国粋こくすい主義しゅぎ

国粋こくすい主義しゅぎ（こくすいしゅぎ、英語えいご: nationalism）とは、国家こっか主義しゅぎ、民族みんぞく主義しゅぎと同おなじくナショナリズム（Nationalism）、ナショナリティ（Nationality）の日本語にほんごにおける訳語やくごの一ひとつ。

近代きんだい日本にっぽんにおいては欧化おうか主義しゅぎに対抗たいこうして、日本にっぽんの文化ぶんか・伝統でんとうの独自どくじ性せいを強調きょうちょう・発揚はつようし、これを保守ほしゅしようとする政治せいじ思想しそうである。日本にっぽん主義しゅぎとも呼よばれる。

広義こうぎには国家こっか主義しゅぎ（ナショナリズム）や愛国あいこく主義しゅぎの極端きょくたんな一いち形態けいたいを指さし、ドイツのナチズムやイタリアのファッショまでも含ふくむ場合ばあいもある。

日本にっぽんにおける国粋こくすい主義しゅぎ

国粋こくすい主義しゅぎは、幕末ばくまつから台頭たいとうした尊王そんのう攘夷じょうい論ろんを源流げんりゅうとし、明治維新めいじいしん後こうは大日本帝国だいにっぽんていこく政府せいふによる条約じょうやく改正かいせい交渉こうしょうや欧化おうか政策せいさくへの反発はんぱつとして現あらわれる。政府せいふは西洋せいよう文化ぶんかの積極せっきょく的てき導入どうにゅうにより日本にっぽんの近代きんだい化かを図はかり、欧化おうか主義しゅぎ的てき政策せいさくを推進すいしんしていた。

「不平等ふびょうどう条約じょうやく#幕末ばくまつ・明治めいじ期き日本にっぽん」も参照さんしょう

「国粋こくすい主義しゅぎ」の語かたりは、1888年ねん、志賀しが重昂しげたかや三宅みやけ雪嶺せつれいらの政教せいきょう社しゃが出版しゅっぱんしていた雑誌ざっし『日本人にっぽんじん』に、政府せいふの欧化おうか政策せいさくに反発はんぱつする志賀しがの論文ろんぶん「国粋こくすい保存ほぞん旨むね義よし」が発表はっぴょうされたのをきっかけとして使つかわれるようになった。この「国粋こくすい保存ほぞん旨むね義よし」が「国粋こくすい」や「国粋こくすい主義しゅぎ」の語源ごげんである。志賀しがはこの論文ろんぶんで政府せいふの欧化おうか政策せいさくを非難ひなんし、日本にっぽん本来ほんらいの長所ちょうしょを重視じゅうしすることを主張しゅちょうした。

徹頭徹尾てっとうてつび日本にっぽん固有こゆうの旧きゅう分子ぶんしを保存ほぞんし旧きゅう原げん素もとを維持いじせんと欲ほっするものに非ひず、只ただ泰西たいせいの開化かいかを輸入ゆにゅうし来くるも、日本国にっぽんこく粋いきなる胃い官かんを以もって之これを咀嚼そしゃくし之これを消化しょうかし、日本にっぽんなる身体しんたいに同化どうかせしめんとする者もの也 — 志賀しが重昂しげたか

という志賀しがの言葉ことばからも分わかるように、明治めいじ中期ちゅうきの国粋こくすい主義しゅぎは排外はいがい的てきナショナリズムとは異ことなり、欧化おうかそれ自体じたいに反発はんぱつするのではなく日本にっぽんの文明ぶんめいを主体しゅたい的てきに発達はったつさせるためとして西洋せいよう文明ぶんめいを部分ぶぶん的てきに採択さいたくするという特質とくしつがあり、国民こくみんの対外たいがい的てき独立どくりつと結むすびつけながら、圧倒的あっとうてきな欧化おうか主義しゅぎの風潮ふうちょうの中なかで日本にっぽんの伝統でんとう文化ぶんかや生活せいかつ様式ようしきを保存ほぞんする意義いぎを主張しゅちょうしていた。

しかし、日本にっぽんに対たいする包囲ほういを進すすめていた欧米おうべいに対たいし、世論せろんには異質いしつの外来がいらい文化ぶんかや思想しそうに対たいする嫌悪けんお感かん（排外はいがい主義しゅぎ）が広ひろがっていった。同おなじくして高山樗牛たかやまちょぎゅうや木村きむら鷹太郎たかたろうらによって提唱ていしょうされた、建国けんこく精神せいしんに由来ゆらいする国民こくみん的てき道徳どうとくの実践じっせんを主張しゅちょうする「日本にっぽん主義しゅぎ」の影響えいきょうを受うける。

「日本にっぽん主義しゅぎ」も参照さんしょう

伝統でんとうや国体こくたい擁護ようごの立場たちばから、右翼うよくの行動こうどう原理げんりとして社会しゃかい主義しゅぎの大衆たいしゅう運動うんどうに対抗たいこうしつつ、昭和しょうわ初期しょきの満州まんしゅう事変じへんから日にち中ちゅう戦争せんそうにかけて急きゅう拡大かくだいし、思想しそう的てきな政治せいじ運動うんどうへと進展しんてんしていき、太平洋戦争たいへいようせんそう期きには皇国こうこく史観しかんといった超ちょう国家こっか主義しゅぎ的てきイデオロギーとなった。こうした昭和しょうわ期きの歴史れきし的てきな事情じじょうから、国粋こくすい主義しゅぎはウルトラナショナリズム（超ちょう国家こっか主義しゅぎ）やファシズムと一元いちげん的てきに理解りかいされることもある。

このように国粋こくすい主義しゅぎは時代じだいにより変遷へんせんこそすれ、万世ばんせい一系いっけいの天皇てんのうをいただく日本にっぽんの国家こっか体制たいせいの永続えいぞく性せいを主張しゅちょうする国体こくたい論ろんという点てんにおいて一貫いっかんしている。

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽん主義しゅぎ
• ナショナリズム
  • 国家こっか主義しゅぎ / ウルトラナショナリズム（超ちょう国家こっか主義しゅぎ）
• 民族みんぞく主義しゅぎ
  • エスノセントリズム / 排外はいがい主義しゅぎ
• ファシズム
  • ファッショ / ナチズム
• 保守ほしゅ（保守ほしゅ主義しゅぎ）
• 右翼うよく
  • 極右きょくう / ネット右翼うよく
• 外国がいこく人じん恐怖症きょうふしょう
  • モラル・パニック / 恐怖きょうふに訴うったえる論証ろんしょう / フィアモンガリング

外部がいぶリンク

• 国粋こくすい主義しゅぎとは - コトバンク