国語こくご国字こくじ問題もんだい

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漢字かんじ
書体しょたい
篆刻てんこく毛筆もうひつ
かぶとこつぶん 金文きんぶん 篆書てんしょ
古文こぶん
隷書れいしょ 楷書かいしょ
行書ぎょうしょ
草書そうしょ
木版もくはん活版かっぱん
宋朝そうちょうたい 明朝体みんちょうたい 楷書かいしょたい
字体じたい
構成こうせい要素ようそ
筆画ひっかく 筆順ひつじゅん 偏旁へんぼう 六書りくしょ 部首ぶしゅ
標準ひょうじゅん字体じたい
せつぶんかい篆書てんしょたい
さましょ 石経いしきょう
かん字典じてんたいきゅう字体じたい
しん字体じたい しん字形じけい
国字こくじ標準ひょうじゅん字体じたい つね用字ようじ字形じけいひょう
漢文かんぶん教育きょういくよう基礎きそ漢字かんじ
通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう
国字こくじ問題もんだい
当用とうよう常用漢字じょうようかんじ
同音どうおん漢字かんじによるきかえ
繁体字はんたいじ正体しょうたい - 簡体字かんたいじ
漢字かんじ廃止はいし復活ふっかつ
漢字かんじ文化ぶんかけん
なかあさこしだいしん
派生はせい文字もじ
国字こくじ 方言ほうげん のりてん文字もじ
仮名かめい たけし おんなしょ
ちぎり文字もじ おんな文字もじ 西にしなつ文字もじ
字音じおん

国語こくご国字こくじ問題もんだい(こくごこくじもんだい)とは、日常にちじょう使用しようする言語げんご文字もじをいかに改良かいりょうし、いかにさだめるべきであるかについての問題もんだいである[1]ほんこうでは、国語こくごとしての日本語にほんご表記ひょうきほうである漢字かんじ仮名がなじりぶんとそれを構成こうせいする漢字かんじ仮名遣かなづかかた改変かいへんかかわるきん現代げんだい言語げんご政策せいさく公的こうてき決定けってい)など、表記ひょうきをめぐって議論ぎろんとなる事柄ことがらについて、だい世界せかい大戦たいせんの「国語こくご改革かいかく以降いこうのものを中心ちゅうしんげる。

日本にっぽんにおけるおも政策せいさく歴史れきし[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせん以前いぜん[編集へんしゅう]

国語こくご国字こくじ問題もんだいは、言語げんご伝達でんたつにおいて、なんらかの抵抗ていこう障害しょうがい意識いしきされるところに発生はっせいし、外国がいこくとの比較ひかくによる言語げんごたいする文化ぶんかてき意義いぎ自覚じかくによって促進そくしんされる。識字しきじりつげや欧化おうか主義しゅぎ、またぎゃく国粋こくすい主義しゅぎなどの様々さまざま理由りゆうから、漢字かんじ制限せいげん表記ひょうき表音ひょうおんについて、明治めいじ時代じだいから政府せいふ内外ないがい議論ぎろんされていたのは、その好例こうれいである[1]。それは「国語こくご」の成立せいりつおおきく関係かんけいすることであり、日本にっぽん近代きんだいにおいて必須ひっす不可避ふかひともいえるものであった[2]

日本語にほんご表記ひょうきほうとして漢字かんじもちいることの是非ぜひは、すくなくとも江戸えど時代じだい中期ちゅうきにおける国学こくがく勃興ぼっこう以来いらい議論ぎろん対象たいしょうとなってきた。新井あらい白石はくせきは、宣教師せんきょうしシドッティ調しらべで、西洋せいよう文字もじすくなさに感心かんしんした[3]

漢字かんじ廃止はいしろん先駆さきがけとしてしばしば言及げんきゅうされるのが、1866ねん慶応けいおう2ねん)、前島まえじまらい輔(ひそかが、とき将軍しょうぐん徳川とくがわ慶喜よしのぶ提出ていしゅつした「漢字かんじ廃止はいし」とばれる建白けんぱくしょ報告ほうこく提言ていげん)である[4]。その趣旨しゅしは「漢字かんじ習得しゅうとく効率こうりつであるため、漢字かんじ廃止はいしすべきである」というものであった[ちゅう 1]

文部もんぶ大臣だいじんもり有礼ありのりは1872ねん - 1873ねん日本にっぽんにおける日本語にほんご使用しよう英語えいごえることをろんじたとされた[ちゅう 2]きた一輝いっき英語えいご日本語にほんご両方りょうほう敵視てきしし、「合理ごうりてき」なエスペラント導入どうにゅう提案ていあんした[6]

漢字かんじ廃止はいしろん制限せいげんろんについてはに、つぎのような論者ろんしゃられる[7][8]

1900ねん明治めいじ33ねん)、感動かんどう字音じおん長音ちょうおん長音符ちょうおんぷ「ー」であらわす「棒引ぼうび仮名遣かなづかい」を小学校しょうがっこう教科書きょうかしょもちいることが[ちゅう 3]小学校しょうがっこうれい施行しこう規則きそくさだめられた[9]国語こくご施策しさく国語こくご教育きょういくによって国語こくご国字こくじ改良かいりょうおこなったのである。しかし、あまり世評せひょうがよくなかったので、文部省もんぶしょう1908ねん明治めいじ41ねん)に臨時りんじ仮名遣かなづかい調査ちょうさ委員いいんかい設置せっちし、あらたな改定かいていあんとして「字音仮名遣じおんかなづかいすべ表音ひょうおんしきにする」「国語こくご仮名遣かなづかい活用かつよう語尾ごび助詞じょしだけそのままで、その表音ひょうおんしきにする」というものをしたが、結論けつろんらしい結論けつろんないまま廃止はいしされた[9]

