官位かんい相当そうとうせい

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官位かんい相当そうとうせい(かんいそうとうせい)とは、日本にっぽん律令制りつりょうせいにおいて、かんじん付与ふよする位階いかい官職かんしょくとのあいだ一定いってい相当そうとう関係かんけい設定せっていした官僚かんりょう序列じょれつシステム。

概要がいよう[編集へんしゅう]

日本にっぽん律令りつりょう官位かんいせい大宝たいほうれい養老ようろうれいいずれも官位かんいれいにおいて規定きていされているが、この模範もはんとなったのがとうかんひんれいである。両者りょうしゃとも位階いかいとうではしなかい)と官職かんしょくとの対応たいおう関係かんけいさだめているが、その根本こんぽん原則げんそくにおいてはおおきな差異さいがあった。

から律令制りつりょうせいでは、かんじん序列じょれつ決定けっていするのは官職かんしょくという原則げんそくつうそこしており、しなかい官職かんしょく等級とうきゅうあらわ指標しひょうぎなかった。かんじんには官職かんしょくとそれに対応たいおうするしなかいあたえられる建前たてまえであったが、実際じっさい官職かんしょくにはかぎりがあったため、名目めいもくだけの官職かんしょくがあてがわれたり、くらいしなかいのみで官職かんしょくたないこと)となるものすくなくなく、実質じっしつ官職かんしょくることでようやく官僚かんりょう序列じょれつなか参加さんかすることができたのである。ここではしなかいおおきな意味いみたず、官職かんしょくのみが官僚かんりょう機構きこうなか序列じょれつ機能きのうたしていた。

一方いっぽう日本にっぽん律令制りつりょうせいでは、かんじんはまず位階いかいによって序列じょれつされ、そして位階いかいおうじた官職かんしょくあたえられることとされていた。日本にっぽんでは律令りつりょう制定せいてい以前いぜんから氏族しぞくせいてき序列じょれつ存在そんざいしていたため、律令りつりょう導入どうにゅうかんじんせいさい従前じゅうぜん序列じょれつ温存おんぞんしながら各氏かくしぞくかんじんとしてさい編成へんせいする必要ひつようせまられた。これにより、日本にっぽんではとうとはことなり、位階いかいしゅとして官職かんしょくしたがえとする官位かんいせい導入どうにゅうされたのだとかんがえられている。この日本にっぽん独特どくとく官位かんい制度せいど官位かんい相当そうとうせいという。

具体ぐたいてきには、官位かんいれいもとづいて位階いかいごとに就任しゅうにん可能かのう官職かんしょく厳密げんみつさだめられていた。あくまでも位階いかい序列じょれつしゅにあったのであり、ある官職かんしょく実績じっせき評価ひょうかかさねたとしても、とうのように官職かんしょく昇進しょうしんけるのではなく、まず位階いかい昇進しょうしんけて、その昇進しょうしん位階いかい相当そうとうする官職かんしょく就任しゅうにん資格しかくるのが原則げんそくであった。

なお、日本にっぽん官位かんい呼称こしょう制式せいしきでは、官職かんしょく位階いかい相当そうとうである場合ばあい官職かんしょくまえ位階いかいのちしるした(れい:出羽守でわのかみしたがえ)。ただし、様々さまざま事情じじょうにより位階いかい官職かんしょく相当そうとう関係かんけい成立せいりつしていない事例じれい発生はっせいした。その場合ばあい位階いかいたか場合ばあい位階いかいさきしるして「くだり」の文字もじえ、のち官職かんしょくしるした(れい:したがえよんぎょう伊予いよもり)。ぎゃく官職かんしょく位階いかいより上位じょういである場合ばあい同様どうよう位階いかいさきしるして「まもり文字もじえ、のち官職かんしょくしるした(れい:したがえもり右京大夫うきょうのだいぶ)。

実際じっさい運用うんようでは、たか位階いかい全体ぜんたいてきあたえられる傾向けいこうつよかった。また、時代じだいくだ律令制りつりょうせい衰微すいびとともにせいろくよりもした位階いかい叙任じょにんれいはほとんどなくなっていった。

官位かんい相当そうとうひょう[編集へんしゅう]

養老ようろうれい[編集へんしゅう]

