(Translated by https://www.hiragana.jp/)
字体 - Wikipedia コンテンツにスキップ

字体じたい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
1(かたな
2(
3(

漢字かんじ
書体しょたい
篆刻てんこく毛筆もうひつ
かぶとこつぶん 金文きんぶん 篆書てんしょ
古文こぶん
隷書れいしょ 楷書かいしょ
行書ぎょうしょ
草書そうしょ
木版もくはん活版かっぱん
宋朝そうちょうたい 明朝体みんちょうたい 楷書かいしょたい
字体じたい
構成こうせい要素ようそ
筆画ひっかく 筆順ひつじゅん 偏旁へんぼう 六書りくしょ 部首ぶしゅ
標準ひょうじゅん字体じたい
せつぶんかい篆書てんしょたい
さましょ 石経いしきょう
かん字典じてんたいきゅう字体じたい
しん字体じたい しん字形じけい
国字こくじ標準ひょうじゅん字体じたい つね用字ようじ字形じけいひょう
漢文かんぶん教育きょういくよう基礎きそ漢字かんじ
通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう
国字こくじ問題もんだい
当用とうよう常用漢字じょうようかんじ
同音どうおん漢字かんじによるきかえ
繁体字はんたいじ正体しょうたい - 簡体字かんたいじ
漢字かんじ廃止はいし復活ふっかつ
漢字かんじ文化ぶんかけん
なかあさこしだいしん
派生はせい文字もじ
国字こくじ 方言ほうげん のりてん文字もじ
仮名かめい たけし おんなしょ
ちぎり文字もじ おんな文字もじ 西にしなつ文字もじ
字音じおん

字体じたい(じたい)とは、図形ずけい一定いってい文字もじ体系たいけいいち視覚しかくてき認識にんしきする概念がいねんすなわ文字もじ骨格こっかくとなる「抽象ちゅうしょうてきな」概念がいねんのことである。

なお文字もじコード策定さくていたっては、文字もじ表記ひょうき体系たいけいじょうにおいて必要ひつよう句読点くとうてん括弧かっこるい、スペースなど意味いみおとたない図形ずけい記号きごう抽象ちゅうしょうふくめたグリフ (glyph) という概念がいねんもちいられる。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

文字もじは、言語げんご直接ちょくせつむすいて意味いみあらわすものであり、そのむすいた意味いみによってしゅ分類ぶんるいされる。そしてことなるしゅは、原則げんそくとしてそれぞれことなる字体じたいゆうする。れいとして1は「かたな」という意味いみかたな)であり、2は「やいば」という意味いみ)である。このとき2は1と比較ひかくしていちかくおおい、ことなる字体じたいゆうしている。

しかし、ことなるしゅ同一どういつ字体じたいゆうする場合ばあいまれにある。次項じこうれいしめすが、これらは「同形どうけい異字いじ」とばれ、視覚しかくてきにはまったく区別くべつすることができない。さらに、ひとつのしゅ複数ふくすう字体じたい併存へいそんしていることがある。それら複数ふくすう字体じたいはそれぞれことなる字源じげんから成立せいりつしている場合ばあいもあるし、おな字源じげんから発生はっせいしながらその表現ひょうげん歴史れきしてき地理ちりてき変化へんかしていった結果けっか固定こていされている場合ばあいもある。れいとして2と3を比較ひかくすると中央ちゅうおう筆画ひっかく交差こうさ差異さいられるが、これらはともに「ジン」という発音はつおんと「やいば」という意味いみである。このように字義じぎ字音じおんひとしい同一どういつしゅでありながら、たがいにことなる字体じたいゆうする文字もじ異体いたいぶ。異体いたいのなかで、規範きはんとしてえらばれている字体じたいせい字体じたいぶ。異体いたい正字せいじたいについては、それぞれ次節じせつくわしくべる。

字体じたい概念がいねん字形じけい(じけい)があるが、これは個別こべつ具体ぐたい文字もじかたち総称そうしょうであり、文字もじ視覚しかくてき差異さいはすべて字形じけいちがいとしてとらえられる。これまでれいとしてげてきた1・2・3についても、字形じけいちがいとして包括ほうかつすることができる。本来ほんらい字体じたい抽象ちゅうしょうてき概念がいねんであるからなんらかの書体しょたいによって表現ひょうげんされている字形じけいはあくまで参考さんこうのためのものにぎないとかんがえられる。しかし字形じけいつね書体しょたい変遷へんせんおうじておおきく変化へんかしているため、あらゆる書体しょたい字形じけい抽象ちゅうしょうしうる字体じたいというものを想定そうていするのはむずかしい。

