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冒険ぼうけん小説しょうせつ

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アメリカの冒険ぼうけんものパルプ雑誌ざっし表紙ひょうし(1932ねん)

冒険ぼうけん小説しょうせつ(ぼうけんしょうせつ)は、主人公しゅじんこう行動こうどう冒険ぼうけんてき危険きけんおかす)である小説しょうせつ歴史れきしてき事件じけん戦争せんそう秘境ひきょうなどにかかわるアクションをんで、読者どくしゃ興奮こうふんをもたらすことがおおい。SF小説しょうせつ推理すいり小説しょうせつ(ミステリ)、スパイ小説しょうせつ海洋かいよう冒険ぼうけん小説しょうせつ山岳さんがく冒険ぼうけん小説しょうせつなどをふくむこともある。

中世ちゅうせいロマン小説しょうせつにおける遍歴へんれき物語ものがたりからの影響えいきょうもあり、場所ばしょ移動いどう探索たんさくをメインプロットとする自発じはつてき探検たんけん小説しょうせつや、受動じゅどうてき遭難そうなん漂流ひょうりゅう小説しょうせつふくまれる。冒険ぼうけん小説しょうせつの3つの特徴とくちょうとして「エキゾチシズム」「はなしあらたな展開てんかいなんかいもあること」「危険きけんおか人物じんぶつ(ヒーロー)」がげられる。[1]

元々もともと冒険ぼうけん」という熟語じゅくご森田もりた思軒しけんが『じゅう少年しょうねん漂流ひょうりゅう』を1896ねん明治めいじ29ねん)に博文ひろぶみかん雑誌ざっし少年しょうねん世界せかい』で連載れんさい冒険ぼうけん奇談きだん じゅう少年しょうねん』として英訳えいやくほんからの抄訳しょうやく重訳じゅうやくしたさいつくられた。

歴史れきし[編集へんしゅう]

冒険ぼうけん物語ものがたり歴史れきしなかでもっともふるく、共通きょうつうのテーマである。中世ちゅうせい騎士きしどう物語ものがたりもまた冒険ぼうけん連続れんぞくであり、古代こだいギリシャのヘリオドロスからハリウッド映画えいがにいたるまでつづいている。冒険ぼうけん小説しょうせつは、敢て未知みち危険きけんおか主人公しゅじんこう特徴とくちょうがあり、その典型てんけいは『カサノヴァ自伝じでん』や『トム・ソーヤーの冒険ぼうけん』である。エキゾチズムを小説しょうせつとしては、ダニエル・デフォーロビンソン・クルーソー』(1719ねん)や、フェニモア・クーパーモヒカンぞく最後さいご』(1826ねん)がられ、ウージェーヌ・シューアレクサンドル・デュマ・ペール未知みち土地とち探求たんきゅう物語ものがたりいた。また次々つぎつぎ冒険ぼうけんかえすヒーローとしては、ロカンボル(1857ねん-)や、モンテ・クリストはく(1844ねん-)があらわれた[1]

H・R・ハガード『ソロモンおう洞窟どうくつ』(1887ねん)表紙ひょうし

大衆たいしゅう意識いしきわった19世紀せいき中頃なかごろ以降いこう冒険ぼうけん小説しょうせつ発展はってんしてきた。時代じだいとともにその構成こうせいは、武装ぶそうした騎士きし物語ものがたりから、ハイテクスパイ小説しょうせつまで変化へんかしている。この時期じき作家さっかには、ウォルター・スコットアレクサンドル・デュマ・ペール[2]ジュール・ヴェルヌブロンテ姉妹しまいH・R・ハガードヴィクトル・ユーゴー[3]エミリオ・サルガーリカール・マイルイ・アンリ・ブセナールトーマス・メイン・リードサックス・ローマーエドガー・ウォーレスロバート・ルイス・スティーヴンソンなどがいる。

