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日本にっぽんにおける漢字かんじ

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漢字かんじ
書体しょたい
篆刻てんこく毛筆もうひつ
かぶとこつぶん 金文きんぶん 篆書てんしょ
古文こぶん
隷書れいしょ 楷書かいしょ
行書ぎょうしょ
草書そうしょ
木版もくはん活版かっぱん
宋朝そうちょうたい 明朝体みんちょうたい 楷書かいしょたい
字体じたい
構成こうせい要素ようそ
筆画ひっかく 筆順ひつじゅん 偏旁へんぼう 六書りくしょ 部首ぶしゅ
標準ひょうじゅん字体じたい
せつぶんかい篆書てんしょたい
さましょ 石経いしきょう
かん字典じてんたいきゅう字体じたい
しん字体じたい しん字形じけい
国字こくじ標準ひょうじゅん字体じたい つね用字ようじ字形じけいひょう
漢文かんぶん教育きょういくよう基礎きそ漢字かんじ
通用つうよう規範きはん漢字かんじひょう
国字こくじ問題もんだい
当用とうよう常用漢字じょうようかんじ
同音どうおん漢字かんじによるきかえ
繁体字はんたいじ正体しょうたい - 簡体字かんたいじ
漢字かんじ廃止はいし復活ふっかつ
漢字かんじ文化ぶんかけん
なかあさこしだいしん
派生はせい文字もじ
国字こくじ 方言ほうげん のりてん文字もじ
仮名かめい たけし おんなしょ
ちぎり文字もじ おんな文字もじ 西にしなつ文字もじ
字音じおん

日本にっぽんにおける漢字かんじ(にほんにおけるかんじ)は中国ちゅうごく起源きげん文字もじで、古代こだい日本にっぽん列島れっとう伝来でんらいした。日本にっぽんにおいて漢字かんじは、表音ひょうおん文字もじである仮名かめい平仮名ひらがな片仮名かたかな)とならんで日本語にほんご表記ひょうきするための主要しゅよう文字もじとなっている。現在げんざい日本語にほんご表記ひょうき文部もんぶ科学かがくしょう漢字かんじ制限せいげん常用漢字じょうようかんじ教育きょういく漢字かんじ)をけている。漢字かんじ字体じたいも、古典こてん刊行かんこう書道しょどう一部いちぶ人名じんめい企業きぎょうめいといった特定とくてい分野ぶんや以外いがいでは、常用漢字じょうようかんじひょうもとづいたいわゆるしん字体じたい使つかうことがおおい。

また、英語えいごけんフランス語ふらんすごけんで「Kanji」と場合ばあいは、日本にっぽん漢字かんじ狭義きょうぎではしん字体じたいす。

日本語にほんご表記ひょうき[編集へんしゅう]

日本国にっぽんこく憲法けんぽう原本げんぽん上諭じょうゆ」(1ページ)。漢字かんじ仮名かめい混用こんようされている。

現代げんだいにおける日本語にほんご一般いっぱんてき表記ひょうきほう漢字かんじ仮名がなじりぶんであり、漢字かんじ平仮名ひらがなむかし法令ほうれいなどでは片仮名かたかな)をまじえて表記ひょうきする。漢字かんじ実質じっしつてき意味いみあらわかたり使つかわれ、平仮名ひらがなおも活用かつよう語尾ごび[ちゅう 1]助詞じょし使つかわれる。朝鮮ちょうせんなどでは漢字かんじしゅとして字音じおんにしか使つかわれないのにたいし、日本語にほんごでは和語わごにも使つかわれ、外来がいらいのぞいてほとんどのかたり使つかうことができる。煙草たばこ(タバコ)や合羽かっぱ(カッパ)、珈琲こーひー(コーヒー)などだい航海こうかい時代じだい以降いこうヨーロッパからはいった語彙ごいには、外来がいらいであるにもかかわらず漢字かんじ使つかわれるものがある。

日本にっぽん事物じぶつあらわしたり、だい航海こうかい時代じだいだけでなく幕末ばくまつ明治めいじ欧米おうべい諸国しょこくからはいった概念がいねん用語ようご日本語にほんごれたりするため、中国ちゅうごく大陸たいりくにはない和製わせい漢字かんじ国字こくじ多数たすうされた(後述こうじゅつ)。

