(Translated by https://www.hiragana.jp/)
生体工学 - Wikipedia コンテンツにスキップ

生体せいたい工学こうがく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

生体せいたい工学こうがく(せいたいこうがく、えい: bionics)は、科学かがくてき方法ほうほう自然しぜんさかいにあるシステム応用おうようして工学こうがくシステムや最新さいしんテクノロジー設計せっけい研究けんきゅうおこな学問がくもん領域りょういきである。アメリカ空軍くうぐん医師いしジャック・E・スティール1958ねん提唱ていしょうした。「bionics」の語源ごげんは、ギリシアβίον生命せいめいたい)に接尾せつび -ic(-てき、-の方法ほうほうで)がいたもので、「生命せいめいたいてき」を意味いみする。 ちか概念がいねんとして、生体せいたい模倣もほうえい: Biomimetics,Biomimicry)がある。

ロータス効果こうか。ハスの表面ひょうめん顕微鏡けんびきょう画像がぞう3DCGあらわしたもの。

生命せいめいたいには進化しんかてき圧力あつりょくによる高度こうど最適さいてきがあり、効率こうりつてきであるため、これを人工じんこうぶつ構築こうちく応用おうようすることがかんがえられた。古典こてんてきれいとしてはハス植物しょくぶつ表面ひょうめん研究けんきゅうすることにより、ばちすい加工かこう技術ぎじゅつまれた(ロータス効果こうか)。ほかにも、イルカはだ模倣もほうしたふねからコウモリ反響はんきょう定位ていい模倣もほうしたソナーレーダー医用いようちょう音波おんぱ画像がぞうなどがある。

コンピュータの分野ぶんやでは、生体せいたい工学こうがく研究けんきゅうから人工じんこう神経しんけいニューラルネットワークぐん知能ちのうなどがまれた。進化しんかてき計算けいさん生体せいたい工学こうがくてきかんがかた根底こんていにあるが、In silico(コンピュータをもちいて)進化しんかシミュレーションおこなうことからまれたかんがかたであり、自然しぜんかいにはなかった最適さいてきされた手法しゅほうされている。

イギリス バス大学だいがく生体せいたい模倣もほう技術ぎじゅつ専門せんもんジュリアン・ヴィンセントによれば、「現在げんざい生物せいぶつがくテクノロジーあいだでメカニズムが共有きょうゆうされている部分ぶぶんは10%にすぎない」とされている[よう出典しゅってん]

手法しゅほう

[編集へんしゅう]

生体せいたい工学こうがくでは、生物せいぶつ機能きのう実装じっそうするのではなくその構造こうぞう模倣もほうすることが強調きょうちょうされる。たとえば、計算けいさん科学かがくサイバネティックスでは人間にんげん知性ちせいのある存在そんざいたらしめている生体せいたいてき構造こうぞうをモデルしようとし、人工じんこう知能ちのうでは手段しゅだんわずに知能ちのうをモデルしようとする。

自然しぜん生体せいたい生態せいたいから機構きこう明示めいじてきにコピーすることは、自然しぜんかいを「機能きのうすることがすで証明しょうめいされている解法かいほうぐん」のデータベースとしてあつかい、そこから解法かいほうして応用おうようしているとることができる(事例じれいベース推論すいろん)。進化しんかあつりょくにより、生命せいめい間違まちがいのない方法ほうほうえらってきたともわれる。

あらゆる工学こうがく生体せいたい模倣もほうてき側面そくめんつが、このようなかんがかた起源きげんバックミンスター・フラーであるとわれ、それを学問がくもん分野ぶんやとして確立かくりつしたのがジャニン・ベニュス英語えいごばんである。

工学こうがくにおけるモデルという観点かんてんで、生物せいぶつがくてきレベルをつぎのようにけることができる。

  • 自然しぜん生産せいさん手法しゅほう模倣もほう化学かがくてき合成ごうせいした物質ぶっしつす。
  • 自然しぜんかいられる機構きこう/構造こうぞう模倣もほうする(ベルクロテープなど)。
  • 生命せいめいたい社会しゃかいてき行動こうどう生体せいたいてき原則げんそく研究けんきゅうする。たとえば、とり、ハチやアリの創発そうはつてき行動こうどうなど。

