日本にっぽん占領せんりょう時期じきのシンガポール

昭南しょうなん島とう

Syonan Island（英語えいご）
Pulau Syonan（マレー語ご）
சோனான் தீவு（タミル語ご）

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1942年ねん - 1945年ねん

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（日章旗にっしょうき）	（菊花きっか紋章もんしょう）

国歌こっか:
君きみが代よ

シンガポールの位置いち

公用こうよう語ご	日本語にほんご
言語げんご	中国ちゅうごく語ご 英語えいご マレー語ご タミル語ご
宗教しゅうきょう	国家こっか神道しんとう
首都しゅと	シンガポール
天皇てんのう 1942年ねん - 1945年ねん 昭和しょうわ天皇てんのう 内閣ないかく総理そうり大臣だいじん 1942年ねん - 1944年ねん 東條とうじょう英機ひでき 1944年ねん - 1945年ねん 小磯こいそ國昭くにあき 変遷へんせん 太平洋戦争たいへいようせんそう勃発ぼっぱつ 1941年ねん12月8日にち シンガポール駐留ちゅうりゅうイギリス軍ぐんが日本にっぽん軍ぐんに降伏ごうぶく 1942年ねん2月がつ15日にち シンガポール空襲くうしゅう 1944年ねん11月 - 1945年ねん5月がつ 大日本帝国だいにっぽんていこくの降伏ごうぶく 1945年ねん8月がつ15日にち 現地げんち日本にっぽん軍ぐんが連合れんごう国こくに降伏ごうぶく 1945年ねん9月がつ12日にち イギリス植民しょくみん地ちに復帰ふっき 1946年ねん4月がつ1日にち
通貨つうか	大日本帝国だいにっぽんていこく政庁せいちょう発行はっこうの軍票ぐんぴょう （俗称ぞくしょう：バナナ・マネー）
時間じかん帯たい	UTC +9
現在げんざい	シンガポール

イギリス軍ぐんの降伏ごうぶく
山下やました奉文ともゆき（左ひだりから3番目ばんめ）が
パーシヴァル（カメラに背せを向むけ右みぎから2番目ばんめ）に面会めんかいしている様子ようす

日本にっぽん占領せんりょう時期じきのシンガポール（にほんせんりょうじきのシンガポール）では、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかのシンガポールの戦たたかい（1942年ねん2月がつ15日にち）後ごのイギリス軍ぐんの降伏ごうぶくから、1945年ねん9月12日にちの駐留ちゅうりゅう日本にっぽん軍ぐんの降伏ごうぶくまでの期間きかんにおける大日本帝国だいにっぽんていこくによるシンガポールの占領せんりょう期きの統治とうちについて述のべる。この期間きかん、シンガポールは日本にっぽんによって「昭南しょうなん島とう（しょうなんとう）」と呼称こしょうされた。

占領せんりょうまでの経緯けいい

詳細しょうさいは「シンガポールの戦たたかい」を参照さんしょう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん（大だい東亜とうあ戦争せんそう/太平洋戦争たいへいようせんそう）勃発ぼっぱつ後ご、日本にっぽん軍ぐんはイギリス領りょうマラヤ全域ぜんいきを2ヶ月かげつで攻せめ落おとし（マレー作戦さくせん）、続つづいて東南とうなんアジアにおける連合れんごう国軍こくぐん（アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリア）の結節けっせつ点てんであったシンガポールへ侵攻しんこうを開始かいしした。難攻不落なんこうふらくと謳うたわれ大だい英えい帝国ていこくの一大いちだい拠点きょてんであったシンガポールを日本にっぽん軍ぐんは10日とおか足たらずで攻略こうりゃく。約やく8万まん人にんのイギリス軍ぐん将兵しょうへいや英えい領りょうインド軍兵ぐんびょう・オーストラリア軍ぐん将兵しょうへいが日本にっぽん軍ぐんの捕虜ほりょとなり、シンガポールは大日本帝国だいにっぽんていこくの占領せんりょう下かに置おかれた。

この事ことを当時とうじのイギリス首相しゅしょうであったウィンストン・チャーチルは自書じしょで「英国えいこく軍ぐんの歴史れきし上じょう最悪さいあくの惨事さんじであり、最大さいだいの降伏ごうぶく」と評ひょうした。

