闇市やみいち

闇市やみいち（やみいち、英えい: black market）は、何なんらかの物価ぶっかを統制とうせいする体制たいせい下かで物資ぶっしが不足ふそくした状況じょうきょうにおける、統制とうせいに外はずれ非合法ひごうほうに設もうけられた独自どくじの市場いちば経済けいざい原理げんりで取引とりひきを行おこなう市場いちば。「ヤミ市し」と表記ひょうきする場合ばあいもある

日本にっぽんの闇市やみいち

太平洋戦争たいへいようせんそう前まえ

日本にっぽんでは1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）の関東大震災かんとうだいしんさい後ご、東京とうきょう近郊きんこうで露天ろてん市しが成立せいりつしている。

また1939年ねんに価格かかく等とう統制とうせい令れい（昭和しょうわ14年ねん勅みことのり令れい第だい703号ごう）が発はっせられ、商工しょうこう省しょう下したの価格かかく形成けいせい委員いいん会かい（中央ちゅうおう・地方ちほう）により公定こうてい価格かかくが設定せっていされるようになり、産業さんぎょう資材しざいや食品しょくひんなど生活せいかつ物資ぶっしの多おおくは、卸売おろしうり価格かかくと小売こうり価格かかくが固定こてい化かされた。 また、1940年ねんからは都市とし部ぶを中心ちゅうしんに配給はいきゅう制度せいども始はじまった。 公定こうてい価格かかくや配給はいきゅうは、製品せいひんの質しつをあまり問とわず統一とういつ化かされたため、原材料げんざいりょうの入手にゅうしゅ難なんも加くわわり品質ひんしつの劣化れっかが激はげしくなった。こうして希望きぼうする質しつ、量りょうを満みたす商品しょうひんを表立おもてだって自由じゆうに売買ばいばいできなくなったことから、必然ひつぜん的てきにヤミ相場そうばが形成けいせいされ裏うら取引とりひきが行おこなわれるようになり、闇市やみいちが形成けいせいされる余地よちが生うまれた。

戦後せんごの闇市やみいち

新橋しんばしにあったヤミ市し。ヤミ市しを仕切しきっていた関東かんとう松田組まつだぐみの名前なまえが見みえる（1946年ねん2月がつ）

屋台やたいでカストリ酒しゅを飲のむ人々ひとびと。瓶びんにはアルコール度数どすうを記しるした札さつのみで中身なかみは不明ふめい（1947年ねん）

ヤミ物資ぶっしを没収ぼっしゅうする警察官けいさつかんとMP（1949年ねん）

一般いっぱん的てきに日本にっぽんの「闇市やみいち」として有名ゆうめいなものは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん・太平洋戦争たいへいようせんそう後ごの連合れんごう国軍こくぐん占領せんりょう下かの日本にっぽんの混乱こんらん期きに成立せいりつした商業しょうぎょう形態けいたいである。なおこの種たねの市場いちばは終戦しゅうせん直後ちょくごは「闇市やみいち」と蔑称べっしょうで呼よばれたが、その後ご国民こくみん生活せいかつに必要ひつようであるとの認識にんしきから「ヤミ市し」と表現ひょうげんされるようになった。現在げんざいの日本にっぽんで単たんに闇市やみいちと言いえば普通ふつうはこれを指さすことが多おおい。

終戦しゅうせん直後ちょくごの日本にっぽんでは、兵役へいえきからの復員ふくいんや外地がいちからの引揚ひきあげなどで都市とし人口じんこうが増加ぞうかしたが、政府せいふの統制とうせい物資ぶっしがほぼ底そこを突つき、物価ぶっか統制とうせい令れい下したでの配給はいきゅう制度せいどは麻痺まひ状態じょうたいに陥おちいっており、都市とし部ぶに居住きょじゅうする人ひとびとが欲ほっする食料しょくりょうや物資ぶっしは圧倒的あっとうてきに不足ふそくしていた。食料しょくりょう難なんは深刻しんこくを極きめ1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）の東京とうきょうの上野うえの駅えき付近ふきんでの餓死がし者しゃは1日にち平均へいきん2.5人にんで、大阪おおさかでも毎月まいつき60人にん以上いじょうの栄養失調えいようしっちょうによる死亡しぼう者しゃを出だした。1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）には法律ほうりつを守まもり、配給はいきゅうのみで生活せいかつしようとした裁判官さいばんかん山口やまぐち良忠よしただが餓死がしするという事件じけんも起おきている。

