ミノムシ

ミノガ科か
ミノムシ
分類ぶんるい
界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 節足動物せっそくどうぶつ門もん Arthropoda 綱つな : 昆虫こんちゅう綱つな Insecta 亜あ綱つな : 有ゆう翅昆虫ちゅう亜あ綱つな Pterygota 下綱しもつな : 新しん翅下綱つな Neoptera 上目うわめ : Panorpida 目め : チョウ目め（鱗翅りんし目め） Lepidoptera 亜あ目め : Glossata 下目しため : Heteroneura 上うえ科か : ヒロズコガ上うえ科か Tineoidea 科か : ミノガ科か Psychidae
学名がくめい
Psychidae Boisduval, 1829
タイプ属ぞく
Psyche Schrank, 1801
シノニム
Psychoidae Agassiz, 1848 Animulina Herrich-Schäffer, 1855 Canephoridae Herrich-Schäffer, 1853 Micropsychiniidae Gomez Bustillo, 1979
英名えいめい
bagworm moth
亜あ科か
Epichnopteriginae Metisinae Naryciinae オオミノガ亜あ科か Oiketicinae Placodominae Pseudarbelinae Psychinae Scoriodytinae Taleporiinae Typhoniinae

ミノムシ（蓑虫みのむし、避債蟲ちゅう）は、チョウ目め・ミノガ科か（学名がくめい: Psychidae）のガの幼虫ようちゅう。一般いっぱんには、その中なかでもオオミノガ、チャミノガの幼虫ようちゅうを指さす。

幼虫ようちゅうが作つくる巣すが、藁わらで作つくった雨具あまぐ「蓑みの」に形かたちが似にているため、日本にっぽんでは「ミノムシ」と呼よばれるようになった。

形態けいたい・生態せいたい

多おおくの種たねで雌めすの成虫せいちゅうは翅や脚あしを持もたないが、脚あしを残のこしている種たねや痕跡こんせき的てきに退化たいかした翅を持もつ種たねもある。中なかにはヒモミノガ類るいのように雌めすが雄ゆう同様どうように羽化うかする種たねも存在そんざいする。

幼虫ようちゅうはバラ科か、カキノキ科かなどの果樹かじゅや、サツキ等ひとしの葉はを、特とくに7月がつから8月がつの梅雨つゆ後ごの夏期かきに食害しょくがいする。摂食せっしょく後ごの枯葉かれはや枯枝かれえだに粘性ねんせいの糸いとを絡からめ、袋ふくろ状じょうの巣すを作つくって枝えだからぶら下さがる。

下位かい分類ぶんるい

ミノガ科かには日本にっぽん列島れっとうでは20以上いじょうの種たねが属ぞくしている。

• オオミノガ Eumeta japonica
• チャミノガ Eumeta minuscula - 幼虫ようちゅうは15mm〜25mmとオオミノガの1/2〜1/3にすぎない。蓑みのも小こぶりである。
• クロツヤミノガ Bambalina sp.
• ニトベミノガ Mahasena aurea

• 
  Canephora hirsuta
• 
  Pachythelia villosella
• 
  Thyridopteryx ephemeraeformis
• 
  Megalophanes viciella
• 
  Oiketicus kirbyi
• 
  Phalacropterix graslinella
• 
  Psyche crassiorella
• 
  Psyche casta
• 
  Sterrhopterix fusca
• 
  Taleporia tubulosa
• 
  Dahlica triquetrella
• 
  Apterona helicoidella

人間にんげんとの関かかわり

ミノムシは身みの回まわりの繊維せんいであれば、葉はや枝えだでなくても、蓑みのを作つくり上あげる。このため、毛糸けいとくずや細こまかく切きった色紙いろがみの中なかに蓑みのを取とり去さった幼虫ようちゅうを入いれると、色いろ鮮あざやかな蓑みのを作つくり上あげる。このような実験じっけんは、子供こどもの遊あそびとして広ひろく行おこなわれていた。

