東方とうほう諸しょ教会きょうかい

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東方とうほう諸しょ教会きょうかい（とうほうしょきょうかい、東方とうほう正統せいとう教会きょうかい・東方とうほうキリスト教きりすときょうなどとも）は、西にしヨーロッパからみて東方とうほうに位置いちする地域ちいきで主おもに信仰しんこうされているキリスト教きりすときょうの諸しょ教派きょうはのうち、正教会せいきょうかい（ギリシャ正教せいきょう）にもカトリック教会きょうかいにも帰属きぞくしない教会きょうかいの総称そうしょうである。東方とうほう教会きょうかいに分類ぶんるいされる。

「東方とうほう諸しょ教会きょうかい」には、エフェソス公こう会議かいぎで既すでに分わかれた（つまり「非ひエフェソス」であって「非ひカルケドン」ではない）ネストリウス派はの流ながれを汲くむアッシリア東方とうほう教会きょうかいが含ふくまれる用例ようれい（この場合ばあい、非ひカルケドン派は＋アッシリア東方とうほう教会きょうかい＝東方とうほう諸しょ教会きょうかい）^[1]と、アッシリア東方とうほう教会きょうかいを含ふくまず非ひカルケドン派は正教会せいきょうかいと同義どうぎとして扱あつかう場合ばあいがある^[2]。

日本にっぽんでは東方とうほう正統せいとう教会きょうかい^[3]等ひとしと呼よんでいる事例じれいがある。

キリスト教きりすときょう諸しょ教派きょうはの成立せいりつの概略がいりゃくを表あらわす樹き形がた図ず。更さらに細こまかい分類ぶんるい方法ほうほうと経緯けいいがあり、この図ずはあくまで概略がいりゃくを示しめすものである。

概要がいよう

東方とうほう諸しょ教会きょうかいは、カルケドン公こう会議かいぎで異端いたんとされて東ひがしロろーマ帝国まていこくの教会きょうかい（のちの正教会せいきょうかい）から分離ぶんりした、いわゆる単たん性せい論ろんと看做みなされた派はと、ネストリウス派はの教会きょうかいを指さす総称そうしょうである。

「単たん性せい論ろん派は」と呼よばれる諸しょ教会きょうかいは、自みずからを「単たん性せい論ろん」とはみなしておらず（これらの教会きょうかいはエウテュケス主義しゅぎのみを「単たん性せい論ろん」と捉とらえ、自じ派はの「合性あいしょう論ろん」を単たん性せい論ろんとは看做みなさず）、単たん性せい論ろん教会きょうかいと分類ぶんるいされることを拒絶きょぜつ・否定ひていしている。

詳細しょうさいは「単たん性せい説せつ」および「合性あいしょう論ろん」を参照さんしょう

合性あいしょう論ろんを採とる諸しょ教会きょうかいに対たいするより中立ちゅうりつ的てきな呼称こしょうとしては「非ひカルケドン派は」がある。非ひカルケドン派はは広義こうぎにはネストリウス派は教会きょうかいを含ふくみ得えなくはない（エフェソス公こう会議かいぎで分わかれたのち、カルケドン公こう会議かいぎでも分離ぶんりが再さい確認かくにんされたため）が、通常つうじょうではこれを含ふくまず、専もっぱら合性あいしょう論ろんを採とる諸しょ教会きょうかいを指さす用法ようほうの方ほうが一般いっぱん的てきである。

また、英語えいごのOriental Orthodoxy（オリエンタル・オーソドックス)には、ネストリウス派はのアッシリア東方とうほう教会きょうかいが含ふくまれないが、日本語にほんごの「東方とうほう諸しょ教会きょうかい」には含ふくまれることが多おおいため、"Oriental Orthodoxy"と「東方とうほう諸しょ教会きょうかい」の概念がいねんは完全かんぜんには一致いっちしない。

東方とうほう諸しょ教会きょうかいは、異称いしょうを「非ひメルキト派は」ともいう。メルキトとはシリア語ごの「皇帝こうていの，皇帝こうてい派はの」を意味いみする malkayaに由来ゆらいし、東ひがしロろーマ帝国まていこく治下ちか、東方とうほう諸しょ教会きょうかいが正教会せいきょうかいを「メルキト教会きょうかい」と呼よんだことに起因きいんする名なである。ただし正教会せいきょうかい側がわが「メルキト」を自称じしょうすることはない。

東方とうほう諸しょ教会きょうかいや正教会せいきょうかいから分離ぶんりしてローマ教皇きょうこうの権威けんいとカトリックの教義きょうぎを認みとめ、独自どくじの典礼てんれい（東方とうほう典礼てんれい）を維持いじしたままローマ・カトリックの傘下さんかに移うつった教会きょうかい（マロン典礼てんれいカトリック教会きょうかいなど）を東方とうほう典礼てんれいカトリック教会きょうかい（ユニア教会きょうかい・帰一きいつ教会きょうかい）と言いう。東方とうほう典礼てんれいカトリック教会きょうかいは、一般いっぱんには東方とうほう諸しょ教会きょうかいに含ふくめない。

特徴とくちょう・分布ぶんぷ

東方とうほう諸しょ教会きょうかいのうち非ひカルケドン派は正教会せいきょうかいは、聖母せいぼマリアを神かみの母ははとして認みとめ崇敬すうけいしている（ネストリウス派は教会きょうかいは認みとめていない）。また、主教しゅきょう・司祭しさい・輔祭といった聖職せいしょく位階いかい制度せいどを有ゆうしており、修道院しゅうどういん制度せいどを有ゆうしている。但ただし、修道しゅうどう会かい制度せいどは存在そんざいしない。