ほとんど全すべての食料しょくりょうを統制とうせい物資ぶっしとした食糧しょくりょう管理かんり制度せいどの下したでは、配給はいきゅう以外いがいに食料しょくりょうを入手にゅうしゅすることは即すなわち違法いほう行為こういだったのである。ユニセフや占領せんりょう軍ぐんの主体しゅたいとなったアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく連邦れんぽう政府せいふによるララ物資ぶっしもあったものの、不足ふそくを埋うめるには到底とうてい至いたらず、配給はいきゅうの遅配ちはいが相次あいつぐ事態じたいとなっていた。このため人ひとびとは満員まんいん列車れっしゃに乗のって農村のうそんへと買出かいだしに出でかけ、米べいやサツマイモのヤミ物資ぶっしを背負せおって帰かえったが、依然いぜん都市とし部ぶの人々ひとびとの食事しょくじは雑炊ぞうすいが続つづき「米べいよこせ運動うんどう」が各地かくちで勃発ぼっぱつした。敗戦はいせん後ご間あいだもない1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）11月1日にちに「餓死がし対策たいさく国民こくみん大会たいかい」が日比谷公園ひびやこうえんで開催かいさいされている。翌年よくねんの1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）5月がつ19日にちの食糧しょくりょうメーデーには、25万まん人にんの労働ろうどう者しゃが参加さんかして「飯米はんまい獲得かくとく人民じんみん大会たいかい」が開催かいさいされた。

このような状況じょうきょうの下もとで、戦時せんじ中ちゅうの強制きょうせい疎開そかいや空襲くうしゅうによる焼跡やけあとなどの空地くうちでヤミ市しがはじまった。神戸こうべの三ノ宮さんのみや駅えき付近ふきんでは、終戦しゅうせん翌日よくじつの昭和しょうわ20年ねん（1945年ねん）8月がつ16日にちにヤミ市しが開ひらかれたという。同年どうねん8月がつ17日にち付づけ『京都きょうと新聞しんぶん』では、京都きょうと市し内うちでの闇市やみいちの出現しゅつげんが報ほうじられている。東京とうきょうでは同年どうねん8月がつ20日はつか、新宿しんじゅく駅えき東口ひがしぐちに開店かいてんした露天ろてん市しがヤミ市しの第だい1号ごうとなった。その後ご雨後うごのタケノコのように各地かくちにヤミ市しができていく。東京とうきょう都と北きた区くを例れいにすると、赤羽あかはね・十じゅう条じょう・王子おうじなど強制きょうせい疎開そかいで空地くうちになっていた駅前えきまえ広場ひろばにヤミ市しが立たった。

最初さいしょはざるに野菜やさいを載のせ、魚さかなを石油せきゆ缶かんに入いれて売うったりし、物々交換ぶつぶつこうかんのようなものだった。そのうちみかん箱ばこを置おき雨戸あまどを載のせて台だいにして、生活せいかつ用品ようひん市しのようになった。さらに一いち間あいだ四方しほうくらいの店みせになり、うどんやおでん・カストリ焼酎しょうちゅうなどを売うるようになった。食物しょくもつ屋やが大半たいはんであったが、日本にっぽん軍ぐんや連合れんごう軍ぐんからの放出ほうしゅつ品ひん、或あるいは残飯ざんぱんなども上手じょうずに繰くり回まわしされ、それらが飛とぶように売うれた。しかし食糧しょくりょう管理かんり法ほうはまだ生いきていたので、配給はいきゅう以外いがいで入手にゅうしゅした食料しょくりょうは当局とうきょくによって没収ぼっしゅうされた。