  かん しょう しょく りょう つかさ
神祇官じんぎかん 太政官だじょうかん 中務なかつかさしょう 式部しきぶしょう
治部じぶしょう(a)
みんしょう
兵部ひょうぶしょう
刑部おさかべしょう(b)
大蔵省おおくらしょう(c)
みや内省ないせい
中宮ちゅうぐうしょく ひだり右京うきょうしょく
摂津せっつしょく
大膳だいぜんしょく(a)
左右さゆうだい舎人とねりりょう
だい学寮がくりょう(a)
木工もっこうりょう
雅楽ががくりょう(b)
玄蕃げんばりょう
主計しゅけいりょう(c)
主税しゅぜいりょう(d)
図書としょりょう
左右さゆうりょう(e)
左右さゆう兵庫ひょうごりょう
内蔵ないぞうりょう(a)
ぬい殿どのりょう
大炊おおいりょう
くらいりょう
陰陽いんようりょう(b)
しゅ殿しんがりりょう
典薬てんやくりょう(c)
兵馬へいば
造兵ぞうへい
鼓吹こすい
贓贖
しゅうごく
てん
正親おうぎ
鍛冶かじつかさ
畫工がこう
うちくすり(a)
しょりょう
掃部
内膳ないぜん(b)
造酒ぞうしゅ
かんやつ
園池そのいけつかさ
東西とうざい
うち兵庫ひょうご
土工どこう
葬儀そうぎ
采女うねめ
しゅふね
うるし
ぬい
織部おりべつかさ(a)
隼人はやと
うち礼司れいじ
しゅみず
しゅあぶら
うち掃部
筥陶
うちしみ(a)
しゅ鷹司たかつかさ
せいいち
したがえいち
太政大臣だじょうだいじん
せい
したがえ
左大臣さだいじん
右大臣うだいじん
せいさん 大納言だいなごん
したがえさん
せいよん うえ きょう
した きょう
したがえよん うえ 左右さゆうだいべん
した はく 大夫たいふ
せい うえ 左右さゆうちゅうべん 大輔だいすけ 大夫たいふ
した 左右さゆうしょうべん 大輔だいすけ
だい判事はんじ(b)
したがえ うえ しょう あたま
した 大副おおそい 少納言しょうなごん 侍従じじゅう
だいかんぶつ
しょう あきら あたま
せいろく うえ しょうふく 左右さゆうだいべん だい内記ないき ただし ただし
内膳ないぜん奉膳ぶんぜ(b)
した だいすすむ だいすすむ
ちゅう判事はんじ(b)
すけ
大学だいがく博士はかせ(a)
うちくすり侍医じい(a) ただし
したがえろく うえ だいゆう しょうすすむ
ちゅうかんぶつ
しょうすすむ 大進たいしん 権助ごんすけ(ごんのすけ) すけ ただし
した しょうゆう しょう判事はんじ(b)
大蔵おおくらだいしゅ(c)
しょうすすむ 大進たいしん 権助ごんすけ(ごんのすけ) ただし
せいなな うえ だいそと
左右さゆうしょうべん
ちゅう内記ないき
だいろく
だいろく しょうすすむ 内蔵ないぞうだいしゅ鑰(a)
した しょうかんぶつ
だいしゅすず
判事はんじだいぞく(b) しゅひしお(a)
しゅ菓餅(a)
だいまこと
大学だいがくじょきょう(a)
博士はかせ(c)
陰陽いんよう博士はかせ(b)
天文てんもん博士はかせ(b)
したがえなな うえ しょうそと しょうまこと
おと博士はかせ(a)
しょ博士はかせ(a)
さん博士はかせ(a)
まこと
陰陽いんよう(b)
こよみ博士はかせ(b)
咒禁博士はかせ(c)
した 大典たいてん 刑部おさかべだいかい(b)
大蔵おおくらしょうしゅ鑰(c)
医師いし(c)
博士はかせ(b)
はり博士はかせ(c)
ゆう ゆう
内膳ないぜんてんぜん(b)
せいはち うえ しょう内記ないき
しょうろく
しょうしゅすず
しょうろく
てんかわ(c)
内蔵ないぞうしょうしゅ鑰(a)
咒禁(c)
はり(c)
薬園やくえん(c)
てんくつ(a)
ゆう
した だい 治部じぶだいかい(a)
刑部おさかべちゅうかい(b)
判事はんじしょうぞく(b)
だいぞく 按摩あんま博士はかせ(c) ゆう
したがえはち うえ しょう しょうてん しょうぞく だいぞく
雅楽ががくしょ(b)
うま(e)
按摩あんま(c)
した 治部じぶしょうかい(a)
刑部おさかべしょうかい(b)
しょうぞく
しゅ計算けいさん(c)
主税しゅぜいさん(d)
だいぞく
だいはつ うえ しょうぞく だいれい れい
した しょうれい れい
挑文(a)
しょうはつ うえ れい
しみ(a)
した れい
  • 養老ようろうれい官位かんいれいにより作表さくひょう
  • 特定とくていかんのみにぞくする官職かんしょくについては、対応たいおう関係かんけいを(a)(b)(c)…でしめしている。
  • 参考さんこう文献ぶんけん吉川弘文館よしかわこうぶんかん編集へんしゅうへん日本にっぽん必携ひっけい吉川弘文館よしかわこうぶんかん2006ねんISBN 4642013490
  ぼう かん しょ だい 大宰府だざいふ 国司こくし いえ
春宮とうぐうぼう 舎人とねりかん
主膳しゅぜんかん
しゅぞうかん
しゅ殿しんがりしょ
おもしょしょ
しゅ漿署
しゅこうしょ
しゅへいしょ
しゅうましょ
弾正だんじょうだい 衛門えもん
ひだり衛士えじ
みぎ衛士えじ
ひだり兵衛ひょうえ
みぎ兵衛ひょうえ
大国たいこく うえこく 中国ちゅうごく したこく
せいいち
したがえいち
せい
したがえ
せいさん
したがえさん そち
せいよん うえ 東宮とうぐうでん
した 大夫たいふ
したがえよん うえ いん
した
せい うえ とく 大弐だいに
した
したがえ うえ とく もり
した あきら
東宮とうぐう学士がくし
しょう もり 一品いっぴん家令かれい
しょくごといち家令かれい
せいろく うえ だいちゅう ひん家令かれい
した しょうちゅう だいかん かい もり
したがえろく うえ 大進たいしん ただし しょうかん かい 一品いっぴん家扶かふ
三品みしな家令かれい
しょくごといち家扶かふ
しょくごと家令かれい
した しょうすすむ くび 大尉たいい だい判事はんじ もり
せいなな うえ だい 少尉しょうい 大工だいく
しょう判事はんじ
大典たいてん
防人さきもりただし
ひん家扶かふ
よんひん家令かれい
した 巡察じゅんさつ 大尉たいい 主神しゅしん だいじょう
したがえなな うえ 少尉しょうい しょうじょう じょう 一品いっぴんだいしたがえ
一品いっぴん文学ぶんがく
三品みしな家扶かふ
しょくごといちだいしたがえ
しょくごとせいさん家令かれい
した だいおさむ博士はかせ 一品いっぴんしょうしたがえ
ひんしたがえ
ひん文学ぶんがく
よんひん家扶かふ
しょくごといちしょうしたがえ
しょくごとしたがえさん家令かれい
せいはち うえ しょう しょうてん
陰陽いんよう
医師いし
しょうこう
さん
防人さきもりゆう
おもせん
しゅくりや
じょう
した だいぞく 大志たいし
医師いし
三品みしなしたがえ
三品みしな文学ぶんがく
よんひん文学ぶんがく
しょくごとしたがえ
したがえはち うえ しょうぞく しょうこころざし 大志たいし
医師いし
大目おおめ よんひんしたがえ
した しょうこころざし しょう 一品いっぴん大書たいしょ
だいはつ うえ 判事はんじだいれい 一品家少書吏
ひん大書たいしょ
しょくごと一位家少書吏
した 判事はんじしょうれい
防人さきもりれい
二品家少書吏
しょうはつ うえ 三品みしなしょ
よんひんしょ
しょくごと大書たいしょ
しょくごと二位家少書吏
した しょくごとさんしょ
  • 養老ようろうれい官位かんいれいにより作表さくひょう
  • 参考さんこう文献ぶんけん吉川弘文館よしかわこうぶんかん編集へんしゅうへん日本にっぽん必携ひっけい吉川弘文館よしかわこうぶんかん2006ねんISBN 4642013490

