脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) から局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく を注入 ちゅうにゅう している。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい (せきずいくもまくかますい)とは、くも膜 まく 下 か 腔 に局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく を注入 ちゅうにゅう し、脊髄 せきずい の前 ぜん 根 ね 、後 こう 根 ね をブロックする区域 くいき 麻酔 ますい の一種 いっしゅ である。脊椎 せきつい 麻酔 ますい (英 えい : spinal anesthesia 、ラテン語 らてんご の spinalis 「脊椎 せきつい /脊髄 せきずい の」とAnästhesie 「麻酔 ますい 」に由来 ゆらい )または腰椎 ようつい 麻酔 ますい (英 えい : lumbar anesthesia 、ラテン語 らてんご のlumbalis 「腰部 ようぶ の」から)とも呼 よ ばれる。他 た にくも膜 まく 下 か ブロック (Sub-arachnoid Block: SAB )と呼 よ ばれることもある。
腰椎 ようつい の間 あいだ から脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき 中 なか に局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく (場合 ばあい によっては他 た の薬剤 やくざい も)を注射 ちゅうしゃ することで、脊髄 せきずい に由来 ゆらい する神経 しんけい の信号 しんごう 伝達 でんたつ が抑制 よくせい される。その結果 けっか 、下半身 かはんしん の交感神経 こうかんしんけい 系 けい 、感覚 かんかく 神経 しんけい 、運動 うんどう 神経 しんけい が一時 いちじ 的 てき に可逆 かぎゃく 的 てき に遮断 しゃだん される。患者 かんじゃ の意識 いしき は保 たも たれる。起 お こりうる副作用 ふくさよう としては、低 てい 血圧 けつあつ 、吐 は き気 け 、背中 せなか の痛 いた みなどがあり、硬 かた 膜 まく 穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう (英語 えいご 版 ばん ) が麻酔 ますい 後 ご の数日 すうじつ 間 あいだ で起 お こることがある。重 おも 篤 あつ な合併症 がっぺいしょう (脊髄 せきずい に関連 かんれん した血腫 けっしゅ や感染 かんせん 、神経 しんけい 損傷 そんしょう )はまれである。
他 た の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 法 ほう に比 くら べて、少 すく ない麻酔 ますい 薬 やく の量 りょう で、迅速 じんそく で強力 きょうりょく な麻酔 ますい 効果 こうか が得 え られるが、通常 つうじょう はカテーテルを挿入 そうにゅう しないため麻酔 ますい 薬 やく の持続 じぞく 投与 とうよ ができず、短時間 たんじかん の手術 しゅじゅつ に適応 てきおう が限 かぎ られる。また、頭蓋 とうがい 内 ない 圧 あつ 亢進 こうしん 時 じ や凝固 ぎょうこ 異常 いじょう 、血小板 けっしょうばん 減少 げんしょう 、抗 こう 血栓 けっせん 療法 りょうほう 中 ちゅう は禁忌 きんき となる。
19世紀 せいき 末 まつ 、特 とく にアウグスト・ビーア (英語 えいご 版 ばん ) とテオドール・タフィエ (英語 えいご 版 ばん ) (1857-1929)によって臨床 りんしょう に導入 どうにゅう されたこの麻酔 ますい 方法 ほうほう は、麻酔 ますい に用 もち いられたコカイン の毒性 どくせい や、麻酔 ますい 後 ご の酷 ひど い頭痛 ずつう 、高 たか い死亡 しぼう 率 りつ が問題 もんだい となり、全身 ぜんしん 麻酔 ますい の進歩 しんぽ とともに麻酔 ますい 臨床 りんしょう における重要 じゅうよう 性 せい を失 うしな っていった。20世紀 せいき 半 なか ばより、針 はり の改良 かいりょう による頭痛 ずつう の軽減 けいげん 、局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の改良 かいりょう による毒性 どくせい の減少 げんしょう 、モニタリング の徹底 てってい による死亡 しぼう 率 りつ の減少 げんしょう 、などにより麻酔 ますい 法 ほう として再 さい 評価 ひょうか されるようになった。標準 ひょうじゅん 的 てき な麻酔 ますい 法 ほう として、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は今日 きょう 、下腹部 かふくぶ 、骨盤 こつばん 、下肢 かし 、産科 さんか の多 おお くの手術 しゅじゅつ に行 おこな われている。これらの手術 しゅじゅつ では、腰部 ようぶ または胸部 きょうぶ の硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい など、他 た の区域 くいき 麻酔 ますい や全身 ぜんしん 麻酔 ますい の代替 だいたい として、ないしは併用 へいよう 可能 かのう である。
解剖 かいぼう 学 がく 的 てき 基礎 きそ と脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の原理 げんり [ 編集 へんしゅう ]
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の模 も 式 しき 図 ず (横断 おうだん 面 めん )
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の矢 や 状 じょう 断 だん 像 ぞう 人間 にんげん の脊椎 せきつい は24個 こ の椎骨 ついこつ からなり[ 注釈 ちゅうしゃく 1] 、体 からだ 軸 じく の力学 りきがく 的 てき 安定 あんてい 性 せい を確保 かくほ している。これらは靭帯 じんたい で連結 れんけつ され、それぞれが椎 しい 体 たい 、脊髄 せきずい (図 ず では➀)とその膜 まく を囲 かこ む椎 しい 弓 ゆみ 、2つの横 よこ 突起 とっき 、後方 こうほう (背 せ 側 がわ )の棘 とげ 突起 とっき からなる。脊髄 せきずい 神経 しんけい は椎骨 ついこつ と椎骨 ついこつ の間 あいだ から出 で ており、身体 しんたい を分節 ぶんせつ 的 てき に支配 しはい し、運動 うんどう 機能 きのう と知覚 ちかく を可能 かのう にし、また自律 じりつ 神経 しんけい 系 けい の線維 せんい も含 ふく んでいる。
中枢 ちゅうすう 神経 しんけい 系 けい の一部 いちぶ として、脊髄 せきずい は髄 ずい 膜 まく に囲 かこ まれている。内側 うちがわ から外側 そとがわ に向 む かって、脊髄 せきずい に直接 ちょくせつ 接 せっ している軟膜 、くも膜 まく 、そして 外側 そとがわ の境界 きょうかい として硬 かた 膜 まく である。軟膜とくも膜 まく の 間 あいだ には脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき 腔(くも膜 まく 下 か 腔 )があり、脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき が循環 じゅんかん している。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の際 さい 、このくも膜 まく 下 か 腔は細 ほそ い中空 ちゅうくう 針 はり (脊椎 せきつい 針 はり )で穿刺 せんし される。針 はり は皮膚 ひふ 、椎骨 ついこつ の棘 とげ 突起 とっき 間 あいだ の靭帯 じんたい (棘 とげ 上 じょう 靱帯 じんたい (英語 えいご 版 ばん ) 、棘 とげ 間 あいだ 靱帯 じんたい (ドイツ語 ご 版 ばん ) 、黄 き 靱帯 じんたい (英語 えいご 版 ばん ) )を貫通 かんつう して、さらに硬 かた 膜 まく 外 がい 腔 (図 ず の➂)(脂肪 しぼう 組織 そしき と血管 けっかん で満 み たされ、髄 ずい 膜 まく の外側 そとがわ にある)を経 へ て、硬 かた 膜 まく とくも膜 まく を貫通 かんつう し、その先端 せんたん がくも膜 まく 下 か 腔(図 ず の➁)で静止 せいし する。局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく はこの腔内に注入 ちゅうにゅう され(髄 ずい 腔内投与 とうよ (英語 えいご 版 ばん ) )、脊髄 せきずい 神経 しんけい の前 ぜん 根 ね と後 こう 根 ね に作用 さよう し、神経 しんけい インパルスを伝達 でんたつ する機能 きのう を一時 いちじ 的 てき に停止 ていし させる。
ヒトの発育 はついく 過程 かてい において、脊柱 せきちゅう は脊髄 せきずい よりも早 はや く成長 せいちょう するため、脊髄 せきずい は(成人 せいじん の場合 ばあい )第 だい 1/第 だい 2腰椎 ようつい の脊髄 せきずい 円錐 えんすい のレベルで終 お わるが、関連 かんれん する脊髄 せきずい 神経 しんけい は足 あし 側 がわ (尾 お 側 がわ )に移動 いどう し続 つづ け、脊柱 せきちゅう 管 かん から出 で てくる。それによって馬尾 ばび が形成 けいせい される。このような状況 じょうきょう により、脊髄 せきずい を損傷 そんしょう することなく中位 ちゅうい 腰椎 ようつい のレベルで穿刺 せんし することができる。
脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) さまざまなタイプの脊椎 せきつい 針 はり の先端 せんたん [ 12] 。A.クインケ(Quincke)針 はり 、B.スプロッテ(Sprotte)針 はり 、C.ボールペン針 はり (Aはカッティング、B、Cはいずれも非 ひ カッティング針 はり ) 脊椎 せきつい 針 はり とは専 もっぱ ら脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい ないしは腰椎 ようつい 穿刺 せんし に用 もち いられる注射 ちゅうしゃ 針 はり の一種 いっしゅ である。くも膜 まく 下 か 穿刺 せんし 針 はり 、脊麻針 はり とも呼 よ ばれる。図 ず に示 しめ すように、薬液 やくえき を注入 ちゅうにゅう するために中空 なかぞら の外 そと 筒 とう 、穿刺 せんし 時 じ に外 そと 筒 とう が詰 つ まったり、くも膜 まく 下 か 腔に皮膚 ひふ 組織 そしき や靭帯 じんたい 組織 そしき を持 も ち込 こ まないように「フタ」の役目 やくめ を果 は たす内 うち 筒 とう で構成 こうせい される。脊麻針 はり は細 こまか ければ細 ほそ いほど、くも膜 まく 穿刺 せんし に伴 ともな う髄 ずい 液 えき の漏出 ろうしゅつ が少 すく ないために麻酔 ますい 後 ご の頭痛 ずつう が起 お こりにくい。針 はり の太 ふと さはゲージ規格 きかく で表 あらわ され、単位 たんい の略号 りゃくごう は"G"である。太 ふと さは22Gから29Gまであり、一番 いちばん 太 ふと い22Gでも0.71mm、29Gでは0.31mmである[ 16] 。長 なが さは通常 つうじょう 約 やく 7cmである。先端 せんたん 形状 けいじょう は鋭利 えいり なカッティング針 はり と、スプロッテ針 はり などの先端 せんたん が鋭利 えいり でない針 はり (非 ひ カッティング針 はり )とがあり、後者 こうしゃ は硬 かた 膜 まく 損傷 そんしょう が軽微 けいび で済 す むので麻酔 ますい 後 ご の頭痛 ずつう の頻度 ひんど が低 ひく いとされる。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の効果 こうか 時間 じかん は、使用 しよう する薬剤 やくざい によって異 こと なる。局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく は、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を行 おこな う際 さい に使用 しよう される標準 ひょうじゅん 的 てき な薬剤 やくざい である。これらは神経 しんけい 内 ない に拡散 かくさん し、細胞 さいぼう 膜 まく のナトリウムチャネル を遮断 しゃだん し、ナトリウムイオンの流入 りゅうにゅう を減少 げんしょう させる。このようにして、活動 かつどう 電位 でんい の形成 けいせい が妨 さまた げられ、神経 しんけい における信号 しんごう 伝達 でんたつ ができなくなる。