生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんも不足ふそくしており、放出ほうしゅつ品ひんや横流よこながし品ひんを販売はんばいする者ものや修理しゅうりを請うけ負おう者ものなども現あらわれた。さらに旧制きゅうせい専門せんもん学校がっこうで応用おうよう化学かがくを専攻せんこうしていた辻つじ信太郎しんたろうはサッカリンや石鹸せっけんを自作じさくして販売はんばいするなど、知識ちしきや能力のうりょくを活いかして商売しょうばいを始はじめる者ものもいた。

空地くうちの出店しゅってんは的屋てきや（テキヤ）などの組織そしきが地割じわりを取とり仕切しきるようになり、ゴザや筵むしろ、よしず張はりなどでお互たがいの境界きょうかいを区切くぎり、地面じめんに品物しなものを並ならべる店みせや、台たい上じょうに品物しなものを並ならべる店みせのほか、食事しょくじや酒さけを提供ていきょうする移動いどう式しきの屋台やたいも存在そんざいするようになった。やがて焼やけ残のこった廃材はいざいなどでバラック建だての店みせが建設けんせつされた。ただし空地くうちでも所有しょゆう者しゃがいる土地とちに建物たてものを建たてるのは不法ふほう占拠せんきょであり、大阪おおさか府ふ警察けいさつ本部ほんぶの警察けいさつ部長ぶちょうは、この不法ふほう占拠せんきょ者しゃには外国がいこく人じん(第三国だいさんごく人じん)が多おおく、中なかには地主じぬしに立たち退のきを要求ようきゅうされると暴力ぼうりょく行為こういに及およぶものや、法外ほうがいな立たち退のき料りょうを請求せいきゅうしたものもあったと証言しょうげんしている。

こうした外国がいこく人じん暴力団ぼうりょくだんの関与かんよが治安ちあんを悪化あっかさせてしまい、その後ごの在日ざいにち外国がいこく人じんに対たいする見方みかたを醸成じょうせいしたとする指摘してきもある。当時とうじ銃器じゅうきを持もたなかった警官けいかん隊たいは武装ぶそうした外国がいこく人じん暴力団ぼうりょくだんに対たいし無力むりょくであった。一方いっぽう、1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）8月がつ1日にちに大阪おおさか府ふ警察けいさつ本部ほんぶよって行おこなわれた大阪おおさか闇市やみいち封鎖ふうさなどは当とうを得えず、却かえって不足ふそくに喘あえぐ庶民しょみんを苦くるしめる結果けっかとなった。

1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）9月がつ29日にちに最高裁判所さいこうさいばんしょ大だい法廷ほうていで判決はんけつが出だされた食糧しょくりょう管理かんり法ほう違反いはん事件じけんでは、ヤミ米やみごめを購入こうにゅうし食糧しょくりょう管理かんり法ほう違反いはんとして検挙けんきょされ、配給はいきゅう食しょくのみでは健康けんこうを維持いじできないので、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい25条じょう2項目こうもくの生存せいぞん権けんに反はんし、食糧しょくりょう管理かんり法ほう自体じたい違憲いけんであるとして飛越とびこし上告じょうこくをし争あらそわれた（判決はんけつそのものは、「個々ここの国民こくみんに対たいして具体ぐたい的てき、現実げんじつ的てきにかかる義務ぎむを有ゆうするのではない」として、食糧しょくりょう管理かんり法ほうは生存せいぞん権けんに反はんしないとされた）。

同年どうねん10月がつ、主婦しゅふ連合れんごう会かいが発足ほっそくする。主婦しゅふたちはしゃもじを旗印はたじるしとし、食料しょくりょう不足ふそくの解消かいしょうを訴うったえる活動かつどうを開始かいしした。同年どうねん11月がつ1日にちから主食しゅしょく配給はいきゅうは、2合ごう7勺しゃく（380グラム）に増配ぞうはいされ、人ひとびとの食生活しょくせいかつは落おち着つきを取とり戻もどしていった。1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）4月がつ1日にちには野菜やさいの統制とうせいが撤廃てっぱいされ、6月1日にちにはビアホールが解禁かいきんになり、また東京とうきょうの飲食いんしょく店てんも再開さいかいされた。1950年ねん（昭和しょうわ25年ねん）4月がつ1日にち、水産物すいさんぶつの統制とうせいが撤廃てっぱいされた。

