廃語はいご

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廃語はいご(はいご)は、過去かこ使つかわれたが、現在げんざい使つかわれなくなった語彙ごいのことである。死語しご(しご)ともい、現在げんざいはこちらが頻用ひんようされる[1]

廃語はいご死語しご範囲はんいや、その使つかけは文献ぶんけんによりことなる。辞書じしょてき定義ていぎではまった使つかわれなくなった語彙ごい場合ばあいがあるが、しばしば世間せけん一般いっぱんにいう「死語しご」は、大衆たいしゅう認知にんちたもちつつも使用しよう頻度ひんどがわずかになった時代遅じだいおくれの語彙ごいふく[2]

日常にちじょう生活せいかつにおける意味いみ[編集へんしゅう]

日常にちじょう生活せいかつにおける廃語はいごとは、かつて使つかわれていた単語たんごやいいまわしで、いま使つかわれなくなったものをいう[3]赤紙あかがみ銃後じゅうご女子じょし挺身ていしんたいのような歴史れきしてき事象じしょう永久えいきゅう就職しゅうしょくのような時代じだいにそぐわなくなった事象じしょうのほかにも、洗濯せんたくばん日光にっこう写真しゃしんのような生活せいかつじょう道具どうぐやおもちゃでいまではかけることのなくなった物品ぶっぴんなど、言葉ことばしめすものが現在げんざいでは使つかわれなくなれば、言葉ことば使つかわれなくなってすたれていくこともある[3]。また、ある単語たんごやいいまわしがべつかたりわったために、もと単語たんご使つかわれなくなっていく場合ばあいもあり[3]たとえば写真しゃしん幻灯げんとうのようにカタカナ表記ひょうき外来がいらいえられたものや、外来がいらいでもエゲレス→(イギリス)など時代じだいとも表記ひょうきわったものは廃語はいごとなっている。一部いちぶ意味いみ廃語はいごとなることもあり、歴史れきし笠松かさまつひろしいたりによると室町むろまち時代ときよの「中央ちゅうおう」という言葉ことばには「猿楽さるがく中央ちゅうおうでおかえりになった」など「途中とちゅう」という意味いみがあったが、これは日本にっぽん中世ちゅうせいせんもん笠松かさまつにとってすら当初とうしょ意味いみ不明ふめいであったという[4]。 また、かたり意味いみするものは存在そんざいしていても対義語たいぎごたるものがほぼ消滅しょうめつした(前述ぜんじゅつとお廃語はいごになった)ために、区別くべつ不要ふようとなって廃語はいごとなった複合語ふくごうごもある。直通ちょくつう電話でんわブロードバンドマキシシングルなどがこのれいといえる。

流行りゅうこうは、ときともすたれて廃語はいごとなりやすい。ただし、まった使つかわれなくなるとはかぎらず、とく使用しようしゃ年代ねんだいによってはいま使つかわれている語句ごくもある。たとえば一部いちぶ廃語はいごした流行りゅうこう(「ナウなヤングにバカウケ」など[5])は「げる危険きけん死語しご」としてぎゃくによく認知にんちされており、その言葉ことばきていた時間じかんより廃語はいごとしてかたがれる時間じかんほうなが言葉ことばすくなくない。故意こいにそれをもちいてウケをねらうようなこともおこなわれる[5]

一般いっぱんふる時代じだい言葉ことばほどわか世代せだいあいだでの知名度ちめいどひくくなるが、例外れいがいもあり、たとえば戦時せんじなかひとし言葉ことば防空壕ぼうくうごう闇市やみいち赤紙あかがみひとし)は、1980年代ねんだいの「なめねこ[6]ひとしよりも青年せいねんそう知名度ちめいど相対そうたいてきたかい。これは戦時せんじちゅうがドラマや映画えいがとう舞台ぶたいになることがおおく、げきちゅうでこういった言葉ことば使つかわれるからである。

時代じだいあらわすものとして[編集へんしゅう]

小林こばやし信彦のぶひこは『現代げんだい<死語しご>ノート』をあらわし、そのなかで、日本にっぽん近年きんねん廃語はいごひろあつめ、論評ろんぴょうしている。かれはそれをつうじて時代じだいかたり、そのような言葉ことばについて、以下いかのようにいっている。 「時代じだい生々なまなましく実感じっかんさせるのは、当時とうじもっとおお使つかわれたこれらの言葉ことばなのだから。[7]

専門せんもん用語ようご場合ばあい[編集へんしゅう]

科学かがく分野ぶんやなどの専門せんもん用語ようごにも、類例るいれいがある。その分野ぶんや進歩しんぽともなって、概念がいねん変化へんかした、精密せいみつした、あるいは理解りかいふかまることで意味いみをなさなくなったなどにより、使つかわれなくなったかたりがある。

