつ白書はくしょ警察庁けいさつちょう原著げんちょ2004ねん9がつhttps://www.npa.go.jp/hakusyo/h16/hakusho/h16/html/F2101020.html2010ねん2がつ22にち閲覧えつらん 
  3. ^ 古川ふるかわ利明としあき日本にっぽん裏金うらがね だいさんしょかん p239
  4. ^ a b 日本法令にほんほうれい索引さくいん
  5. ^ a b 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん 日本法令にほんほうれい索引さくいん 警察けいさつ法案ほうあん
  6. ^ 史料しりょうにみる日本にっぽん近代きんだい: 乱闘らんとう国会こっかい衆院しゅういん事務じむ総長そうちょうなげ 国会図書館こっかいとしょかん
  7. ^ 国家こっか公安こうあん委員いいんかい警察けいさつ刷新さっしん会議かいぎ概要がいよう。2000ねん
  8. ^ 高橋たかはし寛人ひろと 2013.
  9. ^ 日本にっぽん弁護士べんごし連合れんごうかい 2003.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]