同年どうねん12月がつ1日にち、大蔵おおくら大臣だいじん池田いけだ勇人はやとの答弁とうべんが「貧乏人びんぼうにんは麦むぎを食くえ」と誇張こちょうして報道ほうどうされ、いまだ白米はくまいが行いき渡わたらぬ家庭かていの反感はんかんを買かうが、翌よく1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）10月がつ25日にちには麦むぎの統制とうせい撤廃てっぱいが閣議かくぎ決定けっていされた。これをもって米べい以外いがいの食品しょくひんは全すべて自由じゆう販売はんばいとなり、ヤミ物資ぶっしではなくなった。同年どうねん12月がつ、東京とうきょう都内とないの常設じょうせつ露店ろてんは廃止はいしとなり、いわゆるヤミ市しは姿すがたを消けした。

この常設じょうせつ露店ろてんは明治めいじ以降いこうの夜店よみせの露店ろてんも含ふくまれる。公道こうどう上じょうで露店ろてんを営業えいぎょうする商人しょうにんを業界ぎょうかい内部ないぶで平日へいじつ（ヒラビ）と呼よび、的屋てきやは全国ぜんこくにあるタカマチと呼よばれる祭禮さいれいを巡めぐる旅人たびびとの組織そしきの区別くべつがあった。戦後せんご生うまれたヤミ市しに潜在せんざい的てき失業しつぎょう者しゃの露天商ろてんしょう流入りゅうにゅうが激はげしくなり、警察けいさつは規則きそくを制定せいていする一方いっぽうで自主じしゅ的てきに統制とうせいできるように東京とうきょう都と露店ろてん商しょう同業どうぎょう組合くみあいを作つくらせた。

警察けいさつ署しょの管区かんくごとに組合くみあい支部しぶが作つくられ、ヒラビは、的屋てきやとともに強制きょうせい的てきに組合くみあいに組くみ込こまれた。組合くみあい本部ほんぶ及および各かく支部しぶの幹部かんぶに的屋てきやの親分おやぶんが就任しゅうにんしたが、弊害へいがいとしてボスが台頭たいとう。警察けいさつもこれに対処たいしょするため露店ろてん営業えいぎょう取締とりしまり規則きそくを作つくり、一方いっぽうで1947年ねん以降いこうはボスを取とり締しまった。

やがて、物流ぶつりゅうの混乱こんらんが収おさまりつつあると闇市やみいちも衰退すいたい。警察けいさつは経済けいざい活動かつどうへの取締とりしまりをやめ、交通こうつう取締とりしまりに一本いっぽん化か。常設じょうせつ露店ろてんももとに戻もどるはずだったが、連合れんごう軍ぐん（情報じょうほう部ぶの公安こうあん課か）は交通こうつうの邪魔じゃまになると一斉いっせいの露店ろてん廃止はいしを、都知事とちじ、警視総監けいしそうかん、消防しょうぼう総監そうかん他たに勧告かんこくという形かたちの命令めいれいを出だした。

原はら文兵衛ぶんべえは当時とうじ、警視庁けいしちょうの交通こうつう警備けいびのトップだったが歩道ほどうの露店ろてんが自動車じどうしゃの邪魔じゃまにはならないと抗議こうぎした。原はらは後のちに回顧かいこ録ろくの中なかで連合れんごう軍ぐんが銀座ぎんざで自動車じどうしゃを駐車ちゅうしゃする際さいに露店ろてんが邪魔じゃまだからやらせたと暴露ばくろしている。