マスツーリズムをひろめたトーマス・クック旅行りょこうガイドブック

1880年代ねんだい以降いこうでは、大衆たいしゅう出版しゅっぱんぶつ増大ぞうだい文盲もんもうりつ低下ていか背景はいけいに、産業さんぎょう革命かくめいにより台頭たいとうしてきたあたらしい大衆たいしゅうそうあたらしいものもとはじめ、情報じょうほうとセンセーショナルな内容ないよう異国いこく情緒じょうちょ恐怖きょうふもとめられたことによる[4]コナン・ドイルによる歴史れきし小説しょうせつも、教条きょうじょう主義しゅぎてき騎士きしどう小説しょうせつというだけでない、陽気ようき個性こせいてき登場とうじょう人物じんぶつによって冒険ぼうけん小説しょうせつとしてもたか評価ひょうかされた[4]。 また19世紀せいきいたるまでのグランドツアー流行りゅうこうと、19世紀せいき後半こうはんからのあらたな庶民しょみん階層かいそうマスツーリズムのブームは、H・R・ハガードやカール・マイの異国いこく趣味しゅみあふれる秘境ひきょう冒険ぼうけん小説しょうせつ読者どくしゃ興味きょうみをそそった[4]。 19世紀せいきまつのイギリスでは、マリー・コレリアンソニー・ホープ冒険ぼうけんぶつたか人気にんき作家さっかだった[4]。 そして19世紀せいきにはおおくの科学かがく技術ぎじゅつ知識ちしきんだ冒険ぼうけん小説しょうせつによってジュール・ヴェルヌが成功せいこうおさめた[4]

20世紀せいきはいると、バロネス・オルツィラファエル・サバチニ騎士きしどうがたヒーローによる冒険ぼうけん小説しょうせついたが、だいいち世界せかい大戦たいせんのちかれたサバチニ『スカラムーシュ』(1921ねん)では自己じこ懐疑かいぎてき近代きんだいてき人物じんぶつぞうによる物語ものがたりへと推移すいいしていき、ジェームズ・ヒルトンよろいなき騎士きし』(1933ねん)もまた、この戦争せんそうにより騎士きしどう精神せいしんという行動こうどう規範きはんうしなったおとこ物語ものがたりとなっている[4]

冒険ぼうけん小説しょうせつは、アメリカの革新かくしん主義しゅぎ時代じだいから1950年代ねんだいまでのパルプ雑誌ざっしでポピュラーなものだった[5]おおくのパルプ雑誌ざっしアーゴシー』『Adventure』『ayanansari』『Top-Notch Magazine』『Short Stories (magazine)』などおおくの雑誌ざっしがこの専門せんもんとなった。このころ有名ゆうめい冒険ぼうけん作家さっかとしては、E.R.バローズタルボット・マンディセオドア・ロスコージョンストン・マッカレーアーサー・O.フリエルハロルド・ラムカール・ジャコビ、ジョージ・F・ウォーツ[5]ジョルジュ・サーデズH・ベッドフォード=ジョーンズJ.アラン・ダンなどがいる[6]。 1894ねんきたドレフュス事件じけんにより、スパイの存在そんざいへの関心かんしんたかまり、アースキン・チルダーズジョゼフ・コンラッドジョン・バカンなどが、冒険ぼうけん小説しょうせつ要素ようそったスパイ小説しょうせつ執筆しっぴつし、エリック・アンブラー否応いやおうしにスパイ活動かつどうをせざるをなくなる「まれがた」のスパイ小説しょうせつで、この時代じだい不安ふあん疑惑ぎわく表現ひょうげんして、このジャンルを「高度こうど現代げんだい小説しょうせついち主流しゅりゅうげた」[7]とされる[4]

だい世界せかい大戦たいせんこうは、アリステア・マクリーン作品さくひんでは、「よわさをかかえた無名むめいおとこたち」の極限きょくげん状況じょうきょうにおけるドラマをえがいた。フランスではジョゼ・ジョヴァンニらによる暗黒あんこく小説しょうせつで、暗黒あんこくがい舞台ぶたい自由じゆうもとめるおとこたちがえがかれた。1970年代ねんだいになると、ドン・ペンドルトンマフィアへの挑戦ちょうせん』ではベトナム戦争せんそうかえりのおとこ主人公しゅじんこう私的してき復讐ふくしゅう物語ものがたりかれ、フレデリック・フォーサイスなどの国際こくさい謀略ぼうりゃく小説しょうせつかれた。ジャック・ヒギンズだい世界せかい大戦たいせん舞台ぶたいにしたおおくの戦争せんそう冒険ぼうけん小説しょうせついている。[4]

