美濃和みのわ紙し

美濃和みのわ紙し

美濃和みのわ紙し（みのわし）は、美濃みの地方ちほう（岐阜ぎふ県けん南部なんぶ）で作つくられる和紙わしの総称そうしょう。美濃紙みのがみとも呼よばれる。特とくに美濃みの市しで作つくられる和紙わしを指さすこともある。

美濃和みのわ紙しには機械きかいですいたもの（「美濃みの機械きかいすき和紙わし」という）も含ふくまれるが、手てすきのものは「美濃みの手てすき和紙わし」といい、特とくに一定いっていの要件ようけんを満みたした伝統でんとうの製法せいほうの手てすき和紙わしを「本ほん美濃紙みのがみ」という。このうち美濃みの手てすき和紙わしは経済けいざい産業さんぎょう省しょう指定していの伝統でんとう的てき工芸こうげい品ひんに指定していされており、特とくに本ほん美濃紙みのがみは文化庁ぶんかちょうにより国こくの重要じゅうよう無形むけい文化財ぶんかざいに指定していされている。またユネスコの無形むけい文化ぶんか遺産いさんにも登録とうろくされている。

本ほん美濃紙みのがみは重要じゅうよう無形むけい文化財ぶんかざいの指定してい要件ようけんを満みたしたものをいい、生産せいさん量りょうは美濃和みのわ紙し全ぜん製品せいひんのうちの1割わりほどである。

本ほん美濃紙みのがみ

1898年ねん（明治めいじ31年ねん）改正かいせいの戸籍こせき法ほう取扱とりあつかい手続てつづきでは「身分みぶん登記とうき簿ぼの用紙ようしは美濃みの十じゅう三さん行ぎょう罫紙けいしトシ」と定さだめられていた。

定義ていぎ

本ほん美濃紙みのがみは伝統でんとうの製法せいほうで作つくられる薄うすくて丈夫じょうぶな紙かみで、以下いかの指定してい要件ようけんを満みたすもののみをいう（重要じゅうよう無形むけい文化財ぶんかざい「本ほん美濃紙みのがみ」指定してい要件ようけん）。

• 1.原料げんりょうに楮こうぞのみを使用しようしていること
• 2.伝統でんとう的てきな製法せいほうと製紙せいし用具ようぐによること
  • 2-1.白しろ皮がわ作業さぎょうを行おこない、煮に熟じゅくに草くさ木灰きばいかソーダ灰はいを使用しようすること
  • 2-2.薬品やくひん漂白ひょうはくを行おこなわず填はま料りょうを添加てんかしないこと
  • 2-3.叩解は手打てうちかこれに準じゅんじた方法ほうほうで行おこなうこと
  • 2-4.抄造しょうぞうは「ねり」にトロロアオイを使用しようし、「かぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀たけすで流ながれ漉すきしていること
  • 2-5.板いた干ほしで乾燥かんそうすること
• 3.伝統でんとう的てきな本ほん美濃紙みのがみの色いろ沢さわ、地合じあい等とうの特質とくしつを保持ほじすること

歴史れきし

1969年ねん（昭和しょうわ44年ねん）4月がつ15日にち、本ほん美濃紙みのがみの技法ぎほうは重要じゅうよう無形むけい文化財ぶんかざいに指定していされた。重要じゅうよう無形むけい文化財ぶんかざいの保持ほじ団体だんたいとして本ほん美濃紙みのがみ保存ほぞん会かいが認定にんていされている。

2014年ねん（平成へいせい26年ねん）11月26日にち、「和紙わし 日本にっぽんの手て漉（てすき）和紙わし技術ぎじゅつ」として、「石いし州しゅう半紙ばんし」（島根しまね県けん浜田はまだ市し）「細川ほそかわ紙し」（埼玉さいたま県けん小川おがわ町まち、東秩父ひがしちちぶ村むら）とともに、本ほん美濃紙みのがみがユネスコ（国連こくれん教育きょういく科学かがく文化ぶんか機関きかん）の無形むけい文化ぶんか遺産いさん登録とうろくとして認定にんていされた。

美濃和みのわ紙しブランド協議きょうぎ会かいの美濃和みのわ紙しのブランド認定にんてい基準きじゅんで、本ほん美濃紙みのがみは、原料げんりょう規定きていで大子だいご那須なす楮こうぞ（白しろ皮がわ）のみ、製法せいほう規定きていで完全かんぜんに伝統でんとう的てきな製法せいほうによるとし、美濃みの市内しないで生産せいさんされるものとしている。