統治とうち下かのシンガポール

日本にっぽん軍ぐん占領せんりょう下かのシンガポール要塞ようさい全ぜん図ず

基地きち

日本にっぽん軍ぐんはイギリス連邦れんぽう軍ぐんが廃棄はいきしたセレター軍港ぐんこうや航空こうくう基地きちなどを再さい整備せいびし、その後ご陸海りくかい軍ぐんが使用しようした。またインド洋いんどようにおける通商つうしょう破壊はかい戦せんに従事じゅうじするドイツ海軍かいぐんとイタリア海軍かいぐんとの共同きょうどう作戦さくせんを行おこなうための基地きちも設もうけられ、遣や独どく潜水せんすい艦かん作戦さくせんや柳やなぎ船せん（封鎖ふうさ突破とっぱ船せん）の拠点きょてんもしくは中継ちゅうけい地ちとなったほか、イタリア海軍かいぐんは昭南しょうなんに潜水せんすい艦かん基地きちを設もうけるために工作こうさく船せんと海防かいぼう艦かんを送おくり込こんだ。

抗日こうにち華僑かきょうの摘発てきはつ「粛清しゅくせい」

詳細しょうさいは「シンガポール華僑かきょう粛清しゅくせい事件じけん」、「双そう十じゅう節せつ事件じけん」、「陳ちん嘉よしみ庚かのえ」、および「マラヤ人民じんみん抗日こうにち軍ぐん」を参照さんしょう

日本にっぽん軍ぐんは占領せんりょう後ごの1942年ねん2月がつから3月がつ末まつにかけて抗日こうにち華僑かきょうの摘発てきはつを行おこなった。これは、華僑かきょうの反日はんにち意識いしきが強烈きょうれつでこの華僑かきょうにより組織そしきされた抗日こうにち華僑かきょう連合れんごう会かい(ダル・フォース)が、マレー戦せん、シンガポール戦せんにおいて英軍えいぐんにみられない戦意せんいを示しめし、シンガポール陥落かんらく直前ちょくぜんに解体かいたいされたものの、大量たいりょうの武器ぶき弾薬だんやくを与あたえられてその後ごも市内しないやマレまれー半島はんとうにおいてゲリラ活動かつどうに従事じゅうじし、日本にっぽん軍ぐん入城にゅうじょう前後ぜんこうに市内しないで略奪りゃくだつ、暴行ぼうこうを働はたらいたためだった。

日本にっぽん軍ぐんは、イポー進撃しんげきの際さいに同地どうちで発見はっけんした「抗日こうにち華僑かきょう名簿めいぼ」及および、探偵たんてい局きょく、警察けいさつ署しょの記録きろく、救出きゅうしゅつした邦人ほうじんの進言しんげんなどを基もとに「反抗はんこう華僑かきょう容疑ようぎ者しゃ名簿めいぼ」を作成さくせいして、主おもに抗日こうにち団体だんたいの指導しどう者しゃ、抗こう日義ひよし勇いさむ軍人ぐんじん、共産きょうさん党員とういんなどの抗日こうにち華僑かきょうの摘発てきはつを行おこなったが、短期間たんきかんということもあり調査ちょうさは粗雑そざつで関係かんけいの無ない者ものも摘発てきはつされた。こうして多数たすうの華僑かきょうが処刑しょけいされたが、この事件じけんによって華僑かきょうはますます抗日こうにち態度たいどを固かため、市内しない、マレまれー半島はんとうにおける抗日こうにちゲリラ活動かつどうはその後ごも継続けいぞくされた。

