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難読なんどく地名ちめい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

難読なんどく地名ちめい(なんどくちめい)は、通常つうじょうみをしないためにみにくくなっている地名ちめいのこと。

日本語にほんごにおいては、おも日本にっぽん地名ちめいのうち、漢字かんじ通常つうじょうみをしない(難読なんどく漢字かんじ)ためにみにくくなっている地名ちめいのこと。

概説がいせつ

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一般いっぱんに、自然しぜん言語げんごでは、発音はつおんみ)と表記ひょうきつづり、漢字かんじ)が1たい1に対応たいおうしていない。表意ひょうい文字もじもちいる言語げんごはもちろん、発音はつおん対応たいおうする規則きそくてき表記ひょうき存在そんざいする表音ひょうおん文字もじもちいる言語げんごにおいても、実際じっさいには単語たんご発音はつおん表記ひょうき乖離かいりする場合ばあいがある。表意ひょうい文字もじ表音ひょうおん文字もじにかかわらず、このような乖離かいりはなはだしい場合ばあい、あらかじめその単語たんごみをらないものにとっては、その単語たんご正確せいかくむことは困難こんなんである。

日本語にほんご難読なんどく地名ちめい

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漢字かんじ伝来でんらい以来いらい万葉仮名まんようがなのようにをつけていったり、瑞祥ずいしょう地名ちめいとして、いとされるてるなどのことが1000ねん以上いじょうにわたっておこなわれつづけてきた。人々ひとびと行動こうどう範囲はんいせま時代じだい地元じもとにどんな表記ひょうきをしようとあまり問題もんだいにはならなかったが、文明ぶんめい発達はったつによる人々ひとびと行動こうどう範囲はんい拡大かくだいによって難読なんどく地名ちめいおおさが認識にんしきされるようになった。地方ちほうによっておなつづりや漢字かんじべつかたをする、おなおんべつつづりやてる、方言ほうげんによっておと変化へんかする、歴史れきし由来ゆらいして常用漢字じょうようかんじがい漢字かんじてる、ひとしれいである。

すうおおくの言語げんご表現ひょうげんなかでも難読なんどく数多かずおお存在そんざいするのは日本語にほんごくらいとされており(日本にっぽんでは難読なんどく地名ちめいのみを収録しゅうろくした「難読なんどく地名ちめい辞典じてん」が刊行かんこうされている)、中国ちゅうごくでは漢字かんじかた規則きそくてきであり、日本にっぽん同様どうようべつ言語げんご体系たいけいたいして漢字かんじ使用しようした朝鮮ちょうせんでも、ほとんどはひとつの漢字かんじたいしてひとつのかたしかもちいられていない[1][2]

むかしからその地域ちいきんでいる住民じゅうみんたちはとく難読なんどく地名ちめいとはおもっておらず、外部がいぶ人間にんげんから指摘してきされてはじめて難読なんどく地名ちめいだとかるようなれいすくなくない。たとえば、宮城みやぎけん出身しゅっしん著名ちょめい漫画まんがになった小野寺おのでら章太郎しょうたろうは、故郷こきょう石森いしのもりまち(いしのもりちょう)にちなんでながらく「石森いしもり(いしのもり)章太郎しょうたろう」というペンネーム使つかっていたが、石森いしもりかたらない全国ぜんこく読者どくしゃ出版しゅっぱんしゃ関係かんけいしゃからは「いしもり」としかばれなかったため、やむをずデビュー30周年しゅうねんむかえた1985ねんからペンネームを「石ノ森いしのもり章太郎しょうたろう」に変更へんこうし、ようやく「いしのもり」とんでもらえるようになったというエピソードがある(石ノ森いしのもり章太郎しょうたろう項目こうもく参照さんしょう)。

地名ちめい間違まちがえたことで詐欺さぎ犯罪はんざい発覚はっかくし、逮捕たいほされた事例じれいもある[3]

難読なんどく地名ちめいとなりやすいれい

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みにくさの理由りゆう[4]は、

  • 表記ひょうきつづ文字もじ)のかた一般いっぱんてきかたことなる場合ばあいれい三次みつぎ広島ひろしまけん
  • 一般いっぱんもちいられない表記ひょうき複雑ふくざつつづりや常用漢字じょうようかんじ以外いがい漢字かんじ)を使つかっている場合ばあいれい匝瑳そうさ千葉ちばけん
  • 間違まちがいをしやすい場合ばあいれい美祢みね山口やまぐちけん