日本語にほんごにおける文字もじ使用しようは、一般いっぱん5世紀せいきから6世紀せいきころ漢字かんじ本格ほんかくてき輸入ゆにゅうとともにはじまり、漢字かんじ日本語にほんごおと表記ひょうきするために利用りようした万葉仮名まんようがなつくられた、とされている。一方いっぽう藤堂とうどうあきらひかても3世紀せいきから5世紀せいきにはにちちゅう両国りょうこく漢字かんじ日本にっぽんはいっていたことはたしかであるととなえており[1]もり浩一こういち北九州きたきゅうしゅう弥生やよい時代じだい銅鏡どうきょうには大抵たいてい漢字かんじ文章ぶんしょうあらわされており、倭人わじん銘文めいぶん内容ないよう理解りかいできたとすれば、漢字かんじ受容じゅよう歴史れきしおおきくわってくるとしている[2]。また、『こう漢書かんしょ』や『倭人わじんでん』におけるにちちゅう外交がいこう記述きじゅつからも、おそくとも2、3世紀せいきには支配しはいしゃそうにおける文字もじ使用しよう想定そうていするほう自然しぜんであるとの意見いけんもある[3]一方いっぽう東日本ひがしにっぽんでは、平安へいあん時代じだい前期ぜんきいたっても使用しようされる漢字かんじかぎられていた[4]当該とうがい地域ちいきでは漢字かんじ記号きごうとしてしか認識にんしきされておらず、古代こだい漢字かんじ普及ふきゅうにはいちじるしい地域ちいき偏差へんさ存在そんざいしていたことが確認かくにんされている[5]

宮脇みやわき淳子じゅんこは、「朝鮮半島ちょうせんはんとうかわすべて『こう』と表記ひょうきされるということです。シナ大陸たいりくでは、黄河こうがは『かわ』で、揚子江ようすこうすなわち長江ながえは『こう』です。つまり、南部なんぶかわは『こう』で、北部ほくぶは『かわ』とあらわす。ということは、シナ大陸たいりくきたみなみでは言葉ことばちがっていたということであり、朝鮮半島ちょうせんはんとう最初さいしょはいった漢字かんじ使つか人々ひとびとは、うみ経由けいゆしてみなみからはいった可能かのうせいたかいとかんがえられるわけです。その理由りゆうとして、つばめこく東側ひがしがわひらけるのがおそかったことがげられます。その地域ちいき一帯いったい北方ほっぽう騎馬きばみん勢力せいりょくけんだから、しょうたいはすぐにおそわれるので安全あんぜんなルートじゃない。高句麗こうくりはいっても靺鞨などが蟠踞ばんきょしています。そこでうみ利用りようするわけですが、同様どうよう漢字かんじ使つかひとたちは、日本にっぽん列島れっとうにも東シナ海ひがししなかい経由けいゆ可能かのうせいたかいのです。朝鮮半島ちょうせんはんとうから日本にっぽんへの渡来とらいじんは、いわばだいだったというせつが、現在げんざい、かなり有力ゆうりょくになっています」と指摘してきしている[6]

やがて、漢字かんじ草体そうたいもと平安へいあん時代じだい初期しょき平仮名ひらがなが、漢字かんじ一部いちぶもと片仮名かたかなつくられたとされる。

なお、仮名かめいたいして漢字かんじ真名まな(まな)と[7]

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日本語にほんごにおいては、ひとつの漢字かんじおおくのことなる発音はつおんがあることがおおい。また、おな発音はつおん漢字かんじ多数たすうあることもめずらしくない。

かたは「音読おんよ」と「訓読くんよ」の2種類しゅるい大別たいべつされる[8][9]

音読おんよ[編集へんしゅう]