経済けいざい

日本にっぽん軍ぐん占領せんりょう下かのシンガポール市内しない

戦時せんじ中ちゅうに発行はっこうされたバナナマネー

イギリス統治とうち時代じだいにシンガポールの主おもな食糧しょくりょう及および資源しげん供給きょうきゅう地ちであったオーストラリアとインド方面ほうめんからの供給きょうきゅうが不可能ふかのうになった上うえに、日本にっぽん海軍かいぐんが周辺しゅうへんの制海権せいかいけんを手てにしたものの、イギリス海軍かいぐんやオーストラリア海軍かいぐん、アメリカ海軍かいぐんなどの潜水せんすい艦かんによる通商つうしょう破壊はかい戦せんが行おこなわれたことや、シンガポールに進出しんしゅつしていた欧米おうべい企業きぎょうの生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんや各種かくしゅ工業こうぎょう製品せいひんの工場こうじょうの稼働かどうが止とまったこともあり、経済けいざいが混乱こんらんし生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんの値段ねだんがうなぎ登のぼりになるハイパーインフレーションに陥おちいった。

例れいとして、米べいの値段ねだんは100カティ（約やく60kg）につき5ドルほどであったが、のちには5,000ドルにもなった。日本にっぽん軍ぐんは食券しょっけん制度せいどを導入どうにゅうして人々ひとびとの食物しょくもつ入手にゅうしゅ量りょうに制限せいげんをかけた。1ヵ月かげつに一いち度ど、大人おとなは4.8キログラム、子供こどもは2.4キログラムの米こめを購入こうにゅうできたが、戦争せんそうが継続けいぞくするにつれ大人おとなの米べいの量りょうは25パーセント削減さくげんされた。

陥落かんらく前まえのイギリス当局とうきょく、日本にっぽん当局とうきょくともに、住民じゅうみんに対たいしてわずかでも土地とちを持もっていれば農耕のうこうによる自給自足じきゅうじそくを推奨すいしょうした。この農耕のうこう推奨すいしょうは戦時せんじ中ちゅうのイギリスで実施じっしされたヴィクトリーガーデンと似にたものである。食品しょくひんの品質ひんしつは急激きゅうげきに落おち、サツマイモやヤムイモは米べいより安やすく、庭にわの畑はたけでもよく育そだったため、これらが米べいに代かわって食卓しょくたくに並ならんだ。ヤムイモやサツマイモからは様々さまざまな料理りょうり・デザートが作つくられ、1日にち3食しょく全すべてを担になった。これらイモ類るいの栄養分えいようぶんは飢餓きがの減少げんしょうに一役ひとやくを買かい、単調たんちょうさを和やわらげるためにタピオカをその他たの作物さくもつと組くみ合あわせて食しょくする新あらたな方法ほうほうがいくつも発明はつめいされた。

またドル札さつが不足ふそくしたため、日本にっぽん政庁せいちょうは新あらたに昭南しょうなんで流通りゅうつうするドル札さつ（俗称ぞくしょう「バナナマネー」）を発行はっこうし、計画けいかく経済けいざいを実行じっこうして資源しげんの需要じゅようと供給きょうきゅうを制限せいげんした。これにより闇市やみいちが流行りゅうこうする。「バナナマネー」の効果こうかは薄うすく、増刷ぞうさつする時期じきが不ふ適当てきとうであったことや、闇市やみいちではドル札さつが主流しゅりゅうであったことから極度きょくどのインフレーションと通貨つうか価値かちの暴落ぼうらくを引ひき起おこした。

1942年ねん2月がつ15日にちに「ラッフルズ・ホテル」は日本にっぽん軍ぐんに接収せっしゅうされ、陸軍りくぐん将校しょうこうの宿泊しゅくはく施設しせつとなった。ホテル名めいは「昭南しょうなん旅館りょかん」に変更へんこうさせられ、メイドの制服せいふくも和服わふくになったほか、各種かくしゅサービスが和風わふうに改あらためられた。

教育きょういく

日本にっぽん軍ぐんは、日本語にほんごで現地げんち住民じゅうみんを教育きょういくするために昭南しょうなん日本にっぽん学園がくえんを設立せつりつした。Faye Yuan Kleemanは、自著じちょ『Under an Imperial Sun: Japanese Colonial Literature of Taiwan and the South』の中なかで「この学校がっこうは南みなみアジアで最もっとも成功せいこうした」と綴つづっている。また、日本にっぽん軍ぐんは「昭南しょうなん第だい一いち日本人にっぽんじん学校がっこう」を設立せつりつした（現げん・シンガポール日本人にっぽんじん学校がっこう）。