最 もっと もよく使用 しよう される局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の一 ひと つであるブピバカイン の構造 こうぞう 式 しき 。光学 こうがく 異性 いせい 体 たい を持 も ち、ラセミ体 たい として市販 しはん されている。
リドカイン は、毒性 どくせい が低 ひく いことから1950年代 ねんだい から50年 ねん 以上 いじょう 、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい で好 この んで用 もち いられてきたが、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に関 かん しては、他 た の麻酔 ますい 薬 やく よりもむしろ一時 いちじ 的 てき な神経 しんけい 傷害 しょうがい が高率 こうりつ に生 しょう じることが判明 はんめい し[ 20] 、あまり使 つか われなくなった。ブピバカイン は広 ひろ く使用 しよう されている薬剤 やくざい で、作用 さよう 時間 じかん が長 なが く、リドカインとは対照 たいしょう 的 てき に神経 しんけい 毒性 どくせい の発生 はっせい 率 りつ は低 ひく いと報告 ほうこく されている。等 とう 比重 ひじゅう および高 こう 比重 ひじゅう 溶液 ようえき の両方 りょうほう が製剤 せいざい として市販 しはん されている[ 21] 。メピバカイン [ 22] 、プリロカイン [ 23] 、ロピバカイン [ 24] なども薬理 やくり 学的 がくてき には有効 ゆうこう であるが、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を適応 てきおう とした製剤 せいざい は日本 にっぽん では2023年 ねん 現在 げんざい 市販 しはん されていない[ 注釈 ちゅうしゃく 2] 。プロカインとメピバカインの作用 さよう 時間 じかん は約 やく 1時 じ 間 あいだ と比較的 ひかくてき 短 みじか く、外来 がいらい で行 おこな われる短時間 たんじかん の処置 しょち に使用 しよう するには魅力 みりょく 的 てき である。しかし、エステル型 がた の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく であるプロカインは、アミド型 がた に属 ぞく する他 ほか の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく よりもアレルギー反応 はんのう のリスクが高 たか い。日本 にっぽん では、かつては、エステル型 がた の0.3%ペルカミンS(ジブカイン )、ネオペルカミンS(ジブカインとパラブチルアミノ安息香 あんそくこう 酸 さん ジエチルアミノエチル塩酸 えんさん 塩 しお の合 ごう 剤 ざい )も用 もち いられていたが神経 しんけい 毒性 どくせい を疑 うたが われ、現在 げんざい は販売 はんばい されていない[ 28] 。他 た にテトカイン(テトラカイン )も使用 しよう されてきたが、日本 にっぽん では2023年度 ねんど 限 かぎ りで販売 はんばい 終了 しゅうりょう となる見込 みこ みである[ 29] 。
他 た の薬剤 やくざい (添加 てんか 薬 やく )との併用 へいよう は、局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の効果 こうか を長持 ながも ちさせ、副作用 ふくさよう を軽減 けいげん することを目的 もくてき としている。例 たと えば、オピオイド の添加 てんか がよく行 おこな われている。この目的 もくてき のために、フェンタニル やスフェンタニル (英語 えいご 版 ばん ) [ 31] のような脂 あぶら 溶性 ようせい のものが使用 しよう され、脊髄 せきずい 後 こう 角 かく にあるオピオイド受容 じゅよう 体 たい を介 かい して作用 さよう する。かゆみ 、吐 は き気 け 、呼吸 こきゅう 抑制 よくせい といった典型 てんけい 的 てき なオピオイドの副作用 ふくさよう が起 お こることがある。モルヒネ などの水溶 すいよう 性 せい オピオイド誘導体 ゆうどうたい では、呼吸 こきゅう 抑制 よくせい と鎮静 ちんせい 作用 さよう が強 つよ くなるため、患者 かんじゃ を長時間 ちょうじかん モニター する必要 ひつよう がある[ 33] 。クロニジン [ 34] やケタミン [ 35] の使用 しよう はあまり一般 いっぱん 的 てき ではない[ 36] 。アドレナリンは、その効果 こうか を延長 えんちょう させるために他 た の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 法 ほう では添加 てんか されるが、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい での使用 しよう には適 てき さないとされる[ 注釈 ちゅうしゃく 3] 。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の効果 こうか の程度 ていど は、注入 ちゅうにゅう された薬剤 やくざい がくも膜 まく 下 か 腔 にどのように広 ひろ がるかどうかに依存 いぞん する。これは主 おも に、局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の総 そう 投与 とうよ 量 りょう と比重 ひじゅう によって決 き まる。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に用 もち いられる局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく は、髄 ずい 液 えき と同 おな じ比重 ひじゅう を持 も つ等 とう 比重 ひじゅう 液 えき と、グルコース の添加 てんか によってより高 たか い比重 ひじゅう を持 も つ高 こう 比重 ひじゅう 液 えき とに分類 ぶんるい される[ 41] 。等 とう 比重 ひじゅう 液 えき の大 だい 部分 ぶぶん は穿刺 せんし 部位 ぶい のくも膜 まく 下 か 腔に留 と まる。しかし、比重 ひじゅう はわずかに温度 おんど に依存 いぞん するため、体内 たいない での加 か 温 ゆたか により、高 こう 比重 ひじゅう 液 えき よりも拡散 かくさん の予測 よそく が難 むずか しくなる。高 こう 比重 ひじゅう 液 えき は重力 じゅうりょく に従 したが って下方 かほう に沈 しず むため、患者 かんじゃ の体位 たいい によって麻酔 ますい 薬 やく の広 ひろ がりをコントロールできる。高位 こうい 麻酔 ますい は頭 あたま 低位 ていい 、低位 ていい 麻酔 ますい は頭 あたま 高位 こうい とすることにより達成 たっせい される。等 とう 比重 ひじゅう 液 えき と同様 どうよう の広 ひろ がりは、仰臥 ぎょうが 位 い で達成 たっせい でき、サドルブロックは座 ざ 位 い で、側臥 そくが 位 い では片側 かたがわ 優位 ゆうい の麻酔 ますい 効果 こうか が得 え られる。低 てい 比重 ひじゅう 液 えき の使用 しよう は例外 れいがい 的 てき な場合 ばあい にのみ行 おこな われる[ 46] [ 注釈 ちゅうしゃく 4] 。
麻酔 ますい 薬 やく の拡散 かくさん に影響 えいきょう するその他 た の因子 いんし (決定 けってい 因子 いんし )は、患者 かんじゃ 個々 ここ で変化 へんか の大 おお きい髄 ずい 液 えき 量 りょう とくも膜 まく 下 か 腔の空間 くうかん 的 てき 条件 じょうけん である。後者 こうしゃ は患者 かんじゃ の体格 たいかく に影響 えいきょう される。肥満 ひまん 、妊娠 にんしん 、腹水 ふくすい など、腹腔 ふくこう 内 ない の圧力 あつりょく が高 たか くなると、くも膜 まく 下 か 腔が圧迫 あっぱく され、それに応 おう じて投与 とうよ 量 りょう を減 へ らさなければならない[ 46] 。注射 ちゅうしゃ の速度 そくど 、注入 ちゅうにゅう される総量 そうりょう 、局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく と髄 ずい 液 えき の意図 いと 的 てき な攪拌(Barbotageと呼 よ ばれる。脊椎 せきつい 針 はり に局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく を充填 じゅうてん したシリンジを接続 せつぞく し、髄 ずい 液 えき 吸引 きゅういん と髄 ずい 腔注入 ちゅうにゅう を数 すう 回 かい 繰 く り返 かえ す )は、麻酔 ますい の広 ひろ がりにそれほど影響 えいきょう しない。
硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい や腰椎 ようつい 穿刺 せんし との違 ちが い[ 編集 へんしゅう ]
