アクスム王国 おうこく
መንግሥተ አኵስም
アクスム王国 おうこく の最盛 さいせい 期 き の版図 はんと
アクスム王国 おうこく (アクスムおうこく)は、過去 かこ のエチオピア 東北 とうほく 部 ぶ 、エリトリア 地域 ちいき に栄 さか えた交易 こうえき 国 こく である。
紀元前 きげんぜん 5世紀 せいき 頃 ころ から紀元 きげん 後 ご 1世紀 せいき までに交易 こうえき 国 こく になった。325年 ねん または328年 ねん にコプト派 は キリスト教 きりすときょう が伝来 でんらい した。7世紀 せいき に衰退 すいたい し始 はじ め、内陸 ないりく の高地 こうち へ追 お いやられてクシ系 けい のアガウ (Agaw) 族 ぞく の女 おんな 族長 ぞくちょう グディット(Gudit;ジュディット〈Judith〉、ヨディット〈Yodit〉とも)によって950年 ねん 頃 ころ 滅 ほろ ぼされたとされる。ただし、グディットはただ単 たん に非 ひ キリスト教徒 きりすときょうと ないしユダヤ教 きょう 徒 いたずら であって、彼女 かのじょ の支配 しはい の後 のち 、アクスム王朝 おうちょう の流 なが れを汲 く むアンベッサ・ウディム (Anbessa Wudim) が即位 そくい してからしばらくして、アガウ族 ぞく が住 す む地域 ちいき まで進出 しんしゅつ したところで、1137年 ねん にアクスム王国 おうこく が滅亡 めつぼう したという説 せつ もある。面積 めんせき は350年 ねん に約 やく 350万 まん 平方 へいほう キロメートル と広大 こうだい だった。
エザナ王 おう の石柱 せきちゅう 。高 たか さ23メートル に達 たっ する。
アクスム市 し の北側 きたがわ にある石柱 せきちゅう のある公園 こうえん 。アクスム王国 おうこく の墓地 ぼち でもある。中央 ちゅうおう にエザナ王 おう の石柱 せきちゅう 、左 ひだり 中央 ちゅうおう に倒 たお れた「大石 おおいし 柱 はしら (great stele)」が見 み える。
一般 いっぱん に、アクスムは現在 げんざい のイエメン に当 あ たる南 みなみ アラビア から紅海 こうかい を越 こ えてきたセム語 ご 系 けい のサバ(シェバ)人 にん が中心 ちゅうしん になって建国 けんこく されたと考 かんが えられている。一方 いっぽう 、少 すく なくとも紀元前 きげんぜん 1000年 ねん 位 い にはセム語 ご 系 けい 民族 みんぞく が存在 そんざい したこととサバ移民 いみん が数 すう 十 じゅう 年 ねん しかエチオピアに留 とど まっていなかったことを示唆 しさ する証拠 しょうこ を示 しめ して 、アクスムはより古 ふる い土着 どちゃく のダモト(D'mtないしDa'amot)王国 おうこく の跡 あと を継 ままし いだ者 しゃ 達 たち の国 くに である、と主張 しゅちょう する学者 がくしゃ もいる。
王 おう たちは、ソロモン王 おう とシバの女王 じょおう の子 こ であるメネリク1世 せい の血筋 ちすじ を引 ひ いているとして、自 みずか らの正当 せいとう 性 せい を主張 しゅちょう し、“negusa nagast”(「王 おう の中 なか の王 おう 」)と公称 こうしょう していた。
アクスム王国 おうこく はインド とローマ (後 のち に東 ひがし ロ ろ ーマ帝国 まていこく はアクスムに多大 ただい な影響 えいきょう を与 あた えた)と主 おも に交易 こうえき した。象牙 ぞうげ ・鼈甲 べっこう ・金 きむ ・エメラルド を輸出 ゆしゅつ し、絹 きぬ ・香辛料 こうしんりょう ・手工業 しゅこうぎょう 製品 せいひん を輸入 ゆにゅう した。2世紀 せいき にアクスムは紅海 こうかい を越 こ えてアラビア半島 はんとう に属国 ぞっこく となるよう迫 せま り、また北 きた エチオピアを征服 せいふく した。350年 ねん にはクシュ 王国 おうこく (メロエ王国 おうこく )を征服 せいふく した。
アクスム王国 おうこく は独自 どくじ の硬貨 こうか を持 も ったアフリカで最初 さいしょ の国 くに で、エンデュビス (Endubis) 王 おう からアルマー (Armah) 王 おう に至 いた る治世 ちせい の間 あいだ (大体 だいたい 270年 ねん から670年 ねん まで)同 どう 時代 じだい のローマの通貨 つうか を模倣 もほう した金貨 きんか や銀貨 ぎんか や銅貨 どうか が鋳造 ちゅうぞう されていた。硬貨 こうか が作 つく られたことにより、取引 とりひき は簡単 かんたん になりそして同時 どうじ に硬貨 こうか は便利 べんり なプロパガンダの道具 どうぐ 、また王国 おうこく の収入 しゅうにゅう 源 げん であった。