美濃みの手てすき和紙わし

定義ていぎ

美濃みの手てすき和紙わしは本ほん美濃紙みのがみの技術ぎじゅつを基もとにして製造せいぞうされる手てすき和紙わしをいい、用途ようとに応おうじた多種たしゅ多様たような手てすき和紙わしが生産せいさんされている。手てすき和紙わしの工房こうぼうで構成こうせいされる美濃みの手てすき和紙わし協同きょうどう組合くみあいがあり岐阜ぎふ県けん紙し業ぎょう連合れんごう会かいに加盟かめいしている。

美濃和みのわ紙しブランド協議きょうぎ会かいの美濃和みのわ紙しのブランド認定にんてい基準きじゅんで、美濃みの手てすき和紙わしは、原料げんりょう規定きていで国内産こくないさんの楮こうぞや雁皮がんぴ等ひとしの皮かわを用もちいた非ひ木材もくざい繊維せんいのみを使用しようしたものとし、製法せいほう規定きていで流ながし漉すきの技法ぎほうとし、美濃みの市内しないで生産せいさんされるものとしている。

歴史れきし

1985年ねん（昭和しょうわ60年ねん）5月がつ22日にち、通商産業省つうしょうさんぎょうしょう（現げん・経済けいざい産業さんぎょう省しょう）によって伝統でんとう的てき工芸こうげい品ひんに認定にんていされた。

美濃みの機械きかいすき和紙わし

美濃みの機械きかいすき和紙わしは美濃紙みのがみの手てすき和紙わしの技術ぎじゅつを基もとに機械きかい化かして製造せいぞうされた和紙わしで、絶縁ぜつえん紙しや導しるべ電でん紙し、不燃ふねん紙しなど特殊とくしゅな用途ようとの紙かみも生産せいさんされている。

美濃和みのわ紙しブランド協議きょうぎ会かいの美濃和みのわ紙しのブランド認定にんてい基準きじゅんで、美濃みの機械きかいすき和紙わしは、原料げんりょう規定きていで非ひ木材もくざい繊維せんいを少すこしでも含ふくむもの、製法せいほう規定きていで手てすきに近ちかい品質ひんしつが出だせる機械きかいで製造せいぞうしたものとし、美濃みの市し、岐阜ぎふ市し、関せき市しで生産せいさんされるものとしている。

歴史れきし

起源きげん

日本にっぽん最古さいこの紙かみは、大宝たいほう2年ねん（702年ねん）の大宝たいほう律令りつりょうの際さい、美濃みの国こく、筑前ちくぜん国こく、豊前ぶぜん国こくで漉すかれた戸籍こせき用紙ようしとされる（正せい倉くら院いん文書ぶんしょに美濃みのの紙かみが記録きろくされている）。

奈良なら時代じだい、美濃みの国こくの国府こくふの所在地しょざいち（不破ふわ郡ぐん垂井たるい町まち）には、垂井たるいの泉いずみの清水しみずを利用りようした官設かんせつ抄しょう紙し場じょう（すきかみば）にあたる紙屋かみやがあり、美濃紙みのがみの発祥はっしょうの地ちといわれている。美濃みの国こくでの和紙わし生産せいさんは国府こくふを中心ちゅうしんとする不破ふわ郡ぐん・本巣もとす郡ぐん・厚見あつみ郡ぐんの三さん郡ぐんから板取川いたどりがわ下しも流域りゅういきに移動いどうしていった。

中世ちゅうせい

室町むろまち時代ときよには美濃みので六ろく歳市としのいちが開ひらかれ、美濃紙みのがみは近江おうみ商人しょうにんにより全国ぜんこくへ広ひろめられた。

近世きんせい

江戸えど時代じだいには専売せんばい制度せいどの下したで上質じょうしつの和紙わしが大量たいりょうに生産せいさんされ、『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』では「最もっとも佳よなるもの」、『新撰しんせん紙し鑑かん』では「凡障子しょうじ紙しの類るい、美濃みのを最上さいじょうとす」と評ひょうされ和紙わしの代名詞だいめいしとなった。

寺尾てらお（現在げんざいの岐阜ぎふ県けん関せき市し寺尾てらお）で生産せいさんされる和紙わしは特とくに有名ゆうめいで、『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』では障子しょうじ用ようの書院しょいん紙し、包つつみ紙し、灯籠とうろう用ようとして使用しようしていたと記しるし、『新撰しんせん紙し鑑かん』では徳川とくがわ幕府ばくふ御用ごようの製紙せいし職人しょくにんとして、市し右みぎ衛門えもん、五右衛門ごえもん、平八へいはち、重じゅう兵衛ひょうえの名なを挙あげている。

