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番茶ばんちゃ

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番茶ばんちゃちゃ(そのいちれい

番茶ばんちゃ(ばんちゃ)とは、日本にっぽんまれる緑茶りょくちゃ一種いっしゅ市場いちば流通りゅうつうひんでは規格きかくがい低級ていきゅうひんのおちゃす。普段ふだん使づかいのおちゃ地場じばさん自家製じかせいのおちゃ総称そうしょう番茶ばんちゃ場合ばあいもある[1]

製法せいほう煎茶せんちゃとほぼ同一どういつであるが、原料げんりょうとしてなつ以降いこう収穫しゅうかくしたちゃさん番茶ばんちゃよん番茶ばんちゃ)、次期じき栽培さいばいけてえだ整形せいけいしたときのちゃ秋冬あきふゆ番茶ばんちゃ)、煎茶せんちゃ製造せいぞう工程こうていではじかれたおおきな川柳せんりゅう)などをもちいている。煎茶せんちゃのように若葉わかばではなく成長せいちょうした原料げんりょうとするため、タンニンおおめで、ぎゃくカフェインすくなめになっている。あじ淡泊たんぱくでさっぱりとしたこうだが、しぶふくむ。地方ちほうによっては原料げんりょう収穫しゅうかく時期じき製法せいほうえているところもある。こうばしい風味ふうみすためにちゃ乾煎からいし、ほうじちゃとしてまれることもおおい。

番茶ばんちゃが、どのような色合いろあいのちゃ飲料いんりょうちゃ加工かこうほううかは、地方ちほうによりことなる。東京とうきょう静岡しずおかけんではふか緑色みどりいろ煎茶せんちゃであるのにたいして、北海道ほっかいどうや、京都きょうときょう番茶ばんちゃ)は茶色ちゃいろほうじちゃである[2]

なお、東北とうほく地方ちほうにおいても「番茶ばんちゃ」とは「ほうじちゃ全般ぜんぱんすことがおおい。石川いしかわけんにおいての番茶ばんちゃちゃくきをほうじたぼうちゃす。「きょう番茶ばんちゃ」も独特どくとく製法せいほうによるほうじちゃし、使用しようされるちゃは「番茶ばんちゃ」とはかぎらない。

由来ゆらい歴史れきし

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番茶ばんちゃ名称めいしょう由来ゆらいとしては以下いかの2つのせつがある[2]

  1. 番傘ばんがさおばんざいばんさい)などの言葉ことば使つかわれるように「ばん」には「普段ふだんの」「日常にちじょうてきな」という意味いみがあるので、高級こうきゅうひんではない日常にちじょうてきまれるおちゃという意味いみづけられた。
  2. いち番茶ばんちゃ番茶ばんちゃんだあとのおそ時期じき収穫しゅうかくされることからばんちゃばれ、のち変化へんかして番茶ばんちゃとなった。

ちゃ産地さんちかぎらず、つよチャノキ有用ゆうよう境木さかいぎとしておおくの地域ちいきえられていた。また、祭礼さいれいさい植樹しょくじゅする風習ふうしゅうがある地域ちいきもあり[3]、そういったちゃ利用りようして自家製じかせい番茶ばんちゃ全国ぜんこくつくられていた。 江戸えど時代じだい中期ちゅうきまでは、一般いっぱん出回でまわちゃのほとんどは現在げんざい基準きじゅんかんがえると番茶ばんちゃであったといわれている。製法せいほう品質ひんしつたいする工夫くふうほどこされて煎茶せんちゃ出回でまわるようになったのはそれ以降いこう時代じだいになる。現在げんざい番茶ばんちゃ煎茶せんちゃ製法せいほう準拠じゅんきょしたものであるが、煎茶せんちゃ製法せいほう標準ひょうじゅんされたのは比較的ひかくてき近年きんねんである。明治めいじ時代じだい煎茶せんちゃ生産せいさんえて高級こうきゅうひん輸出ゆしゅつ奨励しょうれいされ、低級ていきゅうひん煎茶せんちゃ国内こくない消費しょうひまわされたことで、煎茶せんちゃ番茶ばんちゃとして普及ふきゅうしたとの推測すいそくもある[2]

