汁粉しるこ

御前ごぜん汁粉しるこに玄米げんまい餅もち

粒つぶあんの汁粉しるこ　西日本にしにほんではぜんざいと呼よばれる

懐中かいちゅう汁粉しるこ

汁粉しるこ（しるこ）は、小豆あずきなどを砂糖さとうで甘あまく煮にた汁しるの中なかに、餅もちや白玉しらたま団子だんご、栗ぐりの甘露煮かんろになどを入いれた食たべ物もの。「おしるこ」とも呼よばれる。

定義ていぎ

関東かんとう（東日本ひがしにっぽん）では漉（こ）し餡あんを用もちいたものも粒つぶ餡あんを用もちいたものも区別くべつせず汁粉しること呼よばれるが、こしあんのおしるこは、「御膳汁粉ごぜんじるこ」、つぶあんのおしるこは「田舎いなか汁粉しるこ」または「小倉こくら汁粉しるこ」と呼よび、関西かんさい（西日本にしにほん）では漉こし餡あんを用もちいたものを汁粉しること呼よび、粒つぶ餡あんを用もちいたものはぜんざいと呼よび分わけるのが通例つうれいである。

汁気しるけのない餡あんを餅もちや栗ぐりなどにかけたものを、関東かんとうではぜんざいと呼よび、関西かんさいでは亀山かめやまと呼よぶ。

なお、関東かんとうでは「角かく餅もち｣、関西かんさいでは「丸まる餅もち」が通例つうれいと言いわれている。

おしることぜんざいの違ちがい

		関東かんとう（角かく餅もちを使用しよう）	関西かんさい（丸まる餅もちを使用しよう）
汁気しるけあり	つぶあん	おしるこ（田舎いなか汁粉しるこまたは小倉おぐら汁粉しるこ）	ぜんざい
	こしあん	おしるこ（御膳汁粉ごぜんじるこ）	おしるこ
汁気しるけなし		ぜんざい	亀山かめやままたは金時きんとき

九州きゅうしゅうでの「おしるこ」と「ぜんざい」の違ちがいは、基本きほん的てきに関西かんさいと同様どうようで、漉こし餡あんを使つかった汁気しるけのあるものを「おしるこ」、粒つぶ餡あんで汁気しるけのあるものを「ぜんざい」と呼よぶ。一部いちぶ地域ちいきでは、餅もち入いりを「おしるこ」、白玉しらたま団子だんご入いりを「ぜんざい」と言いい、その逆ぎゃくの場合ばあいもあるとされる。北海道ほっかいどうでは「おしるこ」と「ぜんざい」について、はっきりと区別くべつされていない。沖縄おきなわでは「おしるこ」を「ホットぜんざい」とも呼よぶ。漉こし餡あん・粒つぶ餡あんで呼よび分わけない。

種類しゅるい

甘味あまみであるあんみつとぜんざい

「ぜんざい」も参照さんしょう

粒つぶ餡あん、漉こし餡あんともに汁粉しること呼よぶ地方ちほうでは、餡あん（あん）の違ちがいによって区別くべつされる。

• 田舎いなか汁粉しるこ – つぶし餡あんを用もちいたもの。小倉おぐら汁粉しることも呼よぶ。
• 御前ごぜん汁粉しるこ – 漉（こ）し餡あんを用もちいたもの。

また、江戸えど時代じだい以前いぜんより即席そくせき汁粉しることしての展開てんかいもみられる。

• 懐中かいちゅう汁粉しるこ – もなかの皮かわの中なかに粉末ふんまつの漉こし餡あんとあられを入いれた日本にっぽん古来こらいのインスタント食品しょくひん。湯ゆを掛かけて溶といて食たべる。
• お湯ゆを注そそいで作つくる個こ包装ほうそうの粉末ふんまつ汁粉しるこやカップ汁粉しるこ、缶かん入いりでそのまま飲のむことができるおしるこ缶かんなども販売はんばいされている。