音読おんよは、中国ちゅうごく起源きげんかたである。呉音ごおん漢音かんおん唐音とういん慣用音かんようおんがある。

呉音ごおんは、5-6世紀せいきごろつたわった漢字かんじおんである。通説つうせつでは、中国ちゅうごく六朝りくちょう時代じだい南部なんぶ地方ちほうから直接ちょくせつあるいは朝鮮ちょうせん半島はんとう経由けいゆして日本にっぽんつたわったとされるが、これを実証じっしょうできる証拠しょうこはない。実際じっさいには、仏典ぶってんなどにもとづく漢音かんおん以前いぜん伝統でんとうてきかたが、時代じだい地域ちいきなどを考慮こうりょせずにまとめて呉音ごおんとされてきた経緯けいいがある。漢音かんおんは、奈良なら時代じだいから平安へいあん時代じだいにかけてさかんにおくられた遣唐使けんとうしおも渡航とこうさき西北せいほく長安ながやす)や留学りゅうがくそうが、とう首都しゅと長安ながやすまなんだかた輸入ゆにゅうされた。さら鎌倉かまくら時代ときよから室町むろまち時代ときよにかけて、禅僧ぜんそう留学りゅうがく関連かんれんしょ伝来でんらい民間みんかん貿易ぼうえきにより「唐音とういん」とばれるかたつたわった。このうちもっと体系たいけいてきなのは漢音かんおんこういん』や『しゅういん』と対応たいおう関係かんけいられる[よう出典しゅってん]慣用音かんようおん間違まちがって定着ていちゃくしたとかったものや体系たいけいわないものなどを大正たいしょう時代じだい以降いこうこうんでいる。

音読おんよみと中国ちゅうごく[編集へんしゅう]

日本にっぽんかん字音じおん特徴とくちょうは、中国ちゅうごくすべて1音節おんせつであるものが2音節おんせつされるものがすくなくないことである。また語末ごまつ閉鎖へいさおん[p][t][k]入声にっしょう)は日本語にほんごでは「フ・ツ・チ・ク・キ」となった。このうち[p]たる「フ」は日本語にほんごぎょうてんよび現象げんしょうあいまって「ウ」に変化へんかし(「しゅう」シフ→シュウ)、あるいは促音そくおん「ッ」や「ツ」として定着ていちゃくしたものもある(「あつ」アフ→アツ)。語末ごまつ軟口蓋なんこうがい鼻音びおん[ŋ]母音ぼいんされ「ウ・イ」となった(唐音とういんでは「ン」)。また古代こだい中国語ちゅうごくごには清音せいおん無声音むせいおん)・濁音だくおん有声音ゆうせいおん)の対立たいりつとともにゆうおんおん対立たいりつがあったが、日本語にほんごにはこの対立たいりつがないため字音じおん反映はんえいされていない。また声調せいちょう基本きほんてき保持ほじされていない。これらのことにより、同音どうおん異義いぎおおくなっている。

訓読くんよ[編集へんしゅう]

榊原さかきばら撃剣げっけんかい絵図えずさきがけとき芳年ほうねんふで日本人にっぽんじん氏名しめいは、基本きほんてき漢字かんじしるされることがおおい。

訓読くんよは、個々ここ漢字かんじあらわ意味いみすで存在そんざいしていた日本語にほんご関連かんれんづけることであり、日本語にほんご表記ひょうきにももちいた。このさい漢字かんじかたが、現在げんざい訓読くんよみの起源きげんとなっている。

くん」とは、中国ちゅうごくにおいては難解なんかいかたりをわかりやすいかたり説明せつめいしたり、古語こご現代げんだいえたり、方言ほうげん共通きょうつう説明せつめいするものであるが、日本にっぽんでは中国語ちゅうごくご外国がいこくであるため日本語にほんご翻訳ほんやくすることを意味いみする。漢字かんじ外国がいこく中国ちゅうごく)をあらわ文字もじであるため日本語にほんご語彙ごい一対一いちたいいち対応たいおうするべくもなく、ひとつの漢字かんじおおくの字訓じくんつくられたが、やがて漢文かんぶん訓読くんどく素読そどくする習慣しゅうかんあいまって、日本語にほんご一語いちごでは説明せつめいできない微妙びみょう意味合いみあいはて、ひとつの漢字かんじにつけられるくんはできるだけ少数しょうすう訓読くんよみに限定げんていするように固定こていしていった。このように日本にっぽんでは漢字かんじ訓読くんよみが定着ていちゃくし、漢字かんじによって日本語にほんご表記ひょうきする技術ぎじゅつ発展はってんさせていった。

たとえばだこを「たこ」、椿つばきを「つばき」、おきを「おき」とむが、中国ちゅうごくではまったちがった意味いみである。このように日本にっぽんだけでつうじる訓読くんよみを「国訓こっくん」という。動植物どうしょくぶつとくさかな名前なまえ(「さけ」=本来ほんらいは「さけ」でなく「ふぐ」の、「あゆ」=本来ほんらいは「あゆ」でなく「なまず」のなど)には国訓こっくんおおい。