常設じょうせつ露店ろてんの廃止はいし以降いこうも立たち飲のみ屋やなどがバラック店舗てんぽで商売しょうばいを継続けいぞくする例れいもあり、特とくに有楽町ゆうらくちょうの東口ひがしぐち駅前えきまえにある老朽ろうきゅう化かした東京とうきょう交通こうつう会館かいかんの周辺しゅうへんにはた立たち飲のみ屋やや寿司すし屋やなど闇市やみいち時代じだいから続つづく木造もくぞう店舗てんぽが密集みっしゅうした「すしや横丁よこちょう」は、近辺きんぺんにある新聞しんぶん社しゃ（朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、毎日新聞社まいにちしんぶんしゃ、読売新聞社よみうりしんぶんしゃなど）の記者きしゃが情報じょうほう交換こうかんのために集あつまるなど昼夜ちゅうやを問とわず賑にぎわっていた。1964年ねん東京とうきょうオリンピックの開催かいさいに際さいし、「すしや横丁よこちょう」などが美観びかんや防災ぼうさいの点てんから好このましくないと判断はんだんされ再さい開発かいはつが行おこなわれた。

検閲けんえつ

連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶ(GHQ)はプレスコードなどを発はっして闇市やみいちの現状げんじょうを報道ほうどう禁止きんし・検閲けんえつを実行じっこうし、闇市やみいちに関かんする事柄ことがらについても対象たいしょうに加くわえ言論げんろんを統制とうせいした。

「プレスコード」および「日本にっぽんにおける検閲けんえつ」を参照さんしょう

主おもな闇市やみいち

闇市やみいちは日本にっぽん各地かくちの都市とし部ぶに同どう時期じきに発生はっせいし、東京とうきょうでは新宿しんじゅく東口ひがしぐちから新宿しんじゅく通どおりに成立せいりつしていた箇所かしょが知しられる。現在げんざいでは闇市やみいちの多おおくは、商店しょうてん街がいや繁華はんか街がいとなっており、かつての面影おもかげはない。

一部いちぶの地域ちいきの裏通うらどおりにかつての闇市やみいちを思おもわせる一角いっかくが残のこっていることがあり、例たとえば、新宿しんじゅく西口にしぐちの思おもい出で横丁よこちょう、歌舞伎町かぶきちょうの新宿しんじゅくゴールデン街がい、中野なかのの中野なかのサンモール、上野うえののアメヤ横丁よこちょう、吉祥寺きちじょうじのハモニカ横丁よこちょう、大阪おおさかの鶴橋つるはし商店しょうてん街がい、大阪おおさかの五ご階かい百貨店ひゃっかてん、神戸こうべの元町高架通もとまちこうかどおり商店しょうてん街がいなどが知しられている。 かつては下北沢しもきたざわ駅えきに闇市やみいちの面影おもかげを残のこす駅前えきまえ食品しょくひん市場いちばがあったが、駅えきの地下ちか化かに伴ともなう再さい開発かいはつにより消滅しょうめつした。

北海道ほっかいどう帯広おびひろ市しに存在そんざいしていた闇市やみいちとしては新興しんこうマーケット、満蒙まもうマーケット（のちに合法ごうほう化かされ、→満蒙まもう第だい1相互そうご会館かいかん→ハトヤ百貨店ひゃっかてん）、電信でんしん通どおりマーケットなどがある。

かつては、秋葉原あきはばら、新橋しんばし、池袋いけぶくろ、溝口みぞぐち、船橋ふなばし、関西かんさいでは梅田うめだ、阿倍野あべの・天王寺てんのうじ駅えき、三宮さんのみやなど、鉄道てつどう駅えきを中心ちゅうしんに大だい規模きぼな闇市やみいちがあった。