このため、各地かくちふるくからつたわる伝統でんとうてき番茶ばんちゃには様々さまざま製法せいほうつくられたものがあり、ちゃからって自然しぜん乾燥かんそうさせただけの薬草やくそうちゃようなものから中国ちゅうごくちゃのような発酵はっこうちゃ碁石ごいしちゃ阿波あわ番茶ばんちゃ[2])まで存在そんざいする。

飲用いんよう効用こうよう

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番茶ばんちゃ栄養えいよう代表だいひょう

実際じっさい栄養えいようは、原料げんりょうちゃ栽培さいばい条件じょうけん生育せいいく環境かんきょう収穫しゅうかく時期じき品種ひんしゅなどでことなるため記載きさいされている代表だいひょうである。

番茶ばんちゃ 浸出液しんしゅつえき[4]
100 gあたりの栄養えいよう
0.1 g
ビタミン
リボフラビン (B2)
(3%)
0.03 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.2 mg
ビタミンB6
(1%)
0.01 mg
葉酸ようさん (B9)
(2%)
7 µg
ビタミンC
(4%)
3 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
2 mg
カリウム
(1%)
32 mg
カルシウム
(1%)
5 mg
マグネシウム
(0%)
1 mg
リン
(0%)
2 mg
鉄分てつぶん
(2%)
0.2 mg
どう
(1%)
0.01 mg
成分せいぶん
水分すいぶん 99.8 g
カフェイン 0.01 g
タンニン 0.03 g

浸出しんしゅつほうちゃ 15 g/90 °C 650 mL、0.5ふん
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける
成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI割合わりあい

チャ種子しゅしのテアサポニン(theasaponin)るい、アッサムサポニン(assamsaponin)るいには小腸しょうちょうでのグルコース吸収きゅうしゅう抑制よくせいとうによる血糖けっとう上昇じょうしょう抑制よくせい活性かっせいみとめられた[5]

動物どうぶつ実験じっけん日本にっぽんちゃとく番茶ばんちゃなかでも糖類とうるい(ポリサッカライド)を有効ゆうこう成分せいぶんとする番茶ばんちゃひえびたエキスでの血糖けっとう降下こうか作用さようみとめられた[6]

地方ちほうつたわる色々いろいろ番茶ばんちゃ

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吉野よしの日干ひぼし(にっかん)番茶ばんちゃ
吉野よしの日干ひぼし番茶ばんちゃ
奈良ならけん吉野よしの地方ちほうふるくからつたわっている番茶ばんちゃである。これは「天日てんじつ番茶ばんちゃ」ともばれている。ったちゃをよくし、そのながければ1にち以上いじょう天日てんじつでしっかりと乾燥かんそうさせ、そのほうじて出来上できあがりとなる。機械きかいみながら乾燥かんそうさせるものにくらべるとかおりがたかく、しぶあじすくなくあっさりとしたあじわいになる。また、かたちがそのままのこっていることもこの製法せいほう特長とくちょうである[7]。したがって、これは実際じっさいには「ほう番茶ばんちゃ」のいちしゅということになる。
美作みさく日干ひぼし番茶ばんちゃ
岡山おかやまけん美作みさくきゅう美作みさくまちきゅう作東さくとうまち)につたわっている番茶ばんちゃ。「美作みさく番茶ばんちゃ」ともいわれている。土用どようあつ(7がつ中旬ちゅうじゅん - 8がつ中旬ちゅうじゅん)、えだごとったおちゃおおきなてつがまふかすようにる。むしろうえたおちゃひろげ、煮汁にじるをかけながら太陽たいようひかりす。日干ひぼし番茶ばんちゃ煮汁にじるをかけて天日てんじつした番茶ばんちゃ煮汁にじる茶渋ちゃしぶ飴色あめいろかがやいていることから“日干ひぼし(にっかん)番茶ばんちゃ”ともばれている[8]
陰干かげぼ番茶ばんちゃ
福井ふくいけん勝山かちやま製法せいほうつたわっている番茶ばんちゃあきちゃえだかまり、なわすだれのようにんで軒先のきさきるしておくだけの、陰干かげぼ番茶ばんちゃがある。まえなべかるってすもので、ちょうど薬草やくそうおな方法ほうほう利用りようされている[9]
阿波あわばんちゃ
かつては阿波あわ番茶ばんちゃき、番茶ばんちゃ一種いっしゅとされていたが、乳酸菌にゅうさんきん発酵はっこうさせるなど製法せいほうまったことなり、現在げんざいは「ばんちゃ」あるいは「ばんちゃ」と表記ひょうきされるようになっている。

