直ちょく火ひ焼やき

直ちょく火ひ焼やき（じかびやき）とは、乾式かんしき加熱かねつを伴ともなう調理ちょうり形態けいたいの一種いっしゅで、熱ねつ媒なかだち（鍋なべ・釜がまや油あぶら）を利用りようせず、火ひで直接ちょくせつ食品しょくひんの表面ひょうめんを加熱かねつした料理りょうりである。加熱かねつ調理ちょうりの技法ぎほうとしては人類じんるい最古さいこのものと思おもわれる^[1]。直ちょく火ひ焼やきには著いちじるしい量りょうの輻射熱ふくしゃねつが伴ともない、肉にくを手早てばやく調理ちょうりする際さいに用もちいられる傾向けいこうがある。熱源ねつげんと食材しょくざいとの間あいだに鉄格子てつごうし（グリル）や金網かなあみなどを置おいて加熱かねつする場合ばあいは、網焼あみやき（あみやき）と呼よばれる。

直ちょく火ひ焼やきにおける食材しょくざいへの伝つて熱ねつは、主おもに熱ねつ輻射ふくしゃによるものである。直ちょく火ひ焼やきでは食材しょくざいをさらす温度おんどが250℃を超こえることも多おおい。肉にくは焼やくと、メイラード反応はんのうと呼よばれる化学かがく反応はんのう過程かていで独特どくとくの香こうばしい風味ふうみとなる^[2]。メイラード反応はんのうは、食材しょくざいが155℃を超こえる温度おんどに達たっするときにのみ起おきる。直ちょく火ひ焼やきは、脂あぶらの乗のりやジューシーさが失うしなわれ食材しょくざいが乾かわいて固かたくなる一因いちいんとなるものの、油あぶらを使つかうよりもヘルシーな調理ちょうり法ほうとして紹介しょうかいされることが多おおい^[3]。

牛肉ぎゅうにく、豚肉ぶたにく、鳥とり肉にく、魚肉ぎょにくなどを高温こうおんで調理ちょうりするとヘテロサイクリックアミン（HCA）、ベンゾピレン、多た環たまき芳香ほうこう族ぞく炭化たんか水素すいそ（PAH）の生成せいせいにつながるが、これらには発癌はつがん性せいがあることが研究けんきゅうによって示しめされている^[4]^[5]。タレに漬つけ込こんでから焼やくことで、これら発癌はつがん性せい物質ぶっしつの合成ごうせいは減へらすことができる^[6]。

概要がいよう[編集へんしゅう]

直ちょく火ひ焼やきは、主おもに魚類ぎょるいや肉類にくるいを串くしや網あみなどで保持ほじできるようにして、直接ちょくせつ火ひもしくは高温こうおんの物体ぶったいに近ちかづけて加熱かねつする^[7]。加熱かねつ前まえや加熱かねつ中ちゅうに調味ちょうみ料りょう（塩しおなど固形こけい状じょうの物ものやタレ）で調味ちょうみする場合ばあいがある。直ちょく火ひ焼やきを利用りようした主おもな料理りょうりは焼やき鳥とり、ケバブ、焼やき魚ざかななど。

串焼くしやき[編集へんしゅう]

「串焼くしやき」を参照さんしょう

食材しょくざいを串くしに刺さして直ちょく火ひ焼やきした場合ばあいは串焼くしやきとも呼よぶ。

網焼あみやき[編集へんしゅう]

調理ちょうり器具きぐについては「グリル」を参照さんしょう

金網かなあみに乗のせる直ちょく火ひ焼やきは網焼あみやきと呼よばれるが、串くしに刺さした食材しょくざいを網あみの上うえで焼やく場合ばあいもあり、その場合ばあいは串焼くしやきと呼よばれる。ステーキなどを網焼あみやきにすると、縞しま模様もよう状じょうや編あみ目め状じょうの焼やき目めが付つく。家庭かていのガスコンロには「グリル」が付ついていることが多おおいが、これは鉄格子てつごうしの上うえに食材しょくざいを置おくものの、熱源ねつげんは食材しょくざいの上方かみがたにのみあって鉄格子てつごうしの焼やき目めが付つかないものもある^[8]。

熱源ねつげんとなる燃料ねんりょう[編集へんしゅう]

熱源ねつげんとなる燃料ねんりょうの違ちがいによって、炭火すみび焼やき（すみびやき）^[9]、ガス火ひ焼やき（ガスびやき）^[9]、電気でんき焼やき（でんきやき）などと呼よび分わける場合ばあいがある。

炭火すみび焼やき: 炭すみで焼やくと、赤外線せきがいせんの輻射熱ふくしゃねつで表面ひょうめんだけでなく、中なかにまでよく火ひが通とおる。ガスで焼やくと、表面ひょうめんだけ焼やけるので、ぱりっと香こうばしく焼やき上あがらない。ガスが燃もえると水蒸気すいじょうきが出でるので、食材しょくざいが水みずっぽくなる。炭すみは燃もやしても炭酸たんさんガスが出でるだけで、水蒸気すいじょうきは立たたないからすっきり焼やき上あがる。ガスでは遠火とおびの強火つよびが難むずかしい。炭すみは備長炭ずみが良よいとされるが、それは火持ひもちが良よく、炎ほのおが出でないからで、遠火とおびの強火つよびに適てきしている^[10]。
バーナー焼やき（バーナーやき）: 直ちょく火ひ焼やきの一種いっしゅで、熱源ねつげんのガスバーナーを手てで持もって食材しょくざいの上うえから炙あぶり、加熱かねつする方法ほうほう。主おもに表面ひょうめんだけを加熱かねつする場合ばあいに用もちいる点てんで技法ぎほう上じょう異ことなり、焼やかれた表面ひょうめんには焦こげが出来できる。この方法ほうほうを利用りようする料理りょうりは、焼やき豆腐どうふ、クレームブリュレ、炙あぶり寿司すしなどさまざまである^[11]。

