竹中たけなか重治しげはる

凡例はんれい竹中たけなか重治しげはる; （竹中たけなか半兵衛はんべえ）
	竹中たけなか重治しげはる像ぞう（禅ぜん幢寺所蔵しょぞう）
時代じだい	戦国せんごく時代じだい - 安土あづち桃山ももやま時代じだい
生誕せいたん	天文てんもん13年ねん9月11日にち（1544年ねん9月27日にち）
死没しぼつ	天正てんしょう7年ねん6月13日にち（1579年ねん7月がつ6日にち）
改名かいめい	重じゅう虎とら（初はつ名な）、重治しげはる
別名べつめい	半兵衛はんべえ（通称つうしょう）、今いま孔明こうめい
戒名かいみょう	深ふか竜りゅう水すい徹とおる
墓所はかしょ	栄さかえ運うん寺てら（兵庫ひょうご県けん三木みき市し）; 禅ぜん幢寺（岐阜ぎふ県けん不破ふわ郡ぐん垂井たるい町まち）; 浄土寺じょうどじ（滋賀しが県けん東ひがし近江おうみ市し）
主君しゅくん	斎藤さいとう龍りゅう興きょう→浅井あさい長政ながまさ→織田おだ信長のぶなが→羽柴はしば秀吉ひでよし
氏族しぞく	桓武かんむ平たいら氏し良文よしふみ流ながれ鎌倉かまくら氏し系けい竹中たけなか氏し
父母ちちはは	父ちち：竹中たけなか重元しげもと、母はは：杉山すぎやま久左衛門きゅうざえもんの娘むすめ（妙みょう海かい大姉だいし）
兄弟きょうだい	重行しげゆき、重治しげはる、重じゅう矩のり、彦八郎はちろう
妻つま	正室せいしつ：得とく月がつ院いん（安藤あんどう守まもる就の娘むすめ）
子こ	重じゅう門もん
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竹中たけなか重治しげはる（たけなかしげはる）は、戦国せんごく時代じだいから安土あづち桃山ももやま時代じだいにかけての武将ぶしょう、軍師ぐんし。初はつ名なは重じゅう虎とら、のちに重治しげはる。通称つうしょうは半兵衛はんべえ（はんべえ）。父ちちは竹中たけなか重元しげもと、弟おとうとに重じゅう矩のり。子こに重じゅう門もん。従弟じゅうていに竹中たけなか重利しげとし（府内ふない藩はん初代しょだい藩主はんしゅ）。

羽柴はしば秀吉ひでよし（後ごの豊臣とよとみ秀吉ひでよし）の参謀さんぼうとして活躍かつやくし、黒田くろだ孝高よしたか（黒田くろだ官兵衛かんべえ）とともに「両りょう兵衛ひょうえ」「二に兵衛ひょうえ」と称しょうされた。しかし、軍功ぐんこうに関かんする逸話いつわや美談びだんの多おおくは後世こうせいの創作そうさくによるものと見みられ、史実しじつ上じょうの実像じつぞうが不明瞭ふめいりょうな人物じんぶつである。

生涯しょうがい[編集へんしゅう]

斎藤さいとう氏し時代じだい[編集へんしゅう]

天文てんもん13年ねん（1544年ねん）、美濃みの斎藤さいとう氏しの家臣かしんで美濃みの国こく大野おおの郡ぐん大御堂おおみどう城じょう（岐阜ぎふ県けん揖斐いび郡ぐん大野おおの町まち）城主じょうしゅ・竹中たけなか重元しげもとの子ことして同地どうちに生うまれる。弘治こうじ2年ねん（1556年ねん）長良川ながらがわの戦たたかいが初陣ういじんとなる。斎藤さいとう道三どうさんに味方みかたしたが、父ちちが不在ふざいのため代かわりに大将たいしょうを務つとめた。籠城ろうじょう戦せんの末すえ、斎藤さいとう義よし龍りゅうの軍ぐんを退しりぞけている。永えい禄ろく元年がんねん（1558年ねん）、父ちちは不破ふわ郡ぐん岩手いわて城主じょうしゅ・岩手いわて弾正だんじょうを攻略こうりゃくし、永えい禄ろく2年ねん（1559年ねん）、菩提ぼだい山城やましろを築きずいて居城きょじょうを移うつし、重治しげはるもこれに従したがう。

