文体ぶんたい

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文体ぶんたい(ぶんたい)とは[1][2][3][4][5][6]文章ぶんしょう散文さんぶんスタイルのこと。文芸ぶんげい評論ひょうろん研究けんきゅう対象たいしょうになり、ときにはある作品さくひん背後はいご作家さっかせいいだすさい根拠こんきょひとつとされる。

英語えいごでは、多義たぎ "style" のいち語義ごぎである[7][8][9][10][11]たとえば「文体ぶんたいミス」は "style error" という[9][10]。"style of the book" は「そのほん文体ぶんたい」を意味いみする[9][10]。style のほか語義ごぎ区別くべつして「文体ぶんたい」をいいあらわすのには "write" とのわせたいいまわしになる[9]。また、"strain" の語義ごぎひとつでもある[12]。なお、英語えいごの "style"、ドイツの "Stil"、フランス語ふらんすごの "style" は、「鉄筆てっぴつ」を意味いみするラテン語らてんご "stilus日本語にほんごおとうつしれい:ステュルス)" に由来ゆらいしており、鉄筆てっぴつかれた文章ぶんしょう表現ひょうげんじょう特色とくしょく、すなわち「文体ぶんたい」を意味いみするようになった[7]

文体ぶんたい」の定義ていぎ[編集へんしゅう]

日本語にほんご文体ぶんたい」には、つぎげるような複数ふくすう定義ていぎがある。

  1. 和文わぶん」「漢文かんぶん」「和漢混淆文わかんこんこうぶん」など、言語げんご基本きほんてき構造こうぞう表記ひょうきほうちがいにより分類ぶんるいされる文体ぶんたい
  2. 「だ・である調ちょう」のような常体じょうたい、「です・ます調ちょう」のようなけいたいなど、文章ぶんしょう様式ようしきとしての文体ぶんたい近代きんだい以降いこう日本語にほんごでは、文芸ぶんげい評論ひょうろん文章ぶんしょう読本とくほんなかれられ、その研究けんきゅうさく影響えいきょうあたえた。坪内つぼうち逍遥しょうようが『小説しょうせつ神髄しんずい』で提唱ていしょうした「雅文がぶんたい」「俗文ぞくぶんたい」「雅俗がぞく折衷せっちゅう文体ぶんたい」や、谷崎たにざき潤一郎じゅんいちろうが『文章ぶんしょう読本とくほん』で提唱ていしょうした「講義こうぎたい」「へいからだ」「口上こうじょうたい」「会話かいわたい」の分類ぶんるいなどがある。言葉ことばの「文体ぶんたい」にたいし、はな言葉ことばでは「はなしたい」(談話だんわたい)という用語ようごもちいることもある[13]
  3. 作家さっか作品さくひん固有こゆう表現ひょうげんとしての文体ぶんたい比喩ひゆなどレトリック特徴とくちょう用字ようじ用語ようご使用しよう頻度ひんどなどが根拠こんきょになることもある。
  4. に、時代じだい世代せだいなどで区分くぶんされたある集団しゅうだん固有こゆう特徴とくちょうとして、文体ぶんたいという言葉ことばをあてはめることもできる。「現代げんだい若者わかもの文体ぶんたい」「明治めいじ時代じだい書生しょせい文体ぶんたい」など。
  5. ぶん体裁ていさいはりしょうすべ(昭明しょうめい太子たいし)の文選ぶんせんが、・騒・ななみことのりさつれいきょうさくといひょう上書うわがきけいたまごと・牋・そうしょうつりしょげきなんたいもんしつらえろんじょ・頌・さんいのち史論しろんじゅつさんろんれんたま・箴・めい・誄・あいぶん碑文ひぶん墓誌ぼし行状ぎょうじょう弔文ちょうぶん祭文さいぶんさんじゅうきゅうるいける。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 黒木くろき晶子あきこ[14]論文ろんぶんにおける「だ」けいと「である」けい形式けいしき混用こんようについて」『文教ぶんきょう国文学こくぶんがくだい55ごう広島文教女子大学ひろしまぶんきょうじょしだいがく国文こくぶん学会がっかい、2011ねん、34-22ぺーじISSN 0286-3065NAID 120005762519 NCID AN00221856

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 小学館しょうがくかん『デジタル大辞泉だいじせん』. “文体ぶんたい”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  2. ^ 三省堂さんせいどう大辞林だいじりんだい3はん. “文体ぶんたい”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  3. ^ 小学しょうがくかん精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん』. “文体ぶんたい”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  4. ^ 日立ひたちデジタル平凡社へいぼんしゃ世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんだい2はん. “文体ぶんたい”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  5. ^ ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん』. “文体ぶんたい”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  6. ^ 山口やまぐち明穂あきほ小田切おだぎり秀雄ひでお小学しょうがくかん日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)』. “文体ぶんたい”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  7. ^ a b 日立ひたちデジタル平凡社へいぼんしゃ世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんだい2はん. “スタイル”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  8. ^ 小学しょうがくかん『デジタル大辞泉だいじせん』. “スタイル”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  9. ^ a b c d 文体ぶんたい”. えいろう on the WEB. アルク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  10. ^ a b c style”. えいろう on the WEB. アルク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  11. ^ 小学しょうがくかんプログレッシブ英和えいわちゅう辞典じてんだい4はん. “style”. コトバンク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  12. ^ strain”. えいろう on the WEB. アルク. 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん
  13. ^ 飛田ひだ 良文よしふみ [へん] (2007)『日本語にほんごがく研究けんきゅう事典じてん』(明治めいじ書院しょいん)の「談話だんわたい」のこう
  14. ^ 黒木くろき 晶子あきこ”. researchmap. 科学かがく技術ぎじゅつ振興しんこう機構きこう (JST). 2020ねん7がつ7にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]