文字もじコードにおいてその文字もじ集合しゅうごう包摂ほうせつ規準きじゅんしたが場合ばあいなどをのぞくと、これらしゅ字体じたい字形じけい弁別べんべつ文字もじ体系たいけい共有きょうゆうするもの同士どうしなんらかの合意ごういたっすることでおこなわれる。すなわちさきげた2と3のれいについてもこれらを字形じけいちがいにまるものととらえるか、それともことなる字体じたいとしてみとめるかということは一意いちいまるわけではない。2と3は字形じけい相違そういするだけで、異体いたいではないとかんがえることもできる。

以下いか漢字かんじ文化ぶんかけん中華ちゅうかけん日本語にほんご朝鮮ちょうせん)についてべる。

同形どうけい異字いじ

[編集へんしゅう]

同形どうけい異字いじとは前文ぜんぶんしるしたように、おながたちがということである。

  • れい1)げい ※げい略字りゃくじげいゲイげいウン
  • れい2) ※略字りゃくじトウ・トンチョウ・テイ・チン

せい字体じたい

[編集へんしゅう]

せい字体じたいとはある文字もじにおいて、もっと規範きはんてきとされる字体じたいう。とくにいくつもの字体じたいゆうする漢字かんじ問題もんだいになり、その選択せんたくのしかたによっていくつかの正字せいじ体系たいけいわれる。

正字せいじとして重要じゅうようなのはその典拠てんきょとそれを正字せいじとする判断はんだんであり、四書ししょでは小篆しょうてん隷書れいしょしめしたものが正統せいとうあかしでもあった。きよしだいの『かん字典じてん』(1716ねん以後いごは、その字体じたい規範きはんとして尊重そんちょうされた。

中国ちゅうごくきよしだいまで)

[編集へんしゅう]

かん字典じてん以前いぜん

[編集へんしゅう]

せつぶんかいしんとしてしめされている小篆しょうてんは、正字せいじ規範きはんとして尊重そんちょうされてきた。ろく字書じしょせつぶんかい経書けいしょしめされた小篆しょうてんもとづき、科挙かきょ受験じゅけんしゃのために楷書かいしょせい字体じたいしめした字書じしょである。このようなさましょとして五経ごきょう文字もじきゅうけいさまつづつくられた。

かん字典じてんたい

[編集へんしゅう]

かん熙帝こうきていによって編纂へんさんめいじられた『かん字典じてん』の字形じけいもとづく字体じたいす。全般ぜんぱんてきには字典じてんもちいられてきた字体じたいである字典じてんたい踏襲とうしゅうしているが、『正字せいじどおり』でやや過度かどにわたる規範きはん意識いしきってしめされた字形じけいおお採用さいようしている。そもそも字典じてんたいろく字書じしょ系統けいとう字形じけい代表だいひょうされるように一般いっぱんてきひろ流布るふし、もっと常用じょうようされていた字体じたいではなく小篆しょうてん字体じたいちかづけたものがすくなくなかった。そのため、『かん字典じてん』には伝統でんとうてき楷書かいしょ字形じけいことなる字形じけいおおられる。

かん字典じてん』はひろ流布るふされたため、そこにしめされた明朝体みんちょうたい字形じけい伝統でんとうてき楷書かいしょ字体じたいもとづいた明朝体みんちょうたい字形じけい区別くべつしてかん字典じてんたいという。ただし『かん字典じてん』では皇帝こうていげん燁)の「げん」を避諱ひきしてかけおこなった「」という字形じけいられるなど、正字せいじたいとしてもちいるには適当てきとうでないてんがあった。そのような実用じつようてきさない部分ぶぶん変更へんこうしたものが現在げんざい通用つうようしているかん字典じてんたいであり、そうした現在げんざいでも通用つうようしているかん字典じてんたい端的たんてき明示めいじするさいにはこれをいわゆるかん字典じてんたいんで区別くべつすることもある。

中華ちゅうかけん

[編集へんしゅう]

簡体字かんたいじ

[編集へんしゅう]

1950年代ねんだい中国ちゅうごくあらたに制定せいていされた中国ちゅうごく正字せいじ体系たいけい簡体字かんたいじ(あるいは簡化)である。それまで公認こうにんであった俗字ぞくじ略字りゃくじ)を正式せいしき字体じたいとしている。中国ちゅうごくおよびシンガポールマレーシア使用しようされている。だい漢字かんじ簡化方案ほうあんなどのように、試用しようされたが正式せいしき実施じっしされず、廃案はいあんとなったものも存在そんざいする。