永えい禄ろく3年ねん（1560年ねん）、父ちちの死去しきょまたは隠居いんきょ（一説いっせつに父ちちの死去しきょは永えい禄ろく5年ねん（1562年ねん）とも）により家督かとくを相続そうぞくし、菩提山ぼだいせん城主じょうしゅとなった。そして長良川ながらがわの戦たたかいで勝利しょうりした美濃みの国こくの国主こくしゅ・斎藤さいとう義よし龍りゅうに仕つかえた。永えい禄ろく4年ねん（1561年ねん）に義ぎ龍りゅうが死去しきょすると、その後ごを継ついだ斎藤さいとう龍りゅう興きょうに仕つかえる。

この頃ころ、尾張おわり国こくの織田おだ信長のぶながによる美濃みの侵攻しんこうが連年れんねんのように激はげしくなるが、義よし龍りゅう時代じだいは信長のぶながの攻勢こうせいをよく防ふせいでいた。しかし義ぎ龍りゅうが死去しきょすると、後ごを継ついだ龍りゅう興きょうは若年じゃくねんだったために家臣かしん団だんに動揺どうようが走はしり、一転いってんして織田おだ氏しの侵攻しんこうを防ふせぐことが困難こんなんとなった。そのような状況じょうきょうを見みた信長のぶながが、永えい禄ろく4年ねん（1561年ねん）7月がつに美濃みのに侵攻しんこうし､永なが禄ろく6年ねん（1563年ねん）にも新加納しんかのうで織田おだ勢ぜいと戦たたかい、このときも重治しげはるの戦術せんじゅつのために斎藤さいとう勢ぜいは勝利しょうりしたという。

ところが、主君しゅくん・龍りゅう興きょうは酒色しゅしょくに溺おぼれて政務せいむを顧かえりみようとせず、一部いちぶの側近そっきんだけを寵愛ちょうあいして重治しげはるや西にし美濃みの三さん人にん衆しゅを政務せいむから遠とおざけていた。このため永えい禄ろく7年ねん（1564年ねん）2月がつ6日にち白昼はくちゅう^[1]^[2]、舅しゅうと・安藤あんどう守まもる就の軍勢ぐんぜいと龍りゅう興きょうの居城きょじょう・稲葉いなば山城やましろ（後ごの岐阜ぎふ城じょう）を襲おそい、齋藤さいとう飛騨ひだ守もりら6名めいを討うち取とり、龍りゅう興きょうを逃亡とうぼうさせた^[2]。これを機きに信長のぶながは美濃みのへの圧力あつりょくを強つよめていくことになる。7月29日にちあたりまでは稲葉いなば山城やましろの占領せんりょうは続つづいていたが（『敬けい念ねん寺てら文書ぶんしょ』）^[2]、8月がつには龍りゅう興きょうに奪還だっかんされたようである。自みずから龍りゅう興きょうを諌いさめ諭さとし、稲葉いなば山城やましろを龍りゅう興きょうに返還へんかんしたともされるが、半年はんとしにわたり戦闘せんとうが継続けいぞくしていたことから龍りゅう興きょうを支援しえんする勢力せいりょくの攻撃こうげきにより稲葉いなば山城やましろを放棄ほうきしたとするのが正ただしい^[2]。城しろを放棄ほうきした後のちは隠遁いんとん生活せいかつを送おくる。

永えい禄ろく10年ねん（1567年ねん）、織田おだ信長のぶながの侵攻しんこうにより斎藤さいとう龍りゅう興きょうが稲葉いなば山城やましろを追おわれ、没落ぼつらくすると斎藤さいとう家かを去さり、北きた近江おうみの戦国せんごく大名だいみょう・浅井あさい長政ながまさの客分きゃくぶんとして東浅井ひがしあざい郡ぐん草野くさのに3,000貫かんの禄ろくを賜たまわるが、約やく1年ねんで禄ろくを辞じして旧領きゅうりょうの岩手いわてへと帰かえり、隠棲いんせいした。

斎藤さいとう家か滅亡めつぼう後ご[編集へんしゅう]