たとえば生物せいぶつ分類ぶんるいがくは、当初とうしょ人間にんげんちかしい生物せいぶつ主体しゅたいであったため、動物どうぶつでは脊椎動物せきついどうぶつ植物しょくぶつでは種子しゅし植物しょくぶつのみがくわしく、それ以外いがいのものはその多様たようさにかかわらずひとまとめにされた。動物どうぶつではこれは脊椎動物せきついどうぶつ植物しょくぶつでは隠花植物いんかしょくぶつという。いずれも現在げんざい生物せいぶつ学的がくてきには意味いみをなさないものとかんがえられている。ただし前者ぜんしゃはその便利べんりさから現在げんざい使つかわれているのにたいして、後者こうしゃ使つかわれる機会きかいがほとんどなくなっている。

かつてとなえられたが、あやまりであったことが判明はんめいした仮説かせつ用語ようごもある意味いみではこれにるいする存在そんざいである。それらは科学かがくなかかたられることしかなくなる。たとえばフロギストンせつ天動説てんどうせつなどはこれにたる。ぎゃくただしいことがわかっても、たりまえになってしまえば科学かがく用語ようごとしては使つかわれない。地動説ちどうせつこうなりせつはこれにちかい。

廃語はいご死語しごとされる言葉ことばれい[編集へんしゅう]

廃語はいご死語しご基準きじゅんさだまっておらず、世代せだい分野ぶんや個々人ここじん感覚かんかくによってはあてはまらない場合ばあいがある[2][1]死語しご辞典じてんるい多数たすうあるものの、おおくは雑学ざつがくほんであり、学術がくじゅつてき水準すいじゅんとはみなされていない[2]

また、流行りゅうこうおおくは時間じかんてば廃語はいごになっていることが非常ひじょうおおいので、「流行りゅうこう」も参照さんしょうのこと。

くだり[編集へんしゅう]

ぎょう[編集へんしゅう]

  • シミーズ(シミズ)- もっぱら女性じょせいよう肌着はだぎ。ワイシャツのもととなったなかふく

こう[編集へんしゅう]

くだり[編集へんしゅう]

  • ナウい - 1980年代ねんだいによく使つかわれていた。「現代げんだいてき」「流行りゅうこうっている」などを意味いみする俗語ぞくご

こう[編集へんしゅう]

くだり[編集へんしゅう]

  • メンゴ[13] - 御免ごめん(ごめん)の順序じゅんじょえたもの。まだ使つかわれているときがある。
  • モボ、モガ - 1920年代ねんだい流行はやっていた言葉ことばで、それぞれ「モダンボーイ」「モダンガール」のりゃく西洋せいようふう最先端さいせんたんファッションをした若者わかもののことであるが、30年代ねんだい不穏ふおん空気くうきのもとでかげひそめた。

くだり[編集へんしゅう]

  • ヤッピー - 元々もともとはアメリカで80年代ねんだいから使つかわれていた言葉ことば都市とし若手わかて上級じょうきゅう会社かいしゃいんのこと。日本にっぽんでは2000年代ねんだいはいまえすたれている。
  • ヤング[14] - 若者わかもの若年じゃくねんそう言葉ことば。ただし完全かんぜん廃語はいごではなく、現在げんざいでも雑誌ざっしめいなどでは数多かずおお使つかわれている。(れい : ヤングケアラーなど)

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 神永かみながあきら (2023ねん2がつ20日はつか). “日本語にほんご、どうでしょう?: だい499かい死語しご」のはなし”. ジャパンナレッジ. ネットアドバンス. 2024ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c 大谷おおや鉄平てっぺい死語しご廃語はいご研究けんきゅう意義いぎ方法ほうほう流通りゅうつうめん焦点しょうてんとした流行りゅうこう研究けんきゅうへの試論しろん」『長崎ながさきがいだい論叢ろんそうだい23ごう長崎ながさき外国がいこく大学だいがく、2019ねん、105-119ぺーじ 
  3. ^ a b c "廃語はいご". デジタル大辞泉だいじせん. コトバンクより2024ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  4. ^ 笠松かさまつほう言葉ことば中世ちゅうせい平凡社へいぼんしゃライブラリー、P57
  5. ^ a b 死語しご研究けんきゅうかい 2006, pp. 10–11
  6. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 84
  7. ^ 小林こばやし(1997)、p.v
  8. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 16
  9. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 122
  10. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 14
  11. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 32
  12. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 96
  13. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 104
  14. ^ 死語しご研究けんきゅうかい 2006, p. 58

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 大塚おおつか明子あきこ新語しんご死語しご流行りゅうこう こんな言葉ことばきてきた』集英社しゅうえいしゃ、2003ねんISBN 4-08-720222-4 
  • 死語しご研究けんきゅうかいへん へん死語しご大全たいぜん』(初版しょはんいろどりこくしゃ、2006ねん11がつ10日とおかISBN 4-88392-565-X 
  • 小林こばやし信彦のぶひこ、『現代げんだい<死語しご>ノート』、(1997)、岩波書店いわなみしょてん(岩波いわなみ新書しんしょ)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]