繁体字はんたいじ

[編集へんしゅう]

台湾たいわん香港ほんこんマカオなどで使用しようされる、簡略かんりゃくされていない字体じたい繁体字はんたいじである。繁体字はんたいじというかたは、中国ちゅうごく大陸たいりくでのかたであり、台湾たいわん公的こうてき文書ぶんしょでは標準ひょうじゅんんでいる[1]正体しょうたいなどともばれる。地域ちいきによって異体いたいあつかいがことなったり、字体じたいこまかい異同いどうられる。中国ちゅうごくでは2013ねんの『通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう[2]附属ふぞくの『規範きはん繁体字はんたいじ異体いたい対照たいしょうひょう』(ここでいう規範きはん簡体字かんたいじす)で字体じたいしめしているが、台湾たいわん香港ほんこん字体じたいことなるものがおおい(くわしくは『通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう』を参照さんしょう)。

繁体字はんたいじは、かん字典じてんたいおなじではない。かん字典じてんたいたとえ)、とめかん字典じてんたい)、かん字典じてんたい)、しんかん字典じてんたいしん)、かん字典じてんたい)、かん字典じてんたい)、けいかん字典じてんたいけい)、そくかん字典じてんたいそく)、しびれかん字典じてんたい)、ためかん字典じてんたいため)、あおかん字典じてんたいあお)などは、かん字典じてんたいとはことなる字体じたい標準ひょうじゅんまたは一般いっぱんてきになっている。しょくへん)、しんにょう示偏しめすへん)も、かん字典じてんたいとはことなるものを使用しようする。

しん字形じけい

[編集へんしゅう]

1960年代ねんだい中国ちゅうごくで、かん字典じてんたいわる標準ひょうじゅん印刷いんさつ字体じたいとして制定せいていされたものがしん字形じけいである。より筆記ひっきたいちか字体じたい採用さいようされ、げん異体いたい整理せいりがなされている。簡体字かんたいじ混同こんどうされることがあるが、簡体字かんたいじだけでなく繁体字はんたいじふくめた字体じたい体系たいけいである。なお、中国ちゅうごく漢字かんじがくにおいては字形じけい字体じたい一般いっぱん区別くべつしない。

日本にっぽん

[編集へんしゅう]

韓国かんこく

[編集へんしゅう]

大韓民国だいかんみんこく韓国かんこく)で使用しようされている漢字かんじ(ハンチャ)は、特別とくべつ簡略かんりゃくけていない。おおむね上記じょうき繁体字はんたいじ一致いっちする。

仔細しさいれば、韓国かんこく学校がっこう教育きょういく使つかわれる漢文かんぶん教育きょういくよう基礎きそ漢字かんじ字体じたいは、かん字典じてんからだとも台湾たいわん香港ほんこん繁体字はんたいじともことなる。例示れいじすれば、とめかん字典じてんたい)、たたかえかん字典じてんたい)、つげかん字典じてんたい)、かおかん字典じてんたい繁体字はんたいじかお)、さんかん字典じてんたい繁体字はんたいじさん)、しゅうかん字典じてんたい繁体字はんたいじ)、まもるかん字典じてんたいまもる)などである。草冠くさかんむりは、かん字典じてんたい繁体字はんたいじが4かく)につくるのにたいし、韓国かんこく教育きょういくよう漢字かんじは3かく)につくる。

なお、朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく北朝鮮きたちょうせん)では漢字かんじ廃止はいししている。

異体いたい

[編集へんしゅう]

同一どういつ文字もじ観念かんねんゆうする複数ふくすう字体じたいであり、実際じっさい使用しようされる文章ぶんしょうにおいては異体いたい相互そうご置換ちかん可能かのうである。正字せいじたいたいしてことなる字体じたい異体いたいというのと同様どうようせい字体じたいべつ字体じたいにとっては異体いたいであり、その関係かんけい相互そうごてきである。漢字かんじはその字形じけいのゆれがおおきく、また書体しょたい変遷へんせんによりことなる字体じたいつことがおおい。複数ふくすう字体じたい同一どういつ文字もじについて許容きょようされることもあるが結果けっかとしてべつ意味いみてられ、その用法ようほう区別くべつされるようになるともはやべつとなる(「つるし」と「とむらい」、「ちょ」と「ちゃく」、「」と「勾」、「わらい」と「さき」など)。「かのう」は本来ほんらいきょう」とどうべつからだであったが、意味いみ分化ぶんか日本にっぽんでは「かなう」、中国ちゅうごく簡体字かんたいじでは「」のになるなどこくごとの分化ぶんかさえられる。日本にっぽんではみずのえさる戸籍こせき1872ねん)の作成さくせいさいにあった誤字ごじへき戸籍こせきにある字形じけい尊重そんちょうした結果けっか当用漢字とうようかんじ常用漢字じょうようかんじたいしての異体いたいとして認知にんちされるにいたる場合ばあいおおい。