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では穿刺 せんし 針 はり が硬 かた 膜 まく を貫 つらぬ いてくも膜 まく 下 か 腔 に到達 とうたつ する(A)が、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では穿刺 せんし 針 はり は硬 かた 膜 まく 手前 てまえ の硬 かた 膜 まく 外 がい 腔 に留 と まり、カテーテルが留置 りゅうち される(B)。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では、注射 ちゅうしゃ 針 はり が硬 かた い髄 ずい 膜 まく (硬 かた 膜 まく )を貫通 かんつう するため、注入 ちゅうにゅう された局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく はクモ膜 まく 下 か 腔 の脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき 中 なか に自由 じゆう に広 ひろ がり、神経 しんけい 線維 せんい がそこで麻酔 ますい される。一方 いっぽう 、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では、硬 かた 膜 まく に穴 あな を開 あ けない。カテーテルは硬 かた 膜 まく の外側 そとがわ の硬 かた 膜 まく 外 がい 腔 に挿入 そうにゅう されるため、局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく は主 おも に髄 ずい 膜 まく の外側 そとがわ で脊髄 せきずい からつながる脊髄 せきずい 神経 しんけい に作用 さよう する。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では、麻酔 ますい が効 き いているレベルより下 した のすべての神経 しんけい 線維 せんい 、つまり下半身 かはんしん 全体 ぜんたい が薬剤 やくざい の髄 ずい 液 えき 中 ちゅう への広 ひろ がりにより麻酔 ますい されるのに対 たい し、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では、穿刺 せんし レベルの対応 たいおう する皮膚 ひふ 分節 ぶんせつ を中心 ちゅうしん に麻酔 ますい 効果 こうか が及 およ ぶ[ 47] 。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では歩行 ほこう は不能 ふのう もしくは困難 こんなん となるが、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では歩行 ほこう は可能 かのう である[ 注釈 ちゅうしゃく 5] 。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では最小 さいしょう 量 りょう の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく で強力 きょうりょく な鎮痛 ちんつう 効果 こうか が得 え られるが、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では同等 どうとう の鎮痛 ちんつう を得 え るためには大量 たいりょう の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく が必要 ひつよう となる。例 たと えば、帝王切開 ていおうせっかい に対 たい する局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく ブピバカイン の用量 ようりょう は脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では、7.5-12.5mgであるのに対 たい して、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では100-150mgと10倍 ばい 以上 いじょう の量 りょう が必要 ひつよう になる。
腰椎 ようつい 穿刺 せんし では、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい とほぼ同 おな じ方法 ほうほう でくも膜 まく 下 か 腔を穿刺 せんし する。腰椎 ようつい 穿刺 せんし は、髄 ずい 液 えき 圧 あつ の測定 そくてい や診断 しんだん 用 よう 髄 ずい 液 えき サンプリングに使用 しよう され、中枢 ちゅうすう 神経 しんけい 系 けい の感染 かんせん 症 しょう や転移 てんい が疑 うたが われる場合 ばあい や抗体 こうたい 診断 しんだん のために行 おこな われる[ 48] 。化学 かがく 療法 りょうほう では、腰椎 ようつい 穿刺 せんし によって抗癌剤 こうがんざい が髄 ずい 腔内(英語 えいご 版 ばん ) に注入 ちゅうにゅう されることもある[ 49] 。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の派生 はせい 手技 しゅぎ [ 編集 へんしゅう ]
皮膚 ひふ 分節 ぶんせつ (デルマトーム)
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は通常 つうじょう 、1回 かい の注射 ちゅうしゃ (シングルショット )で行 おこな われる。感覚 かんかく ブロックの範囲 はんい によって、低位 ていい (皮膚 ひふ 分節 ぶんせつ Th12以下 いか 、鼠径 そけい 部 ぶ レベル)、中位 ちゅうい (分節 ぶんせつ Th4~分節 ぶんせつ Th10まで、剣 けん 状 じょう 突起 とっき のレベル)、高位 こうい (分節 ぶんせつ Th4以上 いじょう 、乳首 ちくび レベル)に区別 くべつ される。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の特殊 とくしゅ な形態 けいたい として、主 おも に陰部 いんぶ 領域 りょういき (S2-5)を支配 しはい する仙骨 せんこつ 神経 しんけい を標的 ひょうてき として行 おこな われるサドルブロック がある。
あまり一般 いっぱん 的 てき ではないが、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい では、カテーテルを挿入 そうにゅう することで、薬剤 やくざい を連続 れんぞく 的 てき に投与 とうよ することもできる(持続 じぞく 脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい 、Continuous Spinal Anesthesia: CSA)[ 52] 。もう一 ひと つの派生 はせい 手技 しゅぎ としては、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい と硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい の併用 へいよう (脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 併用 へいよう 硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい 、Combined spinal epidural anesthesia: CSEA)がある。この場合 ばあい 、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい 針 はり の中 なか から脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) を進 すす め、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を行 おこな う[ 注釈 ちゅうしゃく 6] 。その後 ご 、硬 かた 膜 まく 外 がい カテーテルを硬 かた 膜 まく 外 がい 腔 に挿入 そうにゅう する。このカテーテルから、必要 ひつよう に応 おう じて薬剤 やくざい を投与 とうよ することができ、また効果 こうか 的 てき な術後 じゅつご 疼痛 とうつう 治療 ちりょう が可能 かのう となる[ 53] 。
帝王切開 ていおうせっかい の多 おお くは脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい で行 おこな われている。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は標準 ひょうじゅん 的 てき な麻酔 ますい 法 ほう で、比較的 ひかくてき 簡単 かんたん に行 おこな うことができ、すぐに効果 こうか が現 あらわ れ、痛 いた みを完全 かんぜん に取 と り除 のぞ くことができる。下腹 かふく 部 ぶ の外科 げか 手術 しゅじゅつ (鼠径 そけい ヘルニア手術 しゅじゅつ など)、骨盤 こつばん 部 ぶ の婦人 ふじん 科 か 手術 しゅじゅつ や泌尿器 ひにょうき 科 か 手術 しゅじゅつ 、下肢 かし の整形 せいけい 外科 げか 手術 しゅじゅつ 、外傷 がいしょう の手術 しゅじゅつ 、血管 けっかん 手術 しゅじゅつ などに使用 しよう できる、全身 ぜんしん 麻酔 ますい や硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい の代替 だいたい となり得 え る麻酔 ますい 法 ほう である。持続 じぞく 脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は、術後 じゅつご の疼痛 とうつう 治療 ちりょう を継続 けいぞく できる可能 かのう 性 せい もある[ 注釈 ちゅうしゃく 7] 。一方 いっぽう 、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は、上 うえ 腹部 ふくぶ や胸部 きょうぶ より高位 こうい の手術 しゅじゅつ には適 てき さない。
産科 さんか では、帝王切開 ていおうせっかい のための脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は標準 ひょうじゅん 的 てき な手技 しゅぎ である。ドイツでは1990年代 ねんだい まで全身 ぜんしん 麻酔 ますい が主流 しゅりゅう であったが、2005年 ねん までには脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい が優先 ゆうせん される麻酔 ますい 法 ほう として明確 めいかく に定着 ていちゃく した[ 注釈 ちゅうしゃく 8] [ 55] 。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は、妊 にん 婦 ふ の全身 ぜんしん 麻酔 ますい に伴 ともな う誤 あやま 嚥 えん リスクの増大 ぞうだい を回避 かいひ できる。しかし、緊急 きんきゅう 分娩 ぶんべん で脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい や硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい が十分 じゅうぶん に効果 こうか を発揮 はっき するまでの時間 じかん が待 ま てない場合 ばあい は、全身 ぜんしん 麻酔 ますい が依然 いぜん として必要 ひつよう である[ 56] 。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は、悪性 あくせい 高熱 こうねつ リスク(死亡 しぼう 率 りつ の高 たか い全身 ぜんしん 麻酔 ますい 合併症 がっぺいしょう )のある患者 かんじゃ において、このような合併症 がっぺいしょう を回避 かいひ する方法 ほうほう のひとつである。また、気道 きどう 確保 かくほ が困難 こんなん であることが予想 よそう され、かつ患者 かんじゃ が絶食 ぜっしょく 状態 じょうたい でない場合 ばあい には、全身 ぜんしん 麻酔 ますい よりも脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を優先 ゆうせん したほうが良 よ い。閉塞 へいそく 性 せい 肺 はい 疾患 しっかん (気管支 きかんし 喘息 ぜんそく 、COPD )のある患者 かんじゃ も、全身 ぜんしん 麻酔 ますい を回避 かいひ した方 ほう がよい[ 57] 。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい がさまざまな合併症 がっぺいしょう (深部 しんぶ 静脈 じょうみゃく 血栓 けっせん 症 しょう 、肺 はい 塞 ふさが 栓 せん 症 しょう 、出血 しゅっけつ 、肺 はい 合併症 がっぺいしょう )の発生 はっせい 率 りつ を低下 ていか させ、死亡 しぼう 率 りつ も低下 ていか させる可能 かのう 性 せい があるとの指摘 してき がある[ 58] が、決定的 けっていてき な評価 ひょうか を行 おこな うにはデータが不十分 ふじゅうぶん である。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい が、重度 じゅうど の心 しん 疾患 しっかん や肺 はい 疾患 しっかん の既往 きおう 歴 れき (Past medical history)(英語 えいご 版 ばん ) を持 も つ患者 かんじゃ にとって利点 りてん があるかどうかも議論 ぎろん の的 まと となっている[ 59] 。全身 ぜんしん 麻酔 ますい に対 たい する優位 ゆうい 性 せい はまだ証明 しょうめい されていない[ 60] 。
