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野良犬のらいぬ (1949年ねんの映画えいが)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
野良犬のらいぬ
監督かんとく 黒澤くろさわ明あきら
脚本きゃくほん 黒澤くろさわ明あきら
菊きく島しま隆三りゅうぞう
製作せいさく 本木もとぎ荘そう二郎じろう
出演しゅつえん者しゃ 三船みふね敏郎としお
志村しむら喬たかし
淡路あわじ恵子けいこ
木村きむら功いさお
音楽おんがく 早坂はやさか文雄ふみお
撮影さつえい 中井なかい朝一あさいち
編集へんしゅう 後藤ごとう敏男としお
製作せいさく会社かいしゃ 新しん東宝とうほう
映画えいが芸術げいじゅつ協会きょうかい
配給はいきゅう 東宝とうほう
公開こうかい 日本の旗 1949年ねん10月17日にち
上映じょうえい時間じかん 122分ふん
製作せいさく国こく 日本の旗 日本にっぽん
言語げんご 日本語にほんご
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『野良犬のらいぬ』（のらいぬ）は、1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）10月17日にち公開こうかいの日本にっぽん映画えいがである。新しん東宝とうほう・映画えいが芸術げいじゅつ協会きょうかい製作せいさく、東宝とうほう配給はいきゅう。監督かんとくは黒澤くろさわ明あきら、主演しゅえんは三船みふね敏郎としお、志村しむら喬たかし。モノクロ、スタンダード、122分ふん。

終戦しゅうせん直後ちょくごの東京とうきょうを舞台ぶたいに、拳銃けんじゅうを盗ぬすまれた若わかい刑事けいじがベテラン刑事けいじと共ともに犯人はんにんを追おい求もとめる姿すがたを描えがいた、黒澤くろさわ監督かんとく初はつの犯罪はんざいサスペンス映画えいがである。東宝とうほう争議そうぎの影響えいきょうで東宝とうほうを離はなれていた黒澤くろさわが他社たしゃで撮とった作品さくひんの1本ほんである。第だい23回かいキネマ旬報きねまじゅんぽうベスト・テン第だい3位い。昭和しょうわ24年度ねんど芸術げいじゅつ祭さい賞しょう。

あらすじ

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ハルミの自宅じたくのシーン

ある猛暑もうしょの日ひ、村上むらかみ刑事けいじは射撃しゃげき訓練くんれんからの帰途きとのバス中ちゅうで隣となりに立たった女性じょせいにコルト式しき自動じどう拳銃けんじゅうを掏られ、追おうも見失みうしなってしまう。拳銃けんじゅうの中なかには7発はつの銃弾じゅうだんが残のこっている。村上むらかみは上司じょうしの中島なかじま警部けいぶの助言じょげんで、スリ係かかりの市川いちかわ刑事けいじに相談そうだんし、鑑識かんしき手口てぐちカードを調しらべるうちに女おんなスリのお銀ぎんに目星めぼしを付つける。村上むらかみはお銀ぎんのもとを訪たずねるも、彼女かのじょはシラを切きるばかり。そこで村上むらかみは彼女かのじょを執拗しつように追おい回まわし、拳銃けんじゅうがもう手元てもとに無ないなら、せめてヒントだけでもと懇願こんがんを続つづけた。とうとう観念かんねんしたお銀ぎんは、場末ばすえの盛さかり場ばで食くい詰つめた風体ふうたいでうろついているとピストル屋やが袖そでを引ひくというヒントを与あたえる。

ピストルを探さがすため復員ふくいん兵へい姿すがたで闇市やみいちを歩あるく村上むらかみは、ついにピストルの闇取引やみとりひきの現場げんばを突つき止とめ、ピストル屋やのヒモの女おんなを確保かくほするが、先さきに女おんなを捕つかまえたためピストルを渡わたしに来きた売人ばいにんの男おとこに逃にげられてしまう。そこへ淀橋よどばしで強盗ごうとう傷害しょうがい事件じけんが発生はっせいし、村上むらかみのコルトが使つかわれたと分わかった。責任せきにんを感かんじた村上むらかみは辞表じひょうを提出ていしゅつするが、中島なかじま警部けいぶはそれを引ひき裂さき「君きみの不運ふうんは君きみのチャンスだ」と諭さとす。村上むらかみは淀橋よどばし署しょのベテラン刑事けいじ佐藤さとうと組くみ捜査そうさを行おこなうことになった。