竹中たけなか重治しげはるが天正てんしょう7年ねんに使用しようした花押かおう^[3]。「千年ちとせおゝとり」（鳳凰ほうおう）を表あらわした珍めずらしい花押かおうで、織田おだ信長のぶながの「麟」字じ型がた花押かおうと同様どうように、平和へいわへの願ねがいがこめられているといわれる^[3]。

信長のぶながは、浪人ろうにんしていた重治しげはるを自分じぶんの家臣かしんとして登用とうようしたいと考かんがえた。美濃みの攻ぜめで頭角とうかくを現あらわしていた木下きのした秀吉ひでよし（後ごの豊臣とよとみ秀吉ひでよし）に勧誘かんゆうを命めいじ、秀吉ひでよしは「三顧さんこの礼れい」で重治しげはるを誘さそったとされる^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。重治しげはるはこのとき、秀吉ひでよしの天性てんせいの才能さいのうを見抜みぬき、信長のぶながに直接ちょくせつ仕つかえることは拒絶きょぜつしたが、秀吉ひでよしの家臣かしんとなることを了承りょうしょうしたとされる^{[注釈ちゅうしゃく 2]}。竹中たけなか重しげる門もんの著あらわした『豊ゆたか鑑かん』には、信長のぶながが秀吉ひでよしの要請ようせいを受うけて、牧村まきむら利貞としさだ、丸まる毛け兼けん利りと共ともに与力よりきとして秀吉ひでよしの下したに付つけたことが記しるされている。

後のちに信長のぶなが包囲ほうい網もうが敷しかれ、信長のぶながと浅井あさい長政ながまさが敵対てきたい関係かんけいになると、重治しげはるは浅井あさい家臣かしん団だんとの人脈じんみゃくを利用りようして、主おもに調しらべ略りゃく活動かつどうで活躍かつやくした。元もと亀かめ元年がんねん（1570年ねん）には浅井あさい方かたの長ちょう亭ちん軒のき城じょうや長ちょう比ひ城じょうを調しらべ略りゃくによって織田おだ方かたに寝返ねがえらせている（『浅井あさい三さん代だい記き』）。直後ちょくごの姉川あねがわの戦たたかいにも安藤あんどう守まもる就の部隊ぶたいに参加さんかした。この合戦かっせんの後のちに信長のぶながの命いのちで横山よこやま城しろに秀吉ひでよしとともに残のこし置おかれ、この頃ころから信長のぶなが直ただし臣しんから秀吉ひでよしの与力よりきへと転てんじたと推測すいそくされる^[4]。

秀吉ひでよしが中国ちゅうごく攻ぜめの総そう大将たいしょうに任にんじられると、重治しげはるは秀吉ひでよしに従したがって中国ちゅうごく遠征えんせいに参加さんかする。天正てんしょう6年ねん（1578年ねん）5月がつ24日にち、宇喜多うきた氏しの備前びぜん八幡やはた山城やましろの城主じょうしゅを調しらべ略りゃく成功せいこうによって落城らくじょうさせ、この報告ほうこくのため京都きょうとに赴おもむき信長のぶながに賞賛しょうさんされ銀子ぎんす100両りょうを授さづけられて播磨はりまへと帰陣きじんした（『信長のぶなが公こう記き』）^[5]。同年どうねん、信長のぶながに謀反むほんを起おこした荒木あらき村重むらしげに対たいして（有岡ありおか城じょうの戦たたかい）、秀吉ひでよし幕僚ばくりょうの黒田くろだ孝高よしたかが有岡ありおか城しろへ赴おもむき帰服きふくを呼よびかけるが、城内きうちで捕縛ほばく・監禁かんきんされ外部がいぶとの連絡れんらくを断たたれたため、信長のぶながは孝こう高だかが村重むらしげに加担かたんしたと思おもい込こみ、孝こう高だかの嫡男ちゃくなん・松寿しょうじゅ丸まる（後ごの黒田くろだ長政ながまさ）の殺害さつがいを秀吉ひでよしに命めいじた。しかし重治しげはるは信長のぶながの首実検くびじっけんに際さいし、秀吉ひでよしに偽にせの首くびを提出ていしゅつさせることで松寿しょうじゅ丸まるの命いのちを助たすけ、松寿しょうじゅ丸まるは自身じしんの領地りょうちに引ひき取とり、家臣かしんの不破ふわ矢や足あしの屋敷やしきに匿かくまった。のち、助たすけ出だされた孝こう高だかはこのことを非常ひじょうに感謝かんしゃし、竹中たけなか家かの家紋かもんを貰もらい受うけている。

