長塚ながつか節たかし

長塚ながつか 節たかし
誕生たんじょう	1879年ねん4月がつ3日にち 茨城いばらき県けん岡田おかだ郡ぐん国生こつしょう村むら（現在げんざいの常つね総そう市し）
死没しぼつ	(1915-02-08) 1915年ねん2月がつ8日にち（35歳さい没ぼつ） 福岡ふくおか県けん那珂なか郡ぐん馬出まいだし
墓地ぼち	茨城いばらき県けん常つね総そう市し国生こつしょう共同きょうどう墓地ぼち
職業しょくぎょう	歌人かじん、小説しょうせつ家か
国籍こくせき	日本にっぽん
最終さいしゅう学歴がくれき	茨城いばらき中学校ちゅうがっこう中退ちゅうたい 茨城いばらき師範しはん学校がっこう卒業そつぎょう
文学ぶんがく活動かつどう	アララギ派は
代表だいひょう作さく	『土ど』
影響えいきょうを受うけたもの 正岡子規まさおかしき
ウィキポータル 文学ぶんがく

長塚ながつか 節たかし（ながつか たかし、1879年ねん（明治めいじ12年ねん）4月がつ3日にち - 1915年ねん（大正たいしょう4年ねん）2月がつ8日にち）は、日本にっぽんの歌人かじん、小説しょうせつ家か。

茨城いばらき県けん結城ゆうき郡ぐんに生うまれた。病弱びょうじゃくで中学ちゅうがくを中退ちゅうたい、療養りょうよう生活せいかつの中なかで短歌たんかに親したしんだ。正岡子規まさおかしきの『歌うたよみに与あずかふる書しょ』に深ふかい感銘かんめいを受うけ、1900年ねんに入門にゅうもん。ひたすら子規しきの写生しゃせいの風かぜを摂取せっしゅ、子規しき短歌たんかの最もっとも正当せいとうな継承けいしょう者しゃと言いわれた。

「馬酔木あしび」「アララギ」の創刊そうかんに参画さんかく。晩年ばんねんには、透徹とうてつした清澄せいちょうな調しらべをめざす「冴さえ」の説せつを唱となえた。

生涯しょうがい

病苦びょうくの中なかで

在ありし日ひの長塚ながつか節たかし

1879年ねん（明治めいじ12年ねん）4月がつ3日にち、茨城いばらき県けん岡田おかだ郡ぐん国生こつしょう村むら（現在げんざいの常つね総そう市し国生こくしょう<こっしょう>）の豪農ごうのうの家いえに生うまれた。1893年ねん（明治めいじ26年ねん）4月がつ、茨城いばらき中学校ちゅうがっこう（現在げんざいの茨城いばらき県立けんりつ水戸みと第一高等学校だいちこうとうがっこう）に首席しゅせきで入学にゅうがくし、4年ねん進級しんきゅうまでしたが脳のう神経しんけい衰弱すいじゃくを発症はっしょうして学業がくぎょう継続けいぞく困難こんなんとなる。官立かんりつ茨城いばらき師範しはん学校がっこう（現在げんざいの茨城大学いばらきだいがく教育きょういく学部がくぶ）卒業そつぎょう。郷里きょうりに戻もどって自然しぜんに親したしみ読書どくしょする生活せいかつを送おくりながら療養りょうように努つとめるなかで、さまざまな文学ぶんがくへの関心かんしんを高たかめていった。

子規しきとの出会であい

19歳さいの時とき、家いえで購読こうどくしていた新聞しんぶん「日本にっぽん」に連載れんさいされた正岡子規まさおかしきの『歌うたよみに与あずかふる書しょ』を読よみ、その写生しゃせい説せつに激はげしく共感きょうかん、21歳さいになると子規しきの許もとを直接ちょくせつ訪たずね、入門にゅうもん、『アララギ』の創刊そうかんに携たずさわることになる。子規しきの下したではもっぱら万まん葉ようの短歌たんかの研究けんきゅうと作歌さっかにはげんだが、子規しきの没後ぼつごもその方向ほうこう性せいを違ちがえず、写生しゃせい主義しゅぎを継承けいしょうした作風さくふうを発展はってんさせた。そのため、子規しき門人もんじんの間あいだで「節ふしこそが正岡子規まさおかしきの詠えい風ふうの正統せいとうな後継こうけい者しゃである」との評価ひょうかが生うまれた。

アララギをめぐる確執かくしつ

長塚ながつかは伊藤いとう左千夫さちおと終生しゅうせいにわたり親交しんこうを続つづけたが、一方いっぽうで『アララギ』の創刊そうかんに当あたり編集へんしゅうを担になった伊藤いとうと対立たいりつ。財務ざいむ編集へんしゅう担当たんとうであった蕨わらび真一郎しんいちろうに対たいし、伊藤いとうの姿勢しせいに不満ふまんを漏もらす長文ちょうぶんの手紙てがみを送おくりつけている。このため伊藤いとうの再三さいさんの要求ようきゅうにもかかわらず、長塚ながつかは『アララギ』に作品さくひんを発表はっぴょうすることはほとんどなく、1913年ねん（大正たいしょう2年ねん）に伊藤いとうが死去しきょした後のちの1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）にようやく「鍼の如しく」の和歌わか232首しゅの連作れんさくを発表はっぴょうしている。