村上むらかみと佐藤さとうはピストル屋やのヒモの女おんなを聴取ちょうしゅして、拳銃けんじゅうの闇やみブローカー・本多ほんだの存在そんざいを突つき止とめる。本多ほんだが野球やきゅう好すきだと知しり、捜査そうさ陣じんは巨人きょじん対たい南海なんかい戦せんが行おこなわれる後楽園こうらくえん球場きゅうじょうに向むかう。アイスキャンディー売うりの男おとこが本多ほんだを発見はっけんし、二人ふたりは場内じょうない放送ほうそうで本多ほんだを正面しょうめん玄関げんかんに呼よび出だして逮捕たいほする。本多ほんだが保証ほしょうとして取とり上あげていた米穀べいこく配給はいきゅう通帳つうちょうからピストルは遊佐ゆさという男おとこの手元てもとにあることが判明はんめい。二人ふたりは早速さっそく遊ゆう佐さの実家じっかの桶屋おけやへ向むかって彼かれの姉あねに会あい、遊佐ゆさが復員ふくいんのときに帰かえりの汽車きしゃで全ぜん財産ざいさんのリュックを盗ぬすまれて、それが原因げんいんで道みちを踏ふみ外はずしたことを知しる。また、実家じっかの部屋へやから発見はっけんした便箋びんせんより、恋人こいびとのハルミの存在そんざいをつかむ。二人ふたりはダンスホールを訪たずね、そこで踊子おどりこをしているハルミを訪たずねるが、彼女かのじょは「リュックを盗ぬすむやつが悪わるいのよ」と口くちを割わらない。しかし村上むらかみはハルミに、自分じぶんも遊ゆう佐さと同おなじく復員ふくいんの際さいにリュックを盗ぬすまれた体験たいけんがあると告つげる。

ついに村上むらかみのコルトで強盗ごうとう殺人さつじん事件じけんが発生はっせい、夫おっとが出張しゅっちょうした留守るす宅たくの妻つまが犠牲ぎせいとなった。帰宅きたくして死体したいを発見はっけんし、慟哭どうこくする夫おっとに、捜査そうさ員いんたちはかける言葉ことばを失うしない、犯人はんにんへの憤いきどおりを募つのらせる。まだピストルには弾たまが5発はつ残のこっている。二人ふたりはハルミのアパートへ向むかい、村上むらかみはハルミが遊ゆう佐さについて白状はくじょうするのを待まつ。佐藤さとうは部屋へやにあった「あづまホテル」のマッチを手掛てがかりに単独たんどくで遊ゆう佐さを追おい、彼かれが宿泊しゅくはくする弥生やよいホテルに辿たどり着つく。佐藤さとうはホテルのロビーからハルミ宅たくにいる村上むらかみに電話でんわをかけようとするが、捜査そうさの手てが伸のびてきたことに気付きづいた遊佐ゆさの凶弾きょうだんに倒たおれてしまう。ハルミと村上むらかみは受話器じゅわき越ごしに2発はつの銃声じゅうせいを聞きき、村上むらかみは絶叫ぜっきょうする。遊ゆう佐さはそのまま雨あめが降ふる中なかを逃走とうそうした。

翌朝よくあさ、警察けいさつ病院びょういんで佐藤さとうの回復かいふくを待まつ村上むらかみの元もとにハルミがやって来きて、遊佐ゆさが午前ごぜん6時じに大原おおはら駅えき（架空かくうの駅えき）[注釈ちゅうしゃく 1]で待まっていることを告つげる。村上むらかみは駅えきへ駆かけ付つけ、待合室まちあいしつの人々ひとびとの中なかから泥どろだらけの靴くつを履はいた白しろい服ふくの男おとこを探さがし出だす。村上むらかみと目めが合あった遊佐ゆさは逃亡とうぼう。それを追おいかけ村上むらかみは、静しずかな雑木林ぞうきばやしの中なかで拳銃けんじゅうを構かまえた遊佐ゆさと対峙たいじする。1発はつの銃弾じゅうだんが村上むらかみの左腕さわんを射抜いぬき、残のこりの2発はつは外はずれ、弾丸だんがんはなくなる。激はげしい格闘かくとうの末すえ、村上むらかみは手錠てじょうをかけた遊佐ゆさとともにその場ばに倒たおれこむ。そのそばを幼稚ようち園児えんじたちが「蝶々ちょうちょう」を歌うたいながら通かよっていく。遊ゆう佐さはその歌声うたごえのなか慟哭どうこく、悶絶もんぜつする。