バリエーション

小豆しょうず餡あん以外いがいに、白餡しろあん、栗ぐり、かぼちゃ、百ひゃく合ごう根ね、枝豆えだまめ（ずんだ）などを用もちいて作つくる場合ばあいもある。

• 小豆あずきばっとう - 「はっと」、もしくは「はっとう」は、北関東きたかんとうから東北とうほく地方ちほう南部なんぶに伝つたわるすいとんの様ような食品しょくひん。この「はっと」を入いれたもの。
• 小豆あずきぼうとう - 山梨やまなし県けんで、餅もちの代かわりにほうとうを入いれたもの。
• そばがき汁粉しるこ - 長野ながの県けん松本まつもと市し周辺しゅうへん地域ちいきで、餅もちの代かわりに蕎麦そばがきを入いれたもの。
• かぼちゃ汁粉しるこ - 寒冷かんれいな気候きこうのため稲いねの栽培さいばいが困難こんなんだった青森あおもり県けんや北海道ほっかいどう十勝とかち地方ちほうでは、餅もちの代用だいようとしてかぼちゃ・かぼちゃだんごを入いれたものがある。福井ふくい県けんでは「冬至とうじ南瓜かぼちゃ」と呼よばれる同様どうようの料理りょうりがある。
• 青森あおもり県けん下北しもきた地方ちほうでは、じゃがいもを使つかったいももちを汁粉しるこにして食たべる。
• 岩手いわて県けん久慈くじ地方ちほうでは、じゃがいもとでんぷんで作つくった団子だんごを入いれた汁粉しるこが救荒きゅうこう食しょくとして食たべられていた。
• 山形やまがた県けん鶴岡つるおか市し温海あつみ地域ちいきでは、うるち米まいで作つくられる「べろべろ餅もち」を入いれた汁粉しるこが食たべられる。
• 耳みみうどんおしるこ - 栃木とちぎ県けん佐野さの市しの正月しょうがつ郷土きょうど食しょく「耳みみうどん」をアレンジしたもの。耳みみうどんは同市どうし葛生かずろう町まち仙波せんば地方ちほうに伝つたわる料理りょうりで小麦粉こむぎこを練ねって作つくる。耳みみうどんをおしるこにつけながら食たべる。観光かんこう誘さそえ客きゃくのために、文教大学ぶんきょうだいがく国際こくさい学部がくぶ国際こくさい観光かんこう学科がっかの学生がくせいが考案こうあんした。
• ゆであずき - 台東たいとう区く浅草あさくさ周辺しゅうへんには、ゆであずきと呼よばれる田舎いなか汁粉しるこに似にた甘味あまみ飲料いんりょうが存在そんざいする。田舎いなか汁粉しるこ以上いじょうに水分すいぶん量りょうが多おおくて餅もちなどは通常つうじょう入いれられず、あっさりとした甘味あまみとなっている。現在げんざいではガラスのコップに入いれられ、飲のみ物ものとして供きょうされる事ことが多おおい。そのまま、もしくは冷ひやして飲のまれる。
• じょじょきり - 渥美半島あつみはんとうを中心ちゅうしんに東ひがし三さん河かわ地域ちいきで、うどん状じょうの麺めんを、小豆あずきと砂糖さとうで味あじを調ととのえ甘あまくした汁しるで煮にたもの。別称べっしょう「伊良湖いらこ汁粉しるこ」とも呼よばれる。
• 高知こうち県けんとその周辺しゅうへんでよく作つくられる皿鉢料理さはちりょうりでは、汁物しるもの料理りょうりのひとつとしてぜんざい（小倉こくら汁粉しるこ）が鉢はちに盛もって出だされる。餅もちや白玉しらたま団子だんごの代かわりに、鳴門なると巻まきや蒲鉾かまぼこが用もちいられ、場合ばあいによっては下した煮にした鯛たいやホウボウなどの魚さかなが丸まるごと入いれられる事こともある。

汁粉しるこに類似るいじした食品しょくひんは中国ちゅうごくやベトナムにもあり、栗ぐりやハスの実み、タピオカ団子だんごを中なかに入いれたり、黒くろゴマやココナッツミルクの餡あんを用もちいたデザートがあるが、日本にっぽんの汁粉しることの関連かんれん性せいはよく分わかっていない。

歴史れきし

江戸えど時代じだいの寛永かんえい12年ねん（1635年ねん）の『料理りょうり物語ものがたり』の後段こうだん（宴会えんかいの後のちに出だされる間食かんしょくで、うどんやそうめん、饅頭まんじゅうなどが含ふくまれる）の欄らんに、「すすりだんご」と称しょうされる物ものが載のっている。これはもち米まい6に対たいしうるち米まい4で作つくった団子だんごを小豆あずきの粉こなの汁しるで煮込にこみ、塩しお味あじを付つけたものであり、その上うえから白しろ砂糖さとうを天てん盛ざかりにした一種いっしゅの汁物しるものである。当初とうしょは甘あまい物ものではなく、塩味しおあじで調理ちょうりされており、肴さかなとして用もちいられる事こともあった。鳥取とっとり県けん・島根しまね県けん東部とうぶでの雑煮ぞうににおける汁粉しるこも、元来がんらいはこうした塩味しおあじの料理りょうりであったと考かんがえられる。餡あん餅もちやおはぎなどとの関連かんれん性せいもあるものと見みられる。

