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太政官だじょうかん

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太政官だじょうかん(だじょうかん、おおいまつりごとのつかさ)とは、律令制りつりょうせいにおける最高さいこう国家こっか機関きかん律令制りつりょうせいもとづき司法しほう行政ぎょうせい立法りっぽうつかさどった。長官ちょうかん太政大臣だじょうだいじん(だいじょうだいじん)。ただし通常つうじょうはこれに左大臣さだいじん右大臣うだいじん実質じっしつてき長官ちょうかんとしての役割やくわりになった。事務じむきょくとして少納言しょうなごんきょく左右さゆうべんかんきょく附属ふぞくする。唐名とうみょうから尚書しょうしょしょう(しょうしょしょう)、しょう(としょう)ともばれた。

鎌倉かまくら時代ときよからはじまる武家ぶけ政権せいけん時代じだいには実質じっしつてきには機能きのうしなかったが、武家ぶけ政権せいけん代表だいひょう太政官だじょうかん大臣だいじんくことでその権威けんい保障ほしょうした。

平城ひらじろみや 推定すいてい太政官だじょうかんあと
2019ねん発掘はっくつ調査ちょうさ

概要がいよう

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古代こだい日本にっぽんにおいて中国ちゅうごくから律令制りつりょうせい導入どうにゅうするさい祭祀さいしおこな神祇官じんぎかん政治せいじつかさど太政官だじょうかん明確めいかくけた。太政官だじょうかん原型げんけい天武天皇てんむてんのう時代じだい形成けいせいされた。初期しょき太政官だじょうかんには「納言なごん」と「だいべんかん」というしょくがあったが、飛鳥あすかきよしはられいで、納言なごんだい中小ちゅうしょうの3つに、だいべんかん左右さゆうだい中小ちゅうしょうとする6つに分割ぶんかつされた。中納言ちゅうなごん大宝たいほうれい成立せいりつ廃止はいしされたが、4ねんふくおけされている。太政官だじょうかん中務なかつかさしょう式部しきぶしょうみんしょう治部じぶしょう兵部ひょうぶしょう刑部おさかべしょう大蔵省おおくらしょうみや内省ないせいはちしょう統括とうかつする最高さいこう機関きかんである(いんごとかん)。なお天平てんぴょうたから2ねん758ねん)からどう8ねん764ねん)までいぬい政官せいかん(けんせいかん)と改称かいしょうされていた時期じきがある(官職かんしょく唐風とうふう改称かいしょう)。平安へいあん時代じだいになると、本来ほんらい律令りつりょうさだめられていないれいそとかんにすぎなかった摂政せっしょう関白かんぱくが、天皇てんのう代理だいりとして政治せいじおこなったため、相対そうたいてき地位ちい低下ていかしたが、国政こくせいかんする最高さいこう機関きかんとして機能きのうつづけた。武家ぶけ社会しゃかい時代じだいはいっても、鎌倉かまくら時代ときよには政務せいむ機関きかんとして機能きのうしていたが、室町むろまち時代ときよになると次第しだい形骸けいがいすすみ、単純たんじゅん格式かくしきあらわ職名しょくめいになった。明治維新めいじいしん律令制りつりょうせい廃止はいしされるまで存在そんざいした。

太政官だじょうかんしょく

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太政官だじょうかんも、律令制りつりょうせいほか官制かんせいおなじように、長官ちょうかん(かみ)次官じかん(すけ)判官ほうがん(じょう)しゅてん(さかん)よんかいきゅう存在そんざいする。太政官だじょうかんは、機構きこうとしては政策せいさく決定けってい機関きかんである政官せいかん(ぎじょうかん)と、事務じむ部門ぶもんである少納言しょうなごんきょくひだりべんかんきょくみぎべんかんきょくおよ臨時りんじ監察かんさつかんである巡察じゅんさつ使かれた。そのしたはちしょうかれた。太政官だじょうかんとう制度せいどにおける門下もんかしょう尚書しょうしょしょう役割やくわり統合とうごうした性格せいかくゆうしており、門下もんかしょうてき役割やくわりになった少納言しょうなごんきょくと、尚書しょうしょしょうてき役割やくわりになったべんかんきょく並立へいりつしており、元来がんらい少納言しょうなごんきょく判官ほうがんしゅてんべんかんきょく太政官だじょうかんから独立どくりつした性格せいかくしなかんとして位置いちづけられたとする見方みかた[1]や、反対はんたいわきまえかんきょく判官ほうがんしゅてん構成こうせいしており、大納言だいなごん少納言しょうなごん天皇てんのうへの奏上そうじょう天皇てんのうからの奉勅ほうちょくおこなつかまつたてまつ役割やくわりになった独自どくじ役割やくわりであったものが大宝たいほうれいによってはじめて四等官しとうかんまれたとするせつがある[2]のちに、政官せいかん実際じっさい審議しんぎ機関きかんとなったことによって少納言しょうなごんきょく権限けんげん形骸けいがいする一方いっぽうで、行政ぎょうせい事務じむ管轄かんかつするべんかんきょくちからつよまって、そとたいしても影響えいきょう行使こうしするようになったとされている。やがて少納言しょうなごんきょくからそときょく分立ぶんりつし、少納言しょうなごんきょくひだりべんかんきょくみぎべんかんきょくそときょくぞくするかんじん政官せいかん(じょうかん)しょうされた。地方ちほうかん左右さゆうべんかんきょく共同きょうどう管理かんりかれている。