古文こぶん)ははた始皇帝しこうていによる小篆しょうてん普及ふきゅう以前いぜん大篆だいてん(籀文)など、ふる字体じたいもとづくす。「いち」にたいする「弌」、「きょう」にたいする「かのう」など。

俗字ぞくじ使用しようれい。「」という文字もじ店名てんめい使つかわれている。

俗字ぞくじつうとは、正字せいじとしてみとめられた字体じたい以外いがい通用つうようされている文字もじす。正字せいじ規範きはんたかまりととも認知にんちされるにいたった。俗字ぞくじにはべつ部品ぶひんてるもの、おなおんをもつ部品ぶひんてるもの、画数かくすうらすもの、べつ部品ぶひんすもの、ことなる発想はっそう会意かいいつくるものなどがある。「そつ」にたいする「そつ」、「さき」にたいする「﨑」(あるいは「嵜」「㟢」(山冠やまかんむり))、「とみ」にたいする「とみ」、「」にたいする「塲」、「ふち」にたいする「ふち」(あるいは「渊」)、「あきら」にたいする「喆」、「こう」にたいする「」、「はし」にたいする「槗」「𣘺」、「さかな」にたいする「𩵋」(「さかな」のした部分ぶぶんが「れんが(灬)」ではなく「だい」)、「かい」にたいする「觧」、「みどり」にたいする「翆」など(機種きしゅ依存いぞん文字もじふくまれているため、一部いちぶのパソコンや携帯けいたい電話でんわからは閲覧えつらん出来できない場合ばあいがある)。

異体いたいれい

[編集へんしゅう]

異体いたいつぎのような種類しゅるいけられる。

  1. おな構成こうせい要素ようそをもつが、その配置はいちことなるもの(どう用字ようじ[3]
    • となり - 鄰 
    •   -  
    •  飄 - 飃 
    •  みね - みね 
    •   - きし 
    •  ぐん - 羣 
    •  鵝 - 鵞 
    •  かん - 鑒 
    •  慚 - 慙 
    •  晰 -  
    •  稿こう - 稾 
    •  ざつ - 襍 
    •  うら - うら 
    •  まつ - 枩 
    •  しま - しま - しま
  2. ことなる音符おんぷ使つかったもの
    • 棲 - 栖 
    •  綫 - せん 
    •  麪 -  
    •  卻 - 却 
    •  たけのこ - たかんな 
    •  かま - 窰 
    •  しま -  
    •  てつ - てつべつ
  3. ことなるもちいたもの
    • こう - こう 
    •   -  
    •  嘆 - 歎 
    •  睹 - 覩 
    •  だん - 煖 
    •  うつわ - 噐 
    •  おさむ - おさむ 
    •  えい - 咏 
    •  くちびる - 脣 
    •  ばっ - 罸 
    •  こう - 攷 
    •  はじ - 耻 
    •  埆 -  
    •  こぼし - 飜
  4. 一方いっぽう形声けいせいつくられ、一方いっぽう会意かいいつくられたもの
    • なみだ - なみだ 
    •  いわお - いわ 
    •  びょう -  
    •  拏 - 拿 
    •  逃 - 迯 
    •   - かのう 
    •  すぐる - 杰 
    •   - 軟
  5. 会意かいい形声けいせい仕方しかたことなり、字体じたいじょう共通きょうつうこうもないもの
    • からだ - からだ 
    •  どう - 仝 
    •  むら - 邨
  6. 略体りゃくたいへき運筆うんぴつ連綿れんめんなどによってしょうじたもの(竹冠たけかんむり草冠くさかんむり、「くち」と「ム」、「」と「」などは相互そうご置換ちかんされるれいとくおおい)
    • むしろ - むしろ 
    •  ふね - 舩 
    •  曾 -  
    •  あじ - あじ 
    •  りゅう - りゅう 
    •  てん - てん 
    •  かいこ - かいこ 
    •  ひる - ひる 
    •   -  
    •  讀 - 読 
    •  こい - こい 
    •  つて - つて