などをあげることができるが、明確めいかく定義ていぎはない[4]

あまりられていない文字もじ使つかわれている場合ばあい

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この場合ばあい文字もじはほぼ漢字かんじかぎられ、そのおおくは常用漢字じょうようかんじそと漢字かんじふく地名ちめいである。常用漢字じょうようかんじがい漢字かんじふくむということは、すなわち義務ぎむ教育きょういくにおいて習得しゅうとくする知識ちしきだけではめないということになり、たとえその漢字かんじ本来ほんらいかたであったとしても難読なんどく地名ちめいとなる場合ばあいがある。

使用しよう頻度ひんど非常ひじょうひく漢字かんじ使つかわれている地名ちめいすくなからず存在そんざいし、それらはおおくの日本人にっぽんじんにとって難読なんどく地名ちめいとなる。ただし常用漢字じょうようかんじでなくとも比較的ひかくてきおおくの日本人にっぽんじん認知にんちしている漢字かんじ数多かずおおく、たん常用漢字じょうようかんじがい漢字かんじ使用しようしているだけでは難読なんどく地名ちめいとはえない。

文字もじかた一般いっぱんてきかたことなる場合ばあい

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通常つうじょう音訓おんくんにないかたとなっているれい
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常用漢字じょうようかんじだけで表記ひょうきされていても、その常用漢字じょうようかんじ音訓おんくんとして制定せいていされていないみとなっている地名ちめい多数たすう存在そんざいする。このようなみをふく場合ばあい難読なんどく地名ちめいといえるが、これも実際じっさいには比較的ひかくてきおおくの一般いっぱん大衆たいしゅう認知にんちしているみもおお[注釈ちゅうしゃく 1]下記かきにそのれいしるす(特定とくてい地域ちいきのみにおお存在そんざいする特殊とくしゅかた別項べっこうしるす)。方言ほうげん誤記ごき誤読ごどく定着ていちゃくしたれいもこれにふくまれる[4]

  • 」 = 「へ」「べ」
  • せい」 = 「お」「ふ」「ぶ」「ゆう」(「ゆ」が拗音ようおんしたものをふくむ)「にゅう」「なり」[6]
  • みず」 = 「み」「みな」「うず」
  • うみ」 = 「み」
  • すな」 = 「さご」
  • いし」 = 「いわ」「し」
  • もん」 = 「と」
  • めし」 = 「いい」「い」
  • しろ」 = 「き」
  • 」 = 「へ」「べ」
  • あたり」 = 「へ」「なべ」
  • かみ」 = 「ごう」
  • かん」 = 「たて」「だて」「たち」
  • にん」 = 「とう」
  • たに」 = 「やつ」「やち」「や」(※接続せつぞく接尾せつびかたちとして「がや」「がい」がある)
  • べつ」 = 「べ」
  • うえ」 = 「かん」「こう」
  • げん」 = 「くろ」
  • かわ」 = 「こう」
  • こえ」 = 「い」
  • ぶん」 = 「いた」
  • 鹿しか」 = 「が」
  • まち」 = 「また」
  • しん」 = 「にゅう」
  • さん」 = 「そう」
  • 「埼」 = 「ざき」
  • 「須」 = 「ぞ」
  • あつし」 = 「あっ」(促音そくおんおとの「あつ」でない)
  • さわ」 = 「さ」
音訓おんくん変化へんかしているれい
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通常つうじょう音訓おんくんあいだに「の」「が」などがはいっていることがある(れい: 「尼崎あまがさき」 = 「あまがさき」、「各務原かかみがはら」 = 「かかみがはら」、「一宮いちのみや」 = 「いちのみや」、「下関しものせき」 = 「しものせき」)。通常つうじょう音訓おんくん一部いちぶけていたり、みが変化へんかしたりして難読なんどくとなっているれいおお存在そんざいする(れい: 「尾鷲おわせ」 = 「おわせ」、「鹿屋かのや」 = 「かのや」、「焼津やいづ」 = 「やいづ」、熊内くもち = 「くもち」)。