天正てんしょう7年ねん（1579年ねん）4月がつ、播磨はりま三木みき城しろの包囲ほうい（三木みき合戦かっせん）中ちゅうに病やまいに倒たおれ、陣中じんちゅうにて6月がつ13日にちに死去しきょした^[6]。享年きょうねん36^[6]。

人物じんぶつ・逸話いつわ[編集へんしゅう]

自己じこの理想りそうを込こめた「千せん年ねん」という字じを形象けいしょう化かした花押かおうを使用しようしていた^[7]。
活躍かつやくは『武功ぶこう夜話やわ』や、江戸えど時代じだいの軍記ぐんき物ぶつである『太閤たいこう記き』、子この重じゅう門もんが江戸えど時代じだいに記しるした『豊ゆたか鑑かん』などによって描えがかれている。江戸えど時代じだいの講談こうだんなどで、黒田くろだ孝高よしたかとともに天才てんさい軍師ぐんしの人物じんぶつ像ぞうが固かたまり、現在げんざいの人気にんきに至いたっている。しかしながら『信長のぶなが公こう記き』などに記しるされている記述きじゅつは少すくなく実態じったいはよく分わかっていない。また、秀吉ひでよしの正式せいしきな家臣かしんであるという記述きじゅつも一いち次じ史料しりょうには見当みあたらず織田おだ家かから秀吉ひでよしに付つけられた与力よりき武将ぶしょうの一人ひとりであると見みられている。
『太閤たいこう記き』や『常山つねやま紀おさむ談だん』などによると、体からだが弱よわく見みた目めは痩身そうしんで女性じょせいのようであり（「その容貌ようぼう、婦人ふじんの如ごとし」と記録きろくにはある）、出陣しゅつじんするときも静しずかに馬うまに乗のっているだけだったという。容貌ようぼうが婦人ふじんのようであったことから、主君しゅくんの斎藤さいとう龍りゅう興きょうをはじめとする斎藤さいとう家臣かしん団だんから侮あなどられ、龍りゅう興きょうの寵臣ちょうしんである斎藤さいとう飛騨ひだ守もりに櫓ろの上うえから嘲弄ちょうろうされ、小便しょうべんを顔かおにかけられたことがあった。数日すうじつ後ご、飛騨ひだ守もりが龍りゅう興きょう居室きょしつの宿直しゅくちょくを務つとめていたとき、重治しげはるは稲葉いなば山城やましろに詰つめていた弟おとうと・重じゅう矩のりの看病かんびょうのためと称しょうして武具ぶぐを隠かくした箱はこなどをもって入城にゅうじょうし、そして重じゅう矩のりの居室きょしつで武装ぶそうして宿直しゅくちょく部屋へやに居いた飛騨ひだ守もりを斬殺ざんさつして稲葉山いなばやま城じょうを乗のっ取とったとされている。
長篠ながしのの戦たたかいで、武田たけだ勢ぜいの一部いちぶが向むかって左側ひだりがわに移動いどうした。秀吉ひでよしは回まわりこまれるのではないかと焦あせったが、重治しげはるは織田おだ勢ぜいの陣じんに穴あなを開あけるための陽動ようどうではないかと進言しんげんした。秀吉ひでよしは重治しげはるに従したがわず迎撃げいげきのため兵へいを動うごかしたが、重治しげはるは反対はんたいした挙句あげく手勢てぜいと共ともに持もち場ばを離はなれなかった。まもなく武田たけだ勢ぜいは元もとの位置いちに戻もどって秀吉ひでよしが不在ふざいの地点ちてんに攻せめ寄よせた。重治しげはるが守まもっている間あいだに秀吉ひでよしもあわてて帰還きかんし、重治しげはるが正ただしかったことが証明しょうめいされた。中国ちゅうごく攻ぜめの陣中じんちゅうで病死びょうしする際さいには秀吉ひでよしは京きょうで養生ようじょうするように戒いましめたが、重治しげはるは「陣中じんちゅうで死しぬ事ことこそ武士ぶしの本望ほんもう」と断ことわったとされる（『竹中たけなか家か譜ふ』）。また最後さいごの策さくとして、三木みき城しろ兵糧ひょうろう攻ぜめを秀吉ひでよしに授さづけ、別所べっしょ長治ながはるを降伏ごうぶくさせている。この無血むけつ開城かいじょう戦法せんぽうは、後ごの備中高松びっちゅうたかまつ城じょうの水攻みずぜめにも通つうじている。
黒田くろだ孝高よしたかが秀吉ひでよしが約束やくそくした知行ちぎょうの加増かぞうをいつまでたっても実行じっこうしないことに不満ふまんを覚おぼえ、秀吉ひでよしの花押かおうが入はいった書状しょじょうを持もって秀吉ひでよしの前まえに現あらわれて不満ふまんを述のべたことがある。そのとき、秀吉ひでよしの側がわにいた重治しげはるが書状しょじょうを手てに取とり、破やぶって燃もやしてしまった。驚おどろく孝こう高だかに対たいして、「こんな文書ぶんしょがあるから不満ふまんを感かんじるのだ。それに貴殿きでんの身みのためにもならない」と述のべたとされる。
重治しげはるが息子むすこの左京さきょう（後ごの竹中たけなか重しげる門もん）に軍ぐん物語ものがたりについて教おしえていると、左京さきょうが急きゅうに席せきを立たってしまった。重治しげはるが理由りゆうを聞きくと、小用しょうようだという。これに重治しげはるは怒いかり、「たとえ小便しょうべんを垂しだれ流ながそうとも、軍談ぐんだんの席せきを立たってはならない。竹中たけなかの子こが軍談ぐんだんにき入きいって座敷ざしきを汚よごしたと言いわれれば、竹中たけなか家かの面目めんぼくであろう」と言いったと伝つたえられる（『武辺ぶへん咄聞書しょ』）。
いつも貧相ひんそうな馬うまを買かっては、それに乗馬じょうばしていた。秀吉ひでよしが「貴殿きでんの身分みぶんでその貧相ひんそうな馬うまはなかろう」と言いうと、「名馬めいばを買かうと、いざ戦たたかおうとする時ときにその名馬めいばを他人たにんに盗ぬすまれはしないかと惜おしんで馬うまを下おりられずに戦機せんきを逃にがすことになりますから、馬うまは乗のり捨すてる覚悟かくごなのでこれがいいのです」と述のべたとされる（『名将めいしょう言行げんこう録ろく』）。
秀吉ひでよしが重治しげはるの功績こうせきに報むくいるため、加増かぞうを約束やくそくした書状しょじょうを渡わたそうとしたが、「このような物ものは不用ふようです。もし私わたしの子こが自身じしんの不ふ覚悟かくごを忘わすれ、父ちちにはここまで殿しんがりは懇意こんいにされていたのに、なぜ私わたしにはと恨うらみに思おもうようなことがあっては災わざわいとなります」と述のべて破やぶり捨すてたという（『武功ぶこう雑記ざっき』）。