冒険ぼうけん小説しょうせつは、戦争せんそう小説しょうせつ犯罪はんざい小説しょうせつ海洋かいよう冒険ぼうけん小説しょうせつ無人島むじんとう小説しょうせつ漂流ひょうりゅうしゃ小説しょうせつスパイ小説しょうせつジョン・バカンエリック・アンブラーイアン・フレミングなど)、SF小説しょうせつファンタジー小説しょうせつロバート・E・ハワードJ・R・R・トールキンなどの架空かくう世界せかい小説しょうせつふくむ)[8]西部せいぶげきなどのジャンルとも関連かんれんっている。

子供こども[編集へんしゅう]

スティーブンスン『宝島たからじま』1885年版ねんばんのイラスト

子供こども冒険ぼうけん小説しょうせつは19世紀せいきからかれるようになり、初期しょき作品さくひんとしてはヨハン・ダビット・ウィーススイスの家族かぞくロビンソン』(1812ねん)、フレデリック・マリアットあたらしいもり子供こどもたち』(1847ねん)、ハリエット・マーティノー農夫のうふ王子おうじ』(1856ねん)などがある。[9] ヴィクトリアあさ時代じだいにはW.H.G.キングストンR.M.バランタインG.A.ヘンティらが少年しょうねん冒険ぼうけん小説しょうせつ分野ぶんや開拓かいたくした。[10] これは大人おとな作品さくひんいている作家さっかたちにも影響えいきょうあたえ、R.L.スティーヴンソンも子供こどもけの『宝島たからじま』(1883ねん)をいた。[10] だいいち世界せかい大戦たいせんアーサー・ランサムなどは、とおくにではなく自国じこくイギリスを舞台ぶたいにした冒険ぼうけん小説しょうせつ開拓かいたくし、ジェフリー・トリースローズマリー・サトクリフ[11]エスター・フォーブスらは歴史れきし冒険ぼうけん小説しょうせつあたらしい洗練せんれんをもたらした。[10] ミルドレッド・D・テーラーフィリップ・プルマンらの現代げんだい作家さっかは、歴史れきし冒険ぼうけんものの伝統でんとういでいる。[10] 現代げんだい子供こども冒険ぼうけん小説しょうせつでは、テロリズムロバート・コーミアぼくがんだあさ』(1979ねん)など)や戦争せんそうピーター・ディキンスン『AK』(1990ねん)など)といった論争ろんそうのある題材だいざいあつかう。[10]

作家さっか[編集へんしゅう]

アメリカの作家さっか[編集へんしゅう]

イギリスの作家さっか[編集へんしゅう]

オーストラリアの作家さっか[編集へんしゅう]

フランスの作家さっか[編集へんしゅう]

日本にっぽん作家さっか[編集へんしゅう]

ちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b ダニエル・コンペール大衆たいしゅう小説しょうせつ宮川みやがわ朗子あきこやく国文こくぶんしゃ 2014ねんだい4しょう
  2. ^ Green, Martin Burgess. Seven Types of Adventure Tale: An Etiology of A Major Genre. Penn State Press, 1991 (pp. 71–2).
  3. ^ Taves, Brian. The Romance of Adventure: The Genre of Historical Adventure Movies .University Press of Mississippi, 1993 (p. 60)
  4. ^ a b c d e f g h 北上きたかみ次郎じろう冒険ぼうけん小説しょうせつろん早川書房はやかわしょぼう 1993ねん(I P11-278)
  5. ^ a b Server,Lee. Danger is My Business: An Illustrated History of the Fabulous Pulp Magazines. Chronicle Books, 1993 (pp. 49–60).
  6. ^ Robinson, Frank M. & Davidson, Lawrence. Pulp Culture – The Art of Fiction Magazines. Collectors Press Inc. 2007 (pp. 33–48).
  7. ^ 中薗なかぞの英助えいすけやみのカーニバル』時事通信社じじつうしんしゃ 1980ねん
  8. ^ Pringle, David. The Ultimate Encyclopedia of Fantasy. London, Carlton pp. 33–5
  9. ^ Hunt, Peter. (Editor). Children's literature: an illustrated history. Oxford University Press, 1995. ISBN 0-19-212320-3 (pp. 98–100)
  10. ^ a b c d e Butts, Dennis,"Adventure Books" in Zipes, Jack, The Oxford Encyclopedia of Children's Literature. Volume One. Oxford, Oxford University Press, 2006. ISBN 978-0-19-514656-1 (pp. 12–16).
  11. ^ Hunt, 1995, (pp. 208–9)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]