臨時りんじ国語こくご調査ちょうさかい(のちの国語こくご審議しんぎかい前身ぜんしん)が設置せっちされ、1922ねん大正たいしょう11ねん)11月に常用漢字じょうようかんじ1962選定せんてい可決かけつ戦後せんご当用漢字とうようかんじひょう現在げんざい常用漢字じょうようかんじいたる)、1923ねん大正たいしょう12ねん)12月には仮名遣かなづかい改定かいていあん可決かけつ現代げんだい仮名遣かなづか原型げんけいとなる)[10]

漢字かんじ使用しよう制限せいげんするうごきとしては、1940ねん日本にっぽん陸軍りくぐんが「兵器へいき名称めいしょうよう制限せいげん漢字かんじひょう」を決定けっていし、兵器へいき使つかえる漢字かんじを1235制限せいげんした。

また1942ねんには国語こくご審議しんぎかいが、かく省庁しょうちょうおよび一般いっぱん社会しゃかい使用しようする漢字かんじ標準ひょうじゅんしめした合計ごうけい2528の「標準ひょうじゅん漢字かんじひょう」を答申とうしんしている[11]

戦後せんご国語こくご改革かいかく[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせん一時期いちじきには、漢字かんじ使用しよう制限せいげんし、日本語にほんご表記ひょうき単純たんじゅんしようとするうごきがつよまった。

1946ねん昭和しょうわ21ねん)3がつ連合れんごう国軍こくぐんそう司令しれい (GHQ/SCAP) がまねいただいいちアメリカ教育きょういく使節しせつだんが3月31にちだいいちアメリカ教育きょういく使節しせつだん報告ほうこくしょ提出ていしゅつ学校がっこう教育きょういくにおける漢字かんじ弊害へいがいマ字まじ便びん指摘してきした(マ字まじろん参照さんしょう)。

同年どうねん4がつ志賀しが直哉なおや雑誌ざっし改造かいぞう』に「国語こくご問題もんだい」を発表はっぴょうし、「日本語にほんご廃止はいしし、世界せかい一番いちばんうつくしい言語げんごであるフランス語ふらんすご採用さいようすることにしたらどうか」という趣旨しゅし提案ていあんをした。また1945ねん11月12にち読売よみうり報知ほうちいま読売新聞よみうりしんぶん)は「漢字かんじ廃止はいしせよ」とだいした社説しゃせつ掲載けいさいした[12]

当時とうじ国語こくご審議しんぎかい委員いいんにも、日本語にほんご改革かいかくろんしゃ多数たすう就任しゅうにんし、漢字かんじ廃止はいしマ字まじなど極論きょくろん見送みおくられたものの、かれらが関与かんよした「国語こくご改革かいかく」が戦後せんご日本語にほんごあたえた影響えいきょうおおきい。こうしたうごきを背景はいけいとして、戦前せんぜんからあたためられてきた常用漢字じょうようかんじ仮名遣かなづかい改定かいていあん流用りゅうよう修正しゅうせいしたうえ当用漢字とうようかんじ現代げんだいかなづかい制定せいていされた[13]

なお、同様どうよう漢字かんじ簡略かんりゃくうごきは、識字しきじりつ向上こうじょうんでいた中国ちゅうごくにおいてもられ、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく成立せいりつすべての文字もじ表記ひょうきピンおんとするうごきもあったが、最終さいしゅうてきには簡体字かんたいじ導入どうにゅうされた。

当用漢字とうようかんじひょう[編集へんしゅう]

当用漢字とうようかんじとは、狭義きょうぎには1946ねん昭和しょうわ21ねん11月16にち内閣ないかくから告示こくじされた「当用漢字とうようかんじひょう」に掲載けいさいされた1850漢字かんじし、広義こうぎにはそれに関連かんれんしたいくつかの告示こくじ総称そうしょうする[14]当用漢字とうようかんじひょうにおいては、日常にちじょう使用しようしないとされた漢字かんじ使用しよう制限せいげんされ、公用こうよう文書ぶんしょ一般いっぱん社会しゃかい使用しようする漢字かんじ範囲はんいしめされた[14]

従来じゅうらい複雑ふくざつかつ多様たようであった字体じたい簡素かんそ一部いちぶ文字もじおこなわれ、新字しんじしんかな制定せいていされた。しん字体じたい新字しんじ制定せいていにおいては、漢字かんじ構成こうせい要素ようそごとに体系たいけいてき変更へんこうおこな方式ほうしきらず、慣用かんよう参考さんこう個別こべつ文字もじ部分ぶぶんてき簡略かんりゃくするのみにとどめた。

なお、当用漢字とうようかんじひょうでは漢字かんじみも制限せいげんしたが、当初とうしょ当用漢字とうようかんじ音訓おんくんひょうは「さかな」のみを「ギョ」と「うお」に制限せいげんし「さかな」のみがみとめられなくなるなどの合理ごうり散見さんけんされたことで、1972ねん昭和しょうわ47ねん)6がつ28にち改定かいていされている。