墓所はかしょ[編集へんしゅう]

墓所はかしょは陣地じんちのあった兵庫ひょうご県けん三木みき市し平井ひらい山さん観光かんこうぶどう園内えんないにある。三木みきを攻せめた秀吉ひでよし側がわであったにもかかわらず今いまでも地元じもと老人ろうじん会かいなどで手厚てあつく供養くようされており、墓はかには献花けんかが途切とぎれることがない。また、6月13日にちの命日めいにちと地元じもとの農作業のうさぎょうが落おち着ついた一いち月がつ後ごの7月がつ13日にちには「軍師ぐんし竹中たけなか半兵衛はんべえ重治しげはる公おおやけを偲しのぶ法要ほうよう」が恒例こうれいで供養くようが行おこなわれ、平成へいせい26年ねん（2014年ねん）夏なつで435忌きとなっている。他ほかにも三木みき市し志染しじみ町まちの栄さかえ運うん寺てら、岐阜ぎふ県けん垂井たるい町まちの禅ぜん幢寺、滋賀しが県けん東ひがし近江おうみ市しの浄土寺じょうどじなどにも墓所はかしょがある。浄土寺じょうどじにある墓はかは、竹中たけなか家臣かしん団だんの一人ひとりである竹中たけなか筑後ちくご守まもるのものである。