れいそとかん[編集へんしゅう]

  かんしょ しょく りょう つかさ 使つかい
太政官だじょうかん 蔵人所くろうどどころ 修理しゅうりしょく 内匠たくみりょう
しょりょうりょう
兵庫ひょうごりょう
斎宮いつきりょう(a)
左右さゆうりょう
掃部りょう 斎院さいいん 左右さゆう
近衛府このえふ
検非違使けびいし
せいいち
したがえいち
せい
したがえ
内大臣ないだいじん 別当べっとう
せいさん
したがえさん 中納言ちゅうなごん 大将たいしょう
せいよん うえ 中納言ちゅうなごん
した
したがえよん うえ あたま
した 大夫たいふ 中将ちゅうじょう 別当べっとう
せい うえ 蔵人くろうど
した 少将しょうしょう
したがえ うえ あたま
した あきら あたま 長官ちょうかん
せいろく うえ ろく蔵人くろうど はたかん
した すけ
したがえろく うえ 大進たいしん すけ 次官じかん 大尉たいい
した しょうすすむ 少尉しょうい
せいなな うえ
した だいまこと
主神しゅしん(a)
はた
したがえなな うえ しょうまこと まこと 判官ほうがん
した
せいはち うえ
した だいぞく 大志たいし
したがえはち うえ しょうぞく だいぞく しょうこころざし
した しょうぞく だいぞく しゅてん
だいはつ うえ しょうぞく
した
しょうはつ うえ
した
  • 特定とくていかんのみにぞくする官職かんしょくについては、対応たいおう関係かんけいを(a)(b)…でしめしている。
  • 参考さんこうサイト)官制かんせい大観たいかん


参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 大隅おおすみきよし官位かんい相当そうとうせい」 『日本にっぽんだい事典じてん 2』 平凡社へいぼんしゃ、1995。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]