熟語じゅくごき・[編集へんしゅう]

熟語じゅくご漢字かんじ平仮名ひらがな表記ひょうきする「」の問題もんだいも、当用漢字とうようかんじひょうはしはっする。どうひょうによれば、当用漢字とうようかんじけない言葉ことばはいいかえて表現ひょうげんすることになっていたが、実際じっさいには漢字かんじ仮名かめいいただけでもと言葉ことば使つかわれつづけ、漢字かんじ仮名かめいの「き」が多数たすうしょうずることとなった。顕著けんちょれいとしては「かいざん」「けんいん」「ばいえん」「ろうえい」などがある(「き」せずにすべ漢字かんじ表記ひょうきした場合ばあいはそれぞれ「あらため」「引」「すすけむり」「」〈ろうせつ〉となる)。

なお、きは「けんいん免許めんきょ」など官公庁かんこうちょう用語ようごとしてのこっている場合ばあいもある[15]

国語こくご審議しんぎかい1956ねん昭和しょうわ31ねん7がつ5にち当用漢字とうようかんじ適用てきよう円滑えんかつにするためとして、当用漢字とうようかんじひょうにない漢字かんじふく漢語かんご同音どうおんべつ異体いたい関係かんけいにあるものをふくむ)にえてもよいとして「同音どうおん漢字かんじによるきかえ」として報告ほうこくした。

従来じゅうらい複数ふくすう表記ひょうき存在そんざいした熟語じゅくご一本いっぽんする方向ほうこう例示れいじしたものには、つぎのようなものがある(括弧かっこない当用漢字とうようかんじひょうにない漢字かんじふくかた)。

  • 注文ちゅうもん註文ちゅうもん
  • 遺跡いせき遺蹟いせき) - 「ほんあと」のように、からあとえるものもある。
  • 更生こうせい甦生そせい: 本来ほんらいみは「そせい」→蘇生そせい)- 表記ひょうき同音どうおん異義いぎに「さらただし」がある。
  • 知恵ちえ智慧ちえ
  • 略奪りゃくだつ掠奪りゃくだつ
  • 妨害ぼうがい妨碍ぼうがいさまたげ礙)- 「障害しょうがい」も類似るいじれいであるが、近年きんねんぎゃくに「がい」の文字もじ差別さべつてきであるなどとして「障碍しょうがいしゃ」の表記ひょうき復活ふっかつするれいもある。
  • 意向いこう意嚮いこう
  • 講和こうわ媾和こうわ
  • 格闘かくとう挌闘かくとう
  • 書簡しょかん書翰しょかん

一般いっぱんには複数ふくすうかたがあったものの、専門せんもん用語ようごとして当用漢字とうようかんじひょうにない漢字かんじふくかたをしていたものについて、当用漢字とうようかんじひょうない漢字かんじえることをみとめたものには、つぎのようなものがある(括弧かっこない当用漢字とうようかんじひょう実施じっし以前いぜんかた)。

  • 骨格こっかく骨骼こっかく) :医学いがく用語ようご
  • 奇形きけい(畸形) :医学いがく用語ようご

本来ほんらいそのかたりにおいては使つかわれることのなかった当用漢字とうようかんじひょうない漢字かんじえることをみとめたものには、つぎのようなものがある(括弧かっこない当用漢字とうようかんじひょう実施じっし以前いぜんかた)。

  • 防御ぼうぎょ防禦ぼうぎょ
  • 扇動せんどう煽動せんどう
  • 英知えいち叡智えいち
  • 混交こんこう混淆こんこう
  • 激高げっこう激昂げっこう

これらの「き」「え」には、熟語じゅくご本来ほんらい意味いみ不明瞭ふめいりょうになるという問題もんだいてんがある。漢字かんじは「おと」と「」でっており、熟語じゅくごはそれをわせて意味いみあらわしたものである。たとえば「破綻はたん」を「たん」ときすると、本来ほんらいは「やぶほころび(ほころ)びる」という意味いみだが、平仮名ひらがなの「たん」では意味いみ不明瞭ふめいりょうになる。また「沈澱ちんでん」から「沈殿ちんでん」へのえでは、本来ほんらいは「おり(おり)がしずむ」という意味いみだが、「沈殿ちんでん」では「殿しんがりしずむ」と意味いみ不明瞭ふめいりょうになる。「煽動せんどう」から「扇動せんどう」へのえにいたっては、「あおうごかす」から「おうぎうごかす」とまったことなる意味いみになってしまう。「え」のなかには支障ししょうすくないものもあるが(「掩護えんご」→「援護えんご」など)、ただたん漢字かんじおと仮借かしゃくしただけのものも多々たたある。

こうしたことから、「き」「え」は、「熟語じゅくごちを破棄はきし、日本語にほんご文化ぶんか破壊はかいした」、「ぎた合理ごうり主義しゅぎにより日本語にほんごみだみとめてしまった」などと批判ひはんされることがある。[だれによって?]