絶対 ぜったい 禁忌 きんき は、使用 しよう する麻酔 ますい 薬 やく に対 たい するアレルギー 、穿刺 せんし 部位 ぶい の局所 きょくしょ 感染 かんせん 、未 み 治療 ちりょう の全身 ぜんしん 感染 かんせん 症 しょう (菌 きん 血 ち 症 しょう )、未 み 治療 ちりょう の循環 じゅんかん 血液 けつえき 量 りょう 減少 げんしょう (英語 えいご 版 ばん ) 、頭蓋 とうがい 内 ない 圧 あつ 亢進 こうしん 、遺伝 いでん 的 てき 凝固 ぎょうこ 障害 しょうがい や抗 こう 血栓 けっせん 療法 りょうほう による明 あき らかな出血 しゅっけつ 傾向 けいこう (下表 かひょう 参照 さんしょう )である。このような抗 こう 血栓 けっせん 薬 やく による治療 ちりょう は、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を行 おこな う前 まえ に4時間 じかん (未 み 分 ぶん 画 が ヘパリン )または、12時間 じかん (予防 よぼう 的 てき 低 てい 用量 ようりょう の低 てい 分子 ぶんし 量 りょう ヘパリン )または24時間 じかん (治療 ちりょう 的 てき 用量 ようりょう の低 てい 分子 ぶんし 量 りょう ヘパリン)中断 ちゅうだん しなければならない。クロピドグレル は7日 にち 前 まえ から、チクロピジン は10日 とおか 前 まえ から中止 ちゅうし し、クマリン系 けい 薬剤 やくざい (ワーファリンなど)服用 ふくよう 後 ご はPT-INR <1.4に達 たっ していなければならない。低 てい 用量 ようりょう (1日 にち 100mgまで)のアセチルサリチル酸 さん 単独 たんどく による治療 ちりょう では、かつては休 きゅう 薬 やく 期間 きかん を設 もう けていたが、もはや休 きゅう 薬 やく する必要 ひつよう はない(ドイツ麻酔 ますい 科学 かがく ・集中 しゅうちゅう 治療 ちりょう 医 い 学会 がっかい (Deutschen Gesellschaft für Anästhesie und Intensivmedizin: DGAI) (ドイツ語 ご 版 ばん ) の勧奨 かんしょう )[ 62] 。
血小板 けっしょうばん の不足 ふそく (血小板 けっしょうばん 減少 げんしょう 症 しょう )は出血 しゅっけつ 性 せい 合併症 がっぺいしょう のリスクを高 たか める。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を実施 じっし できる絶対 ぜったい 的 てき な下限 かげん は、専門 せんもん 学会 がっかい によって異 こと なる。むしろ、血液 けつえき 凝固 ぎょうこ の全体 ぜんたい 的 てき な状況 じょうきょう を考慮 こうりょ しなければならない[ 63] 。ドイツのガイドライン では脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の前 まえ に血小板 けっしょうばん 濃縮 のうしゅく 製剤 せいざい を輸血 ゆけつ して血液 けつえき 中 ちゅう の血小板 けっしょうばん 数 すう を増加 ぞうか させることは、50,000/μ みゅー l未満 みまん の値 ね から推奨 すいしょう されており、これを下限 かげん 値 ち の目安 めやす とすることができる。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい より太 ふと い針 はり を使用 しよう する硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では、80,000/μ みゅー l未満 みまん で血小板 けっしょうばん 輸血 ゆけつ が推奨 すいしょう されている[ 64] 。一方 いっぽう 、日本 にっぽん のガイドラインでは、血小板 けっしょうばん 数 すう に関 かん しては100,000/μ みゅー l以上 いじょう が望 のぞ ましいとされ、50,000/μ みゅー l未満 みまん では非 ひ 推奨 すいしょう とされるものの輸血 ゆけつ に関 かん しては記載 きさい されていない。
相対 そうたい 的 てき 禁忌 きんき には、慢性 まんせい 背部 はいぶ 痛 つう 、抗生 こうせい 物質 ぶっしつ 治療 ちりょう 中 ちゅう の全身 ぜんしん 感染 かんせん 、強直 きょうちょく 性 せい 脊椎 せきつい 炎 えん 、重症 じゅうしょう の大動脈 だいどうみゃく 弁 べん 狭窄 きょうさく 症 しょう またはその他 た の心臓 しんぞう 弁膜 べんまく 症 しょう 、脊髄 せきずい 空洞 くうどう 症 しょう 、肺 はい 高 だか 血圧 けつあつ 症 しょう が含 ふく まれる。これらの疾患 しっかん では、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の有益 ゆうえき 性 せい と危険 きけん 性 せい を秤 ばかり にかける必要 ひつよう がある。
他 た の麻酔 ますい 法 ほう と同様 どうよう に、事前 じぜん に患者 かんじゃ と麻酔 ますい 科 か 医 い との間 あいだ でインフォームド・コンセント の場 ば が持 も たれる。合併症 がっぺいしょう や十分 じゅうぶん な効果 こうか が得 え られない場合 ばあい には、麻酔 ますい 法 ほう を全身 ぜんしん 麻酔 ますい に変更 へんこう しなければならないこともあるため、手術 しゅじゅつ 当日 とうじつ は絶 ぜっ 飲食 いんしょく が必要 ひつよう である。手術 しゅじゅつ 前 まえ の前 ぜん 投薬 とうやく として、気持 きも ちを落 お ち着 つ かせ緊張 きんちょう を和 やわ らげる薬 くすり (鎮静 ちんせい 剤 ざい )が投与 とうよ されることもある。
緊急 きんきゅう 用 よう の医薬品 いやくひん や器材 きざい を準備 じゅんび した上 うえ で、静脈 じょうみゃく 路 ろ を確保 かくほ する。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は座 ざ 位 い または側臥 そくが 位 い で行 おこな う。座 ざ 位 い では、助手 じょしゅ が患者 かんじゃ を前方 ぜんぽう から支 ささ える。患者 かんじゃ は基本 きほん 的 てき なモニター (心電図 しんでんず モニタ 、パルスオキシメトリー 、血圧 けつあつ 測定 そくてい (英語 えいご 版 ばん ) )により継続 けいぞく 的 てき に監 かん 視 し される。
脊椎 せきつい 針 はり から髄 ずい 液 えき が流出 りゅうしゅつ している。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を行 おこな うには、第 だい 2腰椎 ようつい と第 だい 3腰椎 ようつい (L2/L3)または第 だい 3腰椎 ようつい と第 だい 4腰椎 ようつい (L3/L4)の間 あいだ に脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) を穿刺 せんし する。複 ふく 数 すう 回 かい の消毒 しょうどく と局所 きょくしょ 浸潤 しんじゅん 麻酔 ますい の後 のち 、無菌 むきん 手技 しゅぎ で2つの棘 とげ 突起 とっき の間 あいだ に針 はり を刺 とげ 入 いれ する。穿刺 せんし は、棘 とげ 突起 とっき の平面 へいめん に対 たい して後方 こうほう からまっすぐ(正中 せいちゅう 法 ほう ) 、または10°のわずかな側 がわ 方偏 かたへん 位 い (傍 はた 正中 せいちゅう 法 ほう )で行 おこな われる。あるいは、第 だい 5腰椎 ようつい と第 だい 1仙 せん 椎 しい 間 あいだ はTaylorによる側 がわ 方 かた アプローチと呼 よ ばれる手技 しゅぎ もあり、この場合 ばあい 、針 はり は後 こう 上 うえ 腸 ちょう 骨 こつ 棘 とげ の1cm内側 うちがわ かつ下方 かほう に刺 とげ 入 いれ し、頭 あたま 側 がわ ・内側 うちがわ に45°~55°の角度 かくど をつける[ 78] 。
背中 せなか を丸 まる める(いわゆる猫背 ねこぜ )ことで棘 とげ 突起 とっき 間 あいだ の距離 きょり を広 ひろ げることができるため、患者 かんじゃ の協力 きょうりょく は重要 じゅうよう である。特 とく に高齢 こうれい 者 しゃ では、骨 ほね 化 か した靭帯 じんたい が細 ほそ い針 はり の前進 ぜんしん の妨 さまた げとなる。このため、太 ふと いイントロデューサー針 はり を 使用 しよう することも多 おお い。これが靭帯 じんたい 構造 こうぞう を貫通 つらぬきとお したら、そこから実際 じっさい の細 ほそ い穿刺 せんし 針 はり を挿入 そうにゅう し、クモ膜 まく 下 か 腔に穿刺 せんし する。穿刺 せんし 針 はり が神経 しんけい 根 ね に触 ふ れると、穿刺 せんし 中 ちゅう に足 あし に短時間 たんじかん のしびれ(パレステジア (英語 えいご 版 ばん ) )が生 しょう じることがある。針 はり が硬 かた 膜 まく を通過 つうか すると、透明 とうめい な脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき が針 はり から滴 したた り落 お ち、針 はり が正 まさ しく刺 とげ 入 いれ されたことが分 わ かる。
シリンジ で局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく を注入 ちゅうにゅう する前 まえ に、透明 とうめい な髄 ずい 液 えき が脊椎 せきつい 針 はり から流出 りゅうしゅつ し続 つづ けることを確認 かくにん しておくべきである。血 ち の混 ま じった髄 ずい 液 えき (血管 けっかん の穿刺 せんし が疑 うたが われる)や髄 ずい 液 えき の流出 りゅうしゅつ がない場合 ばあい は、脊椎 せきつい 針 はり を抜 ぬ いて再度 さいど 挿入 そうにゅう する必要 ひつよう がある。くも膜 まく 下 か 腔に適切 てきせつ な量 りょう の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく を注入 ちゅうにゅう した後 のち 、効果 こうか はほとんどすぐに現 あらわ れ、脚 あし や臀部 でんぶ が温 あたた かくなる感覚 かんかく から始 はじ まる。数 すう 分 ふん 以内 いない に、感覚 かんかく 低下 ていか と無痛 むつう が現 あらわ れ、可動 かどう 域 いき が制限 せいげん される。一方 いっぽう 、この最初 さいしょ の5分間 ふんかん は「魔 ま の時間 じかん 」と称 しょう され、自律 じりつ 神経 しんけい のバランスが崩 くず れることによる呼吸 こきゅう 、循環 じゅんかん の激変 げきへん が生 しょう じやすく、厳重 げんじゅう なモニタリングが必要 ひつよう である。