健康けんこうリスク[編集へんしゅう]

直ちょく火ひ焼やきに限かぎらず肉にくは高温こうおんで焼やくと、その調理ちょうり過程かていで発癌はつがん性せい物質ぶっしつが発生はっせいすることがある^[12]。発生はっせいを招まねく過程かていには二ふたつが考かんがえられている。ヘテロサイクリックアミン（HCA）は、アミノ酸あみのさん、糖類とうるい、クレアチンが高温こうおんで反応はんのうするときに形成けいせいされる。多た環たまき芳香ほうこう族ぞく炭化たんか水素すいそ (PAH)は、直ちょく火ひ焼やきされる肉にくの脂あぶらや肉汁にくじゅうが火ひへ滴したたり落おちて炎ほのおを起おこすときに形成けいせいされ、この炎ほのおに含ふくまれるPAHが肉にくの表面ひょうめんに付着ふちゃくする^[5]。

しかし、肉にくを焼やく際さいに発癌はつがん性せい物質ぶっしつを有意ゆういに削減さくげん、またはその発癌はつがん性せいを軽減けいげんすることは可能かのうである。ニンニク、ローズマリー、オリーブオイル、サクランボ、そしてビタミンEには、HCAとPAH両方りょうほうの形成けいせいを減少げんしょうさせる効果こうかがあることがわかっている^[12]。熱源ねつげんが上方かみがた（多おおくの電気でんきオーブンやガスオーブンで見みられる型かた）または側がわ方かたにある場合ばあいには、肉にくから滴したたる脂あぶらの燃焼ねんしょう、および肉にくと炎ほのおとの接触せっしょくを完全かんぜんに避さけられる。また電子でんしレンジで肉にくを予あらかじめ調理ちょうりしておくことで、高温こうおんの熱ねつに接せっする仕上しあげの調理ちょうり時間じかんを短縮たんしゅくしてHCA生成せいせいを低減ていげんさせるという方法ほうほうもある^[5]。

ハーバード・ヘルス・パブリッシングは、直ちょく火ひで焼やいた肉にくや魚さかなを日常にちじょう的てきに摂取せっしゅした場合ばあい、高血圧こうけつあつなどの病気びょうきのリスクを高たかめる可能かのう性せいがあると述のべている^[13]^[14]^[15]。

ガスバーナー[編集へんしゅう]

料理りょうり、菓子かしなどに対たいしてあぶる、焦こげ目めをつけるなどするために、手持てもち、ボンベ型がたのガスバーナーを利用りようすることもある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

^ （英語えいご）Kenneth Miller (2013年ねん5月がつ). “Archaeologists Find Earliest Evidence of Humans Cooking With Fire”. Discover Magazine. Kalmbach Publishing Co.. 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ （英語えいご）Schröder, Monika J.A. (2003). Food Quality and Consumer Value: Delivering Food that Satisfies. Berlin: Springer. p. 150. ISBN 3540439145 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ （英語えいご）Beckett, Fiona (2012). Sausage & Mash. London: Bloomsbury Publishing. p. 16. ISBN 9781408187760 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ （英語えいご）杉村すぎむら隆たかし; 若林わかばやし敬二けいじ; 中ちゅう釜がま斉ひとし; 長尾ながお美奈子みなこ (April 2004). “Heterocyclic amines: Mutagens/carcinogens produced during cooking of meat and fish”. Cancer Science 95 (4): 290–299. doi:10.1111/j.1349-7006.2004.tb03205.x.
^ ^a ^b ^c （英語えいご）“Chemicals in Meat Cooked at High Temperatures and Cancer Risk — National Cancer Institute”. Cancer.gov. 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ （英語えいご）“Health | Marinating 'may cut cancer risk'”. BBC News. (2008年ねん12月30日にち) 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ 青木あおき幸子さちこ監修かんしゅう『おとなの「家庭かてい科かの教科書きょうかしょ」 ― 家事かじの苦手にがてがなくなる! 生活せいかつが楽たのしくなる!』笠倉出版社かさくらしゅっぱんしゃ、2016年ねん、50頁ぺーじ。ISBN 4773086955。
^ 『何なん度ども作つくりたい人気にんきおかず480品ひん』学研がっけんプラス、2015年ねん、64頁ぺーじ。ISBN 4059142344。
^ ^a ^b “COOKING「熱ねつのハナシ」”. BEEF-LAB.com (2012年ねん12月29日にち). 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ 『美味おいしんぼ』「炭火すみびの魔力まりょく」
^ “魚さかなもプリンもピザも「炙あぶり」でうまくなる！！”. 日経にっけいトレンディネット (2014年ねん12月17日にち). 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b （英語えいご）Wong, Cathy (2014年ねん12月12日にち). “5 Tips That May Help Reduce Carcinogens in Cooked Meat”. Altmedicine.about.com. 2017年ねん2月がつ23日にち閲覧えつらん。
^ Boston, 677 Huntington Avenue (2018年ねん3月がつ22日にち). “Grilling, high-temperature cooking linked with high blood pressure” (英語えいご). News. 2022年ねん8月がつ18日にち閲覧えつらん。
^ “How Meat Is Cooked May Affect Risk of Type 2 Diabetes” (英語えいご). The Nutrition Source (2018年ねん3月がつ23日にち). 2022年ねん8月がつ18日にち閲覧えつらん。
^ “Grilling and other high-temperature cooking may raise risk of high blood pressure” (英語えいご). ScienceDaily. 2022年ねん8月がつ18日にち閲覧えつらん。