表記ひょうきみが本来ほんらい無関係むかんけいれい
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地名ちめい表記ひょうきとして、その地名ちめい自体じたいではなく、枕詞まくらことば雅称がしょう別名べつめいなどの表記ひょうき使つかうことがある[4]れい: 「飛鳥あすか」 = 「あすか」、「大和やまと」 = 「やまと」、「太秦うずまさ」 = 「うずまさ」、「じゅうはちじょ」 = 「さかり」、「薄野すすきの」 = 「すすきの[注釈ちゅうしゃく 2])。

日本語にほんご以外いがい地名ちめい漢字かんじてられたれい
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後述こうじゅつする琉球りゅうきゅうアイヌのほか、少数しょうすうであるが英語えいごなどに漢字かんじてられた地名ちめいもある(れい: 「須美寿島すみすじま」 = 「スミスとう」)。

ただし、かならずしも難読なんどくとはかぎらず、簡単かんたん漢字かんじてられ通常つうじょうみをする地名ちめいおおい。

よくられたかたりちがみをするれい
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彦山ひこさん(ひこやま、ひこさん)」、「八幡やはた(はちまん、やはた、やわた)」、「名東めいとうめいとうみょうどう)」、「大山おおやま(おおやま、だいせん)」、「川内かわうち(かわうち、せんだい)」、「国府こくふ」(こくふ、こくぶ、こう)、「府中ふちゅう」(ふちゅうこう)、「国分こくぶ」(こくぶん、こくふ、こくぶ)、「富田とみた」(とみた、とみだ、とんだ)、「富山とやま」(とやま、とみやま、とみさん)、「外山とやま」(とやま、そとやま、とのやま)、「神戸こうべ」(こうべ、こうど、ごうと、ごうど、かんべ、かんど、がんと、がんど)など、まったくちが複数ふくすうみがある地名ちめいも、片方かたがたしからない人物じんぶつにとっては他方たほう難読なんどくとなる。これは江戸えど時代じだい隠密おんみつ見抜みぬ方法ほうほうとしてひろもちいられた。[よう出典しゅってん]

地域ちいきべつ特殊とくしゅかた
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  • 本州ほんしゅう四国しこく九州きゅうしゅう
    おも地形ちけい意味いみふく地名ちめい奈良なら時代じだい和銅わどう6ねん713ねん)に「中国ちゅうごくにならいぐんきょうめい好字こうじ(よきじ、縁起えんぎ)であらわせ」とする和銅わどうかんいのち強引ごういん2文字もじえられた地名ちめいおおく、それらの地名ちめい数多かずおおのこっている。古語こごでは難読なんどくでなかったみでも、死語しごとなってからの期間きかんなが場合ばあいみがわからないひとえ、難読なんどく地名ちめいになる場合ばあいがある。
    難読なんどく地名ちめい以外いがいに、九州きゅうしゅうでは「はら」を「はる」または「ばる」とむことがおおい(れい: 「中原なかはら」=「なかばる」、「原田はらだ」=「はるだ」)。山陰さんいん地方ちほうでは、「やま」を「せん」とむ(れい: 「大山おおやま」=「だいせん」、「蒜山ひるぜん」=「ひるぜん」、「氷ノ山ひょうのせん」=「ひょうのせん」)。
  • 北海道ほっかいどう東北とうほく地方ちほう北部ほくぶ
    アイヌとして使用しようされていた地名ちめい漢字かんじをあてるさい通常つうじょう使つかわないかたをしたり、使用しよう頻度ひんどひくくて一般いっぱん大衆たいしゅうにあまり認知にんちされていない漢字かんじもちいたりするために難読なんどく地名ちめいとなることがおおい。
    アイヌ地名ちめい参照さんしょう
  • 沖縄おきなわ
    琉球りゅうきゅう独特どくとく語彙ごい音韻おんいんもちいられている場合ばあい難読なんどく地名ちめいとなる。日本語にほんごふうかたえるれい目立めだつが、現地げんちではむかしながらのかたがされていることもおおい。くわしくは沖縄おきなわけん難読なんどく地名ちめい一覧いちらん参照さんしょう
    れい
    九州きゅうしゅう同様どうよう、「はら」を「はる」「ばる」とむこともおおい(れい: 「南風原はえばる」=「はえばる」、「与那原よなばる」=「よなばる」)。
    また琉球りゅうきゅう急激きゅうげき音韻おんいん変化へんかにより、漢字かんじてた当初とうしょ(1500ねんごろ)の発音はつおんから乖離かいりした場合ばあい難読なんどく地名ちめいとなる[7][8]
    れい
    • 今帰仁なきじん=「いまきんじん→なきじん」
    • 勢理客じっちゃく=「ぜりかく→じっちゃく」
    • 保栄茂びん=「ぼえも→びん」