アクスム王国 おうこく は最盛 さいせい 期 き 、現在 げんざい のエリトリア 、北部 ほくぶ エチオピア、イエメン、北部 ほくぶ ソマリア 、ジブチ 、北部 ほくぶ スーダン 、に広 ひろ がっていた。首都 しゅと はアクスム で現在 げんざい の北部 ほくぶ エチオピアにあった。他 た の主要 しゅよう 都市 とし にイェハ (Yeha)、ハウルティ (Hawulti)、そして現在 げんざい エリトリアにある重要 じゅうよう な港湾 こうわん 都市 とし アドゥリス (Adulis) をはじめとしてマタラ (Matara) およびコハイト (Qohaito) がある。この時 とき アクスムの住民 じゅうみん は、エチオピアと南 みなみ アラビアにいるセム系 けい 民族 みんぞく とハム系 けい 民族 みんぞく が混 ま ざり合 あ って構成 こうせい されていた。
アクスムは7世紀 せいき にイスラム教 いすらむきょう が起 お こるまで、強大 きょうだい な国 くに で強 つよ い交易 こうえき 力 りょく を持 も っていたが、段々 だんだん と新興 しんこう のイスラム帝国 ていこく に圧迫 あっぱく されていった。アクスムはヒジュラ で預言 よげん 者 しゃ ムハンマド と最初 さいしょ の信者 しんじゃ 達 たち を匿 かくま ったため、イスラム帝国 ていこく が紅海 こうかい とナイル川 がわ の多 おお くの支配 しはい 権 けん を得 え て、アクスムが経済 けいざい 的 てき に孤立 こりつ していってもアクスムとムスリム は友好 ゆうこう 関係 かんけい を保 たも ち、アクスムが侵攻 しんこう されたり、イスラム化 か されたりすることはなかった。
11世紀 せいき もしくは12世紀 せいき にアクスムがあった土地 とち にはザグウェ朝 あさ (Zagwe) が興 おこ った。ザグウェの領土 りょうど はアクスムの領土 りょうど より限 かぎ られていた。その後 ご 、最後 さいご のザグウェ王 おう を殺 ころ した、イクノ・アムラク (Yekuno Amlak) が祖先 そせん の跡 あと を継 つ ぎ、最後 さいご のアクスム王 おう ディル=ニード(またはディナオード;Dil Na'od)の支配 しはい 権 けん を引 ひ き継 つ いで、近代 きんだい のエチオピア帝国 ていこく にまで系譜 けいふ がたどれるソロモン朝 ちょう (英語 えいご 版 ばん ) を開 ひら いた。
3世紀 せいき のものと思 おも われるアクスムの戦勝 せんしょう 碑 ひ には、ゼウス 、ポセイドーン 、アレース など、ギリシャの神 かみ の名 な が見 み られる。この事 こと から、この時代 じだい の王 おう は、ギリシャ やローマ など、地中海 ちちゅうかい 世界 せかい の影響 えいきょう を強 つよ く受 う けていたと考 かんが えられている[1] 。西暦 せいれき 325年 ねん ごろエザナ王 おう の下 もと で、王国 おうこく はそれまでの多神教 たしんきょう の信仰 しんこう に代 か わってキリスト教 きょう を受容 じゅよう した。エチオピア正教会 せいきょうかい の典礼 てんれい では現在 げんざい でもアクスム王国 おうこく の言語 げんご であるゲエズ語 ご が用 もち いられている。アクスムはプレスター・ジョン 伝説 でんせつ の候補 こうほ 地 ち の一 ひと つとして挙 あ げられていた。
アクスムは国際 こくさい 的 てき に且 か つ文化 ぶんか 的 てき に重要 じゅうよう な国 くに だった。エジプト、スーダン、アラビア、中東 ちゅうとう 、インドといった様々 さまざま な文化 ぶんか が集 つど う場所 ばしょ で、アクスムの都市 とし にはユダヤ教徒 きょうと やヌビア 人 ひと ・キリスト教徒 きりすときょうと ・仏教徒 ぶっきょうと さえいた。
王国 おうこく 初期 しょき の西暦 せいれき 300年 ねん ごろ、キリスト教 きょう が伝来 でんらい する前 まえ に建 た てられたと考 かんが えているオベリスク が、現在 げんざい まで残 のこ っている。
Stuart Munro-Hay. Aksum: A Civilization of Late Antiquity. , Edinburgh: University Press. 1991. ISBN 0748601066
Yuri M. Kobishchanov. Axum (Joseph W. Michels, editor; Lorraine T. Kapitanoff, translator). University Park, Pennsylvania: University of Pennsylvania, 1979. ISBN 0271005319
グレアム=コナー著 ちょ 、近藤 こんどう 義郎 よしお ・河合 かわい 信和 のぶかず 訳 わけ 『熱帯 ねったい アフリカの都市 とし 化 か と国家 こっか 形成 けいせい 』 河出書房新社 かわでしょぼうしんしゃ 、1993年 ねん 。
(原著 げんちょ ) Connah,Graham1986, African Civilization , Cambridge University Press. ISBN 4309222552
タムラト,T.著 ちょ 、松田 まつだ 凡訳 「アフリカの角 かく 地域 ちいき 」『ユネスコ アフリカの歴史 れきし 』第 だい 4巻 かん 所収 しょしゅう 、同朋 どうほう 舎 しゃ 出版 しゅっぱん 、1992年 ねん 。ISBN 4-8104-1096-X