ミノムシは秋あきに蓑みのを作つくるため、俳句はいくでは秋あきの季語きごとなった。ミノムシ自体じたいは発声はっせい器官きかんを持もたないのだが、季語きごでは「蓑虫みのむし鳴なく」と扱あつかわれている。一説いっせつによれば、これは秋あきの深ふかい頃ころまで枝えだ先さきで鳴なくカネタタキの鳴なき声ごえであるという。

化学かがく分野ぶんやへの応用おうよう

ミノムシの糸いとは蜘蛛くもの糸いとよりも強靭きょうじんであるという結果けっかがあり生体せいたい工学こうがく・バイオミメティクスの分野ぶんやでの応用おうよう開発かいはつも期待きたいされている。日本にっぽんの興和こうわと農のう研けん機構きこうは、ミノムシの糸いとを大量たいりょうに取とり出だして工業こうぎょう製品せいひんに使つかう技術ぎじゅつを開発かいはつしたと2018年ねん12月5日にちに発表はっぴょうした。

ミノムシが登場とうじょうする作品さくひん

• 随筆ずいひつ
  • 『枕草子まくらのそうし』 - 「蓑虫みのむし、いとあはれなり。鬼おにの生うみたりければ、親おやに似にてこれも恐こわしき心こころあらんとて、…八はち月がつばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴なく、いみじうあわれなり」
• 俳句はいく
  • 松尾まつお芭蕉ばしょう - みのむしの音おとをききにこよ草くさの庵あん
  • 高浜たかはま虚子きょし - 蓑虫みのむしの父ちちよと鳴なきて母ははもなし

類似るいじの虫むし

同おなじように糸いとで体からだを包つつんで、移動いどうする巣すを作つくるガは他ほかにもある。家屋かおく内うちではイガが小ちいさいながらも同おなじような巣すを作つくる。

ミノガ同様どうよう、雌めすの翅が退化たいかする種類しゅるいのガにフユシャク亜あ科かがある。フユシャク類るいの雌めすは翅を全まったく持もたないか、小ちいさく退化たいかした翅を持もつ。その代かわり胴体どうたいや脚あしは雄ゆうより発達はったつしている。ミノガの雌めすと違ちがう点てんとして、ミノガの雌めすは蛹さなぎの段階だんかいから翅が無ないのに対たいし、フユシャク類るいの雌めすは蛹さなぎの段階だんかいでは翅があるように見みえる。羽化うか後ごに餌えさを摂とらないのもミノガと共通きょうつうしている。

他ほかにもドクガの一種いっしゅに雌めすの翅が退化たいかする種たねがある。夏なつに発生はっせいする雌めすは翅を持もつが、秋あきに発生はっせいする雌めすのみ翅が退化たいかするヒメシロモンドクガのような特異とくいな種たねもある。

また、トビケラ類るいの幼虫ようちゅうは水生すいせい昆虫こんちゅうで、多おおくの種たねが同おなじような巣すを川底かわぞこなどに作つくる。

オオミノガ

オオミノガ
分類ぶんるい
界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 節足動物せっそくどうぶつ門もん Arthropoda 綱つな : 昆虫こんちゅう綱つな Insecta 亜あ綱つな : 有ゆう翅昆虫ちゅう亜あ綱つな Pterygota 下綱しもつな : 新しん翅下綱つな Neoptera 上目うわめ : Panorpida 目め : チョウ目め（鱗翅りんし目め） Lepidoptera 亜あ目め : Glossata 下目しため : Heteroneura 上うえ科か : ヒロズコガ上うえ科か Tineoidea 科か : ミノガ科か Psychidae 亜あ科か : オオミノガ亜あ科か Oiketicinae 族ぞく : Acanthopsychini 属ぞく : Eumeta 種たね : オオミノガ E. japonica
学名がくめい
Eumeta japonica Heylaerts, 1884
シノニム
Eumeta variegata (Snellen, 1879) Clania variegata (Snellen, 1879)

