飲料いんりょう水すい

飲料いんりょう水すい（いんりょうすい、仏ふつ: eau potable、英えい: drinking water、独どく: Trinkwasser）とは、飲用いんように適てきした水みずを表あらわす^[1]。「のみみず」とも^[1]。

飲料いんりょう水すい

飲料いんりょう水すいは病原びょうげん微生物びせいぶつや有毒ゆうどく物質ぶっしつを含ふくまず^[1]、無味むみ・無臭むしゅう・透明とうめいが求もとめられ^[1]、一般いっぱんに水道すいどう水みず、湧水わきみず、流水りゅうすい、井戸いど水みずなど^[1]を用もちいる。

飲のむことができる水みずを確保かくほしておくことは大切たいせつである。人ひとは水みずを飲のまずにいられるのは、一般いっぱん的てきにはせいぜい4～5日にち程度ていどだと言いわれている。安全あんぜんな飲のみ水みずを確保かくほすることは、古いにしえの時代じだいから重要じゅうような課題かだいであった。病原びょうげん体たいで汚染おせんされた飲のみ水みずを飲のむと、それに感染かんせんすることによってさまざまな病気びょうきにかかる。赤痢せきりやコレラの大だい流行りゅうこうは、しばしば、不適切ふてきせつな水みずを飲用いんように用もちいたことで起おきている。有毒ゆうどく物質ぶっしつを含ふくんだ水みずを飲のむことで、さまざまな障害しょうがいが生しょうじる。

世界せかいの様々さまざまな地域ちいきの生水なまみずは概がいして飲料いんりょう水すいとしては使つかえない。熱帯ねったい地方ちほうでは河川かせんの水みずが病原びょうげん微生物びせいぶつを含ふくんでいることは多おおい。水道すいどうで運はこばれてきて蛇口じゃぐちから出でてくる水みずでさえそうである。地元じもとの住民じゅうみんならばかろうじて耐たえられる場合ばあいでも、旅行りょこう者しゃには危険きけんな場合ばあいもあり得える。病原びょうげん微生物びせいぶつを死滅しめつさせるためには少すくなくとも一旦いったん煮沸しゃふつする必要ひつようがある。

海水かいすいは塩分えんぶんなどが多おお過すぎるため、飲料いんりょう水すいとしては使つかえない^[2]。無む寄港きこうで海上かいじょうを旅たびする時ときや、海うみで遭難そうなんした場合ばあいには、飲料いんりょう水すいの確保かくほが問題もんだいとなるため、周囲しゅういにありあまるほどの海水かいすいが見みえているにもかかわらず飲のめる水みずが無ない、という皮肉ひにくな状況じょうきょうに追おい込こまれてしまう。同様どうように、内陸ないりくの塩水えんすい湖みずうみの湖水こすいも飲料いんりょう水すいとしては使つかえない。火山かざん地帯ちたいの湧水わきみずも特殊とくしゅな成分せいぶんを含ふくみ、飲用いんようには適てきさない場合ばあいがある。

飲料いんりょう水すいを得えるひとつの方法ほうほうとして、植物しょくぶつ体内たいないの水みずを用もちいるという方法ほうほうがある。植物しょくぶつ体内たいないの水みずであれば、あらかじめ植物しょくぶつの繊維せんい構造こうぞうでフィルターがかけられていることが多おおく、植物しょくぶつ自体じたいが生いきのびるために菌類きんるいの繁殖はんしょくを防ふせぐようなシステム（抗菌こうきん作用さよう）を持もっており、ほぼ無菌むきんに近ちかいからである。例たとえばココヤシの実みの中なかの水みずを飲のむ方法ほうほうがある。アマゾンには水みずを大量たいりょうに含ふくんだ樹木じゅもくがいくつもあり、ジャングル内ないを旅たびする時ときなどには、それを見みつけて枝えだをナタで切きり落おとして傾かたぶければ、飲用いんように適てきした水みずが出でてくる。水筒すいとうを持もち歩あるかなくても、そこかしこに飲料いんりょう水すいがあるため、現地げんち人じんは俗称ぞくしょうで「水筒すいとうの木き」などと呼よんでいる。ウツボカズラの捕食ほしょく袋ぶくろの水みずも飲用いんようにされる（ただし、これの場合ばあいは袋ふくろが開ひらく前まえに限かぎる）。昔むかしから、瓜ふり（ウリ）、スイカ、メロン類るい、リンゴなど水分すいぶん量りょうが多おおい果物くだものの果汁かじゅうを飲料いんりょう水すいの代用だいようとする地域ちいきもある。

世界せかい各地かくちの事情じじょう

世界せかい的てきに、乾燥かんそうした地域ちいきも多おおく、そういった地域ちいきでは、まず水みずそのものを得える方法ほうほうを考案こうあんしなければならない。井戸いどはその代表だいひょう的てきな技術ぎじゅつである。サウジアラビアでは、電力でんりょくを使つかって海水かいすいの塩分えんぶんを分離ぶんりし、飲用いんよう水すいを作つくり出だしている。サウジアラビアやイラク等々とうとうでは、飲用いんよう水すいはガソリンよりも高価こうかである。