数日すうじつ後ご、病室びょうしつの佐藤さとうを訪おとずれた村上むらかみは、遊佐ゆさの行状ぎょうじょうを他人事たにんごととは思おもえないと述懐じゅっかいする。それに対たいして佐藤さとうは、この町まちでは犯罪はんざいは毎日まいにちのように起おきており、遊佐ゆさのことなどいずれ忘わすれるだろうと諭さとす。

スタッフ

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キャスト

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三船みふね敏郎としお、志村しむら喬たかし、淡路あわじ惠子けいこ

※以下いかはノンクレジット

作品さくひん解説かいせつ

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制作せいさくを記念きねんして撮影さつえいされた写真しゃしん。左ひだりから三船みふね敏郎としお、志村しむら喬たかし、黒澤くろさわ明あきら、菊きく島しま隆三りゅうぞう、本木もとぎ荘そう二郎じろう。

日本にっぽん映画えいがにおいて、ドキュメンタリータッチで描えがく刑事けいじものという新あたらしいジャンルを開拓かいたくし、画期的かっきてきな作品さくひんとして、その後ごの同系どうけい作品さくひんに影響えいきょうを与あたえた[5][6]。また『醉よいどれ天使てんし』同様どうよう、戦後せんごの街並まちなみや風俗ふうぞくとその中なかで生いきている諸々もろもろの登場とうじょう人物じんぶつが生いき生いきと描写びょうしゃされている。当時とうじ、黒澤くろさわは東宝とうほう争議そうぎの余波よはで東宝とうほうでの映画えいが製作せいさくを断念だんねんし、師しの山本やまもと嘉次郎かじろうや本木もとぎ荘そう二郎じろうらと映画えいが芸術げいじゅつ協会きょうかいに参加さんかして他社たしゃで映画えいがを撮とっていた。本ほん作さくは大映だいえいで撮とった『静しずかなる決闘けっとう』に続つづいて他社たしゃで撮とった2本ほん目めの作品さくひんで、映画えいが芸術げいじゅつ協会きょうかいと新しん東宝とうほうの提携ていけいにより製作せいさくした。

探偵たんてい小説しょうせつの愛読あいどく者しゃでもあった黒澤くろさわは、ジョルジュ・シムノンを意識いしきしたサスペンス映画えいがを作つくろうと企画きかくし、新人しんじんの脚本きゃくほん家か菊きく島しま隆三りゅうぞうを共とも作さくに抜擢ばってきし、彼かれを警視庁けいしちょうに通かよわせて題材だいざいを集あつめさせた。そこで捜査そうさ一いち課かの係長かかりちょうから、警官けいかんが拳銃けんじゅうを紛失ふんしつすることがあるというエピソードを入手にゅうしゅ、それを採用さいようして熱海あたみで脚本きゃくほんを作つくり上あげた[7][8]。

撮影さつえいのほとんどは貸かしスタジオの太ふとし泉いずみスタジオで行おこなわれた[9]。予算よさんが少すくない中なか、警察けいさつの鑑識かんしき課かからどじょう屋や、ホテルやヒロインのアパートまで、オープンセットを含ふくめて実じつに30数すう杯はいのセットが造つくられた[9][10]。警察けいさつの鑑識かんしき課かのセットは実際じっさいに警察けいさつ署しょを見学けんがくし、引ひき出だしのネームプレート一ひとつに至いたるまで忠実ちゅうじつに再現さいげんされた[10]。美術びじゅつ助手じょしゅを務つとめた村木むらき与四郎よしろうによると、どじょう屋やのシーンでは生簀いけすに本物ほんもののどじょうを入いれたが、画面がめんには全まったく映うつらなかったと、語かたっている[11]。