関連かんれんする作品さくひん

映画えいが

• 『醉よいどれ天使てんし』(1948年ねん、黒澤くろさわ明あきら監督かんとく、舞台ぶたいとなる闇市やみいちは大おおがかりなオープンセット)
• 『肉体にくたいの門もん』(1948年ねん、東宝とうほう、監督かんとくマキノ正博まさひろ)
• 『野良犬のらいぬ』(1949年ねん、黒澤くろさわ明あきら監督かんとく、実物じつぶつの闇市やみいちでの撮影さつえいしたシーンがある)
• 『浮雲うきぐも』(1955年ねん、成瀬なるせ巳喜男みきお監督かんとく、リアルな闇市やみいちはセット)
• 『新しん悪名あくめい』(1962年ねん、森もり一生かずお監督かんとく、大映だいえい)
• 『続ぞく・拝啓はいけい天皇陛下てんのうへいか様さま』（1964年ねん）
• 『肉体にくたいの門もん』(1964年ねん、監督かんとく鈴木すずき清きよし順じゅん)
• 『男おとこの顔かおは履歴りれき書しょ』（1966年ねん）
• 『あゝ声こえなき友とも』(1972年ねん4月がつ29日にち公開こうかい。松竹しょうちく)
• 『仁義じんぎなき戦たたかい』(1973年ねん、監督かんとく深作ふかさく欣二きんじ)
• 『山口組やまぐちぐみ三さん代目だいめ』（1973年ねん、東映とうえい、高倉たかくら健けん(田岡たおか一雄かずおをモデルにした映画えいが）
• 『三さん代目だいめ襲名しゅうめい』1974年ねん、東映とうえい 高倉たかくら健けん
• 『人間にんげんの証明しょうめい』(1977年ねん、角川かどかわ春樹はるき事務所じむしょ製作せいさく)
• 『肉体にくたいの門もん』(1977年ねん、日活にっかつロマンポルノ、監督かんとく西村にしむら昭五郎しょうごろう)
• 『肉体にくたいの門もん』(1988年ねん、東映とうえい、監督かんとく五ご社しゃ英雄えいゆう)
• 『瀬戸内せとうちムーンライト・セレナーデ』1997年ねん、篠田しのだ正浩まさひろ監督かんとく
• 『地下鉄ちかてつに乗のって』(2006年ねん、篠原しのはら哲雄てつお監督かんとく)
• 『この世界せかいの片隅かたすみに (映画えいが)』（2016年ねん、東京とうきょうテアトル配給はいきゅう、片かた渕ふち須直監督かんとく・脚本きゃくほん）-こうの史代ふみよ著ちょの同名どうめい漫画まんがを原作げんさくとする長編ちょうへんアニメーション映画えいが。戦中せんちゅう・戦後せんごの呉ごの闇市やみいちが登場とうじょうする。戦中せんちゅうの闇市やみいちの描写びょうしゃでは、クライマックスの太極たいきょく旗はたに対たいする扱こいが原作げんさくから改変かいへんされたことに関連かんれんしてモブキャラクターが台湾たいわん米べいに言及げんきゅうする原作げんさくにない台詞せりふが追加ついかされている。

テレビドラマ

• 肉体にくたいの門もん（2008年ねんテレビ朝日てれびあさひ系列けいれつ）
• NHK連続れんぞくテレビ小説しょうせつ
  • 梅うめちゃん先生せんせい（2012年ねん）
  • ごちそうさん（2013年ねん）主人公しゅじんこうが戦後せんごの大阪おおさかの闇市やみいちで飲食いんしょく業ぎょうを始はじめる。
  • とと姉ねえちゃん（2016年ねん）主人公しゅじんこう姉妹しまいが戦後せんごの東京とうきょうの闇市やみいちで、自みずからが出版しゅっぱんした雑誌ざっし販売はんばいを始はじめる。
  • べっぴんさん（2016年ねん）主人公しゅじんこうの姉あね夫婦ふうふが戦後せんごの梅田うめだの闇市やみいちで衣類いるい販売はんばい店てんを始はじめ、悪戦苦闘あくせんくとうする様子ようすが描えがかれている。
  • まんぷく （2018年ねん）
  • エール（2020年ねん）主人公しゅじんこうの義兄ぎけいが、闇市やみいちで戦災せんさい孤児こじと知しり合あったり、闇市やみいちのラーメン店てんに再さい就職しゅうしょくする様子ようすが描えがかれている。