連合れんごう軍ぐんの反撃はんげき

詳細しょうさいは「昭南しょうなん港こう爆破ばくは事件じけん」を参照さんしょう

昭南しょうなん港こう爆破ばくは事件じけんにおける作戦さくせん成功せいこうを祝いわうイバン・ライアン（中央ちゅうおう）とその他たZ特殊とくしゅ部隊ぶたいのメンバー達たち

日本にっぽん軍政ぐんせい下かとなった昭南しょうなんは、連合れんごう軍ぐんによる数多すうたの作戦さくせんの標的ひょうてきとなり、1943年ねん9月26日にちにはイバン・ライアン率ひきいる奇襲きしゅう部隊ぶたい・Z特殊とくしゅ部隊ぶたいがシンガポール湾わんに侵攻しんこうし、7隻せきの日本にっぽんの船舶せんぱくを撃沈げきちんし、その総そう重量じゅうりょうは39,000トンに及およんだ（ジェイウィック作戦さくせん）。ライアンは他たの作戦さくせんも指揮しきしており、リマウ作戦さくせんでは足掛あしかけ1年ねんにわたって3隻せきの日本にっぽん船せんを撃沈げきちんした。しかし、彼かれはのちに13人にんの仲間なかまと共ともに捕とらえられて殺害さつがいされ、その他たの作戦さくせんに参加さんかした10人にんは日本にっぽん軍ぐんの秘密ひみつ裁判さいばんに掛かけられ処刑しょけいされた。

またイギリス軍ぐんは、マレまれー半島はんとう全域ぜんいきに至いたる地域ちいきの諜報ちょうほう網もうを敷しいて、日本にっぽん軍ぐんが持もつ連合れんごう軍ぐんの情報じょうほうを探さぐるために、136部隊ぶたいという秘密ひみつ組織そしきをカルカッタに組織そしきした。しかしながら白人はくじんコーカソイドがマラヤの民衆みんしゅうに混まじって作戦さくせんを遂行すいこうすることは難むずかしいので、潜入せんにゅう部隊ぶたいのリーダーとして、当時とうじ重慶たーちんにいたマラヤ系けい中国人ちゅうごくじんの林はやし謀はかりごと盛もり（リム・ボー・セン）がリクルートされた。林はやしは同様どうように中国ちゅうごく大陸たいりくにいたマラヤ系けい中国人ちゅうごくじんから人員じんいんを募つのり、陳ちん崇たかし智さとしらの同志どうしを得えた。彼かれらは皆みな、国民党こくみんとうの政治せいじ組織そしきの一員いちいんであり、無線むせん通信つうしん技術ぎじゅつや情報じょうほう収集しゅうしゅうの訓練くんれんを受うけていた。潜入せんにゅう部隊ぶたいはイギリス領りょうのセイロンから、日本にっぽん軍ぐんのオランダ領りょう東ひがしインド攻撃こうげきから逃にげることができたオランダの潜水せんすい艦かんに乗のり、1943年ねん5月がつ23日にちにペラ沿岸えんがんのパンコール島とうに上陸じょうりくした。この潜入せんにゅう部隊ぶたいは「グスタフス」というコードネームで呼よばれた。彼かれらはその後ご、ペラを中心ちゅうしんに活動かつどうし、サボタージュにより経済けいざい活動かつどうを停滞ていたいさせ、反日はんにち感情かんじょうを巻まき起おこすといった作戦さくせんを実行じっこうに移うつした。また、共産きょうさん主義しゅぎ系けいのマラヤ人民じんみん反日はんにち軍ぐんとの接触せっしょくも果はたした。グスタフスは1944年ねん3月がつまで、表向おもてむきはまっとうな商売しょうばいを営いとなんでいるように見みせかけて、実際じっさいは諜報ちょうほうを行おこなう地下ちか組織そしきを確立かくりつしていた。