日本にっぽんの上水道じょうすいどうは、水道局すいどうきょくの関係かんけい者しゃが日々ひび水みずの質しつを高たかく保たもつために努力どりょくを積つみ重かさねており、そのため蛇口じゃぐちをひねって出でてきた水みずがそのまま飲のめる状態じょうたいに保たもたれている。これは世界せかい的てきに見みて例外れいがい的てきなことといわれる^[3]こともあるが、ヨーロッパや米国べいこくの、大抵たいていの先進せんしん国こくでは水道すいどう水すいはそのまま飲のめる。ただし硬度こうどが高たかい場合ばあいもあり、そのため^{[要よう出典しゅってん]}上質じょうしつの水源すいげんの水みずを使つかい、ボトル詰づめされたミネラルウォーターを買かい飲用いんようとすることも多おおい。

海外かいがい^[どこ?]の飲食いんしょく店てん（カウンター式しきの喫茶きっさや「バー」や「スタンド」など）では、客きゃくが席せきについてもコップやグラスに入はいった水みずが出でてこない地域ちいきもある。アメリカでも日本にっぽんのように客席きゃくせきに座すわればコップに入はいった飲料いんりょう水すいを無料むりょうで出だしてくれるが、ヨーロッパでは基本きほん的てきに有料ゆうりょうである。ミネラルウォーターとビールを比較ひかくすると、ミネラルウォーターのほうが値段ねだんが高たかいこともある^{[要よう出典しゅってん]}。

米国べいこくの開拓かいたく時代じだい、カウボーイは自分じぶんが得えた水みずの水質すいしつを信用しんようしきれない場合ばあい、それに殺菌さっきん防腐ぼうふ効果こうかがあるアルコール度どの高たかい酒さけを加くわえて飲のむ、などということも行おこなったが、殺菌さっきん効果こうかが最もっとも高たかいのはアルコール濃度のうど(重量じゅうりょう％)が70から80パーセントの時とき^[4] で、数すうパーセントまで希釈きしゃくされている場合ばあい、殺菌さっきん効果こうかはあまり期待きたいできない。

近年きんねんでは、世界せかい保健ほけん機関きかん（WHO）や赤十字せきじゅうじが家庭かていでの水みず処理しょりと安全あんぜんな貯蔵ちょぞうのための実行じっこう可能かのうな方法ほうほうとして太陽たいよう水すい殺菌さっきんを推奨すいしょうしている。分散ぶんさん型がた水みず処理しょりのため、簡単かんたんかつ効果こうか的てきな方法ほうほうであり、家庭かていなどでも行おこなうことができる。そのため、太陽たいよう水すい殺菌さっきんによる水みずの殺菌さっきんはすでに多おおくの発展はってん途上とじょう国こくで利用りようされている^[5]^[6]^:55。EAWAGによって発行はっこうされている太陽たいよう水すい殺菌さっきんの手順てじゅんに関かんする教育きょういく用ようパンフレットは多おおくの言語げんごで入手にゅうしゅ可能かのうである^[7]^[6]。

日本にっぽんにおける水質すいしつ基準きじゅん

飲用いんようを目的もくてきとして給水きゅうすいする水道すいどう水すいについては水道すいどう法ほうで51項目こうもくの水道すいどう水質すいしつ基準きじゅんが定さだめられており^[8]、水道すいどう事業じぎょう者しゃはこの基準きじゅんに適合てきごうした水みずを供給きょうきゅうしなければならない。各かく水道すいどう事業じぎょう者しゃは、それぞれ水道すいどう水質すいしつ検査けんさ計画けいかくを定さだめ、定期ていき的てきな検査けんさを実施じっししている。
給水きゅうすい事業じぎょうではない（例たとえば個人こじん所有しょゆうの井戸水いどみず等とう）の水質すいしつ基準きじゅんについては、法的ほうてきに定さだめられていない^[9]^[10]。一般いっぱん的てきな水質すいしつの目安めやすとして、約やく10項目こうもく（大腸菌だいちょうきん、一般いっぱん細菌さいきん、硝酸しょうさん態たい及および亜あ硝酸しょうさん態たい窒素ちっそ、塩化えんか物ぶつイオン、有機物ゆうきぶつ等とう（全ぜん有機ゆうき炭素たんそ）、pH値ね、臭気しゅうき、色いろ度ど、濁にご度たび、味あじ：これらを総称そうしょうして「簡易かんい飲いん適てき」と言いわれる）及および残留ざんりゅう塩素えんそについてを検査けんさ・確認かくにんすることが多おおい。飲用いんようを目的もくてきとする場合ばあいには、出来できるだけ水道すいどう水質すいしつ基準きじゅんの全ぜん項目こうもくの検査けんさを実施じっしした方ほうがよい。不適合ふてきごうである場合ばあいには、滅菌めっきん装置そうちや濾過ろか装置そうちの設置せっちなどによる浄化じょうか対策たいさくを講こうじた後のち、再さい検査けんさを行おこなう必要ひつようがある。検査けんさは、保健所ほけんじょや環境かんきょう計量けいりょう証明しょうめい事業じぎょう所しょなどで実施じっししている。