当用漢字とうようかんじ別表べっぴょう人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょう[編集へんしゅう]

当用漢字とうようかんじのうち881は、小学校しょうがっこう教育きょういく期間きかんちゅう習得しゅうとくすべき漢字かんじとして、1948ねん昭和しょうわ23ねん)2がつ16にち当用漢字とうようかんじ別表べっぴょうというかたちでまとめられた。いわゆる「教育きょういく漢字かんじ」である。

人名じんめいについては、どう1948ねん昭和しょうわ23ねん施行しこう戸籍こせきほうだい50じょうには「には、常用じょうよう平易へいい文字もじもちいなければならない」とある。この範囲はんい当初とうしょ法務省ほうむしょうれいによって平仮名ひらがな片仮名かたかな当用漢字とうようかんじであるとされており、当用漢字とうようかんじ以外いがい漢字かんじ新生児しんせいじ戸籍こせき届出とどけでさい使用しようすることができなかった。1951ねん昭和しょうわ26ねん)には人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょうとして92内閣ないかくから告示こくじされ、当用漢字とうようかんじがい漢字かんじ一部いちぶみとめられることになった。

この人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょうは、すう改定かいてい1997ねん平成へいせい9ねん)には285ふくむものとなった。札幌さっぽろ高等こうとう裁判所さいばんしょにおいて、「常用じょうよう平易へいい文字もじ」であるのに人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょうふくまれないために子供こどもとして使用しようできなかったことを不服ふふくとした裁判さいばんうったえがみとめられた[16]ことも要因よういんひとつか、2004ねん平成へいせい16ねん9月27にちづけで488文字もじ追加ついかされた。当初とうしょは578文字もじ追加ついか見込みこまれていたが、世論せろんけて人名じんめいにふさわしくない漢字かんじ(怨・かばねなど)が削除さくじょされた。

漢字かんじ廃止はいし批判ひはん漢字かんじ仮名がなじり前提ぜんていろん[編集へんしゅう]

当用漢字とうようかんじは、漢字かんじ全廃ぜんぱい目的もくてきとしたものとしてしばしば批判ひはんされている。[だれによって?]

1958ねん昭和しょうわ33ねん)から雑誌ざっしこえ』に連載れんさいされた『わたし國語こくご敎室きょうしつ』で福田ふくだひさしそんは、すでに漢字かんじ制限せいげん不可能ふかのうであることがあきらかになっていると指摘してきした。1961ねん昭和しょうわ36ねん)には表音ひょうおん主義しゅぎしゃ多数たすうめ、毎回まいかいおな委員いいん選出せんしゅつされる構造こうぞうとなっていた国語こくご審議しんぎかい総会そうかいから、舟橋ふなばし聖一せいいち塩田しおだ良平りょうへい宇野うの精一せいいち山岸やまぎし徳平とくひらら、改革かいかく反対はんたい委員いいん退場たいじょうする事件じけんとなった。

1962ねん昭和しょうわ37ねん)、国語こくご審議しんぎかい委員いいん選出せんしゅつされた吉田よしだ富三とみぞうは、審議しんぎする立場たちばを「国語こくごは、漢字かんじ仮名がなまじもって、その表記ひょうき正則せいそくとする。国語こくご審議しんぎかいは、この前提ぜんていしたに、国語こくご改善かいぜん審議しんぎするものである」と規定きていすることを提案ていあんした。

1965ねん昭和しょうわ40ねん)、森戸もりと辰男たつお国語こくご審議しんぎかい会長かいちょう記者きしゃ会見かいけんで、「漢字かんじ仮名がなじりぶん審議しんぎ前提ぜんてい漢字かんじ全廃ぜんぱいかんがえられない」とべた。

1966ねん昭和しょうわ41ねん)、総会そうかいさい中村なかむら梅吉うめきち文部もんぶ大臣だいじんは「当然とうぜんのことながら国語こくご表記ひょうきは、漢字かんじ仮名がなじりぶんによることを前提ぜんていと」すると挨拶あいさつした。

現代げんだいかなづかい・現代げんだい仮名遣かなづか[編集へんしゅう]

歴史れきしてき仮名遣かなづかいもとに、1946ねん昭和しょうわ21ねん)11月16にち告示こくじされ現代げんだい音韻おんいんもとづいて改変かいへんしたのが「現代げんだいかなづかい」である[13]

現代げんだいかなづかい」はもともと、表音ひょうおんしき仮名遣かなづかいへ移行いこうするまでのつなぎとしてかんがえられていた。しかし仮名遣かなづかいの完全かんぜん表音ひょうおん不可能ふかのうであり、「現代げんだいかなづかい」はそのまま定着ていちゃくした。1986ねん昭和しょうわ61ねん)7がつ1にち内閣ないかくから告示こくじされた「現代げんだい仮名遣かなづか」はそうした状況じょうきょう追認ついにんであるといえる。したがって、現在げんざいの「現代げんだい仮名遣かなづかい」は中途半端ちゅうとはんぱかたちのまま、さまざまな矛盾むじゅんかかえている。

  • 助詞じょしの「」「」「」においては、発音はつおん表記ひょうき文字もじことなり、歴史れきしてき仮名遣かなづかいの原則げんそく維持いじされている。
  • 和語わごにおいては、「鼻血はなぢ」は「はな」と「」の合成ごうせいであるので形態素けいたいそ意識いしきした「はな」と表記ひょうきする。
  • 漢語かんごにおいては、すべて「」「」をもちい、「」「」はもちいない。「融通ゆうずう」を「ゆうう」と表記ひょうきするのもそのためである。また「地面じめん」を「めん」とするのが正則せいそくなのは、「」は元々もともとにごった「ヂ」(これは呉音ごおん漢音かんおんはチ)の音読おんよみをっていたが、漢語かんごの「ぢ、づ」はすべて「じ、ず」にえることになっているからで、「(ち)」が連濁れんだくしているわけではない。