しかし、組織そしきの一員いちいんが日本にっぽんの潜水せんすい艦かんをうっかり友軍ゆうぐんと誤認ごにんしたことから計画けいかくが露見ろけんした。仲間なかまの裏切うらぎりだったという説せつもある。林はやし謀はかりごと盛もりと陳ちん崇たかし智さとしを含ふくむ組織そしきのメンバーは逮捕たいほされ、イポー近ちかくのバトゥ・ガジャ刑務所けいむしょへ連行れんこうされた。戦後せんご、陳ちん崇たかし智さとしが語かたったところによれば、林はやし謀はかりごと盛もりは憲兵けんぺい隊たいに協力きょうりょくするよう強しいられたが拒絶きょぜつしたという。そして、食事しょくじに配くばられたサツマイモを逮捕たいほされている仲間なかまに与あたえるよう見張みはり番ばんに頼たのみ、絶食ぜっしょくした。赤痢せきりに罹患りかんしたが治療ちりょうを拒こばみ、6月29日にちに死亡しぼうしたという。陳ちん崇たかし智さとしが1995年ねんに公刊こうかんした回顧かいこ録ろくに依拠いきょする文献ぶんけんでは、林はやし謀はかりごと盛もり、陳ちん崇たかし智さとしらは赤痢せきりに罹患りかんすると、林はやし謀はかりごと盛もりが死亡しぼうするまで適切てきせつな治療ちりょうや食事しょくじが与あたえられなかったとしている。136部隊ぶたいは戦後せんご解体かいたいされた。解体かいたい前まえの最後さいごの任務にんむは、かつての盟友めいゆうだったマラヤ人民じんみん反日はんにち軍ぐんの武装ぶそう解除かいじょであった。

1945年ねん8月がつには、イギリス海軍かいぐんから2隻せきのX艇ていが「ストラグル作戦さくせん」に参加さんかした（セレター港こうの日本にっぽん海軍かいぐん基地きちへの攻撃こうげき、日本にっぽんの巡洋艦じゅんようかんの「高雄たかお」と「妙みょう高だか」をリムペットマインを用もちいて破壊はかいすることを目的もくてきとしていた）。だが「巡洋艦じゅんようかん高雄たかお」の損害そんがいは幅はば3m、長ながさ8mの亀裂きれつが生しょうじ、下部かぶ電信でんしん室しつに浸水しんすいと、損害そんがいは軽微けいびだった。 この功績こうせきを称となえてイアン・エドワード・フレイザーにはヴィクトリア十じゅう字じ章あきらが授与じゅよされた。1944年ねん11月から1945年ねん5月にかけてはイギリスとアメリカの連合れんごう軍ぐんが小規模しょうきぼな空爆くうばくを行おこなった。

占領せんりょうの終焉しゅうえん

1945年ねん9月がつ12日にち、降伏ごうぶく式しきを終おえて市庁舎しちょうしゃを後のちにする日本にっぽん代表だいひょう団だん

1945年ねん9月がつ5日にち、英軍えいぐんの帰還きかんを歓迎かんげいするシンガポール市民しみん

1945年ねん8月がつ15日にちに日本にっぽんは連合れんごう国軍こくぐんに対たいして降伏ごうぶくし、昭南しょうなんの日本にっぽん軍ぐんも9月12日にちに市役所しやくしょ（シティホール）にて降伏ごうぶく文書ぶんしょに調印ちょういんしここに日本にっぽん軍ぐんによる南方なんぽう統治とうちは終焉しゅうえんを迎むかえた。これを受うけて、日本にっぽん軍ぐん統治とうち下かの「昭南しょうなん」という呼称こしょうから「シンガポール」に呼称こしょうが戻もどり、パダンでは戦勝せんしょう記念きねんのパレードが行おこなわれた。

イギリス王族おうぞくで東ひがし南方なんぽうの総そう指揮しき官かんのルイス・マウントバッテンがシンガポールを訪おとずれ、寺内てらうち寿一ひさいちに代かわって板垣いたがき征四郎せいしろうから正式せいしきに降伏ごうぶく申請しんせいを受理じゅりした。

しかし、イギリス本土ほんどが戦争せんそうによって大おおきな被害ひがいを受うけ、インドでは独立どくりつ運動うんどうが活発かっぱつ化かしたことからシンガポールに正規せいき軍ぐんや警察けいさつを送おくる余裕よゆうが無なかったために、日にち英えい間あいだの協定きょうていにより1946年ねん3月がつ頃ころまでは降伏ごうぶくした日本にっぽん兵へいを治安ちあん維持いじ部隊ぶたいとして駐留ちゅうりゅうさせることになった。