重箱読じゅうばこよみ・湯桶読ゆとうよ[編集へんしゅう]

音読おんよ訓読くんよが1なか混用こんようされることがある。音読おんよみ+訓読くんよみのじゅんであるものを重箱読じゅうばこよ(ジュウ+ばこ)、訓読くんよみ+音読おんよみのじゅんであるものを湯桶読ゆとうよ(ゆ+トウ)という。

どうつづり異義いぎ[編集へんしゅう]

日本語にほんごでは漢字かんじみが複数ふくすうあるが、場合ばあいによっては、漢字かんじのみからなるある特定とくていかたり複数ふくすうかたがある場合ばあいがある。たとえば「仮名かめい」というかたりには、「かり名前なまえ意味いみする(カメイ)」というみと、「ひらがなとカタカナを総称そうしょうする文字もじ分類ぶんるいである(カナ)」というみとがある。

おくりがな[編集へんしゅう]

日本語にほんご用言ようげん動詞どうし形容詞けいようし形容動詞けいようどうし)には活用かつようがあるので、その活用かつようする部分ぶぶんだけを平仮名ひらがな表記ひょうきして漢字かんじのちくわえることおこなわれる。

仮名がな(ふりがな)[編集へんしゅう]

日本語にほんご仮名かめい漢字かんじ多用たようする言語げんごであり、(場面ばめんによってはラテン文字もじアルファベットなどももちいられる)仮名かめい基本きほんてき表音ひょうおん文字もじ漢字かんじ表意ひょうい文字もじ正確せいかくにはひょう文字もじ)である。そこで、漢字かんじ発音はつおんかならずしもかりやすくない場合ばあいなどに、漢字かんじ発音はつおん仮名かめいによって併記へいきすることがしばしばおこなわれる。これを「みがな」「仮名がな(ふりがな)」「ルビ」などとぶ。

国字こくじ[編集へんしゅう]

日本にっぽんつくられた漢字かんじ国字こくじう(国字こくじには意味いみ、あるいは日本にっぽん中国ちゅうごく以外いがいくにつくられた国字こくじ存在そんざいするが、ここではべない)。国字こくじにはとうげ(とうげ)・はたけ(はたけ)・つじ(つじ)などがげられる。しゅとして音読おんよいのが特徴とくちょうである。ただしはたらけ(ドウ)・せん(セン)のように音読おんよみを少数しょうすう例外れいがいもある。また中国ちゅうごくれられた国字こくじ少数しょうすうながら存在そんざいする(「せん」など)。

しん字体じたい漢字かんじ制限せいげん[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだい中期ちゅうきにおける国学こくがく勃興ぼっこう以来いらい日本語にほんご文字もじ改革かいかくについて議論ぎろんがあり、漢字かんじ廃止はいし制限せいげんなどが議論ぎろんされていた。1923ねん大正たいしょう12ねん)に選定せんていされた常用漢字じょうようかんじひょう皮切かわきりとして、1940ねん日本にっぽん陸軍りくぐんが「兵器へいき名称めいしょうよう制限せいげん漢字かんじひょう」を決定けっていし、兵器へいき使つかえる漢字かんじを1235制限せいげんした。1942ねんには国語こくご審議しんぎかいが、かく省庁しょうちょうおよび一般いっぱん社会しゃかい使用しようする漢字かんじ標準ひょうじゅんしめした合計ごうけい2528の「標準ひょうじゅん漢字かんじひょう」を答申とうしんしている[10]