『土ど』執筆しっぴつ

散文さんぶんの執筆しっぴつを手掛てがけ、写生しゃせい文ぶんを筆頭ひっとうに数々かずかずの小説しょうせつを『ホトトギス』に寄稿きこう。さらには、当時とうじの農村のうそんを写実しゃじつ的てきに描写びょうしゃした『土ど』を『東京とうきょう朝日新聞あさひしんぶん』に連載れんさい、これは農民のうみん文学ぶんがくのさきがけとなる重要じゅうような作品さくひんと評価ひょうかされ、彼かれの代表だいひょう作さくとなった。

早さ逝

長塚ながつか節たかし逝去せいきょの地ち
九州大学きゅうしゅうだいがく馬出まいだしキャンパス

1911年ねん（明治めいじ44年ねん）8月がつ頃ごろから喉のどの痛いたみを周囲しゅういに訴うったえるようになり、東京とうきょう目白台めじろだいの小布施こふせ新三郎しんざぶろう家いえへ養子ようし縁組えんぐみした実弟じってい順次郎じゅんじろうを頼たよって上京じょうきょう、小布施こふせ邸ていに滞在たいざいしながら東京とうきょうの名医めいいといわれる医家いかをいくつも廻まわって診察しんさつを仰あおぐも「喉頭こうとう結核けっかくでこのままでは余命よめい一いち年ねんか一いち年ねん半はん」と言いわれる。12月、東京とうきょうの根岸ねぎし養生ようじょう院いんに入院にゅういんし手術しゅじゅつを受うける。1912年ねん（明治めいじ45年ねん）3月がつ、九州きゅうしゅう帝国ていこく大学だいがく医学部いがくぶに耳鼻咽喉じびいんこう科学かがくの名医めいいの久保くぼ猪之吉いのきち博士はかせが居いるとの評判ひょうばんを聞きき、博士はかせの治療ちりょうを受うけるために、治療ちりょうを続つづけながら九州きゅうしゅうへの長旅ながたびに出立しゅったつする。途次とじ、京都きょうと医科いか大学だいがく病院びょういんに入院にゅういんし手術しゅじゅつを受うける。その後ご9月がつまで九州きゅうしゅうを旅行りょこう、久保くぼ博士はかせの診察しんさつ治療ちりょうを受うけ、病状びょうじょうはいったん治おさまる。1913年ねん（大正たいしょう2年ねん）12月、喉頭こうとう結核けっかく再発さいはつ、東京とうきょう神田かんだの金沢かなざわ医院いいんに入院にゅういん、手術しゅじゅつを受うける。1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）3月がつ、東京とうきょう神田かんだ錦にしき町まちの橋田はしだ医院いいんに入院にゅういん。6月から9月がつまで、治療ちりょうを受うけながら宮崎みやざき県けん青島ちんたおへ旅行りょこうに出でる。1915年ねん（大正たいしょう4年ねん）1月がつ、九州きゅうしゅう帝国ていこく大学だいがく附属ふぞく病院びょういん隔離かくり病棟びょうとうに入院にゅういん、2月がつ7日にちより昏睡こんすい状態じょうたいとなり、2月がつ8日にち同どう病院びょういんにて没ぼっした。享年きょうねん満まん35。翌日よくじつ崇たかし福ぶく寺てらで荼毘だびに付ふされた後のち、遺骨いこつは東京とうきょうに運はこばれ、東京とうきょう目白台めじろだいの小布施おぶせ邸ていで通夜つやが営いとなまれた。葬儀そうぎは3月14日にちに郷里きょうりにて執とり行おこなわれ、共同きょうどう墓地ぼちに埋葬まいそうされた。戒名かいみょうは顕あらわ節ぶし院いん秀しゅう嶽だけ義文よしふみ居士こじ。

顕彰けんしょう

常つね総そう市しの旧きゅう石下いしげ町まち地区ちくには、旅たび姿すがたの節ふし像ぞうが3カ所かしょに建たてられている。また常つね総そう市し国生こつしょうには生家せいかがあり、茨城いばらき県けん文化財ぶんかざいに指定していされている。 現在げんざい、常つね総そう市しでは節ふしの文ぶん業ぎょうを顕彰けんしょうし、短編たんぺん小説しょうせつ・短歌たんか・俳句はいくの三さん部門ぶもんについて長塚ながつか節たかし文学ぶんがく賞しょうを設もうけて毎年まいとし表彰ひょうしょうしている。

その他た

下妻しもづま市し出身しゅっしんの俳優はいゆう・渡辺わたなべ篤史あつしは親戚しんせきである。 常つね総そう市し地域ちいき交流こうりゅうセンターの6階かいに長塚ながつか節たかし記念きねん館かんが開設かいせつされている。