英軍えいぐんは、双そう十じゅう節せつ事件じけん（連合れんごう国民こくみん間あいだ人じん収容しゅうよう所しょ関係かんけい）、泰緬鉄道たいめんてつどう捕虜ほりょ虐待ぎゃくたい、華僑かきょう粛清しゅくせい関係かんけいを三さん大だい軍事ぐんじ裁判さいばんとして取扱とりあつかい、現地げんち関係かんけい者しゃはもとより日本にっぽんからも証人しょうにん・容疑ようぎ者しゃ･弁護人べんごにんを呼よび寄よせて1946年ねん1月がつから軍事ぐんじ法廷ほうていが始はじまった。最初さいしょの被告ひこくは対たい日にち協力きょうりょく者しゃの大物おおものとみられたユーラシアン協会きょうかいの会長かいちょうバグラー博士はかせで、天長節てんちょうせつに日本にっぽん側がわの指示しじのまま天皇てんのうへの忠誠ちゅうせいを誓ちかう献辞けんじを朗読ろうどくさせられたことが、大だい英えい帝国ていこく臣民しんみんでありながらそのような献辞けんじを読よんだとして反逆はんぎゃく罪ざいに問とわれたという。結局けっきょく、バグラーの裁判さいばんは問題もんだいがあると英えい側がわにも感かんじられたのか、終身しゅうしん延期えんきとされ、釈放しゃくほうされる措置そちがとられた。

戦後せんご

戦後せんごのシンガポール

戦後せんごもイギリスによる植民しょくみん地ち支配しはいは継続けいぞくすることとなり、長年ながねんの念願ねんがんであった独立どくりつへの道みちは再ふたたび閉とざされてしまうこととなった。しかし、長年ながねんの植民しょくみん地ち支配しはいに対たいする地元じもと住民じゅうみんの反感はんかんは強つよく、その後ごも独立どくりつ運動うんどうが続つづくことになった。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんによって大おおきなダメージを受うけたイギリスには、本国ほんごくから遠とおく離はなれた植民しょくみん地ちの独立どくりつ運動うんどうを抑おさえ込こむ余力よりょくはもう残のこっておらず、 1957年ねんにはマラヤ連邦れんぽうが独立どくりつ。その後ごの1959年ねん6月がつにシンガポールはイギリスの自治領じちりょうとなり、1963年ねんにマラヤ連邦れんぽう、ボルネオ島とうのサバ・サラワク両りょう州しゅうとともに、マレーシア連邦れんぽうを結成けっせいする。しかし、マレー人じん優遇ゆうぐう政策せいさくを採とろうとするマレーシア中央ちゅうおう政府せいふと、イギリス植民しょくみん地ち時代じだいに流入りゅうにゅうした華人かじんが人口じんこうの大半たいはんを占しめ、マレー人じんと華人かじんの平等びょうどう政策せいさくを進すすめようとするシンガポールとの間あいだで軋轢あつれきが激化げきか。1964年ねん7月がつ21日にちにはマレー系けい住民じゅうみんへの優遇ゆうぐう政策せいさくを求もとめるマレー系けいのデモ隊たいと中国ちゅうごく系けい住民じゅうみんが衝突しょうとつしたシンガポール暴動ぼうどうが発生はっせい。さらに、1963年ねんの選挙せんきょにおいて、マレーシア政府せいふ与党よとうの統一とういつマレー国民こくみん組織そしき（UMNO）とシンガポールの人民じんみん行動こうどう党とう（PAP）の間あいだで、相互そうごの地盤じばんを奪うばい合あう選挙せんきょ戦せんが展開てんかいされていたことにより、関係かんけいが悪化あっか。マレーシア政府せいふは両者りょうしゃの融和ゆうわは不可能ふかのうと判断はんだんし、1965年ねん8月がつ9日にちにマレーシア連邦れんぽうから分離ぶんりされる形かたちで都市とし国家こっか・シンガポール共和きょうわ国こくとして独立どくりつした。