「麻酔 ますい 範囲 はんい の決定 けってい 要因 よういん 」 の節 ふし で述 の べたようにデルマトーム を参考 さんこう に、麻酔 ますい 範囲 はんい の判定 はんてい を行 おこな う。高 こう 比重 ひじゅう 液 えき の場合 ばあい 、くも膜 まく 下 か 腔に局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく を注入 ちゅうにゅう してからの麻酔 ますい 領域 りょういき の広 ひろ がりは分 ぶん 単位 たんい で変化 へんか するため、麻酔 ますい 効果 こうか 判定 はんてい を頻 しき 回 かい に行 おこな う必要 ひつよう がある。高 こう 比重 ひじゅう 液 えき を使用 しよう すれば、患者 かんじゃ の体位 たいい によって麻酔 ますい 領域 りょういき の広 ひろ がりを調節 ちょうせつ できる(中 なか ・高位 こうい 麻酔 ますい 、サドルブロック、左右 さゆう どちらかの片 かた 効 き き麻酔 ますい )。しかし、麻酔 ますい 領域 りょういき が脊髄 せきずい 高位 こうい に波及 はきゅう しすぎると、呼吸 こきゅう 困難 こんなん が生 しょう じる。胸 むね 髄 ずい レベルの麻酔 ますい で同 どう 部位 ぶい からの神経 しんけい 支配 しはい を受 う ける肋間 ろっかん 筋 すじ の筋力 きんりょく 低下 ていか が起 お こる。さらに麻酔 ますい 領域 りょういき が高位 こうい の頚 けい 髄 ずい レベルに及 およ ぶと、第 だい 4頚 けい 神経 しんけい の分 ぶん 枝 えだ である横 よこ 隔 へだた 神経 しんけい が麻痺 まひ し、横 よこ 隔 へだた 神経 しんけい に支配 しはい される横隔膜 おうかくまく までが麻痺 まひ する可能 かのう 性 せい がある。実際 じっさい は、横 よこ 隔 へだた 神経 しんけい は強大 きょうだい な運動 うんどう 神経 しんけい であるため、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に用 もち いられるような少量 しょうりょう の局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく では、横隔膜 おうかくまく 運動 うんどう が停止 ていし するほどの麻痺 まひ は稀 まれ であるとされる。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に合併 がっぺい する呼吸 こきゅう 停止 ていし は低 てい 血圧 けつあつ に伴 ともな う延髄 えんずい 呼吸 こきゅう 中枢 ちゅうすう への血 ち 流 りゅう 低下 ていか が主因 しゅいん とされる。上肢 じょうし の筋肉 きんにく の運動 うんどう 支配 しはい は大半 たいはん が頚 けい 神経 しんけい なので、上肢 じょうし に麻酔 ますい 効果 こうか が及 およ べば、肩 かた から下位 かい は既 すで に麻酔 ますい 効果 こうか が及 およ んでいる(皮膚 ひふ 分節 ぶんせつ を参照 さんしょう )。麻酔 ますい 薬 やく によるブロックは細 ほそ い神経 しんけい 線維 せんい から順 じゅん に効果 こうか が現 あらわ れることが知 し られており、交感神経 こうかんしんけい 、温 ぬる 覚 さとし 、痛覚 つうかく 、触覚 しょっかく 、圧覚 あっかく 、運動 うんどう 神経 しんけい という順 じゅん にブロックされていく。痛覚 つうかく の判定 はんてい を行 おこな うピンプリックテスト、温 あつし 覚 さとし の判定 はんてい を行 おこな うコールドサインテスト、運動 うんどう 神経 しんけい の判定 はんてい を行 おこな うBromageスケールが有名 ゆうめい である。必要 ひつよう なレベルの麻酔 ますい 効果 こうか が得 え られなかった場合 ばあい は再 ふたた びくも膜 まく 下 か 腔を穿刺 せんし し麻酔 ますい 薬 やく を追加 ついか するか、他 た の麻酔 ますい 方法 ほうほう (多 おお くは全身 ぜんしん 麻酔 ますい )に切 き り替 か える。
痛覚 つうかく 刺激 しげき を感 かん じるかを調 しら べるテストである。針 はり など尖 とが ったもの(但 ただ し出血 しゅっけつ しない程度 ていど )を皮膚 ひふ にあててチクチクするかどうかを尋 たず ねる。
温 ぬる 覚 さとし の消失 しょうしつ を確認 かくにん するテストである。アルコール綿 めん を皮膚 ひふ にあてて冷 つめ たいかどうかを尋 たず ねる。
Bromageスコアとも呼 よ ばれる。運動 うんどう 機能 きのう の評価 ひょうか 尺度 しゃくど である。踵 かかと 膝 ひざ を十分 じゅうぶん に動 うご かせる場合 ばあい はⅠ(ブロックされていない)、膝 ひざ がやっと動 うご く場合 ばあい はⅡ(不完全 ふかんぜん ブロック)、踵 かかと のみが動 うご く場合 ばあい はⅢ(ほぼ完全 かんぜん ブロック)、踵 かかと 膝 ひざ が動 うご かない場合 ばあい はⅣ(完全 かんぜん ブロック)となる。
麻酔 ますい 薬 やく を注射 ちゅうしゃ した後 のち 、使用 しよう する薬剤 やくざい と手術 しゅじゅつ 部位 ぶい にもよるが、1~4時 じ 間 あいだ は手術 しゅじゅつ が可能 かのう である。ストレス軽減 けいげん のため、適切 てきせつ な薬剤 やくざい (主 おも にミダゾラム などのベンゾジアゼピン系 けい )の静脈 じょうみゃく 内 ない 投与 とうよ により、患者 かんじゃ は鎮静 ちんせい されることもある。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の「固定 こてい 時間 じかん 」という以前 いぜん の概念 がいねん は現在 げんざい では時代遅 じだいおく れと考 かんが えられており、注入 ちゅうにゅう された麻酔 ますい 薬 やく がくも膜 まく 下 か 腔内で上昇 じょうしょう することにより合併症 がっぺいしょう が生 しょう じる可能 かのう 性 せい があるため、手術 しゅじゅつ の全 ぜん 期間 きかん 中 ちゅう 、専門 せんもん スタッフとモニタリング によって患者 かんじゃ を監視 かんし する必要 ひつよう がある。手術 しゅじゅつ が終了 しゅうりょう すると、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の効果 こうか がある程度 ていど 回復 かいふく するまで、麻酔 ますい 後 ご 回復 かいふく 室 しつ (Post-anesthesia care unit: PACU)(英語 えいご 版 ばん ) でモニタリングを継続 けいぞく する。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい で比較的 ひかくてき よくみられる副作用 ふくさよう は、低 てい 血圧 けつあつ [ 94] 、徐 じょ 脈 みゃく [ 94] 、背部 はいぶ 痛 つう [ 79] 、吐 は き気 け [ 95] 、嘔吐 おうと のほか、術後 じゅつご の硬 かた 膜 まく 穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう (英語 えいご 版 ばん ) や尿 にょう 閉 である。これらの問題 もんだい は通常 つうじょう 、継続 けいぞく 的 てき なモニタリング により麻酔 ますい 科 か 医 い がすぐに気 き づき、後遺症 こういしょう なく治療 ちりょう される。
重 じゅう 篤 あつし な循環 じゅんかん 障害 しょうがい や、直接的 ちょくせつてき な損傷 そんしょう 、感染 かんせん 、出血 しゅっけつ による永続 えいぞく 的 てき な神経 しんけい 損傷 そんしょう などの重 おも 篤 あつ な合併症 がっぺいしょう はまれな事象 じしょう である。これらの頻度 ひんど を決定 けってい することは困難 こんなん である。問題 もんだい 点 てん としては、十分 じゅうぶん な患者 かんじゃ 数 すう を有 ゆう する研究 けんきゅう がないこと、これらの研究 けんきゅう における損傷 そんしょう の定義 ていぎ が不正 ふせい 確 かく で多様 たよう であること(異質 いしつ であること)、手術 しゅじゅつ 手技 しゅぎ 自体 じたい 、体位 たいい 、既存 きそん の(おそらく未知 みち の)疾患 しっかん 、または自然 しぜん 発生 はっせい 的 てき な事象 じしょう (出血 しゅっけつ 、感染 かんせん )など、他 た の可能 かのう 性 せい のある損傷 そんしょう 機 き 序 じょ との鑑別 かんべつ がしばしば困難 こんなん であることなどが挙 あ げられる[ 98] [ 99] 。
下肢 かし の爆傷 ばくしょう からの出血 しゅっけつ を止血 しけつ するためにターニケット(止血 しけつ 帯 たい ) が大腿 だいたい に巻 ま かれているが、これを緩 ゆる めると再 さい 出血 しゅっけつ し、血圧 けつあつ が低下 ていか する。このターニケットは外傷 がいしょう 以外 いがい に、下肢 かし の手術 しゅじゅつ 時 じ にも用 もち いられる。
動脈 どうみゃく 血圧 けつあつ の低下 ていか (低 てい 血圧 けつあつ )は脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の最 もっと も一般 いっぱん 的 てき な副作用 ふくさよう で、多 おお くの患者 かんじゃ に起 お こる。これは、下半身 かはんしん の交感神経 こうかんしんけい 系 けい の麻酔 ますい (交感神経 こうかんしんけい 遮断 しゃだん )により血管 けっかん が広 ひろ がり(血管 けっかん 拡張 かくちょう (英語 えいご 版 ばん ) )、循環 じゅんかん 血液 けつえき 量 りょう が相対 そうたい 的 てき に減少 げんしょう するため、心臓 しんぞう への還流 かんりゅう 量 りょう が減少 げんしょう することによる。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の広 ひろ がりが大 おお きいほど、血圧 けつあつ 降下 こうか 作用 さよう は顕著 けんちょ になる。心拍 しんぱく 数 すう の低下 ていか (徐 じょ 脈 みゃく )や吐 は き気 け を伴 ともな うこともある。
この血液 けつえき 低下 ていか は、特 とく に循環 じゅんかん 血液 けつえき 量 りょう 減少 げんしょう (英語 えいご 版 ばん ) の患者 かんじゃ に顕著 けんちょ であるため、晶 あきら 質 しつ 液 えき (ドイツ語 ご 版 ばん ) を脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を行 おこな う前 まえ に予防 よぼう 的 てき に点滴 てんてき 静脈 じょうみゃく 注射 ちゅうしゃ し、このような循環 じゅんかん 血液 けつえき 量 りょう の不足 ふそく を補 おぎな う。出血 しゅっけつ 、体位 たいい 変換 へんかん 操作 そうさ 、駆 か 血 ち 帯 たい 解除 かいじょ も低 てい 血圧 けつあつ を助長 じょちょう する。低 てい 血圧 けつあつ の治療 ちりょう には、点滴 てんてき による循環 じゅんかん 血液 けつえき 量 りょう 増加 ぞうか 、頭部 とうぶ をわずかに下 さ げる(トレンデレンブルグ位 い )、必要 ひつよう であれば薬物 やくぶつ 投与 とうよ を行 おこな う。カフェドリン・テオドレナリン (ドイツ語 ご 版 ばん ) (商品 しょうひん 名 めい アクリノール )、エフェドリン [ 104] 、フェニレフリン 、またはまれにノルアドレナリン などのカテコールアミン 誘導体 ゆうどうたい が使用 しよう される。徐 じょ 脈 みゃく の場合 ばあい は、アトロピン またはオルシプレナリン (ドイツ語 ご 版 ばん ) も使用 しよう される[ 105] 。血圧 けつあつ または心拍 しんぱく 数 すう の障害 しょうがい は通常 つうじょう 、効果 こうか 的 てき に治療 ちりょう できるが、心 しん 停止 ていし に至 いた るような重症 じゅうしょう 型 がた が起 お こることはまれである(約 やく 3/10,000)[ 106] 。