常用漢字じょうようかんじとJIS[編集へんしゅう]

当用漢字とうようかんじから常用漢字じょうようかんじ[編集へんしゅう]

常用漢字じょうようかんじは、1981ねん昭和しょうわ56ねん)に内閣ないかくから告示こくじされた漢字かんじひょう掲載けいさいされた漢字かんじ1945常用漢字じょうようかんじ一覧いちらん参照さんしょう)をす。当用漢字とうようかんじひょうもと制定せいていされたものであるが、常用漢字じょうようかんじは、当用漢字とうようかんじくらべて制限せいげんゆるい「目安めやす」という位置付いちづけになっている。

漢字かんじをめぐるこうした政府せいふうごきと前後ぜんごして、JIS規格きかくも、コンピュータなどでもちいる漢字かんじについて、その漢字かんじ種類しゅるい文字もじ集合しゅうごう)と、かく漢字かんじをデータとして処理しょりするさい数値すうち表現ひょうげん文字もじコード)の規格きかく独自どくじさだめるこころみをつづけてきた。

このうち、前者ぜんしゃ文字もじ集合しゅうごう」は常用漢字じょうようかんじなどとおなじく、おびただしいかず漢字かんじなかからいち定数ていすう漢字かんじしたもので、ぞくに「JIS漢字かんじ」とばれる。2012ねん平成へいせい24ねん)までに4かい改正かいせいおこなわれている。

最初さいしょのものは1978ねん昭和しょうわ53ねん)にJIS C 6226-1978指定していされた6802文字もじぐんである。この規格きかくは「78JIS」などとばれる。1983ねん昭和しょうわ58ねん)には常用漢字じょうようかんじ制定せいていけて、JIS C 6226 の大幅おおはば改正かいせいおこなわれ、6877文字もじ漢字かんじふくむ)が指定していされた。「83JIS」などとばれる。1987ねん昭和しょうわ62ねん)に「JIS X 0208」と改称かいしょうされ、1990ねん平成へいせい2ねん)にはこまかい例示れいじ字形じけい変更へんこうと2追加ついかおこなわれた。以降いこう1997ねん平成へいせい9ねん)と2010ねん平成へいせい12ねん)にもJIS X 0208のこまかい改定かいていおこなわれたが、これは直接ちょくせつ文字もじ集合しゅうごう」の変更へんこうをするものではなかった。(以上いじょう内容ないようについてはJIS X 0208くわしい)

83JISへの移行いこうによって、300ちかくもの例示れいじ字形じけい変更へんこうされた。78JIS準拠じゅんきょ機器きき作成さくせいされた文書ぶんしょが、83JIS移行いこうのJIS準拠じゅんきょ機器きき字体じたいわってしまうといった問題もんだい指摘してきされた。とく問題もんだいとされたのは伝統でんとうてき字体じたい(いわゆるかん字典じてんからだ)から簡略かんりゃく字体じたい変更へんこうされたものであった。78JISで「鷗、蠟」としめされた文字もじが「かもめろう」となり、前者ぜんしゃ字形じけいは83JIS以降いこうのJIS X 0208の範囲はんいでは事実じじつじょうあつかえなくなった。ひのきひのきやぶやぶなど22くみ符号ふごう位置いち交換こうかんされた。

JISの文字もじ集合しゅうごうでは、「包摂ほうせつ」のかんがかたによって新旧しんきゅう字体じたい区別くべつせず、ひとつの文字もじとしてあつかっているものがあり、両者りょうしゃ区別くべつしたい場合ばあいにも区別くべつできないという問題もんだいがある。その一方いっぽう、「けん」「劒」「けん」や「てつ」「てつ」「銕」「鐡」のように、異体いたいにそれぞれてられているもある。

ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう[編集へんしゅう]

ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう漢字かんじ一覧いちらんについては、べつ項目こうもくひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう漢字かんじ一覧いちらん」を参照さんしょうのこと。

1980年代ねんだい昭和しょうわ55ねん - 平成へいせい元年がんねんなか以降いこうかな漢字かんじ変換へんかん実現じつげんしたワードプロセッサコンピュータといった情報じょうほう機器きき普及ふきゅうは、それまでもっぱ手書てがきにたよっていた日本語にほんご記述きじゅつおおきな変化へんかをもたらした。手書てがきとちがって情報じょうほう機器きき漢字かんじ変換へんかん機能きのうにおいては、画数かくすうすくない漢字かんじおお漢字かんじしる手間てまおなじであり、使用しようしゃがその文字もじっていれば使つかえるようになった。たとえば「驚愕きょうがく」「愕然がくぜん」「吃驚びっくり」「仰天ぎょうてん」「びっくり」のいずれも、情報じょうほう機器ききしる手間てま手書てがきほどのちがいはない。それにより常用漢字じょうようかんじがい漢字かんじ使用しよう環境かんきょう改善かいぜんされ、それまで減少げんしょう一途いっとをたどっていた漢字かんじ使用しようりつ平衡へいこうあるいは増加ぞうかてんじるようになった。