漫画まんが

• 『空手からてバカ一いち代だい』梶原かじはら一いち騎き原作げんさく・つのだじろう画が
• 『おとこ道どう』梶原かじはら一いち騎き原作げんさく・矢口やぐち高雄たかお画が
• 『暴力ぼうりょく大将たいしょう』（どおくまん原作げんさくおよび画が、秋田あきた書店しょてん、連載れんさい1975-1985年ねん）
• 『はだしのゲン』（戦後せんごの広島ひろしまの闇市やみいちが登場とうじょうする）
• 『この世界せかいの片隅かたすみに』（こうの史代ふみよ著しる、双葉社ふたばしゃ、連載れんさい2007-2009年ねん、単行本たんこうぼん2008-2009年ねん）-戦中せんちゅう・戦後せんごの呉ごの闇市やみいちが登場とうじょうする。戦中せんちゅう（昭和しょうわ19年ねん）の闇市やみいちについて、砂糖さとう一いち斤きん20円えん（配給はいきゅうの60倍ばい、主人公しゅじんこう一家いっかの当月とうげつの生活せいかつ費ひとへそくりを合あわせて25円えん）という法外ほうがいな価格かかくでの取引とりひきが描えがかれている。戦後せんごの闇市やみいちについては、主人公しゅじんこうらが紙屑かみくずの入はいった進駐軍しんちゅうぐんの残飯ざんぱん雑炊ぞうすいを食しょくし「uma-（美味おいしい）」と漏もらす描写びょうしゃがある。

DVD

• 『映像えいぞうで綴つづる昭和しょうわの流行りゅうこう歌か』(米べい軍ぐんの記録きろくしたカラー映像えいぞうが使つかわれている。)

博物館はくぶつかん

豊島としま区立くりつ郷土きょうど資料しりょう館かんや、江戸えど東京とうきょう博物館はくぶつかんの常設じょうせつ展示てんじに闇市やみいちのコーナーがある。

海外かいがいの闇市やみいち

スピーブの再現さいげん例れい

ロシア・ソビエト連邦れんぽう

ロシア革命かくめいとそれに伴ともなうロシア内戦ないせんの際さいの戦時せんじ共産きょうさん主義しゅぎの時代じだいでは、工業こうぎょうと農業のうぎょうの生産せいさんシステムが機能きのう不全ふぜんとなり、商品しょうひんは闇やみ市場いちばで取引とりひきされた。

ソビエト連邦れんぽう時代じだいの共産きょうさん圏けんで禁制きんせい品ひんであった西側にしがわの物品ぶっぴんを扱あつかう密売みつばい人じんをファルツォフカ(ロシア語ご: Фарцовка)、闇屋やみやをファルツォフシクと呼よんだ。これらの人々ひとびとは、若者わかものやガイド、通訳つうやく、タクシー運転うんてん手しゅ、売春ばいしゅん婦ふなど外国がいこく人じん観光かんこう客きゃくと接触せっしょくしやすい者ものが行おこなっていた。当時とうじは、レコード、本ほん、既製きせい品ひん以外いがいの服ふく（デニムなど）などが禁制きんせい品ひんで、西側にしがわ製品せいひんに触ふれようとしていた外国がいこくかぶれのサブカルチャー集団しゅうだんスティリャーギ（個人こじんを指さす場合ばあいは、スティリャーガ）やヒッピー集団しゅうだんのシステマなどは、様々さまざまな方法ほうほうで西側にしがわの製品せいひんを入手にゅうしゅした。当然とうぜん当局とうきょくはこれらに対たいして逮捕たいほや刑罰けいばつを行おこなった。1961年ねんには、ジーンズの闇取引やみとりひきを行おこなったロコトフとファイビシェンコ事件じけんでは死刑しけいを宣告せんこくされた。