全集ぜんしゅう

• 『長塚ながつか節たかし全集ぜんしゅう』春陽しゅんよう堂どう（1926年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし全集ぜんしゅう』河出かわで書房しょぼう（1947年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし全集ぜんしゅう』春陽しゅんよう堂どう書店しょてん（1976年ねん）

小説しょうせつ

• 『土ど』春陽しゅんよう堂どう（1912年ねん）
• 『土ど』新潮しんちょう文庫ぶんこ（1950年ねん）
• 『土ど』日本にっぽん近代文学館きんだいぶんがくかん（1974年ねん）
• 『土ど』旺文社おうぶんしゃ文庫ぶんこ（1974年ねん）
• 『土ど』崙書房しょぼう（1976年ねん）

歌集かしゅう

• 『新釈しんしゃく長塚ながつか節たかし歌集かしゅう』紅玉こうぎょく堂どう書店しょてん（1928年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし歌集かしゅう 』春陽しゅんよう堂どう（1930年ねん）
• 『新選しんせん長塚ながつか節たかし集しゅう』新潮社しんちょうしゃ（1940年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし歌集かしゅう』鎌倉かまくら書房しょぼう（1947年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし歌集かしゅう』岩波いわなみ文庫ぶんこ（1950年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし全ぜん歌集かしゅう』宝たから文ぶん館かん（1951年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし全ぜん歌集かしゅう』鷺さぎの宮みや書房しょぼう（1966年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし歌集かしゅう』旺文社おうぶんしゃ文庫ぶんこ（1971年ねん）　装幀そうてい：関野せきの準一じゅんいち郎ろう
• 『長塚ながつか節たかし歌集かしゅう』崙書房しょぼう（1975年ねん）
• 『長塚ながつか節たかし歌集かしゅう』短歌新聞社たんかしんぶんしゃ（1993年ねん）

関連かんれん書籍しょせき

• 橋田はしだ東声とうせい『土どの人ひと長塚ながつか節たかし』春陽しゅんよう堂どう、1926年ねん
• 若杉わかすぎ慧とし『長塚ながつか節たかし素描そびょう』講談社こうだんしゃ、1975年ねん
• 梶木かじき剛つよし『長塚ながつか節たかし　自然しぜんの味解みかいの光芒こうぼう』芹沢せりざわ出版しゅっぱん、1980年ねん
• 市村いちむら与あずか生なま『長塚ながつか節たかしの短歌たんか　続ぞく長塚ながつか節たかし論ろん』創そう林りん社しゃ、1981年ねん
• 伊藤いとう昌治しょうじ『長塚ながつか節たかし―文学ぶんがく碑ひへの道みち』銀河ぎんが書房しょぼう、1982年ねん
• 大戸おおと三千枝みちえ『土どの歌人かじん 長塚ながつか節たかし』新しん典てん社しゃ、1983年ねん
• 藤沢ふじさわ周平しゅうへい『白しろき瓶びん　小説しょうせつ・長塚ながつか節たかし』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、1985年ねん（文春ぶんしゅん文庫ぶんこ、2010年ねん）
• 山根やまね巴ともみ『長塚ながつか節たかし研究けんきゅう』教育きょういく出版しゅっぱんセンター、1986年ねん
• 山形やまがた洋一よういち『長塚ながつか節たかし「土ど」の世界せかい　写生しゃせい派は歌人かじんの長篇ちょうへん小説しょうせつによる明治めいじ農村のうそん百科ひゃっか』未知みち谷だに、2010年ねん
• 山形やまがた洋一よういち『『土ど』の言霊ことだま―歌人かじん節ぶしのオノマトペ』未知みち谷だに、2012年ねん
• 山形やまがた洋一よういち『節ふしの歳時記さいじき　農村のうそん歌人かじん長塚ながつか節ぶしの自然しぜん観かん』未知みち谷だに、2014年ねん

参考さんこう文献ぶんけん

• 小布施こふせ新三郎しんざぶろう伝でん―【偉人いじん録ろく】郷土きょうどの偉人いじんを学まなぶ(小布施こふせ新三郎しんざぶろう)
• 小布施こふせ邸てい写真しゃしん―【落合おちあい道人みちひとOchiai-Dojin】下落合しもおちあいはミステリーサークルだらけ。(10)気きになる神田かんだ川がわ

外部がいぶリンク

• 長塚ながつか 節たかし：作家さっか別べつ作品さくひんリスト - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 長塚ながつか節たかしの紹介しょうかい - 常つね総そう市し公式こうしきサイト
• 長塚ながつか 節たかし - 茨城いばらき県立けんりつ水戸みと第一高等学校だいちこうとうがっこう公式こうしきサイト
• 長塚ながつか節たかし 農民のうみん文学ぶんがくの開拓かいたく者しゃ - 2018/1/22付づけ 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん 朝刊ちょうかん 文化ぶんか面めん