常用漢字じょうようかんじひょうしめされる簡略かんりゃくされた字体じたいを、常用漢字じょうようかんじひょうがい漢字かんじ適用てきようするかどうか、国語こくご審議しんぎかい答申とうしん常用漢字じょうようかんじひょう前文ぜんぶんでは「当面とうめん特定とくてい方向ほうこうしめさず、かく分野ぶんやにおける慎重しんちょう検討けんとうにまつこととした」[17]とし、国語こくご審議しんぎかいとしての判断はんだん保留ほりゅうした。前述ぜんじゅつの「83JIS」は簡略かんりゃく字体じたい常用漢字じょうようかんじひょうがい漢字かんじへと拡張かくちょうしており(拡張かくちょうしん字体じたい)、一般いっぱん書籍しょせきにおける漢字かんじ字体じたい情報じょうほう機器きき出力しゅつりょく字体じたいとのあいだ乖離かいりんでいた。また一部いちぶには「83JIS」の字体じたい積極せっきょくてき採用さいようするうごきも出版しゅっぱんかいにあった。

このため、常用漢字じょうようかんじひょうがい漢字かんじ字体じたい混乱こんらんしょうじているとして、国語こくご審議しんぎかいが「字体じたい選択せんたくのよりどころ」として一定いってい方針ほうしんしめすことになったのが、「ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう」(2000ねん平成へいせい12ねん)12がつ最終さいしゅう答申とうしん)である[18]

ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょうでは、実際じっさい印刷物いんさつぶつ使つかわれているひょうがい漢字かんじ調査ちょうさした結果けっかひょうがい漢字かんじ代表だいひょうてきなものとして1022げ、それらについておおむねいわゆるかん字典じてんからだじゅんじた「印刷いんさつ標準ひょうじゅん字体じたい」をしめした。うち22については俗字ぞくじたいりゃく字体じたいとうを「簡易かんい慣用かんよう字体じたい」とし、示偏しめすへんしょくへん之繞しんにょう(しんにょう)の略字りゃくじたい(礻・飠・)を許容きょよう字体じたいとした(3部首ぶしゅ許容きょよう)が、常用漢字じょうようかんじひょうがい漢字かんじについては、伝統でんとうてき字体じたい𩙿)を本則ほんそくとする方針ほうしんしめされた。

ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょうでは、常用漢字じょうようかんじのほかに2000ねん平成へいせい12ねん時点じてんでの人名じんめいよう漢字かんじについても対象たいしょうがいとなっており、その時点じてん人名じんめいよう漢字かんじ別表べっぴょう字体じたい標準ひょうじゅんとすることになっている。また、1990ねん平成へいせい2ねん)に人名じんめいよう漢字かんじ追加ついかされた「(つくりのものてんがない)あけぼの」や「(1てんしんにょう〈〉の)はちす」についてもおな理由りゆうでそのままの字体じたい標準ひょうじゅんとなり、「(つくりのものてんがある)あけぼの」や「(2てんしんにょう〈〉の)はちす」は標準ひょうじゅんとはなっていない。これらの漢字かんじ2004ねん平成へいせい16ねん)のJIS X 0213改正かいせいでもそのままになっている。一方いっぽう2004ねん平成へいせい16ねん)に人名じんめいよう漢字かんじ追加ついかされた「」や「」はひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう対象たいしょうとなっている漢字かんじなので、それぞれつくりがしゃなかてんがあるものと2てんしんにょうのものが印刷いんさつ標準ひょうじゅん字体じたいとなっており、2004ねん平成へいせい16ねん)のJIS X 0213改正かいせいでも例示れいじ字形じけい印刷いんさつ標準ひょうじゅん字体じたい整合せいごうするように改正かいせいされている。字体じたい検討けんとうするじょう注意ちゅういようする。

マスメディアにおける熟語じゅくごき・えの減少げんしょう[編集へんしゅう]

当用漢字とうようかんじ制定せいていによる熟語じゅくごの「き」「え」表記ひょうきについては、使用しよう強制きょうせいされていたわけではなく、随筆ずいひつ小説しょうせつなどの文学ぶんがく作品さくひんではほとんどもちいられていなかった。しかし新聞しんぶんしゃ通信つうしんしゃ放送ほうそうきょくなどの報道ほうどう機関きかんは、日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかいめなどにより、熟語じゅくごの「き」「え」による代用だいよう表記ひょうき多用たようした。新聞しんぶんしゃ表記ひょうき使用しようするおも理由りゆうとしては、活版かっぱん印刷いんさつではルビ仮名がな)をると組版くみはんコストが増大ぞうだいするため、漢字かんじ制限せいげんがコスト低減ていげん役立やくだつという理由りゆうがあった。また、新聞しんぶん各社かくしゃ当用漢字とうようかんじ実施じっし同時どうじにルビを廃止はいししている。漢字かんじ字数じすうみも制限せいげんされていれば仮名がな不要ふようというかんがえからである。

そのため、新聞しんぶんやテレビなどのニュース報道ほうどうでは「けんじゅう」「だ」「ら」「たん」「てん」などときの表記ひょうき多用たようされていた[19]

しかし、「き」は日本語にほんごとして成立せいりつしにくいこと不評ふひょうがあることにより、日本にっぽん新聞しんぶん協会きょうかい加盟かめいしゃ用語ようご担当たんとうしゃからなるあつまりで、新聞しんぶん紙上しじょうにおける用字ようじ用語ようごについて懇談こんだんする「新聞しんぶん用語ようご懇談こんだんかい」では2000ねん平成へいせい12ねん)12月の『ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう』の答申とうしん前後ぜんごして、きの減少げんしょう検討けんとうした。