本ほん作さくは淡路あわじ恵子けいこの映画えいがデビュー作さくである。淡路あわじは当時とうじ松竹しょうちく歌劇かげき団だんの研究けんきゅう生せいであり、本ほん作さくに出演しゅつえんした時ときはまだ16歳さいだった。並木なみき役やくの最終さいしゅう候補こうほでは淡路あわじともう一人ひとりが残のこったが、黒澤くろさわが「淡路あわじ君くんの方ほうが意地いじっ張ぱりで面白おもしろそうだ」と決きめたという[12]。また、後ごの黒澤くろさわ映画えいがの常連じょうれん俳優はいゆうである千秋ちあき実みのるの黒澤くろさわ作品さくひん初はつ出演しゅつえん作さくでもある。当初とうしょの配役はいやくでは、並木なみきハルミ役やくに桂木かつらぎ洋子ようこ、中島なかじま警部けいぶ役やくに小沢おざわ栄さかえ（当時とうじの芸名げいめい、後ごの小沢おざわ栄太郎えいたろう）、スリのお銀ぎん役やくに沢村さわむら貞子さだこ、桶屋おけやの女房にょうぼう役やくに赤木あかぎ蘭子らんこだった[13]。

復員ふくいん服ふく姿すがたの村上むらかみ刑事けいじが闇市やみいちを歩あるく場面ばめんでは、助監督じょかんとくの本多ほんだ猪いの四郎しろうと撮影さつえい助手じょしゅの山田やまだ一夫かずおの2人ふたりが上野うえのの本物ほんものの闇市やみいちで隠かくし撮どりを敢行かんこうし、本多ほんだは三船みふね敏郎としおのスタンドインを務つとめ[14]、山田やまだがアイモを箱はこの包つつみに入いれて撮影さつえいした[15]。黒澤くろさわは後のちに「この作品さくひんで戦後せんご風俗ふうぞくがよく描えがけていると言いわれるが、それは本多ほんだに負おうところが大おおきい」と語かたり、本多ほんだを称賛しょうさんしている[16]。

後楽園こうらくえん球場きゅうじょうで刑事けいじ2人にんが拳銃けんじゅうの闇やみブローカーを捕つかまえるシーンでは、実際じっさいの巨人きょじん対たい南海なんかいの試合しあい映像えいぞうが使つかわれており、川上かわかみ哲治てつじ・青田あおた昇のぼる・千葉ちば茂しげる・武たけ末まつ悉昌ら当時とうじの選手せんしゅの姿すがたも見みられる。『全集ぜんしゅう 黒澤くろさわ明あきら』（岩波書店いわなみしょてん）の第だい2巻かんに収録しゅうろくされたシナリオでは、この試合しあいは巨人きょじん対たい阪神はんしん戦せんとなっており、別当べっとうの名前なまえが見みられる。また、「ラッキーセブンでございます」の場内じょうない放送ほうそうに合あわせて観客かんきゃくが一斉いっせいに立たち上あがり、セブンス・イニング・ストレッチをする様子ようすも見みられる[17]。

緊迫きんぱくしたシーンにあえて穏おだやかで明あかるい曲きょくを流ながし、わざと音おとと映像えいぞうを調和ちょうわさせない〈音おとと画がの対位法たいいほう〉[18]という手法しゅほうが本ほん作さくでも用もちいられている。劇げき中ちゅうの使用しよう例れいをみると、佐藤さとう刑事けいじがホテルで撃うたれるシーンでは、ホテルのラジオから「ラ・パロマ[注釈ちゅうしゃく 2]」が流ながれ、ラストの村上むらかみと遊佐ゆさが対決たいけつする緊迫きんぱく感かんあるシーンでは、主婦しゅふが弾ひく穏おだやかなクーラウのピアノ曲きょくソナチネ第だい１番ばんハ長調ちょうちょう作品さくひん20−1と、最後さいごに子供こども達たちが歌うたう「蝶々ちょうちょう」が流ながれる。なお、本ほん作さくでは既成きせい曲きょくが多用たようされており、村上むらかみが復員ふくいん兵へいに変装へんそうし闇市やみいちでピストル屋やを探さがすシーンでは夜来やらい香こう、東京とうきょうブギウギ、ブンガワンソロなどの流行りゅうこう歌かが使つかわれ、根負こんまけした女おんなスリが情報じょうほう提供ていきょうするシーンではヨシフ・イヴァノヴィチのドナウ川がわのさざなみがハーモニカで演奏えんそうされる。