硬 かた 膜 まく 穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう (Post Dural Puncture Headache: PDPH)(英語 えいご 版 ばん ) は脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の不快 ふかい な副作用 ふくさよう の一 ひと つであるが、通常 つうじょう 予 よ 後 ご は良好 りょうこう である。その発生 はっせい 機 き 序 じょ は、硬 かた 膜 まく の穿孔 せんこう 部位 ぶい からの脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき 漏出 ろうしゅつ による[ 107] 。脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき はこの漏出 ろうしゅつ 部 ぶ から漏出 ろうしゅつ し、漏出 ろうしゅつ 量 りょう が産 さん 生 せい 量 りょう を上回 うわまわ ると脳 のう 脊髄 せきずい 液 えき 腔に陰 かげ 圧 あつ が生 しょう じる。痛 いた みに敏感 びんかん な脳 のう の構造 こうぞう (髄 ずい 膜 まく 、血管 けっかん 、大脳 だいのう 鎌 がま )の牽引 けんいん 、代償 だいしょう 的 てき な血管 けっかん 拡張 かくちょう などが組 く み合 あ わさって、頭痛 ずつう が生 しょう じると推定 すいてい されている[ 107] 。この症候群 しょうこうぐん は、アウグスト・ビーア (英語 えいご 版 ばん ) による脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の報告 ほうこく ですでに言及 げんきゅう されていた(1899年 ねん 、下記 かき 参照 さんしょう )。
頭痛 ずつう は、使用 しよう した脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) にもよるが、25Gのクインケ針 はり で3-25%、Whitacre針 はり で0-14.5%と、非 ひ カッティング針 はり で発生 はっせい 率 りつ が低 ひく い[ 107] 。頭痛 ずつう の90%は処置 しょち 後 ご 3日 にち 以内 いない に、66%は最初 さいしょ の48時間 じかん 以内 いない に発症 はっしょう する[ 107] 。患者 かんじゃ が横 よこ になっているときに改善 かいぜん し、座 すわ ったり立 た ったりしたとき、または患者 かんじゃ が頭 あたま を振 ふ ったり腹 はら 圧 あつ が高 たか まったりしたときに悪化 あっか する。穿刺 せんし 後 ご の頭痛 ずつう は、吐 は き気 け 、嘔吐 おうと 、めまい、項 こう 部 ぶ 硬直 こうちょく 、背部 はいぶ 痛 つう 、光 ひかり や音 おと に対 たい する過敏 かびん 症 しょう 、複 ふく 視 し や視覚 しかく 障害 しょうがい の発生 はっせい (第 だい 3 、4 、6脳神経 のうしんけい の刺激 しげき による)[ 108] 、聴力 ちょうりょく 低下 ていか や耳鳴 みみな り を伴 ともな うこともある[ 109] 。
治療 ちりょう は主 おも に、安静 あんせい 、十分 じゅうぶん な水分 すいぶん 補給 ほきゅう 、鎮痛 ちんつう 剤 ざい による保存 ほぞん 的 てき 治療 ちりょう が行 おこな われる。これらの措置 そち が奏功 そうこう しない場合 ばあい は、さまざまな侵 おかせ 襲 かさね 的 てき 治療 ちりょう 法 ほう が用 もち いられるが、硬 かた 膜 まく 外 がい 自己 じこ 血 ち パッチ は その中 なか で最 もっと も選択 せんたく される方法 ほうほう と考 かんが えられており、奏功 そうこう 率 りつ は八 はち 割 わり を超 こ える[ 110] 。これは、患者 かんじゃ から血液 けつえき を無菌 むきん 的 てき に採取 さいしゅ し、腰椎 ようつい 穿刺 せんし 部位 ぶい のレベルで再度 さいど 穿刺 せんし し、血液 けつえき を硬 かた 膜 まく 外 がい 腔 に注入 ちゅうにゅう するものである。これにより髄 ずい 膜 まく の穿孔 せんこう が圧迫 あっぱく され、閉鎖 へいさ される。
硬 かた 膜 まく 穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう の予防 よぼう のための最 もっと も重要 じゅうよう な対策 たいさく は、非 ひ カッティング[ 注釈 ちゅうしゃく 9] (ペンシルポイント先端 せんたん )の可能 かのう な限 かぎ り細 ほそ い穿刺 せんし 針 はり を使用 しよう することである。この針 はり は、直径 ちょっけい が大 おお きく、先端 せんたん が斜 なな めに研磨 けんま されたカッティング針 はり (クインケ針 はり など)に比 くら べて、頭痛 ずつう の発生 はっせい 率 りつ がはるかに低 ひく い(0.5~1%)[ 111] [ 112] 。1979年 ねん に導入 どうにゅう されたスプロッテ針 はり の非 ひ カッティング先 さき 端 はし は、麻酔 ますい 科 か 医 い でペインクリニック医 い のGünter Sprotte(1945年生 ねんせい )がPajunk社 しゃ と共同 きょうどう で開発 かいはつ したものである[ 113] 。
神経 しんけい の損傷 そんしょう は、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい による一 いち 次 じ 的 てき 損傷 そんしょう と二 に 次 じ 的 てき に生 しょう じる損傷 そんしょう とに分類 ぶんるい することができる。一次 いちじ 的 てき 損傷 そんしょう の機 き 序 じょ は、注射 ちゅうしゃ 針 はり による機械 きかい 的 てき 損傷 そんしょう または注入 ちゅうにゅう された溶液 ようえき の神経 しんけい 毒性 どくせい により、二 に 次 じ 的 てき な損傷 そんしょう 機 き 序 じょ は、感染 かんせん 症 しょう および体内 たいない の空間 くうかん を占有 せんゆう する性質 せいしつ の出血 しゅっけつ (腫 しゅ 瘤 こぶ 効果 こうか (Mass effect)(英語 えいご 版 ばん ) 、下記 かき 参照 さんしょう )であり、これらは神経 しんけい を圧迫 あっぱく することによって損傷 そんしょう を引 ひ き起 お こしうる[ 114] 。
手術 しゅじゅつ 後 ご に起 お こる神経 しんけい 損傷 そんしょう は、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい による針 はり 損傷 そんしょう によるものはまれであり、手術 しゅじゅつ 体位 たいい (Surgical positions)(英語 えいご 版 ばん ) 、手術 しゅじゅつ そのもの、または既往 きおう 歴 れき (Past medical history)(英語 えいご 版 ばん ) などの独立 どくりつ した要因 よういん の結果 けっか であることが多 おお い。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい による脊髄 せきずい 神経 しんけい 損傷 そんしょう の発生 はっせい 率 りつ は3.8/10,000と推定 すいてい され、その多 おお くは可逆 かぎゃく 的 てき である[ 98] 。
一過 いっか 性 せい 神経症 しんけいしょう 状 じょう (Transent Neurological Symptoms: TNS )とは、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい 後 ご に脚 あし に放散 ほうさん する左右 さゆう 対称 たいしょう の臀部 でんぶ 痛 つう [ 115] のことで、通常 つうじょう 、麻酔 ますい 後 ご 数 すう 時間 じかん 以内 いない に始 はじ まり、数日 すうじつ 以内 いない にまた収 おさ まる。これは局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の毒性 どくせい によるもので、患者 かんじゃ の約 やく 1%にみられる[ 注釈 ちゅうしゃく 10] 。しかし、リドカインを使用 しよう した場合 ばあい 、その割合 わりあい は有意 ゆうい に高 たか くなる[ 116] [ 117] 。
まれに起 お こる馬尾 ばび 症候群 しょうこうぐん (0.02-0.16/10,000)[ 98] の原因 げんいん も、局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の神経 しんけい 毒性 どくせい による。下肢 かし の脱力 だつりょく 、排尿 はいにょう ・排便 はいべん 障害 しょうがい 、生殖 せいしょく 器 き の感覚 かんかく 障害 しょうがい が臨床 りんしょう 徴候 ちょうこう である。この障害 しょうがい はしばしば永続 えいぞく 的 てき である[ 114] 。
針 はり を脊柱 せきちゅう 管 かん に進 すす める際 さい に血管 けっかん を損傷 そんしょう すると、硬 かた 膜 まく 外 がい 腔又 また は脊柱 せきちゅう 管内 かんない での出血 しゅっけつ を引 ひ き起 お こすことがある。しかし、このような方法 ほうほう で腔内血腫 けっしゅ が生 しょう じることは非常 ひじょう にまれであり、その頻度 ひんど は1:220,000と推定 すいてい される。凝固 ぎょうこ 障害 しょうがい に罹患 りかん している患者 かんじゃ や抗 こう 血栓 けっせん 薬 やく を服用 ふくよう している患者 かんじゃ では、リスクがわずかに増加 ぞうか する(約 やく 160,000分 ぶん の1)。臨床 りんしょう 的 てき には、血腫 けっしゅ による圧迫 あっぱく レベル以下 いか の、反射 はんしゃ 消失 しょうしつ (ドイツ語 ご 版 ばん ) 、筋力 きんりょく 低下 ていか 、感覚 かんかく 障害 しょうがい が顕著 けんちょ であり、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の効果 こうか が消失 しょうしつ した後 のち に判明 はんめい する。脊髄 せきずい 出血 しゅっけつ は永続 えいぞく 的 てき な神経 しんけい 損傷 そんしょう を引 ひ き起 お こす可能 かのう 性 せい があるため、疑 うたが わしい症例 しょうれい ではMRI 検査 けんさ を実施 じっし し、診断 しんだん を確定 かくてい する必要 ひつよう がある。出血 しゅっけつ による神経 しんけい の圧迫 あっぱく が確認 かくにん された場合 ばあい は、ただちに外科 げか 的 てき 治療 ちりょう (椎 しい 弓 ゆみ 切除 せつじょ 術 じゅつ (英語 えいご 版 ばん ) )を行 おこな わなければならない。予防 よぼう 法 ほう としては、出血 しゅっけつ を避 さ けるために、抗 こう 血栓 けっせん 薬 やく の投与 とうよ と脊髄 せきずい 近傍 きんぼう の穿刺 せんし の間 あいだ には一定 いってい の間隔 かんかく を空 あ けなければならない(上表 じょうひょう 参照 さんしょう )[ 62] [ 114] 。
