陳ちん無む宇

陳ちん 無む宇（ちん むう、生なま没年ぼつねん不ふ詳しょう）は、中国ちゅうごく春秋しゅんじゅう時代じだいの斉ひとしの政治せいじ家か。姓せいは嬀、氏しは陳ひね、あるいは田た、諱いみなは無む宇、諡おくりなは桓。父ちちは陳ちん須無（陳ちん文子ふみこ）。霊れい公こう・荘そう公光きんみつ・景けい公こうの3代だいに仕つかえる。陳ちん桓子、田た桓子とも呼よばれる。田た開ひらく・田た乞・田た書しょの父ちち。

生涯しょうがい

陳ちん氏しの俊英しゅんえい

陳ひねの亡命ぼうめい公子こうし陳ちん完かん（陳ちん敬たかし仲なか）の子孫しそんにあたる陳ちん無む宇は、その聡明そうめいさを霊れい公こうや夫人ふじんの穆きよし孟はじめ姫ひめ（魯の宰相さいしょう叔孫僑如（叔孫宣せん伯はく）の娘むすめ）に気きに入いられ、その娘むすめを降嫁こうかされるほどの厚遇こうぐうを受うけた。またその縁えんから、妻つまの同母どうぼ弟おとうとの公子こうし杵臼きなうす（後ごの景けい公こう）を後援こうえんしていた。

その後ご、紀元前きげんぜん571年ねんから紀元前きげんぜん567年ねんにかけての晏弱（晏桓子こ）による萊攻略こうりゃく戦せんに従軍じゅうぐんし、萊都陥落かんらく後ごに宗廟そうびょうにあった萊公室しつの祭器さいきを、霊れい公こうの元もとに届とどける大役たいやくを担になう。

慶けい氏し討伐とうばつ

時代じだいは下くだって、紀元前きげんぜん548年ねんに荘そう公こうが崔ちぇ杼ひ（崔ちぇ武子たけこ）に殺害さつがいされ、公子こうし杵臼きなうすが景けい公こうとして即位そくいすると、父ちちの陳ひね須無と共ともにその後見人こうけんにんとして威勢いせいを蓄たくわえていく。

紀元前きげんぜん545年ねん、崔ちぇ杼ひを倒たおして政治せいじの実権じっけんを握にぎった慶けい封ふうを、陳ちん須無が鮑あわび国こく（鮑あわび文子ふみこ・鮑あわび叔の曾孫そうそん）たちと手てを組くんで討伐とうばつする計画けいかくを立たてた際さい、陳ちん無む宇は慶けい封ふうの萊での狩猟しゅりょうに同行どうこうするが、母ははの病気びょうきを口実こうじつに都との臨淄へと戻もどり、父ちち達たちと共ともに慶けい氏し一門いちもんを討伐とうばつ、慶けい封ふうを斉ひとしから追放ついほうすることに成功せいこうする。

その後ご陳ひね無む宇は、景けい公こうに働はたらきかけて晏嬰（晏平仲なか）を卿きょうの一員いちいんとして入閣にゅうかくさせて、人心じんしんの安定あんていを図はかる。

権勢けんせいへの道みち

更さらに紀元前きげんぜん539年ねん、陳ちん無む宇は鮑あわび国こくと共ともに、政敵せいてきの欒施と高こう彊つよし（共ともに恵めぐみ公おおやけの曾孫そうそん）を失脚しっきゃくさせ、魯に追放ついほうすると、景けい公こうから両氏りょうしの領地りょうち財産ざいさんを与あたえられるが、晏嬰の勧すすめでそれらを辞退じたいする。しかし、穆きよし孟はじめ姫ひめがそれを哀あわれみ、彼女かのじょの口利くちききで高こう唐とう（山東さんとう省しょう聊城市し高こう唐から県けん）を与あたえられる。陳ちん無む宇は交通こうつうの要衝ようしょうであるこの地ちを得えたことで、経済けいざい的てきに強大きょうだい化かしていく。そして晏嬰を執政しっせいとして表おもて舞台ぶたいに据すえ、自身じしんは裏方うらかたの卿きょうとして陳ちん氏しの基盤きばんを更さらに固かためていった。その陳ひね無む宇の動うごきに晏嬰は、斉ひとしはいずれ陳ちん氏しの手てに落おちることを予見よけんした。

死後しご、「桓」を諡おくりなされ、陳ちん桓子（もしくは田た桓子）と呼よばれる。陳ちん氏し（田た氏し）は晏嬰の危惧きぐどおり、陳ちん無む宇の子この田た開ひらく（田た武子たけこ）・田た乞（田た釐子）兄弟きょうだいや孫まごの田た恒つね（田た成子しげこ）の代だいに強大きょうだい化かし、ついには斉ひとし公おおやけ室しつをも上回うわまわっていくのである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 春秋しゅんじゅう左ひだり氏し伝でん

関連かんれん項目こうもく

• 田た斉ひとし