評価ひょうか

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受賞じゅしょう

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ランキング

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  • 1989年ねん：「大だいアンケートによる日本にっぽん映画えいがベスト150」（文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう発表はっぴょう）第だい62位い
  • 1995年ねん：「日本にっぽん映画えいが オールタイム・ベストテン」（キネマ旬報きねまじゅんぽう発表はっぴょう）第だい52位い
  • 1999年ねん：「オールタイム・ベスト100・日本にっぽん映画えいが編へん」（キネマ旬報きねまじゅんぽう発表はっぴょう）第だい38位い[19]
  • 2009年ねん：「オールタイム・ベスト映画えいが遺産いさん200 日本にっぽん映画えいが篇へん」（キネマ旬報きねまじゅんぽう発表はっぴょう）第だい10位い[20]

その他た

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  • タイトルバックの野良犬のらいぬが喘あえぐシーンは、野犬やけん狩かりで捕つかまえた犬いぬを貰もらい受うけ、撮影さつえい所しょの周まわりを走はしらせた後のちで撮影さつえいしたものである。しかし、アメリカの動物どうぶつ愛護あいご協会きょうかいの婦人ふじんから「正常せいじょうな犬いぬに狂犬病きょうけんびょうの注射ちゅうしゃをした」と告発こくはつされた。供述きょうじゅつ書しょを出だしてこの出来事できごとは幕まくとなったが、黒澤くろさわは「戦争せんそうに負まけた悲哀ひあいを感かんじた」と語かたっている[8]。
  • 黒澤くろさわは、本ほん作さくを撮とり終おえた時とき、俳優はいゆうやスタッフと別わかれるのがつらかったと、自伝じでん『蝦蟇がまの油あぶら』に記しるしている[21]。
  • 村上むらかみ刑事けいじが銃弾じゅうだんの線条せんじょう痕こんを照合しょうごうするため鑑識かんしきを訪おとずれる場面ばめんでは、鑑識かんしきの担当たんとう者しゃが別べつの拳銃けんじゅうを砂すな箱ばこの中なかに撃うち込こんでいるが、ここでは本物ほんものの九きゅう四よん式しき拳銃けんじゅうが使つかわれた。村上むらかみ刑事けいじから盗ぬすまれて遊ゆう佐さの手てに渡わたる拳銃けんじゅうがコルト式しきという設定せっていであるのに対たいし、本ほん作さくのポスターやスチールの写真しゃしんでは九きゅう四よん式しき拳銃けんじゅうが使つかわれている。
  • 2010年ねん（平成へいせい22年ねん）に公開こうかいされた『踊おどる大だい捜査そうさ線せん THE MOVIE3 ヤツらを解放かいほうせよ!』では、本ほん作さくのオマージュが随所ずいしょに捧ささげられており、バスの乗客じょうきゃくに本ほん作さくの志村しむら喬たかしと三船みふね敏郎としおと同おなじ格好かっこうをした者ものがいる。
  • 「長嶋ながしま茂雄しげおは立教大学りっきょうだいがく野球やきゅう部ぶ時代じだいに後輩こうはいを連つれて当とう作品さくひんを鑑賞かんしょうした際さい、当とう作品さくひんのことを『ノヨシケン』と言いい間違まちがえていたエピソードがある」と複数ふくすうの筆者ひっしゃにより書かかれているが、玉木たまき正之まさゆきによるとこれは一言ひとこと多た十じゅうが『七人しちにんの侍さむらい』を『七なな人にんのマチ（待まち）』と言いったとされるエピソードに付会ふかいして創作そうさくされたものであるという[22]。
  • 世界せかい三さん大だい映画えいが祭さいにおける監督かんとく賞しょうを制覇せいはしたアメリカの映画えいが監督かんとくであるポール・トーマス・アンダーソンは、本ほん作さくをお気きに入いりの一本いっぽんに挙あげており、自身じしんの作品さくひんである『マグノリア』では、本ほん作さくへのオマージュとして警官けいかんが拳銃けんじゅうを紛失ふんしつするというエピソードを描えがいた。
  • 俳優はいゆうの中島なかじま春雄はるおは、俳優はいゆう学校がっこう時代じだいに研修けんしゅうで撮影さつえい所しょを訪おとずれたところ黒澤くろさわに声こえをかけられ本ほん作品さくひんの撮影さつえいに参加さんかしたが、出演しゅつえんシーンはカットされていた[23][24]。