占領せんりょう統治とうちの記憶きおく

日本にっぽん軍ぐん占領せんりょうの記憶きおくと教訓きょうくんを後世こうせいに伝つたえるため、シンガポール政府せいふはいくつかの記念きねん碑ひを建立こんりゅうした。その一部いちぶは虐殺ぎゃくさつの跡地あとちに建立こんりゅうされている。

民間みんかん人じん戦没せんぼつ者しゃ慰霊いれい碑ひ

シンガポール華僑かきょう商工しょうこう会議かいぎ所しょの主導しゅどうで運営うんえいされている民間みんかん人じん戦争せんそう記念きねん館かんは、ビーチロードの戦争せんそう記念きねん公園こうえんに位置いちしている。4本ほんの白しろいコンクリート柱ばしらからなる高たかさ61メートルのこの記念きねん碑ひは、あらゆる人種じんしゅの民間みんかん人じんの死者ししゃを追悼ついとうするものである。1960年代ねんだい初頭しょとうの都市とし再さい開発かいはつブームで、シンガポール各地かくちから数すう千せんの遺骨いこつが発見はっけんされたことを受うけて建たてられた。日本にっぽん占領せんりょう開始かいし25周年しゅうねんとなる1967年ねんに、シンガポール初代しょだい首相しゅしょうリー・クアンユーによって除幕じょまくされた。1966年ねん10月がつに日本にっぽん政府せいふが支払しはらった「血ちの負債ふさい」補償ほしょう金きん5000万まんシンガポールドルの一部いちぶで建設けんせつされた。 除幕じょまく式しきでリーは次つぎのように述のべている。

「私わたしたちは、歴史れきしの火種ひだねとなった不幸ふこうな犠牲ぎせい者しゃである男女だんじょを思おもい出だすために集あつまりました。もし今日きょう、私わたしたちが過去かこの教訓きょうくんを思おもい出だし、私わたしたちの未来みらいをより確たしかなものにするための決意けついと決断けつだんを強つよめるならば、私わたしたちが追悼ついとうするこれらの男女だんじょは決けっして無駄死むだじにではなかったでしょう」

毎年まいとし2月がつ15日にちには、記念きねん館かんで追悼ついとう式しき（一般いっぱん公開こうかい）が行おこなわれる。

粛清しゅくせいセンター記念きねん碑ひ

この碑いしぶみのある場所ばしょは、チャイナタウンのホンリム・コンプレックス内ないにある。記念きねん碑ひの碑文ひぶんにはこうある。

「この場所ばしょは、日本にっぽん憲兵けんぺい隊たいが「反日はんにち」中国人ちゅうごくじんを選別せんべつするための臨時りんじ登録とうろくセンターの一ひとつであった。

シンガポール降伏ごうぶくの3日にち後ごの1942年ねん2月がつ18日にち、憲兵けんぺい隊たいは「粛清しゅくせい」と名付なづけた作戦さくせんで「反日はんにち分子ぶんし」の粛清しゅくせいを1ヶ月かげつにわたって行いった。18歳さいから50歳さいまでのすべての華僑かきょう男性だんせい、そして場合ばあいによっては女性じょせいや子供こどもも、憲兵けんぺい隊たいによる尋問じんもんと身分みぶん証明しょうめいのために、これらの臨時りんじ登録とうろくセンターに出頭しゅっとうするよう命めいじられた。

この審査しんさに合格ごうかくした者ものは、顔かおや腕うでや服ふくに「審査しんさ済ずみ」のスタンプを押おされて釈放しゃくほうされた。そうでない者ものは、シンガポールの辺境へんきょうに連つれて行いかれ、反日はんにち活動かつどうをした罪つみで処刑しょけいされた。何なに万まん人にんもの人々ひとびとが命いのちを落おとしたと推定すいていされる。

