自然しぜん単位たんいけい

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自然しぜん単位たんいけい(しぜんたんいけい)とは、おも物理ぶつりがくもちいられる、普遍ふへんてき物理ぶつり定数ていすう基準きじゅんとして定義ていぎされる単位たんいけい種別しゅべつ、あるいはそのようなもののうち特定とくてい単位たんいけい言葉ことばである。(種別しゅべつとしての)自然しぜん単位たんいけいれいとしては、幾何きかがく単位たんいけいプランク単位たんいけいなどが存在そんざいする。

たとえば素粒子そりゅうしのような非常ひじょうちいさく、かつエネルギーにちた過程かてい研究けんきゅうするさいMKSCGSのような人間にんげんサイズの単位たんいけいはもはや自然しぜんではない[ちゅう 1]他方たほうひかり速度そくどプランク定数ていすうのような物理ぶつり定数ていすうはそれぞれの次元じげん速度そくどおよび作用さよう)について自然しぜんなスケールを我々われわれ提供ていきょうする。これを利用りようしたものが自然しぜん単位たんいけいであり、結果けっかとして様々さまざま方程式ほうていしき自然しぜん単位たんいけいした簡素かんそされた表示ひょうじつ。

自然しぜん単位たんいけいばれる単位たんいけい[編集へんしゅう]

量子力学りょうしりきがく[編集へんしゅう]

Jaffe (2007) において自然しぜん単位たんいけいは、ひかり速度そくど c換算かんさんプランク定数ていすう ħ電子でんしボルト eV基本きほん単位たんいとする。このとき、CGSの基本きほん単位たんい以下いかのようにあらわされる。

CGS単位たんい 数値すうち 自然しぜん単位たんい
びょう 1.51926689×1015 ħ·eV-1
センチメートル 5.06772886×104 ħ·c·eV-1
グラム 5.60958616×1032 eV·c-2

実際じっさいは、さらに簡単かんたんのために光速こうそくおよび換算かんさんプランク定数ていすう表示ひょうじされない(つまり1とみなす)。結果けっかとして、物理ぶつり単位たんいはすべて電子でんしボルトのべき表現ひょうげんされる。たとえば電子でんし質量しつりょう について、自然しぜん単位たんいけいにおいては 表現ひょうげんされる。

素粒子そりゅうし物理ぶつりがく[編集へんしゅう]

Korytov (2008) における自然しぜん単位たんいけいは、ひかり速度そくど c換算かんさんプランク定数ていすう ħくわえて真空しんくう誘電ゆうでんりつ εいぷしろん0 を1とする。物理ぶつりりょう単位たんい量子力学りょうしりきがく場合ばあい同様どうようにエネルギーのべきによってあらわす。関係かんけいしきから、真空しんくうとおる磁率 μみゅー0も1であることがわかる。

真空しんくう誘電ゆうでんりつを1とするとき、次元じげんりょうである微細びさい構造こうぞう定数ていすう αあるふぁかんするしき から、電気でんきもとりょう e次元じげん

つ。ここから、自然しぜん単位たんいけいにおける電荷でんか基本きほん単位たんい となることを[1]

単位たんい換算かんさん[1]
物理ぶつりりょう 自然しぜん単位たんいけい 係数けいすう 国際こくさい単位たんいけい
質量しつりょう 1 GeV 1.7827×10−27 kg
なが 1 GeV-1 1.9733×10−16 m
時間じかん 1 GeV-1 6.5823×10−25 s
速度そくど 1 (次元じげんりょう) 2.9979×108 m/s
かく運動うんどうりょう 1 (次元じげんりょう) 1.0546×10−34 J⋅s
ちから 1 GeV2 8.1194×105 N
電荷でんか 1 (次元じげんりょう) 5.2909×10−19 C

宇宙うちゅうろん[編集へんしゅう]

Myers (2016) によると、宇宙うちゅうろんにおいて使つかわれている自然しぜん単位たんいけいではひかり速度そくど c換算かんさんプランク定数ていすう ħ真空しんくう誘電ゆうでんりつ εいぷしろん0ボルツマン定数ていすう kB を1とする。これまでと同様どうように、物理ぶつりりょうはエネルギー(ギガ電子でんしボルト GeV)のべきあらわす。

自然しぜん単位たんいけいもちいられる物理ぶつり定数ていすう候補こうほ[編集へんしゅう]

以下いかのような物理ぶつり定数ていすう自然しぜん単位たんいけいによくもちいられる。これらのうち次元じげん独立どくりつな5つをえらんで正規せいきすれば(つまり1にすれば)、質量しつりょうながさ・時間じかん電荷でんか・エントロピーからてられる任意にんい物理ぶつりりょうふく単位たんいけいつくることができる。このとき、次元じげん独立どくりつでない物理ぶつり定数ていすう(たとえば次元じげんおな電子でんし質量しつりょう陽子ようし質量しつりょう)をえらぶことはできない。

定数ていすう 記号きごう 次元じげん
真空しんくうちゅうひかり速度そくど c LT−1
重力じゅうりょく定数ていすう G M−1L3T−2
重力じゅうりょく定数ていすうの4πぱいばい 4πぱいG M−1L3T−2
換算かんさんプランク定数ていすう(ディラック定数ていすう ML2T−1
真空しんくう誘電ゆうでんりつ Q2 M L-3 T2
クーロン力学りきがく定数ていすう Q−2 M L3 T−2
電荷でんか e Q
電子でんし静止せいし質量しつりょう me M
陽子ようし静止せいし質量しつりょう mp M
ボルツマン定数ていすう k ML2T−2Θしーた−1
ボーア半径はんけい a0 L

おも自然しぜん単位たんいけい[編集へんしゅう]

単位たんいけい 基本きほん単位たんい
プランク単位たんいけい
(プランク単位たんいけい拡張かくちょう)
幾何きかがく単位たんいけい
ハートリー原子げんし単位たんいけい
ストーニー単位たんいけい

 (en:Stoney units

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ The MKS and cgs systems are convenient, practical systems for most macroscopic applications. When we leave the scale of human dimensions to study very small sizes and very energetic processes, they are no longer so natural.(Jaffe 2007, p. 8)

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Myers (2016), pp. 2–3

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]