リメイク版ばん

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1973年ねん（昭和しょうわ48年ねん）9月29日にち公開こうかい。松竹しょうちく製作せいさく・配給はいきゅう。監督かんとくは森崎もりさき東ひがし、主演しゅえんは渡わたり哲也てつや。カラー、ワイド、104分ふん。主役しゅやくの刑事けいじが拳銃けんじゅうを盗ぬすまれる冒頭ぼうとうシーンはほぼ同おなじであるが、ストーリーが進すすむにつれてオリジナルとは大おおきく異ことなった展開てんかいを見みせ、クライマックスは在ざい日米にちべい軍ぐんなどで揺ゆれる沖縄おきなわ問題もんだいがテーマとなる。

スタッフ
キャスト

テレビドラマ

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2013年ねん（平成へいせい25年ねん）1月がつ19日にち[注釈ちゅうしゃく 3]に、テレビ朝日てれびあさひ系けいにてテレビドラマ化かされ、「テレビ朝日てれびあさひ開局かいきょく55周年しゅうねん記念きねん 黒澤くろさわ明あきらドラマスペシャル 野良犬のらいぬ」として放送ほうそうされた。主おもなキャストとして江口えぐち洋介ようすけ、広末ひろすえ涼子りょうこ、中村なかむら獅童しどう、柄本えもと佑たすくらを起用きよう。また、映画えいがを主おもな活躍かつやくの場ばとしている永瀬ながせ正敏まさとしの久々ひさびさのテレビドラマ出演しゅつえん作さくである[25]。このテレビドラマは黒澤くろさわの『野良犬のらいぬ』を原作げんさくとしているものの、主人公しゅじんこうがバスの中なかで拳銃けんじゅうを盗ぬすまれる場面ばめんから盗ぬすまれた拳銃けんじゅうの行方ゆくえを追おうという筋すじ回まわしが共通きょうつうしている以外いがいは、物語ものがたり、登場とうじょう人物じんぶつの設定せっていなど大おおきく変更へんこうされており、ほぼオリジナルストーリーとなっている。

キャスト

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〈 〉内ないは設定せってい年齢ねんれい。

スタッフ

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 大原おおはら駅えきのシーンは、西武せいぶ池袋いけぶくろ線せんの大泉学園おおいずみがくえん駅えきで撮影さつえいされた[1]。
  2. ^ セバスティアン・イラディエルが作曲さっきょくしたキューバの民族みんぞく舞曲ぶきょく。
  3. ^ テレビ宮崎てれびみやざきは1月がつ21日にちの21:03-23:22に放送ほうそう。