GHQ占領せんりょう1946ねん昭和しょうわ21ねん)、占領せんりょう方針ほうしんとして漢字かんじ廃止はいし政府せいふ決定けっていされ、廃止はいしまでの当面とうめん使用しようする漢字かんじである1850当用漢字とうようかんじさだめた当用漢字とうようかんじひょう告示こくじされた。1949ねん昭和しょうわ24ねん)に告示こくじされた当用漢字とうようかんじ字体じたいひょうによって俗字ぞくじ略字りゃくじ筆写ひっしゃたいおお採用さいようしたしん字体じたい使つかわれるようになった。ただし、しん字体じたい俗字ぞくじ略字りゃくじ採用さいようであり、体系たいけいてき字体じたい簡略かんりゃくではないとして、漢字かんじ体系たいけい破壊はかいした、と批判ひはんされることがある。たとえば、「りゅうりゅう)」と「かさねかさね)」と「たきたき)」、「かりかり)」と「ひまひま)」、「どくどく)」と「さわさわ)」と「にごにご)」などは、本来ほんらいおな構成こうせい要素ようそつにもかかわらず、字体じたい変更へんこうによりべつ構成こうせい要素ようそえてしまうものである。また、1948ねん当用漢字とうようかんじのうち義務ぎむ教育きょういくおしえる881えらんだ当用漢字とうようかんじ別表べっぴょう告示こくじされた。これは教育きょういく漢字かんじばれ、1958ねん、この881について便宜上べんぎじょう統一とういつした筆順ひつじゅん文部省もんぶしょうから刊行かんこうされた。1981ねん内閣ないかく告示こくじ常用漢字じょうようかんじひょう(1945)からは漢字かんじひょう漢字かんじ制限せいげん目指めざすものではなく目安めやすとなった。さらに2010ねん改定かいてい常用漢字じょうようかんじひょうには2136さだめられている。そのうち教育きょういく漢字かんじは1026となった。

漢字かんじ研究けんきゅう[編集へんしゅう]

日本にっぽん編纂へんさんされた最古さいこ漢字かんじ字典じてん平安へいあん時代じだい初期しょき空海くうかい編纂へんさんしたという『篆隷万象ばんしょう名義めいぎ』であるといわれる。つぎあきらじゅうによって『新撰しんせんきょう』といった漢和かんわ辞典じてんまれた。院政いんせいには『類聚るいじゅう名義めいぎしょう』がつくられている。これらは漢字かんじ字形じけいによって分類ぶんるいした字書じしょたまへん』の影響えいきょうけているという。室町むろまち時代じだいには『やまとだまへん』(かずたまへん)という漢和かんわ辞典じてんまれ、室町むろまち江戸えど時代じだいつうじて流行りゅうこうし、「やまとだまへん」が漢和かんわ辞典じてん代名詞だいめいしであったという。

一方いっぽう、『しかみやび』の影響えいきょうけ、漢字かんじ意味いみべつ分類ぶんるいしたものには、平安へいあん時代じだい中期ちゅうき源順みなもとのしたごうによって編纂へんさんされた『和名わみょう類聚るいじゅうしょう』がある。また、漢字かんじ字音じおん研究けんきゅう分類ぶんるいした韻書いんしょとして、南北なんぼくあさ時代じだいの『聚分いんりゃく』がある。

日本にっぽんにおける漢字かんじやその出典しゅってんとなる漢籍かんせき研究けんきゅうは、儒学じゅがくさかんだった江戸えど時代じだいから、さらにきん現代げんだいにかけて拡大かくだい深化しんかした。戦前せんぜん戦後せんごとおして編纂へんさんされた『だい漢和かんわ辞典じてん』は、用例ようれいがほとんどない漢字かんじふくめて5まん以上いじょう収録しゅうろくする世界せかい最大さいだい漢字かんじ辞典じてんである。

2018ねん平成へいせい30ねん)3がつには「日本にっぽん漢字かんじ学会がっかい」(初代しょだい会長かいちょうおもねつじ哲次てつじ)が設立せつりつされた[11]

筆順ひつじゅんかんする誤解ごかい[編集へんしゅう]

筆画ひっかくならべていく順番じゅんばん筆順ひつじゅんという。漢字かんじには本来ほんらい固定こていされた筆順ひつじゅんはない。筆順ひつじゅん楷書かいしょ行書ぎょうしょ草書そうしょなど書体しょたい流派りゅうはによりことなっており、統一とういつされたものではない。しかし1958ねん昭和しょうわ33ねん)、『筆順ひつじゅん指導しどうびき』が文部省もんぶしょうからされて以降いこう学校がっこう教育きょういくでこれを絶対ぜったいてきただしいものとしておしえている傾向けいこうがある[12]。また、現代げんだい日本にっぽんでは現在げんざいたてきと横書よこがのうち、横書よこがきが優勢ゆうせいである。しかし、『筆順ひつじゅん指導しどうびき』における筆順ひつじゅんたてきにてきしたものである[13]

活字かつじやフォントにおける漢字かんじ表記ひょうき[編集へんしゅう]