虐殺ぎゃくさつを生いき延のびた人々ひとびとにとって、粛清しゅくせいは日本にっぽん占領せんりょう下かでの最悪さいあくの思おもい出での一ひとつとなっている。」

チャンギビーチ大だい虐殺ぎゃくさつ記念きねん碑ひ

この碑いしぶみのある場所ばしょは、シンガポール東部とうぶのチャンギビーチ公園こうえんである。記念きねん碑ひの碑文ひぶんはこうである。

「1942年ねん2月がつ20日はつか、このチャンギビーチの水際みずぎわで日本にっぽん軍ぐんの補助ほじょ憲兵けんぺいの発砲はっぽうにより66名めいの男性だんせい市民しみんが殺害さつがいされた。彼かれらは、1942年ねん2月がつ18日にちから3月がつ4日にちにかけて、シンガポールの中国ちゅうごく系けい住民じゅうみんの中なかから反日はんにち市民しみんと疑うたがわれる者ものを粛清しゅくせいする日本にっぽん軍ぐんの粛清しゅくせい作戦さくせんで命いのちを落おとした数すう万まん人にんの中なかの一人ひとりだった。数かず百ひゃくメートル南みなみにあるタナメラベサールビーチ（現在げんざいはシンガポール・チャンギ空港くうこうの滑走かっそう路ろの一部いちぶ）は、最もっとも頻繁ひんぱんに使つかわれた殺害さつがい場所ばしょの一ひとつで、千せん人にんを超こえる中国人ちゅうごくじんと若者わかものが命いのちを落おとした。」

占領せんりょう統治とうちへの評価ひょうか

シンガポールにおける日本にっぽんの占領せんりょう統治とうちに対たいする評価ひょうかは総そうじて「シンガポールの暗黒あんこく時代じだい」と評ひょうされる。リー・シェンロン首相しゅしょうは戦争せんそう記念きねん館かんの開館かいかんに合あわせたコメントで以下いかのように述のべている。

『1942年ねん2月がつ15日にち、75年ねん前まえの今日きょう、ブキティマにある旧きゅうフォード工場こうじょうで、イギリス軍ぐんは日本にっぽん軍ぐんにシンガポールを引ひき渡わたしました。それから、日本にっぽん統治とうち下かで、シンガポールは昭南しょうなん「南みなみの光ひかり」と名前なまえが代かわり、恐怖きょうふと苦難くなんと苦痛くつうの3年ねん半はんが訪おとずれたのです。（中略ちゅうりゃく）日本にっぽん統治とうちでの恐怖きょうふと凶暴きょうぼうさ、我々われわれの祖先そせんの苦痛くつうと勇気ゆうきを、記録きろくしています。シンガポールが自由じゆうだけでなく名前なまえも失うしなうとは何なにを意味いみするのかを、記録きろくは物語ものがたっている。こんなことを二度にどと起おこさないようにせねばなりません」

リー・クアンユー回顧かいこ録ろくでは、占領せんりょう直後ちょくご、日本にっぽん軍ぐんは軍ぐん利用りようの倉庫そうこに盗ぬすみに入はいった賊ぞくをとらえ、華僑かきょうに限かぎらずその全員ぜんいんを殺害さつがいし、その首くびを通とおりに晒さらすという事件じけんを起おこしている（生首なまくび事件じけん）。この事件じけんは現地げんちはもとより中立ちゅうりつ国人くにびとを通とおして世界せかい的てきに広ひろまり国際こくさい的てきな悪評あくひょうがたったものの、一方いっぽうで、そのために窃盗せっとうが消きえ、「家いえに鍵かぎを掛かけなくとも安心あんしんして寝ねられる」という治安ちあん改善かいぜんをもたらした。このことはリー・クアン・ユーに強つよい印象いんしょうを与あたえ、シンガポール独立どくりつ後ごの法ほうにおける極刑きょっけい･即決そっけつ主義しゅぎといった治安ちあん重視じゅうし・厳罰げんばつ主義しゅぎに強つよい影響えいきょうを与あたえていると記載きさいされている。

シンガポールでは、イギリスが日本にっぽんに降伏ごうぶくした2月がつ15日にちは「総そう国防こくぼう日び（トータル・ディフェンス・デー、Total defense day）として国防こくぼうへの意識いしき啓発けいはつの記念きねん日びとしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 児島こじま襄じょう「太平洋戦争たいへいようせんそう(上うえ)」中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ(中公新書ちゅうこうしんしょ)、1965年ねん。
• リー(2000): リー・クアンユー『リー・クアンユー回顧かいこ録ろく（上うえ）』日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ、2000年ねん。

外部がいぶリンク

• Fall of Malaya and Singapore, a detailed history of the Battle of Singapore.