官位かんい相当そうとう

庁舎ちょうしゃ

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太政官だじょうかん庁舎ちょうしゃは「太政官だじょうかんちょう」または「官庁かんちょう」とばれ、大内裏だいだいりなかはちしょういんひがしかれた。

太政官だじょうかんちょう天皇てんのう即位そくいれい会場かいじょうであったことから、鎌倉かまくら時代じだい大内裏だいだいり荒廃こうはいして太政官だじょうかん機能きのう内裏だいりうつされたのち設備せつび一部いちぶつづ再建さいけん存続そんぞくつづけていたが、応仁おうにんらんのこされた施設しせつ焼失しょうしつして朝廷ちょうていには再興さいこうする費用ひようがなく、こう柏原かしわばら天皇てんのう即位そくいしきさいには内裏だいり大内裏だいだいり見立みたてて実施じっしされてそちらが慣例かんれいしたため、再建さいけんされることがなくなった[3]

とう律令制りつりょうせいとのちが

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古代こだい中国ちゅうごくでは、はちしょううえにあってこれを統括とうかつし、また皇帝こうてい補佐ほさして政策せいさく審議しんぎする機関きかんのことを「台閣たいかく」とんだ。日本にっぽんでも律令制りつりょうせい導入どうにゅうされて太政官だじょうかんはちしょううえかれると、政策せいさく決定けってい機関きかんである政官せいかんのことをとく唐名とうみょうで「台閣たいかく(たいかく)ぶようになった。この呼称こしょう明治めいじ太政官だじょうかんせいにもがれ、やがてこれをいいかえた「内閣ないかく」を中心ちゅうしんとする内閣ないかく制度せいどが、1885ねん太政官だじょうかんせいってわった。

とう律令制りつりょうせいでは、中書ちゅうしょ門下もんか尚書しょうしょみっつをひっくるめて、太政官だじょうかん呼称こしょうしたが、この尚書しょうしょなかひとつの神祇じんぎ祭祀さいしつかさどる「ほこら」があるものの、日本にっぽんのように神祇官じんぎかん太政官だじょうかんふたつをいて、並列へいれつしたかんとしてあつかっているわけではなく、このてんことなることからも、日本にっぽん太政官だじょうかん(および神祇官じんぎかん)はオリジナルの律令りつりょうである[4][注釈ちゅうしゃく 1]。このことは、日本にっぽん中国ちゅうごく律令制りつりょうせいをそのまま導入どうにゅうしたのではなく、国風くにぶり実情じつじょうわせて日本にっぽん律令りつりょう形成けいせいしていったことをしめしている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ とう律令制りつりょうせいにも太政官だじょうかんというかたり存在そんざいするものの、日本にっぽんとは内容ないようことなる。

出典しゅってん

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  1. ^ 森田もりた日本にっぽん古代こだい律令りつりょうほう研究けんきゅうだいだいいちしょうだいせつ太政官だじょうかんせい政務せいむ手続てつづき」、文献ぶんけん出版しゅっぱん1986ねん。および大隅おおすみきよし律令りつりょう官制かんせいれい秩序ちつじょ研究けんきゅうだい一部いちぶだいいちしょうべんかん変質へんしつ律令りつりょう太政官だじょうかんせい」、吉川弘文館よしかわこうぶんかん2011ねん
  2. ^ やなぎ雄太郎ゆうたろう律令制りつりょうせいせいくらいん研究けんきゅうだい一部いちぶだいさんしょう太政官だじょうかんにおける四等官しとうかん構成こうせい」、吉川弘文館よしかわこうぶんかん2015ねんやなぎ大納言だいなごん少納言しょうなごん四等官しとうかん編入へんにゅうによって右大臣うだいじん次官じかんから長官ちょうかん上昇じょうしょうし、四等官しとうかんめなかった中納言ちゅうなごん一時いちじ廃止はいしされたとする。
  3. ^ ひさすい俊和としかず内野ないや太政官だじょうかんちょう」『中世ちゅうせい天皇てんのう作法さほう律令制りつりょうせい残像ざんぞう八木はちぼく書店しょてん出版しゅっぱん、2020ねんISBN 978-4-8406-2239-4、pp. 283-311。
  4. ^ 参考さんこう小和田こわだ哲男てつお『このいちさつ日本にっぽん歴史れきしがわかる!』三笠みかさ書房しょぼう、1996ねん、p. 111。

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