ソビエト連邦れんぽうの崩壊ほうかい後ごのロシアでも闇市やみいちは興隆こうりゅうした。ロシア財政ざいせい危機ききも参照さんしょう。

フランス

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうの闇市やみいちを扱あつかった作品さくひんとして、1956年ねんに公開こうかいされた映画えいが『パリ横断おうだん』、1952年ねんに出版しゅっぱんされアンテラリエ賞しょうを受賞じゅしょうした闇市やみいちで闇やみ成金なりきんとなった人物じんぶつを扱あつかった『Au bon beurre』などがある。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅう・戦後せんご、イギリスではスピーブという闇屋やみやが出現しゅつげんした。同様どうように戦時せんじ・戦後せんごに配給はいきゅうと価格かかく統制とうせいを行おこなった多おおくの国くにで、闇市やみいちがみられた。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごのドイツでは、敗戦はいせんでライヒスマルクが紙切かみきれとなり、入手にゅうしゅが容易よういなアメリカ・タバコを通貨つうかとしたZigarettenwährung（タバコ通貨つうか）を用もちいた闇市やみいちが登場とうじょうした。

北朝鮮きたちょうせん

朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこくには『チャンマダン』という闇市やみいちがある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『戦後せんご社会しゃかいの実態じったい分析ぶんせき』大河内おおこうち一男かずお 編へん、日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ、1950年ねんに収録しゅうろくされた「戦後せんごにおける露店ろてん市場いちば」(東京大学とうきょうだいがくの学生がくせいで大河内おおこうち演習えんしゅうの大塚おおつか斌あきら、高橋たかはし洸こう、浜はま誠まことが調査ちょうさを担当たんとうした。なお、学者がくしゃへの道みちを辞やめ、大塚製靴おおつかせいかの三さん代目だいめ社長しゃちょうになった大塚おおつかが編纂へんさんさせた社しゃ史しは名著めいちょとして名高なだかい)。
• ロバート・ホワイティング『東京とうきょうアンダーワールド』(2000年ねん、角川書店かどかわしょてん)
• 藤木ふじきTDC, ブラボー川上かわかみ『東京とうきょう裏うら路地ろじ<懐ふところ>食しょく紀行きこう : まぼろし闇市やみいちをゆく』ミリオン出版しゅっぱん, 大洋図書たいようとしょ(発売はつばい)、2002年ねん。ISBN 4813000916。 NCID BA85277742。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:20394457。https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003997120-00。 
• 水内みずうち俊雄としお「スラムの形成けいせいとクリアランスからみた大阪おおさか市しの戦前せんぜん・戦後せんご」『立命館大学りつめいかんだいがく人文じんぶん科学かがく研究所けんきゅうじょ紀要きよう』第だい83巻かん、立命館大学りつめいかんだいがく人文じんぶん科学かがく研究所けんきゅうじょ、2004年ねん2月がつ、23-70頁ぺーじ、doi:10.34382/00013774、hdl:10367/00013774、ISSN 0287-3303。 
• 村むら上じょうしほり, 梅宮うめみや弘光ひろみつ「戦後せんご神戸こうべにおけるヤミ市しの形成けいせいと変容へんよう : 「三宮さんのみや自由じゆう市場いちば」の事例じれいを中心ちゅうしんに」『神戸大学こうべだいがく大学院だいがくいん人間にんげん発達はったつ環境かんきょう学がく研究けんきゅう科か研究けんきゅう紀要きよう』第だい4巻かん第だい2号ごう、神戸大学こうべだいがく大学院だいがくいん人間にんげん発達はったつ環境かんきょう学がく研究けんきゅう科か、2011年ねん3月がつ、69-81頁ぺーじ、doi:10.24546/81002985、hdl:20.500.14094/81002985、ISSN 18822851。 

関連かんれん項目こうもく

• ダークウェブ
• 輸入ゆにゅうしてはならない貨物かもつ、ワシントン条約じょうやく
• 私法しほう
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• 非公式ひこうしき経済けいざい
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外部がいぶリンク

• 神戸こうべの闇市やみいち 埋うずもれた記憶きおくに光ひかり 神戸大こうべだい院生いんせいが研究けんきゅう 神戸こうべ新聞しんぶん2012年ねん12月25日にち夕刊ゆうかん