その刊行かんこうされた『記者きしゃハンドブック 新聞しんぶん用字ようじ用語ようごしゅう』では使用しようする漢字かんじやされる傾向けいこうにある。それまではきにされていた「危(きぐ)」、「はちおこり」、「めいぶく」などが漢字かんじ表記ひょうきされるようになった。また、ルビ復活ふっかつさせた新聞しんぶんもある。この傾向けいこう新聞しんぶん以外いがいマスメディアでも同様どうようであり、公共こうきょう放送ほうそうNHKでも『NHKしん用字ようじ用語ようご辞典じてん』において、きをらしている。

2020年代ねんだいはいって新型しんがたコロナウイルスの「まんえん蔓延まんえん)」や、電力でんりょく需給じゅきゅうひっぱく警報けいほうの「ひっぱく逼迫ひっぱく)」といった用語ようご頻出ひんしゅつするようになったため、きを減少げんしょうすべきかふたた議論ぎろんになっている[20]

児童じどう文学ぶんがく小学校しょうがっこう教科書きょうかしょ世界せかいではつよ漢字かんじ制限せいげんがかけられており、ならっていない漢字かんじせない、かないという教育きょういくつづいているが、むしろルビ使つかうべきでありマンガやゲームのほうがよほど漢字かんじ勉強べんきょうになるという批判ひはんもある[21]

JIS X 0213:2004[編集へんしゅう]

ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょうは、一部いちぶにおいてJIS漢字かんじ例示れいじ字形じけいとはなはだしい異同いどうがあったが、2004ねん平成へいせい16ねん)にJIS X 0213改正かいせいされ、例示れいじ字形じけいひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう整合せいごうさせた。これによりコンピュータについても、印刷いんさつ標準ひょうじゅん字体じたい沿った字形じけい標準ひょうじゅんとする環境かんきょう移行いこうしつつある。

2007ねん平成へいせい19ねん)には各種かくしゅオペレーティングシステム使つかわれるフォントが相次あいついでJIS X 0213:2004例示れいじ字形じけい対応たいおうした。マイクロソフト発売はつばいしたWindows Vistaでは、標準ひょうじゅん搭載とうさい日本語にほんごフォント(メイリオMS ゴシックMS 明朝みょうちょう)の字形じけいをJIS X 0213:2004の例示れいじ字形じけいとした。Vistaと後継こうけいWindows 7には、旧来きゅうらい字形じけい採用さいようした「JIS90 互換ごかん MS ゴシック・明朝みんちょうフォントパッケージ」が用意よういされている。Appleは、Mac OS X v10.5発売はつばいさいして、JIS X 0213:2004の例示れいじ字形じけい標準ひょうじゅんとした日本語にほんごフォントヒラギノ ProN/StdNをあらたに追加ついかした。つづ従来じゅうらいのヒラギノ Pro/Stdも附属ふぞくする。情報処理じょうほうしょり推進すいしん機構きこうは、無償むしょう公開こうかいしているIPAフォント字形じけいをVer.2からJIS X 0213:2004準拠じゅんきょとした。IPAフォントはLinuxなどオープンソースソフトウェアをふくプラットフォームわずだれでも無償むしょう利用りようできる公共こうきょうフォントと位置付いちづけられている。

2004ねん人名じんめい漢字かんじ追加ついか[編集へんしゅう]

上記じょうき、JIS X 0213:2004の改正かいせい前後ぜんごして、法務省ほうむしょうが2004ねん平成へいせい16ねん)にった人名じんめいよう漢字かんじ変更へんこう追加ついかとう)も、おおむね印刷いんさつ標準ひょうじゅん字体じたいによっておこなわれた(「あし」「ばん」「さかい」など例外れいがいもある)。

2010ねん常用漢字じょうようかんじ改定かいてい[編集へんしゅう]

2010ねん平成へいせい22ねん)に常用漢字じょうようかんじ改定かいていされた。特徴とくちょうとしては、漢字かんじ廃止はいし節減せつげんといううごきと決別けつべつするようにおおくの漢字かんじ追加ついかされたことがげられる。一般いっぱん名詞めいし代名詞だいめいしなどで幅広はばひろ使つかわれていた漢字かんじのみならず、前述ぜんじゅつきをふせぐための漢字かんじ追加ついかされた。また実生活じっせいかつじょうでは初等しょとう教育きょういくからきする必要ひつようがあるにもかかわらず、これまでふくまれていなかった都道府県とどうふけんなどに使つかわれる漢字かんじ追加ついかされた。

なお、新潟にいがたけんの「かた」は1981ねんにすでに常用漢字じょうようかんじ追加ついかされている[22]

字形じけいについては、前述ぜんじゅつひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう字形じけい参照さんしょうし、JIS X 0213:2004の例示れいじ字形じけいわせた文字もじ追加ついかした。

日本語にほんごがくとの関係かんけい[編集へんしゅう]