現在げんざいは甘あまみを増まして喫茶店きっさてんや甘味あまみ屋や・茶店ちゃみせなどで供きょうされており、大阪おおさかの「夫婦ふうふ善哉ぜんざい」（白玉しらたま団子だんごの善哉ぜんざい（田舎いなか汁粉しるこ）が2つの小ちいさな御ご椀わんに入いれられて供きょうされる）、仙台せんだいのずんだ汁粉しるこなど地域ちいき色しょくの出でた汁粉しるこが出だされている。

特とくに甘味あまみ屋やや茶店ちゃみせにおいては、口直くちなおしや甘味あまみを際立きわだたせるものとして、塩しお昆布こぶや漬物つけものなど塩味しおあじの濃こい食品しょくひんを添そえて出だす事ことが多おおい。また、長崎ながさきの卓袱しっぽく料理りょうりにおいては「梅うめ椀わん」という名なで御前ごぜん汁粉しるこがデザートとして出だされる。梅うめ椀わんという名前なまえは梅うめの花はなの塩漬しおづけを汁粉しるこに浮うかべて出だしたからともいわれる。砂糖さとうが貴重きちょう品ひんだった時代じだいの名残なごりともいわれるが、古ふるい時代じだいの卓袱しっぽく料理りょうりの献立こんだてでは汁粉しるこ以外いがいの菓子かし類るい等とうが出だされており、確証かくしょうは無ない。

塩しお（塩化えんかナトリウム）を添そえることで、小腸しょうちょうで分解ぶんかいされたグルコースとナトリウムとの共きょう輸送ゆそうによりグルコースの速すみやかな体内たいないへの吸収きゅうしゅうを助たすける。

「すすりだんご」と称しょうするものは現在げんざいでも大分おおいた県けん等ひとしに残のこっており、トウモロコシ団子だんごの汁粉しるこを指さしたり、団子だんごを野菜やさいと煮にたすいとんのような料理りょうりを指さす事こともある。

芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけは、昭和しょうわ2年ねんの5月がつに「しるこ」について

「しるこ」は西洋せいよう料理りょうりや支ささえ那な料理りょうりと一いちしよに東京とうきょうの「しるこ」を第だい一いちとしてゐる。

と注目ちゅうもくしている料理りょうりである事ことを書かき、また椀わんのしるこを啜すする事ことなども書かいている。この事ことについて、久保田くぼた万太郎まんたろうの「甘あまい物ものの話はなし」でも触ふれており、久保田くぼた万太郎まんたろうは「まず一気いっきに汁粉しるこを流ながし込こむ」と食たべ方かたの付ついて書かいている。 芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけは久保田くぼた万太郎まんたろうと共ともに、汁粉しるこは「食くう物ものか飲のむものか」熱心ねっしんに話はなしをしていた（「味あじの自由じゆう」より）。小島こじま政二郎まさじろうの「食くいしん坊ぼう」でも同様どうようであり、昔むかしから話題わだいのタネになりやすい料理りょうりであった。

行事ぎょうじ

正月しょうがつの代表だいひょう的てきな食たべ物ものの一ひとつである。島根しまね県けんや鳥取とっとり県けんにおいては雑煮ぞうにとして汁粉しるこを食たべる風習ふうしゅうがある。また香川かがわ県けんなど四国しこくの一部いちぶでは雑煮ぞうにに餡あん入いりの餅もちが使用しようされる。鏡開かがみびらきにおいては、鏡餅かがみもちを用もちいて汁粉しるこやぜんざいを作つくる。小正月こしょうがつに食しょくされる小豆しょうず粥かゆも同様どうようである。日本にっぽんの刑務所けいむしょでは被害ひがい者しゃの命日めいにち、受刑じゅけい者しゃの食事しょくじに汁粉しるこが付つく。

関連かんれん項目こうもく

• 鏡餅かがみもち
• 鏡開かがみびらき
• 汁物しるもの
• あずき
• 餡あん
• 甘味あまみ
• ぜんざい
• 小豆しょうず粥かゆ