(Translated by https://www.hiragana.jp/)
覚醒遅延 - Wikipedia コンテンツにスキップ

覚醒かくせい遅延ちえん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

覚醒かくせい遅延ちえん(かくせいちえん)とは、全身ぜんしん麻酔ますいないしは鎮静ちんせいした手術しゅじゅつ終了しゅうりょうに、予想よそうされた時間じかんえて意識いしき反応はんのう回復かいふくしない状態じょうたいをいう。

手術しゅじゅつ終了しゅうりょう麻酔ますいやく鎮静ちんせいやく投与とうよ中止ちゅうしされて、薬物やくぶつのうない濃度のうど意識いしきうしな英語えいごばん濃度のうど以下いかになると、通常つうじょう意識いしき回復かいふくする。これを麻酔ますいからの覚醒かくせいという。予想よそうされる濃度のうど時間じかん麻酔ますいから覚醒かくせいすることがおおいが、これらをえて意識いしき反応はんのう回復かいふくしない状態じょうたい覚醒かくせい遅延ちえんという。

要因よういん

[編集へんしゅう]

覚醒かくせい遅延ちえん要因よういんおおきく患者かんじゃ麻酔ますい手術しゅじゅつ、の3つにけられる[1]

患者かんじゃ要因よういん

[編集へんしゅう]
  1. 高齢こうれいしゃ: 身体しんたい所見しょけん検査けんさから予想よそうされる以上いじょうに、身体しんたい機能きのう脳神経のうしんけい活動かつどう低下ていかしている可能かのうせいがあるため[1]
  2. 基礎きそ疾患しっかん薬剤やくざい治療ちりょう: 中枢ちゅうすう神経しんけいけいそのものに基礎きそ疾患しっかんがある場合ばあい影響えいきょうけやすい。のう外傷がいしょう梗塞こうそく萎縮いしゅくなどの器質きしつてき疾患しっかんかある場合ばあいや、神経しんけい精神せいしん疾患しっかんなどがある場合ばあいで、さらにこう精神せいしんやくこう不安ふあんやく鎮痛ちんつうやくなどの、麻酔ますいやく相互そうご作用さようかある薬物やくぶつ治療ちりょうけている場合ばあいは、とく影響えいきょうけやすい[1]
  3. 代謝たいしゃ機能きのう低下ていか排泄はいせつ機能きのう低下ていか: こころ機能きのう甲状腺こうじょうせん機能きのう低下ていかによる基礎きそ代謝たいしゃ低下ていかきも機能きのう低下ていかによる薬剤やくざい代謝たいしゃ機能きのう低下ていかじん機能きのう低下ていかによる薬剤やくざい排泄はいせつ機能きのう低下ていか呼吸こきゅう機能きのう低下ていかによる吸入きゅうにゅう麻酔ますいやく排泄はいせつ機能きのう低下ていか、など[2]
  4. 肥満ひまん: レミフェンタニルロクロニウムなど、脂肪しぼう分布ぶんぷすくない薬剤やくざいが、標準ひょうじゅん体重たいじゅうではなくじつ体重たいじゅうしたがって投与とうよされた場合ばあいりょう投与とうよとなり覚醒かくせい遅延ちえんこす可能かのうせいがある[2]

麻酔ますい要因よういん

[編集へんしゅう]
  1. ぜん投薬とうやく: ベンゾジアゼピンけいおおもちいられるが、消失しょうしつ半減はんげん数時間すうじかん以上いじょうのものもあるため、覚醒かくせい遅延ちえん原因げんいんとなり[2]
  2. 薬理やくりがくてき要素ようそ: 全身ぜんしん麻酔ますいちゅう意識いしき消失しょうしつさせる種々しゅじゅ薬剤やくざいもちいるため、原因げんいん同定どうていむずかしい場合ばあいがある。相互そうご作用さようによる効果こうか増強ぞうきょう個人こじんもある。体内たいないでの分布ぶんぷ時間じかん濃度のうど体格たいかくなどの影響えいきょうける。とく吸入きゅうにゅう麻酔ますいやくでは、一度いちど覚醒かくせいしたとおもわれても、換気かんきりょう低下ていかがあると体内たいないんだ薬物やくぶつ血液けつえきちゅうさい分布ぶんぷし、作用さようふたた増強ぞうきょうすることがある[2]
  3. 生理学せいりがくてき要素ようそ: しゅうじゅつ発生はっせいした全身ぜんしん状態じょうたいにより、薬剤やくざい作用さようそのもの、代謝たいしゃ排泄はいせつ影響えいきょうしょうじて覚醒かくせい遅延ちえんとなる場合ばあいがある。血糖けっとう異常いじょうや、てい体温たいおんさん塩基えんき異常いじょう電解でんかいしつ異常いじょうてい換気かんき換気かんき脳神経のうしんけい障害しょうがい、など[2]

手術しゅじゅつ要因よういん

[編集へんしゅう]
  1. 高度こうどおかせかさね
  2. 長時間ちょうじかん: 薬剤やくざい投与とうよりょうえるとともに、薬物やくぶつ移行いこう時間じかんがかかる臓器ぞうき徐々じょじょ薬物やくぶつ蓄積ちくせきされる。蓄積ちくせきされた薬物やくぶつ投与とうよ中止ちゅうし血液けつえきちゅう移行いこうし、作用さよう遷延せんえんする[3]
  3. 大量たいりょう出血しゅっけつ: 潜在せんざいてき各種かくしゅ臓器ぞうきてい灌流状態じょうたいとなっている場合ばあいおお[3]
  4. 脳神経のうしんけい手術しゅじゅつ: 手術しゅじゅつそのものが中枢ちゅうすう神経しんけいけい直接的ちょくせつてき影響えいきょうおよぼすことから、覚醒かくせい遅延ちえん要因よういんとなる[3]