異体いたい認定にんてい

[編集へんしゅう]

一般いっぱん字義じぎ字音じおんおなじであり、おな文脈ぶんみゃく交換こうかんして使用しよう可能かのうなものを異体いたい認定にんていできる。すべての字義じぎにおいて交換こうかん可能かのうなものもあるが、一部いちぶ字義じぎにのみ通用つうようされる異体いたいもある。

ただしとく中国ちゅうごくでは字義じぎ字音じおん歴史れきしてき変化へんかにより、認定にんていむずかしい問題もんだいがある。だい1には、古代こだい字音じおんおなじでないもの。たとえばまことショクshí)とジツshí)は「まこと」という意味いみおけzhì)とzhì)は「おく」という意味いみであり同音どうおん同義語どうぎごであるものの、日本にっぽんかん字音じおんかるとおり、古代こだいおんにおいてはことなっていた。だい2に古代こだいにおいて本義ほんぎことにするもの。「おさむ」と「おさむ」、「」と「雕」などは同音どうおん同義語どうぎごであるものの、古代こだいにおいて本義ほんぎことなるであった。これらは現代げんだい観点かんてんからえば異体いたい認定にんていできるが、古語こご観点かんてんからえば異体いたいみとめることができないものである。

ぎゃく古代こだいにおいて異体いたいであったものがのちには意味いみけをして異体いたい関係かんけいでなくなったものがある。たとえばさきしんかんだい文献ぶんけんで「さとし」と「たとえ」はともに「さとす・たとえる」の意味いみをもち通用つうようされているが、のちには「さとす」は「さとし」、「たとえる」には「たとえ」が使つかわれるようになった。とくことにする異体いたいあいだでこのような事例じれいおおい。以前いぜん異体いたい関係かんけいであったものとして、わきおびえちょうつるしちょはて・菓、棋・さきわらいちゃ・荼などがある。

なお異体いたい関係かんけいにある文字もじがすべて正字せいじ俗字ぞくじけられるわけではない。時代じだい流行りゅうこう個人こじん趣向しゅこうなどにより同様どうようひろ使つかわれてきたものがおおい。「わん」や「わん」、「やり」や「鎗」、「こう」や「砿」など同音どうおん同義語どうぎごであるにもかかわらず、材質ざいしつというこまかなニュアンスのちがいなどでも次々つぎつぎ異体いたいつくられる。これらを一概いちがい整理せいり統一とういつすることは非常ひじょう困難こんなんである。

文字もじ集合しゅうごう異体いたい

[編集へんしゅう]

JIS X 0208などの文字もじ集合しゅうごうでは基本きほんてき情報じょうほう交換こうかんよう文字もじしめすのが目的もくてきであるため、異体いたいごとにコードポイントをったりはしないことが原則げんそくである(ただし固有名詞こゆうめいし対応たいおう必要ひつようせいなどから、複数ふくすう異体いたい個別こべつのコードがあたえられているケースが多数たすうられる)。そのため、コンピュータじょう表示ひょうじされる文字もじフォントつく場合ばあいにそのいちれいとして採用さいようした文字もじにすぎない。符号ふごうじょうただしい文字もじだがフォントの関係かんけいじょう意図いとしていた字体じたいちが場合ばあいおおく、異体いたい包摂ほうせつひとつのコードポイントに異体いたい統合とうごう)せずにべつにできる方法ほうほう必要ひつようというこえもある。たとえばいわゆる「=はしごだか」と「こう=くちだか」では符号ふごう区点くてんひとつしかないが、べつのコードポイントをあたえるべきだとのこえもある。

Unicodeでも基本きほんてき事情じじょう同様どうようであるがその一方いっぽうでさまざまな既存きそん規格きかくさいに「はら規格きかく分離ぶんり (source code separation) の原則げんそく」によって異体いたいべつのコードポイントがあたえられたものもあり(「=はしごだか」と「こう=くちだか」もこれに該当がいとう)、さらに混沌こんとんとしている。