一回 いっかい 法 ほう の脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい (持続 じぞく 法 ほう ではなく)後 ご の感染 かんせん 性 せい 合併症 がっぺいしょう は非常 ひじょう にまれである[ 121] 。考 かんが えられる原因 げんいん は、既存 きそん の感染 かんせん 症 しょう からの菌 きん の拡散 かくさん 、汚染 おせん された脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) や不十分 ふじゅうぶん な無菌 むきん 手技 しゅぎ による穿刺 せんし で、病原 びょうげん 体 たい がくも膜 まく 下 か 腔や硬 かた 膜 まく 外 がい 腔に侵入 しんにゅう することである。起 お こりうる症状 しょうじょう は、髄 ずい 膜 まく の炎症 えんしょう (髄 ずい 膜 まく 炎 えん )と硬 かた 膜 まく 外 がい 腔(硬 かた 膜 まく と骨膜 こつまく の間 あいだ )の膿瘍 のうよう (英語 えいご 版 ばん ) の形成 けいせい である。頻度 ひんど に関 かん する信頼 しんらい できる数値 すうち は得 え られていない。カテーテル処置 しょち のリスクは大 おお きく異 こと なり、1:1,000~1:100,000と推定 すいてい されているが、一回 いっかい 穿刺 せんし で発生 はっせい することはまれである。脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい と無関係 むかんけい に発生 はっせい する膿瘍 のうよう (1万 まん 分 ぶん の0.2~1.2)との鑑別 かんべつ は困難 こんなん である[ 121] 。最 もっと も一般 いっぱん 的 てき な病原 びょうげん 体 たい はブドウ球菌 きゅうきん であり[ 121] 、この細菌 さいきん は皮膚 ひふ 細菌 さいきん 叢 くさむら において高率 こうりつ に常 つね 在 ざい していることから、穿刺 せんし 部位 ぶい の徹底的 てっていてき な消毒 しょうどく と穿刺 せんし の際 さい の厳密 げんみつ な無菌 むきん 手技 しゅぎ の重要 じゅうよう 性 せい を示 しめ している。
髄 ずい 膜 まく 炎 えん は通常 つうじょう 、麻酔 ますい から数日 すうじつ 後 ご に発熱 はつねつ 、項 こう 部 ぶ 硬直 こうちょく (髄 ずい 膜 まく 刺激 しげき 症状 しょうじょう ) 、頭痛 ずつう 、吐 は き気 け などの症状 しょうじょう が現 あらわ れる。疑 うたが いがあれば、的 まと を絞 しぼ った抗生 こうせい 物質 ぶっしつ 療法 りょうほう で治療 ちりょう できるようにするために、髄 ずい 液 えき 検査 けんさ によって病原 びょうげん 体 たい を特定 とくてい しなければならない。極 きわ めて稀 まれ に起 お こる無菌 むきん 性 せい 髄 ずい 膜 まく 炎 えん は 、病原 びょうげん 体 たい が検出 けんしゅつ されない特殊 とくしゅ な型 かた である。その原因 げんいん としては穿刺 せんし 器材 きざい の洗浄 せんじょう 物質 ぶっしつ に対 たい する炎症 えんしょう や過敏 かびん 反応 はんのう の可能 かのう 性 せい が報告 ほうこく されている[ 123] 。
硬 かた 膜 まく 外 がい 膿瘍 のうよう (英語 えいご 版 ばん ) は重 じゅう 篤 あつし な合併症 がっぺいしょう である。症状 しょうじょう はさまざまで、発熱 はつねつ 、背部 はいぶ 痛 つう 、神経 しんけい 障害 しょうがい などがある[ 121] 。高 こう 感度 かんど な診断 しんだん 法 ほう として、特 とく に画像 がぞう 診断 しんだん (MRI )がある。治療 ちりょう 的 てき には抗生 こうせい 物質 ぶっしつ が使用 しよう され、ほとんどの症例 しょうれい で早期 そうき の外科 げか 的 てき 治療 ちりょう が必要 ひつよう である[ 121] 。症例 しょうれい の3分 ぶん の1には重 じゅう 篤 あつし な神経 しんけい 障害 しょうがい が残 のこ り、さらに3分 ぶん の1には軽度 けいど の神経 しんけい 障害 しょうがい が残 のこ る。敗血症 はいけつしょう の発症 はっしょう による死亡 しぼう 率 りつ は約 やく 10~15%である[ 114] [ 121] 。
背部 はいぶ 痛 つう (英語 えいご 版 ばん ) は患者 かんじゃ の約 やく 13%が報告 ほうこく する[ 125] が、手術 しゅじゅつ 、体位 たいい (英語 えいご 版 ばん ) との因果 いんが 関係 かんけい は難 むずか しい。尿 にょう 閉 は、用 もち いられる局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく の種類 しゅるい と濃度 のうど によって、程度 ていど と時間 じかん が異 こと なるが必発である。原因 げんいん は、膀胱 ぼうこう を空 そら にする働 はたら きを持 も つ交感神経 こうかんしんけい 系 けい の抑制 よくせい 的 てき 影響 えいきょう と、その逆 ぎゃく の働 はたら きをもつ副 ふく 交感神経 こうかんしんけい 系 けい の促進 そくしん 的 てき 影響 えいきょう の不 ふ 均衡 きんこう である[ 128] 。治療 ちりょう には、滅菌 めっきん 使 つか い捨 す てカテーテル留置 とめおき が必要 ひつよう な場合 ばあい がある。
重 じゅう 篤 あつし な副作用 ふくさよう は、薬 くすり が過剰 かじょう 投与 とうよ された場合 ばあい など、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい が脊髄 せきずい の高位 こうい に効 き きすぎることである。麻酔 ますい 効果 こうか がくも膜 まく 下 か 腔全体 ぜんたい に広 ひろ がると、全 ぜん 脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい (全 ぜん 脊麻 )と 呼 よ ばれる[ 129] 。意識 いしき 障害 しょうがい 、呼吸 こきゅう 停止 ていし が起 お こることがあり、必要 ひつよう であれば気管 きかん 挿管 と人工 じんこう 呼吸 こきゅう 、カテコラミン 療法 りょうほう を行 おこな わねばならない。適切 てきせつ な治療 ちりょう により、通常 つうじょう は完全 かんぜん 回復 かいふく が可能 かのう である。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の技術 ぎじゅつ 的 てき 失敗 しっぱい (穿刺 せんし 困難 こんなん 、針 はり の曲 ま がり、ごくまれに針 はり の破損 はそん )は、脊椎 せきつい 針 はり の直径 ちょっけい に直接 ちょくせつ 依存 いぞん する。標準 ひょうじゅん 的 てき な針 はり (25ゲージ )では、この割合 わりあい は5%未満 みまん であるが、針 はり が細 ほそ くなると増加 ぞうか する。針 はり の太 ふと さが大 おお きいほど穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう の発生 はっせい 率 りつ が高 たか くなるため、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の成功 せいこう 率 りつ と合併症 がっぺいしょう はトレードオフの関係 かんけい にある。
腰部 ようぶ 髄 ずい 液 えき 腔の最初 さいしょ の穿刺 せんし は、1891年 ねん にキール の ハインリヒ・クインケ (英語 えいご 版 ばん ) が行 おこな ったが、これは髄 ずい 液 えき の診断 しんだん サンプリングのためであった。彼 かれ は、この目的 もくてき のために先端 せんたん を斜 なな めにカットした穿刺 せんし 針 はり (クインケ針 はり )を開発 かいはつ した[ 132] 。
アウグスト・ビーア (英語 えいご 版 ばん ) (1861–1949)、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい のパイオニア
1898年 ねん 8月 がつ 24日 にち 、同 おな じくキールで、外科医 げかい アウグスト・ビーア (英語 えいご 版 ばん ) と助手 じょしゅ のアウグスト・ヒルデブラント(1868~1954)が、コカイン を注射 ちゅうしゃ する相互 そうご 実験 じっけん で脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に成功 せいこう した[ 133] [ 134] 。 コカインを注射 ちゅうしゃ した結果 けっか 、「脛 ずね に鉄 てつ のハンマーで強 つよ い打撃 だげき 」や「睾丸 こうがん を強 つよ く押 お したり引 ひ っ張 ぱ ったり」しても、痛 いた みを感 かん じなくなった。その後 ご 、両者 りょうしゃ とも吐 は き気 け と嘔吐 おうと を伴 ともな う激 はげ しい後頭部 こうとうぶ 痛 つう を発症 はっしょう した[ 135] 。
ジェームズ・レナード・コーニング (英語 えいご 版 ばん ) (1855–1923)、アメリカの神経 しんけい 学者 がくしゃ で脊髄 せきずい 幹 みき ブロック のパイオニア
米国 べいこく のジェームズ・レナード・コーニング(James Leonard Corning) (英語 えいご 版 ばん ) は、ビーアらの発表 はっぴょう の13年 ねん 前 まえ の1885年 ねん にすでに同様 どうよう の実験 じっけん を行 おこな っており、脊髄 せきずい に近 ちか い組織 そしき にコカインを注射 ちゅうしゃ し、脚 あし と生殖 せいしょく 器 き のしびれが観察 かんさつ された[ 136] 。この過程 かてい で脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい が達成 たっせい されたのか、それとも薬剤 やくざい がその手前 てまえ の靭帯 じんたい 組織 そしき 投与 とうよ されたのかは議論 ぎろん の余地 よち がある(後年 こうねん 、コーニングが行 おこな ったのは脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい ではなく、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい であったことが示 しめ された[ 137] )。1898年 ねん に動物 どうぶつ 実験 じっけん で脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を研究 けんきゅう したことをビーアは1899年 ねん に発表 はっぴょう した[ 138] 。しかし、ビーアの助手 じょしゅ であったヒルデブラントは同年 どうねん にビーアの元 もと を去 さ り、その後 ご はビーアの脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい における功績 こうせき を否定 ひてい するような発表 はっぴょう を繰 く り返 かえ した[ 135] 。ビーアが最初 さいしょ の発表 はっぴょう の際 さい にコーニングの業績 ぎょうせき を引用 いんよう 、記載 きさい しなかったこともあり、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に最初 さいしょ に成功 せいこう したのはビーアとコーニングのどちらであるかに関 かん して、論争 ろんそう となった[ 135] 。今日 きょう では、コーニングは脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の実験 じっけん 的 てき ・理論 りろん 的 てき 前提 ぜんてい 条件 じょうけん を作 つく り上 あ げたと評価 ひょうか され、ビーアは脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の臨床 りんしょう への応用 おうよう とその後 ご の定着 ていちゃく に成功 せいこう したと評価 ひょうか されている[ 135] 。
脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を最初 さいしょ に行 い ったアメリカ人 じん はサンフランシスコ の外科医 げかい ダドリー・テイト(Dudley Tait)、グイド・E・カグリエリ(Guido E. Caglieri)[ 139] 、ニューオーリンズ の血管 けっかん 外科医 げかい ルドルフ・マタス(Rudolph Matás、1860-1957)で、1899年 ねん に[ 140] フェリックス・A・ラルー(Felix A. Larue)、 ヘルマン・B・ゲスナー(Hermann B. Gessner) そしてキャロル・アレン(Carroll Allen)の協力 きょうりょく を得 え て痔核 じかく 手術 しゅじゅつ に実施 じっし した[ 141] [ 142] 。
フランス人 じん のテオドール・タフィエ(Théodore Tuffier) (英語 えいご 版 ばん ) (1857-1929)は、1899年 ねん に泌尿生殖 せいしょく 器 き の外科 げか 手術 しゅじゅつ に脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を推奨 すいしょう した[ 143] [ 144] 。フランスのピエール・マリー(Pierre Marie) (英語 えいご 版 ばん ) 、ジョルジュ・ギラン(Georges Guillain) (英語 えいご 版 ばん ) 、シャルル・アシャール(Charles Achard) (ドイツ語 ご 版 ばん ) などの医師 いし も、坐骨 ざこつ 神経痛 しんけいつう や腰痛 ようつう のような腰部 ようぶ や下肢 かし の神経痛 しんけいつう の治療 ちりょう にコカインのくも膜 まく 下 か 注射 ちゅうしゃ を行 おこな っていた[ 145] 。
コカインは麻酔 ますい に用 もち いられはじめた当初 とうしょ から毒性 どくせい の高 たか さが問題 もんだい 視 し され、1903年 ねん にフランスのエルネスト・フルノー(Ernest Fourneau) (英語 えいご 版 ばん ) による局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく ストバイン (フランス語 ふらんすご 版 ばん ) 、1928年 ねん のEislebによるテトラカイン など、毒性 どくせい の低 ひく い様々 さまざま な合成 ごうせい 局所 きょくしょ 麻酔 ますい 薬 やく が開発 かいはつ されると共 とも に、髄 ずい 液 えき より高 たか い比重 ひじゅう の薬液 やくえき を用 もち いる(1930年 ねん 、McLellland)ことによって麻酔 ますい 範囲 はんい の調節 ちょうせつ が容易 ようい となり、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の安全 あんぜん 性 せい は高 たか まっていった。
20世紀 せいき 初頭 しょとう 、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい はいったんは産科 さんか 医療 いりょう に定着 ていちゃく した。しかし不慣 ふな れな医師 いし が、モニタリング を軽視 けいし してこの麻酔 ますい を頻繁 ひんぱん に行 い った結果 けっか 、合併症 がっぺいしょう が頻発 ひんぱつ し、この麻酔 ますい 法 ほう に対 たい する信用 しんよう が失墜 しっつい した[ 147] 。当時 とうじ 、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい 後 ご の死亡 しぼう 率 りつ は1/1000であり、局所 きょくしょ 麻酔 ますい や全身 ぜんしん 麻酔 ますい よりも遙 はる かに高率 こうりつ であり、帝王切開 ていおうせっかい の死亡 しぼう 率 りつ に至 いた っては1/139であると報告 ほうこく された[ 147] 。産科 さんか 麻酔 ますい を専門 せんもん とした医師 いし グリーンヒルは妊 にん 婦 ふ に対 たい するあらゆる麻酔 ますい の中 なか で最 もっと も危険 きけん であると結論 けつろん づけた[ 147] 。分娩 ぶんべん は「自然 しぜん 分娩 ぶんべん 」や「精神 せいしん 予防 よぼう 法 ほう 」が推奨 すいしょう され、1950年代 ねんだい までのこの時代 じだい は、後世 こうせい 、「産科 さんか 麻酔 ますい の暗黒 あんこく 時代 じだい 」と呼 よ ばれた[ 147] 。しかし、24時 じ 間 あいだ 体制 たいせい の産科 さんか 麻酔 ますい サービスが1940年 ねん から1950年 ねん の間 あいだ にアメリカで確立 かくりつ されるとともに、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の身体 しんたい に及 およ ぼす影響 えいきょう が解明 かいめい され、安全 あんぜん 性 せい は向上 こうじょう していった[ 147] 。今日 きょう では、帝王切開 ていおうせっかい を行 おこな う際 さい には脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい または硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい が標準 ひょうじゅん 的 てき な処置 しょち となっている[ 148] 。
1951年 ねん 、Whitacre とHart が先端 せんたん が鈍 どん な脊椎 せきつい 針 はり (ドイツ語 ご 版 ばん ) 、ペンシルポイント 針 はり を開発 かいはつ した。この針 はり が臨床 りんしょう に導入 どうにゅう されたことで、それまでかなりの割合 わりあい の患者 かんじゃ が経験 けいけん していた脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい 後 ご の頭痛 ずつう の割合 わりあい が大幅 おおはば に減少 げんしょう した[ 149] 。
手術 しゅじゅつ 中 ちゅう に穿刺 せんし 部位 ぶい に脊椎 せきつい 針 はり を残 のこ す最初 さいしょ の持続 じぞく 脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は、外科 げか 医 い H. P. ディーンによって 1907年 ねん にはすでに行 おこな われていた[ 150] 。1940年代 ねんだい にカテーテルを残 のこ す方式 ほうしき に改良 かいりょう されたが、カテーテルを入 い れるためには通常 つうじょう よりも太 ふと い針 はり でくも膜 まく を穿刺 せんし せねばならず、硬 かた 膜 まく 穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう が重症 じゅうしょう 化 か する懸念 けねん があった。十分 じゅうぶん に細 ほそ いカテーテルの開発 かいはつ によってこの手技 しゅぎ が確立 かくりつ され、許容 きょよう できるほど低 ひく い硬 かた 膜 まく 穿刺 せんし 後 ご 頭痛 ずつう の発生 はっせい 率 りつ が達成 たっせい されるようになったのは、1980年代 ねんだい になってからであった。
^ 頚椎 けいつい 7,胸椎 きょうつい 12、腰椎 ようつい 5として計 けい 24。仙 せん 椎 しい 5個 こ と尾 お 椎 しい (3-5個 こ )は癒合 ゆごう して仙骨 せんこつ となっている。
^ 脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい に関 かん しては2023年 ねん 現在 げんざい 、日本 にっぽん で製剤 せいざい として使用 しよう 可能 かのう なのはブピバカインとテトラカインの二 に 択 よ である[ 25] 。
^ 市販 しはん されている脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい 用 よう のブピバカイン製剤 せいざい にはアドレナリンが添加 てんか されていない[ 38] が、症例 しょうれい 報告 ほうこく としてはアドレナリン添加 てんか による作用 さよう 時間 じかん 延長 えんちょう の報告 ほうこく 例 れい がある[ 39] 。
^ 低 てい 比重 ひじゅう 液 えき による脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい は日本 にっぽん ではテトラカイン によって行 おこな うことができたが、2024年度 ねんど 以降 いこう は販売 はんばい 中止 ちゅうし により不可能 ふかのう となる見込 みこ みである。詳細 しょうさい はテトラカイン の項 こう を参照 さんしょう 。
^ 胸部 きょうぶ 硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では麻酔 ますい 範囲 はんい が胸 むね 髄 ずい 周辺 しゅうへん に留 と まるために歩行 ほこう 可能 かのう だが、腰部 ようぶ 硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい では、麻酔 ますい 範囲 はんい が腰 こし 髄 ずい 周辺 しゅうへん となり、下肢 かし の運動 うんどう 神経 しんけい に影響 えいきょう が及 およ ぶために歩行 ほこう は難 むずか しくなる。
^ この方法 ほうほう は、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい と脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい の穿刺 せんし 部位 ぶい が同 おな じ場所 ばしょ であり、針 はり の中 なか から針 はり を通 とお す、すなわち、"Needle through needle"と呼 よ ばれる方法 ほうほう である。他 た には、硬 かた 膜 まく 外 がい 麻酔 ますい と脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい を別々 べつべつ の穿刺 せんし 椎 しい 間 あいだ から行 おこな う方法 ほうほう もある。
^ 2023年 ねん 現在 げんざい 、日本 にっぽん では専用 せんよう のカテーテルが販売 はんばい されておらず、行 おこな うことが難 むずか しい。
^ 日本 にっぽん では、戦前 せんぜん ・戦後 せんご から一貫 いっかん して帝王切開 ていおうせっかい の麻酔 ますい は脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい が標準 ひょうじゅん 麻酔 ますい 法 ほう である。
^ カッティングはcutting、すなわち、針 はり 先 さき が穿刺 せんし に伴 ともな って刺 とげ 入 にゅう 経路 けいろ にある髄 ずい 膜 まく などの組織 そしき を傷害 しょうがい することを意味 いみ する。反対 はんたい 語 ご は非 ひ カッティング、non-cuttingであり、atraumatic(非 ひ 外傷 がいしょう 性 せい )とも称 しょう される。
^ 近年 きんねん は、脊髄 せきずい くも膜 まく 下 か 麻酔 ますい にリドカインがほぼ、用 もち いられなくなり、発症 はっしょう 率 りつ は低下 ていか しているものと考 かんが えられる。
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