ことわざ

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おにじゅうはち番茶ばんちゃ出端では(でばな)
広辞苑こうじえん』によると、出花でばな(でばな)がただしい。だしのかぐわしさをあらわす。「みにくおに年頃としごろになればそれなりにうつくしくえ、粗末そまつ番茶ばんちゃをついでしたばかりはあじわいがよい」[10]という意味いみで、みにく女性じょせい年頃としごろならうつくしく、ひとじょうすること[10]ふるくは男女だんじょ両方りょうほうもちいた[10]類義語るいぎごとして「おにじゅうなないばら(いばら)もはな[11][10]おにじゅうなな番茶ばんちゃ煮花にばな[11]おにじゅうなな番茶ばんちゃはし[10]南瓜かぼちゃ(かぼちゃ)おんないちざかり」[11]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 中村なかむらひつじいちろう 1999, p. 3.
  2. ^ a b c d 【くらし物語ものがたり番茶ばんちゃいろ地域ちいきでなぜちがう?*もともとは茶色ちゃいろ 明治めいじ緑茶りょくちゃ普及ふきゅう日本経済新聞にほんけいざいしんぶん』2018ねん10がつ6にち朝刊ちょうかんべつり(日経にっけい+1)6めん
  3. ^ 中村なかむらひつじいちろう 1999, pp. 134–138.
  4. ^ 文部もんぶ科学かがくしょう 「日本にっぽん食品しょくひん標準ひょうじゅん成分せいぶんひょう2015年版ねんばんななてい
  5. ^ 吉川よしかわ雅之まさゆき薬用やくよう食物しょくもつ糖尿とうにょうびょう予防よぼう成分せいぶん化学かがく生物せいぶつ』 2002ねん 40かん 3ごう p.172-178, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.40.172
  6. ^ 清水しみず岑夫, 和田わだ修治しゅうじ, はやし利光としみつ ほか、日本にっぽんちゃ血糖けっとう降下こうか作用さよう成分せいぶんかんする研究けんきゅう藥學やくがく雜誌ざっし』 1988ねん 108かん 10ごう p.964-970, doi:10.1248/yakushi1947.108.10_964
  7. ^ 吉野よしの日干ひぼし番茶ばんちゃ”. 奈良ならけん (2002ねん9がつ). 2008ねん2がつ2にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2008ねん10がつ25にち閲覧えつらん
  8. ^ 伝統でんとう料理りょうり 岡山おかやまけん 農林水産省のうりんすいさんしょう中国ちゅうごく四国しこく農政のうせいきょく 地産ちさんけし
  9. ^ 中村なかむらひつじ一郎いちろう. “番茶ばんちゃちゃ歴史れきし物語ものがた”. 日本にっぽん喫茶きっさ文化ぶんか. 世界せかい緑茶りょくちゃ協会きょうかい. 2007ねん8がつ12にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2007ねん8がつ26にち閲覧えつらん
  10. ^ a b c d e おにじゅうはち番茶ばんちゃ出花でばな(オニモジュウハチバンチャモデバナ)とは? 意味いみ使つかかた”. コトバンク. 2024ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  11. ^ a b c おにじゅうはち 番茶ばんちゃ出花でばな | 会話かいわ使つかえることわざ辞典じてん | 情報じょうほう知識ちしき&オピニオン imidas - イミダス”. 情報じょうほう知識ちしき&オピニオン imidas. 2024ねん5がつ15にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 中村なかむらひつじ一郎いちろう番茶ばんちゃ日本人にっぽんじん吉川弘文館よしかわこうぶんかん歴史れきし文化ぶんかライブラリー〉、1999ねんISBN 4-642-05446-4 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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