本来ほんらいなら難読なんどく地名ちめいとなる地名ちめい

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難読なんどく地名ちめいとしての条件じょうけんたしていても、その地名ちめいかただれもがっている、つまり固有こゆう地名ちめいとしての認知にんちたかく、めることが一般いっぱん常識じょうしきとなっているため、難読なんどく地名ちめいとしてあつかわれない地名ちめいもある。まれ文字もじ使つかれいとしては「塩竈しおがま」「岐阜ぎふ」「大阪おおさか」「愛媛えひめ」「埼玉さいたま本来ほんらいみである「さきたま」のほう知名度ちめいどひくい)」など、まれなみをするれいとしては「札幌さっぽろ(さっぽろ)」「稚内わっかない(わっかない)」「弘前ひろさき(ひろさき)」「神戸こうべこうべほかにも、「かんべ」「ごうど」事例じれいあり)」「大分おおいたおおいた同様どうように「だいぶ」と事例じれいあり)」「別府べっぷべっぷべふ。そのまれかたをする事例じれいゆう)」「博多はかた(はかた)」などがある。

日本にっぽん難読なんどく地名ちめい一覧いちらん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ たとえば「きち」 = 「よし」、「ころも」 = 「きぬ」なども常用漢字じょうようかんじひょう記載きさいされていないひょうがいみである[5]
  2. ^ 地名ちめい「すすきの」の「すすき」の漢字かんじ表記ひょうきすすき」は日本にっぽん独自どくじ漢字かんじ表記ひょうきである(中国ちゅうごくでは「すすき中國ちゅうごくすすき」)。

出典しゅってん

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  1. ^ 吉田よしだ誠夫のぶお『おとなのらく習 24 漢字かんじのおさらい』自由じゆう国民こくみんしゃ、2012ねん、146ぺーじ
  2. ^ カナモジろんアテ漢字かんじのイロイロと そのガイ カナモジカイ
  3. ^ 地名ちめい間違まちがえる少年しょうねんとのやりとりに違和感いわかん… “逮捕たいほ協力きょうりょく!タクシー運転うんてんしゅ感謝かんしゃじょう新潟にいがた】 (22/06/28 19:13) 新潟総合にいがたそうごうテレビ
  4. ^ a b c d 東京とうきょうどう出版しゅっぱん難読なんどく地名ちめい辞典じてん」1978ねん再版さいはん 凡例はんれいいち選択せんたく基準きじゅんより
  5. ^ 常用漢字じょうようかんじひょう平成へいせい22ねん内閣ないかく告示こくじだい2ごう” (pdf). 文化庁ぶんかちょう (2010ねん11月30にち). 2022ねん1がつ4にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2022ねん3がつ16にち閲覧えつらん
  6. ^ 個人こじんのブログです参考さんこうに : Archived 2020-10-05 at the Wayback Machine. 「せい」の漢字かんじかたなんとおり?100種類しゅるいかるえ150種類しゅるい以上いじょう!!
  7. ^ 多和田たわだ眞一郎しんいちろう地名ちめいかんがえる沖縄おきなわうつかわり―たとえば、「ぜりかく」(勢理客じっちゃく)が「じっちゃく」になるまで―』けいみずしゃ、2012ねん、iぺーじ
  8. ^ 地名ちめいかんがえる沖縄おきなわうつかわり―たとえば、「ぜりかく」(勢理客じっちゃく)が「じっちゃく」になるまで―』103-110ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 東京とうきょうどう出版しゅっぱん難読なんどく地名ちめい辞典じてん」1978ねん再版さいはん

関連かんれん項目こうもく

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