出典しゅってん

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  1. ^ 小学館しょうがくかん2011、p.14
  2. ^ a b c d e f g 小学館しょうがくかん2011、p.16
  3. ^ 西村にしむら雄一郎ゆういちろう『黑澤くろさわ明あきら 音おとと映像えいぞう』、立たて風ふう書房しょぼう、1990年ねん、p.82
  4. ^ 藤川ふじかわ黎はじむ一いち『黒澤くろさわ明あきらvs.本木もとき荘そう二郎じろう それは春はるの日ひの花はなと輝かがやく』、論ろん創そう社しゃ、2012年ねん、p.240
  5. ^ 小学館しょうがくかん2011、p.4
  6. ^ 野良犬のらいぬ、キネマ写真しゃしん館かん、2015年ねん5月がつ16日にち閲覧えつらん
  7. ^ 都築つづき2010、p.157
  8. ^ a b 小学館しょうがくかん2011、p.12
  9. ^ a b 丹野たんの1998、p.28
  10. ^ a b 黒澤くろさわ明あきら 人生じんせいを映画えいがに捧ささげた男おとこ・第だい三さん部ぶ、キネマ写真しゃしん館かん、2015年ねん5月がつ16日にち閲覧えつらん
  11. ^ 丹野たんの1998、p.29
  12. ^ 小学館しょうがくかん2011、p.15
  13. ^ 黒澤くろさわ明あきらデジタルアーカイブ、2015年ねん5月がつ17日にち閲覧えつらん
  14. ^ 竹内たけうち博ひろし 編へん「本多ほんだ猪いの四郎しろう略りゃく年譜ねんぷ」『本多ほんだ猪いの四郎しろう全ぜん仕事しごと』朝日あさひソノラマ〈ファンタスティックコレクション〉、2000年ねん5月がつ1日にち、119頁ぺーじ。ISBN 4-257-03592-7。 
  15. ^ 岩本いわもと憲けん児じ『黒澤くろさわ明あきらをめぐる12人にんの狂詩曲きょうしきょく』、早稲田大学わせだだいがく出版しゅっぱん部ぶ、2004年ねん、p.25
  16. ^ 小学館しょうがくかん2011、p.5
  17. ^ 伊東いとう2002、p.173
  18. ^ 岩宮いわみや眞一郎しんいちろう『図解ずかい入門にゅうもん 最新さいしん音楽おんがくの科学かがくがよくわかる本ほん-音楽おんがくと人ひととのかかわりを科学かがく的てきに考察こうさつする-』、秀和しゅうわシステム、2012年ねん、p.154
  19. ^ 『キネマ旬報きねまじゅんぽうベスト・テン85回かい全ぜん史し 1924-2011』、キネマ旬報社きねまじゅんぽうしゃ、2012年ねん5月がつ23日にち、p.588
  20. ^ 「オールタイム・ベスト　映画えいが遺産いさん200」全ぜんランキング公開こうかい、キネマ旬報きねまじゅんぽう映画えいがデータベース、2015年ねん5月がつ15日にち閲覧えつらん
  21. ^ 都築つづき2010、p.161
  22. ^ 玉木たまき正之まさゆき『プロ野球やきゅう大だい辞典じてん』新潮社しんちょうしゃ<新潮しんちょう文庫ぶんこ>、1990年ねん、p.470
  23. ^ 東宝とうほうゴジラ会かい「第だい二に章しょう 円谷つぶらや組ぐみスタッフインタビュー INTERVIEW10 中島なかじま春雄はるお」『特撮とくさつ 円谷えんだに組ぐみ ゴジラと東宝とうほう特撮とくさつにかけた青春せいしゅん』洋よう泉いずみ社しゃ、2010年ねん10月がつ9日にち、130頁ぺーじ。ISBN 978-4-86248-622-6。 
  24. ^ 別冊べっさつ映画えいが秘宝ひほう編集へんしゅう部ぶ 編へん「中島なかじま春雄はるお（構成こうせい・文ぶん 友井ともい健けん人じん/『映画えいが秘宝ひほう』2010年ねん7月がつ号ごう、8月がつ号ごうの合併がっぺい再さい編集へんしゅう）」『ゴジラとともに 東宝とうほう特撮とくさつVIPインタビュー集しゅう』洋よう泉いずみ社しゃ〈映画えいが秘宝ひほうCOLLECTION〉、2016年ねん9月がつ21日にち、173頁ぺーじ。ISBN 978-4-8003-1050-7。 
  25. ^ イントロダクション｜野良犬のらいぬ、テレビ朝日てれびあさひ開局かいきょく55周年しゅうねん記念きねん 黒澤くろさわ明あきらドラマスペシャル 野良犬のらいぬ 公式こうしきサイト、2013年ねん1月がつ11日にち参照さんしょう

参考さんこう文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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