主おもにエジプト・イスラエル・ヨルダン・シリア・レバノン・イラクといった中東ちゅうとう、ならびにスーダン・エチオピア・エリトリアといった北東ほくとうアフリカに分布ぶんぷする。エジプトでは人口じんこうの1割わりがコプト正教会せいきょうかいに属ぞくし、エチオピアでは人口じんこうの半数はんすう以上いじょうがエチオピア正教会せいきょうかいに属ぞくしており、その規模きぼは小ちいさくない。また米国べいこく・西欧せいおう諸国しょこくへの移民いみん達たちの間あいだでも信仰しんこうされており、そうした移民いみん等とうを通つうじて近年きんねん、中東ちゅうとう・北東ほくとうアフリカ以外いがいの地域ちいきへの広ひろがりをみせつつある。

東方とうほう諸しょ教会きょうかいの一覧いちらん

非ひカルケドン派は正教会せいきょうかい

シリア正教会せいきょうかい: 使徒しと時代じだいのアンティオキア教会きょうかいからの継承けいしょうをカルケドン派は正教会せいきょうかいと同様どうように自覚じかくしている。シリア語ごとアラビア語ごを奉たてまつ神かみ礼あやに用もちいている。ヤコブ派はという異称いしょうがあるが、ヤコボス・バラダイオスの働はたらきをシリア正教会せいきょうかい自身じしんも尊重そんちょうするものの、この異称いしょうは蔑称べっしょうとしての傾向けいこうを持もっており、シリア正教会せいきょうかい自身じしんが使つかう事ことは無ない。主おもにシリア、トルコに分布ぶんぷする。首座しゅざ主教しゅきょうはアンティオキア総そう主教しゅきょうであり、ギリシャ正教せいきょう系けいのアンティオキア総そう主教しゅきょうと並立へいりつする態たいをなしている。その管掌かんしょう範囲はんいはシリア一いち国こくにとどまらずイラクなどにも及およんでおり、欧米おうべいにも移民いみんを通つうじて普及ふきゅうするなどしている。また、歴史れきし的てき経緯けいいからインド正教会せいきょうかいも傘下さんかにある。
アルメニア使徒しと教会きょうかい（アルメニア正教会せいきょうかい）: 301年ねん、アルメニア王国おうこくが世界せかいで初はじめてキリスト教きりすときょうを国教こっきょう化かしたことに始はじまる。主おもにアルメニア、トルコに分布ぶんぷし、アメリカにも多おおい。東方とうほう典礼てんれいカトリック教会きょうかいであるアルメニア典礼てんれいカトリック教会きょうかいとは別べつのもの。
コプト正教会せいきょうかい: 「コプト」とはエジプトの古ふるい呼よび名な。コプト語ごとアラビア語ごで奉たてまつ神かみ礼あやを行おこなう。主おもにエジプトに分布ぶんぷするが、海外かいがいへの移民いみんを通とおしてエジプト国外こくがい（イギリス・フランスなど）にも広ひろがりを見みせている（英国えいこく正教会せいきょうかい（英語えいご版ばん）はコプト正教会せいきょうかいに連つらなる）。首座しゅざ主教しゅきょうであるアレクサンドリア総そう主教しゅきょうは教皇きょうこう（パパ：ギリシア語ご: Πάπας、英語えいご: Pope）の称号しょうごうを古ふるくから保持ほじしており、「パパ・アレクサンドリア総そう主教しゅきょう」や「コプト教皇きょうこう」などと称しょうされる。ギリシャ正教せいきょう系けいの正教会せいきょうかいにもアレクサンドリア総そう主教しゅきょうが居おり、これと並立へいりつする態たいをなしているのは、上記じょうきの通とおり並立へいりつして存在そんざいするアンティオキア総そう主教しゅきょうと事情じじょうが似にている。
エチオピア正教会せいきょうかい: エチオピア正教会せいきょうかいはサハラより南みなみで唯一ゆいいつ、植民しょくみん地ち時代じだい以前いぜんから存在そんざいする教会きょうかいである。アクスム王国おうこくはコプト（エジプト）からキリスト教きょうを受うけ入いれ国教こっきょうとし、エチオピア帝国ていこく時代じだいまで国教こっきょうとされていた。1959年ねんに独立どくりつ教会きょうかいとなるまではコプト正教会せいきょうかいの一部いちぶであったが、現在げんざい非ひカルケドン派は正教会せいきょうかいの中なかでは最大さいだい規模きぼを誇ほこる。独特どくとくの形状けいじょうをした、意匠いしょうが凝こらされた十字架じゅうじかが用もちいられている事ことでも知しられる。エチオピアクロスは様々さまざまな輸入ゆにゅう雑貨ざっか店てん等とうで扱あつかわれている。
エリトリア正教会せいきょうかい: エリトリア独立どくりつに伴ともない、上記じょうきのエチオピア正教会せいきょうかいから独立どくりつして成立せいりつした教会きょうかい。
インド正教会せいきょうかい: 南みなみインドのマラバール海岸かいがん一帯いったいに分布ぶんぷする。; 「インドにおける非ひカルケドン派は」も参照さんしょう

ネストリウス派は

アッシリア東方とうほう教会きょうかい: ネストリウス派はに起源きげんを持もつ。主おもにイラク、トルコに分布ぶんぷし、アメリカにも多おおい。東方とうほう典礼てんれいカトリック教会きょうかいであるカルデア典礼てんれいカトリック教会きょうかいとは別べつのもの。ネストリウス派ははカルケドン公こう会議かいぎでも改あらためて主流しゅりゅう派はから異端いたんとされたものの、カルケドン公こう会議かいぎ以前いぜんのエフェソス公こう会議かいぎで既すでに異端いたんとされていたため、当とう教会きょうかいを非ひカルケドン派はという呼称こしょうのカテゴリには含ふくめないことがある。