在来ざいらい国語こくごがくにおいては、明治めいじ以来いらい国語こくご国字こくじ問題もんだい種々しゅじゅ論議ろんぎ学問がくもんてき領域りょういきからことごと除外じょがいするものもあれば、領域りょういき一種いっしゅとして音声おんせいろん文法ぶんぽうろん同列どうれつ位置いちづけてあつかったり、「知識ちしき応用おうよう部面ぶめん」として国語こくごがく延長えんちょうのごとくあつかったりなど、利用りよう仕方しかた様々さまざまであった[1]。そのようななかで「国語こくご国字こくじ問題もんだい対象たいしょうとすべき」と明確めいかく位置いちづけたのが時枝ときえだ誠記もときである[ちゅう 4]時枝ときえだ立論りつろんは「言語げんご個人こじん実践じっせんてき表現ひょうげん行為こういないし理解りかい行為こういそのものである」とする言語げんご過程かていせつ立場たちばからなされているが、従来じゅうらい国語こくごがくにおける研究けんきゅう方法ほうほうたいして反省はんせいうながしているともいえるので[24]、どのような立場たちばからろんじるにせよ、日本語にほんご学者がくしゃ国語こくご国字こくじ問題もんだいについて関心かんしんでいるわけにはいかない[23]

関連かんれん団体だんたい[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ この建白けんぱくしょ存在そんざいをめぐっては、否定ひていてきにみる見解けんかい指摘してきしめされ、そのさい検討けんとうこころみたものに阿久澤あくざわ佳之よしゆき (2009)がある。
  2. ^ ただし正確せいかくには「マ字まじ推進すいしん簡易かんい英語えいごつうじた日本語にほんごへの近代きんだいてき語彙ごい導入どうにゅうしたもの」であったことが、研究けんきゅうによりあきらかになった[5]
  3. ^ たとえば字音仮名遣じおんかなづかいでは「かうちやう」となる「校長こうちょう」は、これにしたがうと「こーちょー」と表記ひょうきする。
  4. ^ たとえば時枝ときえだ誠記もとき (1949)などにおいて、「言語げんご実践じっせんかんする議論ぎろんであるならば、それは言語げんご現象げんしょうともに、それ自体じたい国語こくごがく対象たいしょうとならなければならない」「国語こくごにおける音声おんせい文字もじ文法ぶんぽう国語こくごがく対象たいしょうとなるのとおなじように、国語こくご主体しゅたいてき意識いしき問題もんだいとして考察こうさつ対象たいしょうとなる」とべている[23]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), p. 561.
  2. ^ 山東さんとういさお (2017), p. 61.
  3. ^ 国語こくご国字こくじ問題もんだい講座こうざ カナモジカイ
  4. ^ 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), pp. 586.
  5. ^ 臼井うすい裕之ひろゆき (2007), p. 60.
  6. ^ 臼井うすい裕之ひろゆき (2007), pp. 61–69.
  7. ^ 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), pp. 563–567.
  8. ^ 山東さんとういさお (2017), pp. 62–64.
  9. ^ a b 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), p. 569.
  10. ^ 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), p. 570.
  11. ^ 人名じんめいよう漢字かんじ新字しんじきゅう:「てつ」と「てつ”. 三省堂さんせいどう国語こくご辞典じてん. 2019ねん5がつ8にち閲覧えつらん
  12. ^ 安田やすだ敏朗としろう (2016), pp. 369–374.
  13. ^ a b 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), pp. 571–572.
  14. ^ a b 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), p. 571.
  15. ^ けんいん免許めんきょ試験しけん 警視庁けいしちょう公式こうしきサイト、2020ねん12月19にち閲覧えつらん
  16. ^ 人名じんめいよう漢字かんじ新字しんじきゅう:「」と「曾」”. Sanseido Word-Wise Web. 2014ねん10がつ9にち閲覧えつらん
  17. ^ かく国語こくご審議しんぎかい記録きろく | だい22 | ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう | 前文ぜんぶん | ひょうがい漢字かんじ字体じたい問題もんだいかんする基本きほんてき認識にんしき | 従来じゅうらい漢字かんじ施策しさくひょうがい漢字かんじ字体じたい問題もんだい”. 文化庁ぶんかちょう. 2021ねん7がつ19にち閲覧えつらん
  18. ^ かく国語こくご審議しんぎかい記録きろく | だい22 | ひょうがい漢字かんじ字体じたいひょう | はじめに”. 文化庁ぶんかちょう. 2021ねん7がつ19にち閲覧えつらん
  19. ^ き、漢字かんじ制限せいげん新聞しんぶん用語ようご原則げんそくはどうまったか 毎日まいにちことば
  20. ^ まんえん・ひっぱくになるき 難読なんどく漢字かんじダメですか:朝日新聞あさひしんぶんデジタル
  21. ^ 矢玉やだま四郎しろうまぜがきをなくそう」「どもきょう信者しんじゃをさましましょう
  22. ^ コラム 漢字かんじ現在げんざい だい221かい 新潟にいがたの「かた」の略字りゃくじいま 三省堂さんせいどうW WORD-WISE WEB 辞書じしょウェブ編集へんしゅうによることばのつぼ、2020ねん12月19にち閲覧えつらん
  23. ^ a b 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), p. 562.
  24. ^ 加藤かとう彰彦あきひこ (1961), p. 585.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

図書としょ
  • 時枝ときえだ誠記もとき國語こくご問題もんだい國語こくご教育きょういくちゅうきょう出版しゅっぱん、1949ねん11月。 ぞうていばん、1961ねん10がつ
  • 安田やすだ敏朗としろう漢字かんじ廃止はいし思想しそう平凡社へいぼんしゃ、2016ねん4がつISBN 9784582833126 
論文ろんぶん

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]