Unicodeでは、漢字かんじ異体いたい問題もんだいについては「異体いたいタグ (variant tag)」の導入どうにゅうにより包括ほうかつてき解決かいけつ企図きとするとしていた。実際じっさいにUnicode 3.2では異体いたいタグは「異体いたいセレクタ異体いたい選択せんたく字形じけい選択せんたくえい: Variation Selector)」という名称めいしょうで16文字もじぶん (U+FE00 - U+FE0F) が、Unicode 4.0では240文字もじぶん (U+E0100 - U+E01EF) が追加ついかされた。規格きかくしょには「先行せんこうする1文字もじわせることによって、あらかじめ定義付ていぎづけされたことなる字体じたい任意にんい選択せんたくできる」とあり、理屈りくつうえでは1文字もじにつき256種類しゅるい異体いたい情報じょうほうつことができるようになった。その2006ねん1がつ13にち漢字かんじ異体いたいセレクタを使つかうための漢字かんじ字形じけいデータベース (Ideographic Variation Database) への登録とうろく手続てつづきがさだめられ2007ねん12月14にち最初さいしょ異体いたいコレクションとしてAdobe-Japan1登録とうろくされた。なお、異体いたいセレクタのうちとく漢字かんじかんするものは「IVS (Ideographic Variation Selector)」とばれる。2009ねんWindows 7Mac OS X 10.6 (Snow Leopard) といったOSがIVSに対応たいおう、Adobe製品せいひんやJustsystem製品せいひんなどが順次じゅんじアプリケーションレベルでIVSに対応たいおうしていった[4]Microsoft Officeは2013バージョンから正式せいしきにIVSに対応たいおうしている(2007と2010はアドオンで対応たいおう)。

IVSなどに対応たいおうしていない環境かんきょうで、文字もじコードに依存いぞんせず異体いたいえるには以下いかのような手法しゅほうられている。

フォントえ(うらフォント方式ほうしき
おなじコードポイントに異体いたい収録しゅうろくしたフォントを複数ふくすう異体いたい種類しゅるいぶん用意よういし、それによって字体じたいえをおこなう。たとえば「日本語にほんご・JIS90規格きかく」「日本語にほんご・JIS2004規格きかく」「中国ちゅうごく簡体字かんたいじ」「中国ちゅうごく繁体字はんたいじ台湾たいわん)」「中国ちゅうごく繁体字はんたいじ香港ほんこん)」「朝鮮ちょうせん」のフォントにそれぞれことなるグリフがふくまれているわせをげる。以下いかのうち背景はいけいしょくグレーにした文字もじのタイプのフォントだと代用だいようかない。
日本語にほんご 中国ちゅうごく 朝鮮ちょうせん
JIS90 JIS2004 簡体字かんたいじ 繁体字はんたいじ
台湾たいわん 香港ほんこん
かずら かずら かずら かずら かずら かずら かずら
すすき すすき すすき すすき すすき すすき すすき
せんじ せんじ せんじ せんじ せんじ せんじ せんじ
あざけ あざけ あざけ あざけ あざけ あざけ あざけ
りゅう りゅう りゅう りゅう りゅう りゅう りゅう
さむ さむ さむ さむ さむ さむ さむ
かえし かえし かえし かえし かえし かえし かえし
CIDフォントOpenTypeフォントによる字体じたい
CIDフォントおよびその後継こうけいであるOpenTypeフォントはひとつの文字もじコードに複数ふくすうのグリフを関連付かんれんづけさせたテーブルを内蔵ないぞうしており、Adobe-Japan1文字もじ集合しゅうごう対応たいおうしたOS、ウェブブラウザをふくむアプリケーションで字体じたいえが可能かのうとなっている。

上記じょうき手法しゅほうはいずれもフォントに依存いぞんした異体いたいえであり、ことなった環境かんきょう同士どうしでの情報じょうほう交換こうかんにはフォントみなどの手段しゅだん必要ひつようとされる。フォントみができる文書ぶんしょフォーマットとしては「PDF」などがげられる。Adobe-Japan文字もじ集合しゅうごうには対応たいおうだが「Microsoft Word」もフォントみに対応たいおうしている。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ 中華民國ちゅうかみんこく教育きょういく へん、『標準ひょうじゅんあずか簡化對照たいしょうしゅさつ』、2011ねん台北たいぺい中華民國ちゅうかみんこく教育きょういく [1]
  2. ^ 国務こくむいんべんおおやけちょう秘書ひしょきょく、『通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう』、2013ねん6がつ18にち北京ぺきん国務こくむいんべんおおやけちょう秘書ひしょきょく
  3. ^ あき」と「秌」はどちらも「あき」とむ。このように漢字かんじへんつくり(つくり)がわってもおなかたを...”. レファレンス協同きょうどうデータベース. 2020ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  4. ^ IVSについて”. 株式会社かぶしきがいしゃモリサワ. 2014ねん10がつ20日はつか閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]