実例じつれい

[編集へんしゅう]

かく分野ぶんやでの用法ようほう

[編集へんしゅう]

医学いがく

[編集へんしゅう]

生体せいたい工学こうがくという用語ようごは、生物せいぶつがくかんがかた工学こうがくむことをしめすと同時どうじに、ぎゃくながれもす。したがって、そこには2つの若干じゃっかんことなる意味いみ存在そんざいする。

医学いがくにおいて、生体せいたい工学こうがくとは器官きかん人体じんたい部品ぶひん機械きかいてきなものにえ、改良かいりょうすることを意味いみする。人工じんこう臓器ぞうきなどの生体せいたい工学こうがくてきインプラントは本来ほんらい器官きかん機能きのう模倣もほうし、場合ばあいによってはそれをしのぐこともある。したがって、たんなる義肢ぎしとはことなる。

ドイツでは "Bionik" という用語ようご相当そうとうするが、こちらはより広範囲こうはんい自然しぜんをモデルとして技術ぎじゅつてき解法かいほう開発かいはつすることをす。これは、生物せいぶつ解法かいほうつね進化しんかあつりょくによって最適さいてきさせられているという事実じじつもとづいたかんがかたである。

生体せいたい工学こうがく技術ぎじゅつによるインプラントはまだ初期しょき段階だんかいだが、すでにいくつかの実例じつれいがある。もっともよくられているのは人工じんこう内耳ないじであろう。これはろうしゃのための機器ききである。2004ねんまでに完全かんぜん機能きのうする人工じんこう心臓しんぞう開発かいはつされている[よう出典しゅってん]今後こんごナノテクノロジー進歩しんぽによってさらなる発展はってん見込みこまれている。

ペンシルベニア大学だいがくの Kwabena Boahen は、生物せいぶつ網膜もうまく)とおな方式ほうしき動作どうさするシリコン網膜もうまく開発かいはつした。かれはシリコン網膜もうまくサンショウウオからはっする電気でんき信号しんごう比較ひかくし、どう画像がぞう情報じょうほうつたえていることを検証けんしょうした。

その

[編集へんしゅう]

あまり一般いっぱんてきでない用法ようほうとして、生体せいたい機械きかい結合けつごうして生体せいたい工学こうがく(バイオニクス)とぶことがある。これは、サイボーグとほぼ同義どうぎである。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ Woodley, M. A. (2005). "Synthetic Vegetation: An Ecosystem Prosthesis", Int. J. Environ. Sci. Tech, 2:4, 395-398.
  2. ^ このものからこんなことが!
  3. ^ 「ヤモリのあし」からまれた最先端さいせんたんのテープ
  4. ^ ヤモリにまなび、ガをまねる 未来みらいがたモノづくりの胎動たいどう
  5. ^ モスアイがた反射はんしゃフィルム製造せいぞうプロセスの開発かいはつについて
  6. ^ a b 世界一せかいいちのスピードと斬新ざんしんなデザインで人気にんきはくした新幹線しんかんせん500けい
  7. ^ カタツムリのぼうけがれメカニズムをかしたタイルがあるのです。
  8. ^ http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/22_letter/data/news_2012_vol2/p25.pdf
  9. ^ 家電かでんおどろくべき進化しんかげる! シャープの「生物せいぶつ模倣もほう技術ぎじゅつ」とは?
  10. ^ 優雅ゆうがそらぶ、スマホ制御せいぎょ人工じんこうトンボ
  11. ^ 実験じっけんでクモから地球ちきゅうじょう最強さいきょう繊維せんい誕生たんじょう ゆめ装置そうち活用かつようされる可能かのうせい
  12. ^ 「クモのいと」を人工じんこう合成ごうせい 世界せかい注目ちゅうもくするバイオベンチャー
  13. ^ クモいとえるミノムシのいとつよさの秘密ひみつ科学かがくてき解明かいめい
  14. ^ ザゼンソウ温度おんど制御せいぎょアルゴリズム

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]