オオミノガ（大だい蓑みの蛾が、学名がくめい: Eumeta japonica）は、チョウ目めミノガ科かに属ぞくする昆虫こんちゅう。ヤマトミノガともいう。

形態けいたい

日本にっぽん産さんで最もっとも大おおきなミノムシ。

成虫せいちゅうが「ガ」の形かたちになるのは雄ゆうに限かぎられる。雄ゆうは口くちが退化たいかしており、花はなの蜜みつなどを吸すうことはできない。雄ゆうの体長たいちょうは30〜40mm。雌めすは無む翅、無む脚あしであり、形かたちは小ちいさい頭あたまに、小ちいさな胸むねと体からだの大半たいはん以上いじょうを腹部ふくぶが占しめる形かたちになる（また、雄お同様どうよう口こうが退化たいかする）。したがって「ガ」にはならず、蓑みの内部ないぶの蛹さなぎの殻からの中なかに留とまる（性的せいてき二形ふたなり）。

生態せいたい

雄ゆうは雌めすのフェロモンに引ひかれて夕方ゆうがた頃ころ飛行ひこうし、蓑みの内ないの雌めすと交尾こうびする。この時とき、雄ゆうは小ちいさな腹部ふくぶを限界げんかい近ちかくまで伸のばし蛹さなぎの殻からと雌めすの体からだの間あいだに入いれ、蛹さなぎの殻からの最もっとも奥おくに位置いちする雌めすの交尾こうび孔あなを雄ゆうの交尾こうび器きで挟はさんで挿入そうにゅう器きを挿入そうにゅうして交尾こうびする。交尾こうび後ご、雄ゆうは死しぬ。その後ご、雌めすは自分じぶんが潜ひそんでいた蓑みのの中なかの蛹さなぎの殻からの中なかに1,000個こ以上いじょうの卵たまごを産卵さんらんし、卵たまご塊かたまりの表面ひょうめんを腹部ふくぶの先さきに生はえていた淡あわ褐色かっしょくの微細びさいな毛けで栓せんをするように覆おおう。雌めすは普通ふつう、卵たまごが孵化ふかするまで蛹さなぎの殻からの中なかに留とどまっていて、孵化ふかする頃ころにミノの下したの穴あなから出でて地上ちじょうに落下らっかして死しぬ。

20日はつか前後ぜんこうで孵化ふかした幼虫ようちゅうは蓑みのの下したの穴あなから外そとに出でて、そこから糸いとを垂たらし、多おおくは風ふうに乗のって分散ぶんさんする。葉はや小しょう枝えだなどに到着とうちゃくした1齢よわい幼虫ようちゅうはただちに小ちいさい蓑みのを造つくり、それから摂食せっしょくする。6月から10月がつにかけて7回かい脱皮だっぴを繰くり返かえし、成長せいちょうするにつれて蓑みのを拡大かくだい・改変かいへんして小しょう枝えだや葉は片へんをつけて大おおきくし、終おわり令れい幼虫ようちゅう（8令れい）に達たっする。主おもな食しょく樹じゅは、サクラ類るい、カキノキ、イチジク、マサキなど。

秋あきに蓑みのの前ぜん端はしを細ほそく頸って、小枝さえなどに環状かんじょうになるように絹糸けんしをはいてこれに結ゆわえ付つけて越冬えっとうに入はいる。枯かれ枝えだの間あいだで蓑みのが目立めだつ。越冬えっとう後ごは普通ふつうは餌えさを食たべずにそのまま4月がつから6月がつにかけて蛹さなぎ化かする。そして6月がつから8月がつにかけて羽化うかする。

分布ぶんぷ

日本にっぽん列島れっとう（本州ほんしゅう、四国しこく、九州きゅうしゅう、対馬つしま、屋久島やくしま、沖縄おきなわ本島ほんとう、宮古島みやこじま、石垣島いしがきじま、西表島いりおもてじま）に分布ぶんぷする。本ほん種しゅは東南とうなんアジアに広ひろく分布ぶんぷする Eumeta variegata と同おなじ種しゅであるという説せつも有力ゆうりょくである。