対応たいおう

[編集へんしゅう]
  • 基本きほんてきには、遷延せんえん薬剤やくざい自然しぜん消失しょうしつ[4]
  • 遷延せんえんしている薬剤やくざいたいする拮抗きっこうやく使用しよう考慮こうりょしてよい。ベンゾジアゼピンけいやくたいするフルマゼニルや、オピオイドたいするナロキソンだつ分極ぶんきょくせいすじ弛緩しかんやくたいするスガマデクス、などがある[4][注釈ちゅうしゃく 1]
  • 拮抗きっこうやく投与とうよすみやかに効果こうか発揮はっきするが、作用さよう時間じかん遷延せんえん薬剤やくざい効果こうか消失しょうしつ時間じかんよりみじか場合ばあい拮抗きっこうされた薬剤やくざいふたた作用さよう発現はつげんすることがある。よって、覚醒かくせい遅延ちえんでの拮抗きっこうやく投与とうよ慎重しんちょうでなければならず、使用しよう厳重げんじゅう経過けいか観察かんさつ必要ひつようである[4]

覚醒かくせい興奮こうふん

[編集へんしゅう]

覚醒かくせい興奮こうふん点滴てんてきライン、カテーテルドレーン自己じこ抜去ばっきょ転落てんらくなど、安全あんぜん確保かくほじょう問題もんだいとなる[3]

患者かんじゃ要因よういん

[編集へんしゅう]
  • 小児しょうに麻酔ますいからの覚醒かくせい興奮こうふん状態じょうたいとなる割合わりあいたかく、覚醒かくせいせんもう表現ひょうげんされることもある[3]
  • セボフルランデスフルラン排泄はいせつ覚醒かくせいはや吸入きゅうにゅう麻酔ますいやくだが、急速きゅうそく覚醒かくせいによって覚醒かくせい興奮こうふんこる場合ばあいがある[3]
  • 小児しょうに自己じこかれた環境かんきょう理解りかいして理性りせいてき対処たいしょすることが困難こんなんなため、しゅうじゅつ保護ほごしゃ協力きょうりょく重要じゅうようになることがおお[3]
  • つよ緊張きんちょう状態じょうたい精神せいしん疾患しっかん認知にんちしょうなど、周囲しゅうい状況じょうきょう把握はあくやコミュニケーションが困難こんなん場合ばあい覚醒かくせい興奮こうふんこす可能かのうせいがある[3]

麻酔ますい/手術しゅじゅつ要因よういん

[編集へんしゅう]
  • 高度こうどおかせかさね手術しゅじゅつ脳外科のうげか手術しゅじゅつ覚醒かくせい興奮こうふんこすことがある[3]
  • 鎮静ちんせいやくこう不安ふあん作用さよう意識いしき低下ていかさせる作用さようつが、場合ばあいによっては理性りせいてきなコントロールをうしなわせるだつ抑制よくせい状態じょうたいとなり、ぎゃく興奮こうふんこす場合ばあいがある[3]
  • 鎮静ちんせいやく鎮痛ちんつうやく拮抗きっこうやく投与とうよによる急速きゅうそく覚醒かくせいいたみの出現しゅつげんによっても興奮こうふん状態じょうたいとなることがある[3]

かくれた重大じゅうだい身体しんたい異常いじょう

[編集へんしゅう]

興奮こうふん薬剤やくざい精神せいしんてき影響えいきょう以外いがいに、身体しんたい異常いじょうともなっていることがある。中枢ちゅうすう神経しんけいけい異常いじょう呼吸こきゅうけい異常いじょう循環じゅんかんけい異常いじょう血液けつえき代謝たいしゃ異常いじょうなどである。とく上気じょうきどう閉塞へいそく狭窄きょうさくてい酸素さんそしょうこう二酸化炭素にさんかたんそしょうじゅうあつし後遺症こういしょうのこ事態じたいつながるため、迅速じんそく診断しんだん対応たいおうもとめられる[3]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c 日本にっぽん麻酔ますい学会がっかい 2020, p. 634.
  2. ^ a b c d e 日本にっぽん麻酔ますい学会がっかい 2020, p. 635.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 日本にっぽん麻酔ますい学会がっかい 2020, p. 637.
  4. ^ a b c 日本にっぽん麻酔ますい学会がっかい 2020, p. 636.
  5. ^ Kurçaloğlu, Mustafa; Sarıhasan, Bahriye Binnur; Çetinoğlu, Erhan Çetin (2020). “Comparing the effects of sugammadex and neostigmine on neuromuscular block and bispectral index in recovery from intracranial mass resection operations”. Eastern Journal Of Medicine 25 (3): 371–377. doi:10.5505/ejm.2020.99705. ISSN 1301-0883. https://www.journalagent.com/z4/download_fulltext.asp?pdir=ejm&plng=eng&un=EJM-99705. 

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 日本にっぽん麻酔ますい学会がっかい, しゅうじゅつ管理かんりチーム委員いいんかい日本語にほんご)『しゅうじゅつ管理かんりチームテキスト』(4はん公益社こうえきしゃだん法人ほうじん日本にっぽん麻酔ますい学会がっかい神戸こうべ、2020ねんISBN 9784990526290