茶ちゃ壺つぼ

茶ちゃ壺つぼ（LACMA所蔵しょぞう）

茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅうの様子ようす（旧きゅう奈良井ならい宿やど/長野ながの県けん塩尻しおじり市しで撮影さつえい）

茶ちゃ壺つぼ（ちゃつぼ）とは、石臼いしうすで擂すりつぶす前まえの抹茶まっちゃ、すなわち碾茶ひきちゃ（葉は茶ちゃ）を保管ほかんするために用もちいられる陶器とうき製せいの壺つぼ（葉は茶ちゃ壺つぼ）である。古ふるくは抹茶まっちゃを入いれる茶入ちゃいれを「小しょう壺つぼ」と呼よんだことに対たいして大だい壺つぼとも称しょうされた。

歴史れきし

一般いっぱん的てきには、蓋ぶたを縛しばるための紐ひも通どおしの輪わを上部じょうぶに4つ付つけ、表面ひょうめんに釉薬を掛かけて焼やかれた大型おおがたの壺つぼである。中国ちゅうごくで生産せいさんされ、香辛料こうしんりょうなどを運はこぶための道具どうぐとして、日本にっぽんにもたらされた。日本にっぽん国内こくないで茶道さどうが盛さかんになると、茶ちゃ壺つぼとして使つかわれるようになり、茶碗ちゃわんや釜がまなどと同おなじく茶席ちゃせきをかざる重要じゅうような道具どうぐの一ひとつとみなされ、国内こくないでも生産せいさんされるようになった。

茶ちゃ壺つぼは、現在げんざいでこそ飾かざり気けの無ない地味じみな陶器とうきのように思おもわれるが、中世ちゅうせいの日本にっぽんではこのような釉薬のかかった壺つぼは輸入ゆにゅうに頼たよらざるを得えなかった。その中なかで、形かたちや作さく行ぎょうの優すぐれたものが尊たっとばれていたのだろう。特とくにフィリピンのルソン経由けいゆでもたらされたものを「呂りょ宋そう（るそん）」と呼よんでおり、茶ちゃ壷つぼの中なかでも重要じゅうよう視しされている。呂りょ宋そう壺つぼの中なかで文字もじや紋様もんようのないものは「真ま壺つぼ（まつぼ）」と呼よばれ、「島しま物ぶつ」に分類ぶんるいされる。

こうした立派りっぱな壺つぼは鑑賞かんしょうの対象たいしょうであり、室町むろまち時代ときよには茶道具ちゃどうぐの中なかで最もっとも重要じゅうよう視しされていた。足利あしかが義教よしのりは茶ちゃ壺つぼに「注連しめの縄なわ」という銘めいを付つけていたが、これは茶道具ちゃどうぐに銘めいが付つけられた例れいとしては最初さいしょ期きのものと言いえる。しかし小しょう間あいだの茶ちゃの湯ゆが盛さかんになるにつれて次第しだいにその座ざを茶入ちゃいれに奪うばわれていった。

また茶ちゃの湯ゆの拡大かくだいに伴ともなって需要じゅようが増ふえると備前焼びぜんやきや信楽焼しがらきやきでも茶ちゃ壺つぼが作つくられるようになり、江戸えど時代じだいには野々村ののむら仁清ひときよが室むろ礼あや専用せんようの色絵いろえ金彩きんさいの茶ちゃ壺つぼを制作せいさくしている。

茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅう

江戸えど時代じだい、徳川とくがわ将軍家しょうぐんけに献上けんじょうするための宇治うじ茶ちゃを茶ちゃ壺つぼに入いれて運はこぶ行列ぎょうれつが行おこなわれ、東海道とうかいどうや中山道なかせんどうの街道かいどう筋すじでは「茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅう」「宇治うじ茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅう」と呼よばれた。幕府ばくふが宇治うじ茶ちゃの上納じょうのうを命めいじる宇治うじ採と茶ちゃ師しをはじめて派遣はけんしたのは1613年ねん（慶長けいちょう18年ねん）とされ、寛永かんえい10年ねん（1633年ねん）に茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅうが制度せいど化かされた。

茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅうは権威けんいの高たかいものであり、茶ちゃ壺つぼが通行つうこうする際さいには、大名だいみょうも駕が籠かごを降おりなければならず、街道かいどう沿ぞいの村むら々には街道かいどうの掃除そうじが命めいじられ、さらには街道かいどう沿ぞいの田畑たはたの耕作こうさくが禁きんじられたほどであった。童歌わらべうたの「ずいずいずっころばし」は、茶ちゃ壺つぼ道中どうちゅうを風刺ふうししたものと言いわれる。

寛永かんえい10年ねん（1633年ねん）から幕末ばくまつまで続つづいたこの行事ぎょうじは、江戸えど時代じだい中期ちゅうきに徳川とくがわ吉宗よしむねの倹約けんやく令れいが出でるまでは行列ぎょうれつの規模きぼが年々ねんねんふくれあがり、その数かずは一時いちじは数すう百ひゃく人にんから数すう千せん人にんにも達たっしたという。

詳細しょうさいは「宇治うじ採と茶ちゃ使し」および「ずいずいずっころばし」を参照さんしょう

関連かんれん項目こうもく

• 茶道さどう
• わび茶ちゃ
• 名物めいぶつ (茶道具ちゃどうぐ)
• 呂りょ宋そう助左衛門すけざえもん