また、寺尾てらおの他ほかにも牧谷まきや、洞戸ほらど、岩佐いわさ、谷口たにぐちで生産せいさんされる物ものも良品りょうひんである。当然とうぜんながら、産地さんち毎ごとに製紙せいしに使用しようする水みずが異ことなるため、生産せいさんされた和紙わしの風格ふうかくもそれぞれ異ことなるほか、得意とくいとする種類しゅるいも産地さんちによって異ことなった。

近きん現代げんだい

美濃和みのわ紙しあかりアート館かん

明治めいじ時代じだいから大正たいしょう時代じだいにかけて美濃みの市しを中心ちゅうしんとした美濃紙みのがみの生産せいさん戸数こすうは3,700戸こに達たっした。一方いっぽうで東ひがし濃こや中ちゅう濃こ地方ちほうでは水みずとパルプ用よう木材もくざいを豊富ほうふに調達ちょうたつできる立地りっちであったことから大手おおて製紙せいし工場こうじょうが進出しんしゅつした。

長良川ながらがわ中ちゅう下か流域りゅういきでは手てすき和紙わし業者ぎょうしゃや紙かみ問屋とんやの中なかから機械きかいすき和紙わしへの転換てんかんがみられ、家庭かてい紙し・特殊とくしゅ紙し・加工かこう紙しなどの工場こうじょうが立地りっちしている。また、苗木なえぎ藩はんなどで伝統でんとう的てき手てすき和紙わしの生産せいさんが行おこなわれていた木曽川きそがわ（飛騨川ひだがわ）流域りゅういきでは、木曽きそ・東ひがし濃この木材もくざい産地さんちの木材もくざいパルプを原料げんりょうとする大手おおて製紙せいし工場こうじょうが立地りっちするようになった。

これに対たいして従来じゅうらいの家内かない手工業しゅこうぎょう的てきな和紙わし生産せいさんは近代きんだい化かが難むずかしく、昭和しょうわ期きには機械きかいすき洋紙ようしが急増きゅうぞうして衰退すいたいしていった。

2005年ねん（平成へいせい17年ねん）8月がつ、美濃和みのわ紙しあかりアート館かんが開館かいかんした。

2014年ねん（平成へいせい26年ねん）11月に本ほん美濃紙みのがみの手てすき和紙わし技術ぎじゅつがユネスコの無形むけい文化ぶんか遺産いさん登録とうろくとして認定にんていされたことを受うけ、ユネスコ和紙わし展てんや和紙わしサミットが開催かいさいされている。

美濃和みのわ紙しと判はん型がた

美濃紙みのがみは27～29cm程度ていど、横よこ40～41cm程度ていどの大おおきさで、これよりも大おおきいものは大だい美濃みのという。これらの料紙りょうしを縦たてに2つ折おりにして冊子さっしにしたものは、それぞれ美濃判みのばん、大だい美濃判みのばんという。

日本にっぽん産業さんぎょう規格きかくにおける紙かみの寸法すんぽうの規格きかくであるJIS B列れつは美濃判みのばんに由来ゆらいしているために国際こくさい標準ひょうじゅん化か機構きこうの定さだめるISO B列れつと異ことなる。

美濃和みのわ紙しと岐阜ぎふの伝統でんとう工芸こうげい

上うえ有ゆう知ち港みなとから岐阜ぎふ方面ほうめんへの和紙わしの運搬うんぱん（再現さいげん）

江戸えど時代じだい以降いこう、長良川ながらがわを利用りようした運輸うんゆにより長良ながら橋きょうたもとの地域ちいきは長良川ながらがわの重要じゅうような港みなと町まちとなり、奥美濃おくみのから美濃和みのわ紙しなどの陸揚りくあげが多おおく、それを扱あつかう問屋とんや町まちとして栄さかえた。良質りょうしつな和紙わし「美濃和みのわ紙し」を得えた岐阜ぎふでは、岐阜ぎふの工芸こうげい品ひんである岐阜提灯ぎふぢょうちん、岐阜ぎふ和わ傘かさ、岐阜ぎふうちわが生うまれた。美濃和みのわ紙しは岐阜ぎふの伝統でんとう工芸こうげいには欠かくことのできない物ものである。

関連かんれん項目こうもく

• 美濃和みのわ紙しの里さと会館かいかん
• 美濃和みのわ紙し用具ようぐミュージアム　ふくべ
• 美濃和みのわ紙しあかりアート館かん
• 美濃みの手てすき和紙わしの家いえ旧きゅう古田ふるた行ゆき三さん邸てい
• 美濃みのまつり
• 紙かみの寸法すんぽう

外部がいぶリンク

• 美濃和みのわ紙しの里さと会館かいかん
• 美濃和みのわ紙しの里さと 上野うえの八幡やはた神社じんじゃ - ウェイバックマシン（2001年ねん6月がつ26日にちアーカイブ分ぶん）