中国ちゅうごく漢字かんじ象形しょうけい文字もじとして、その成立せいりつ時代じだいにおいてすでよしぼくうらないなど呪術じゅじゅつ宗教しゅうきょうてき要素ようそふくんでおり(甲骨文字こうこつもじ)、その造型ぞうけいせいささえられていた。漢字かんじのち篆書てんしょ隷書れいしょ楷書かいしょ行書ぎょうしょ草書そうしょなどの書体しょたい完成かんせい日本にっぽんにもつたわり、日本にっぽんにおいてもそれぞれの書体しょたいつうじて追求ついきゅう創造そうぞうこころみられている。きん現代げんだいでは活字かつじ基準きじゅんとしたフォント創作そうさくさかんである。

一方いっぽう漢字かんじ学者がくしゃ白川しらかわしずは『文字もじ逍遥しょうよう』に「漢字かんじ本質ほんしつからいえば、あの活字かつじとして図形ずけいしきされたものは、むしろ文字もじ符号ふごうであり、装飾そうしょくたいであって、文字もじそのものではないともいえるのである。文字もじ図形ずけいてき整形せいけいしようとする常用漢字じょうようかんじにおける字形じけいかんは、あきらかにそのような頽廃たいはい堕落だらくのうちからまれたものである。」としるしている[14]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ いわゆる助動詞じょどうしふくむ。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 東京大学とうきょうだいがく文学部ぶんがくぶ講義こうぎ、「中国ちゅうごく音韻おんいんがくしょ問題もんだい」、1948ねん
  2. ^ もり浩一こういち日本にっぽん神話しんわ考古学こうこがく朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1999ねん
  3. ^ たから寿男としおだいいちしょう 戦後せんご神武じんむ天皇てんのう」『「神武じんむ東征とうせい」のはらぞう青垣あおがき出版しゅっぱん、2006ねん
  4. ^ 平川南ひらかわみなみ 「墨書ぼくしょ土器どきとその字形じけい : 古代こだい村落そんらくにおける文字もじ実相じっそう」『国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく』35かん 国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかん、1991ねん11月、72ぺーじ
  5. ^ 平川ひらかわ、1991ねん、124ぺーじ
  6. ^ 宮脇みやわき淳子じゅんこ朝鮮半島ちょうせんはんとうをめぐる歴史れきし歪曲わいきょく舞台裏ぶたいうら かんりゅう時代じだいげき朝鮮ちょうせん真実しんじつ扶桑社ふそうしゃ扶桑社ふそうしゃ新書しんしょ〉、2020ねん4がつ30にち、46ぺーじISBN 978-4594084523 
  7. ^ しん明解めいかい国語こくご辞典じてん三省堂さんせいどう真名まな」より
  8. ^ Gunarto, Hary (2004-02). “Building dictionaries as basic tools for machine translation in natural language processing applications”. たていのちかん言語げんご文化ぶんか研究けんきゅう (立命館大学りつめいかんだいがく国際こくさい言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ) 15 (03): 177-185. https://bibdb.ninjal.ac.jp/bunken/ja/article/100000146695 2020ねん4がつ4にち閲覧えつらん. 
  9. ^ ハリー・グナルトのウェブサイト Gunarto's Kanji Learning Systems
  10. ^ 安岡やすおか孝一こういち (2011ねん2がつ24にち). “てつ」と「てつ”. 三省堂さんせいどう WORD-WISE WEB. ことばのコラム 人名じんめいよう漢字かんじ新字しんじきゅう だい82かい. 2020ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  11. ^ 日本にっぽんはつ漢字かんじ学会がっかい設立せつりつ 京都きょうとかんけん協会きょうかいけで”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん. 共同通信きょうどうつうしん. (2018ねん3がつ30にち). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28781350Q8A330C1AC1000/ 2018ねん6がつ2にち閲覧えつらん 
  12. ^ 漢字かんじの「ただしい筆順ひつじゅん存在そんざいしないのに… 教科書きょうかしょ掲載けいさい入試にゅうし出題しゅつだいされることも|漢字かんじ学習がくしゅう どこまで必要ひつよう?|朝日新聞あさひしんぶんEduA
  13. ^ 押木おしき秀樹ひでき 横書よこが移行いこうともな変化へんかについて
  14. ^ 白川しらかわ文字もじ逍遥しょうよう) PP..353-354

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]