近年きんねんは後述こうじゅつする外来がいらい種しゅのヤドリバエによる寄生きせいにより生息せいそく個体こたいが激減げきげんしており、各かく自治体じちたいのレッドリストで絶滅ぜつめつ危惧きぐ種しゅに選定せんていされるようになってきている。

オオミノガヤドリバエによる寄生きせい

オオミノガを初はじめとして、日本にっぽんではミノムシは広ひろく見みられる一般いっぱん的てきな昆虫こんちゅうであったが、1990年代ねんだい後半こうはんからオオミノガは激減げきげんしている。原因げんいんは、オオミノガにのみ寄生きせいする外来がいらい種しゅのヤドリバエ科かのオオミノガヤドリバエ (Nealsomyia rufella) である。

オオミノガヤドリバエは、主おもにオオミノガの終おわり令れい幼虫ようちゅうを見みつけると、摂食せっしょく中ちゅうの葉はに産卵さんらんし、卵たまごは葉はと共ともに摂食せっしょくされる。口器こうきで破壊はかいされなかった卵たまごはオオミノガの消化しょうか器きに達たっし、体内たいないで孵化ふかする。

なお、オオミノガヤドリバエに寄生きせいする寄生きせい蜂はち（キアシブトコバチ (Brachymeria obscurata) など）が存在そんざいする。

ウィキスピーシーズには、オオミノガに関かんする情報じょうほうがあります。

参考さんこう文献ぶんけん

• 森上もりあげ信夫しのぶ、林はやし将之まさゆき「ミノガ科か」『昆虫こんちゅうの食しょく草そう・食しょく樹じゅハンドブック』文ぶん一いち総合そうごう出版しゅっぱん、2007年ねん、53頁ぺーじ。ISBN 978-4-8299-0026-0。 
• 福田ふくだ晴夫はるおほか「ミノガ科か」『昆虫こんちゅうの図鑑ずかん 採集さいしゅうと標本ひょうほんの作つくり方かた : 野山のやまの宝石ほうせきたち』（増補ぞうほ改訂かいてい版ばん）南方みなかた新しん社しゃ、2009年ねん、58頁ぺーじ。ISBN 978-4-86124-168-0。 
• 安田やすだ守まもる「ミノガ科か」『イモムシハンドブック』高橋たかはし真弓まゆみ・中島なかじま秀雄ひでお監修かんしゅう、文ぶん一いち総合そうごう出版しゅっぱん、2010年ねん、50-51頁ぺーじ。ISBN 978-4-8299-1079-5。 
• 安田やすだ守まもる「ミノガ科か」『イモムシハンドブック2』高橋たかはし真弓まゆみ・中島なかじま秀雄ひでお監修かんしゅう、文ぶん一いち総合そうごう出版しゅっぱん、2012年ねん、33頁ぺーじ。ISBN 978-4-8299-8101-6。 
• 田仲たなか義弘よしひろ、鈴木すずき信夫しのぶ「オオミノガ」『校庭こうていの昆虫こんちゅう』全国ぜんこく農村のうそん教育きょういく協会きょうかい〈野外やがい観察かんさつハンドブック〉、1999年ねん、55頁ぺーじ。ISBN 4-88137-073-1。 

関連かんれん項目こうもく

• イモムシ
• 寝袋ねぶくろ

外部がいぶリンク

• "Psychidae". National Center for Biotechnology Information（NCBI） (英語えいご). （英語えいご）
• "Psychidae" - Encyclopedia of Life （英語えいご）
• 青木あおき繁しげる伸しん (2010年ねん11月16日にち). “オオミノガ（大だい蓑みの蛾が；大だい避績蛾が）”. 幼虫ようちゅう図鑑ずかん. 群馬大学ぐんまだいがく社会しゃかい情報じょうほう学部がくぶ. 2014年ねん2月がつ11日にち閲覧えつらん。
• “ミノムシ”. NHK for School. 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい. 2022年ねん4月がつ2日にち閲覧えつらん。
• 『ミノガ』 - コトバンク
• 『オオミノガ』 - コトバンク