Carbon (API)

Carbon（カーボン）は、かつてMac OS Xで提供ていきょうされていた、二ふたつあったC言語げんごベースの主要しゅようなアプリケーションプログラミングインターフェース(API)のうちの一ひとつ。もう一ひとつのAPIであるCocoaがMac OS Xの技術ぎじゅつ的てき前身ぜんしんであるNeXTSTEP (OPENSTEP) に由来ゆらいするのに対たいし、Carbonは先代せんだいOSであるClassic Mac OSのToolbox API (Application Programming Interface) をMac OS X用ように整理せいり・移植いしょくしたものであり、Classic Mac OS用ようアプリケーションをMac OS X向むけに移植いしょくしやすくするために開発かいはつされた。

Carbonは旧来きゅうらいのClassic Mac OS用ようアプリケーションの迅速じんそくな移植いしょくを可能かのうにし、初期しょきのMac OS Xの普及ふきゅうを支ささえる重要じゅうような役割やくわりを果はたしたが、後年こうねんアプリケーションのCocoaへの移行いこうが進すすむとCarbonの重要じゅうよう度どは低下ていかし、徐々じょじょにフェードアウトすることになった。Mac OS Xの64ビット対応たいおうが進すすんでもCarbonは64ビット化かから取とり残のこされ、OS X Mountain Lionからは使用しようが非ひ推奨すいしょうとされ、macOS Catalinaからは完全かんぜんに廃止はいしされた。

概要がいよう

QuickTimeチームがAPIをMac OS Xに移植いしょくするために互換ごかんレイヤーを作成さくせいしたものが元もと型かたとなっている。それがスティーブ・ジョブズの目めに留とまり、汎用はんようの互換ごかんフレームワークのアイディアとして採用さいようされた。Toolbox APIの中なかで明あきらかにレガシーなもの、あまり使つかわれていないものを廃はいし、また内部ないぶ構造こうぞうが32ビットを前提ぜんていとして再さい設計せっけいされている（Toolboxは16ビットコードで、PowerPCの性能せいのうの足枷あしかせとなっていた）。

Carbon APIを利用りようしたアプリケーションのことをCarbonアプリケーションと呼よぶ。Mac OS Xに搭載とうさいされているもう一ひとつのAPIであるCocoaがObjective-Cのコードを書かかなければならないのに対たいして、Carbon APIはClassic Mac OS由来ゆらいのインターフェイスを持もっておりC/C++からも使つかうことができる。基本きほん的てきにToolboxとソースコード互換ごかんを目指めざしており、単たんに移植いしょくを行おこなうだけであれば、それほど大おおきな設計せっけい変更へんこうは必要ひつようなかった。

Carbonアプリケーションには、

• 一ひとつのバイナリでMac OS XでもClassic Mac OSでも実行じっこうできる『PEF Carbon』
• Mac OS X専用せんようの『Mach-O Carbon』

の2種類しゅるいが存在そんざいした。

PEFとはPreferred Executable Formatのことで、CFM（Code Fragment Manager）Carbonともいう。PEFは従来じゅうらいから使用しようされてきたフォーマットであるため、Classic Mac OSとMac OS X、両方りょうほうで動作どうささせることができた。ただし、CFM Carbonのアプリケーションでも、実行じっこうにはCarbonLibと呼よばれる機能きのう拡張かくちょう書類しょるいが必要ひつようであり、これがなければClassic Mac OSでは動作どうさしない。

Mach-O CarbonはMac OS X用ように最適さいてき化かされているのでCFM Carbonより幾分いくぶん高速こうそくに動作どうさする。また、QuartzをはじめとするMac OS X特有とくゆうのAPIを利用りようするためには、Mach-O形式けいしきが最もっとも適てきする。このフォーマットはdyldとも呼よばれる。そのままではClassic Mac OSでは動作どうさしないが、Mac OS 9から導入どうにゅうされたアプリケーションパッケージを利用りようして一ひとつのフォルダの中なかに CarbonアプリケーションとClassic Mac OS用ようアプリケーションの二ふたつを同どう梱こりし、一ひとつのアプリケーションのように見みせかけてClassic Mac OSとMac OS Xの両方りょうほうで実行じっこうできるようにしたものもあった。

Mac OS Xが普及ふきゅうしてしばらくはCFM Carbonが大半たいはんだったが、開発かいはつ環境かんきょうが最適さいてき化かされていくにつれてMach-O Carbonがほとんどとなってきた。（Xcodeの利用りようによる）Mach-O化かはUniversal Binary化かには必須ひっすである。なお、CocoaはCarbonと必かならずしも対立たいりつするものではなく、当初とうしょはCarbonベースのライブラリをラップしてCocoaアプリケーションとして実装じっそうしたもの、Cocoaベースのコンポーネントが組くみ込こまれたCarbonアプリケーションなど、様々さまざまな実装じっそう形態けいたいのソフトウェアが存在そんざいしていた。

実態じったいと終焉しゅうえん

当初とうしょのAppleの説明せつめいでは、Carbonに対応たいおうしたアプリケーションは、CarbonLibをインストールしたMac OS 9とMac OS Xで（それぞれのOSに特有とくゆうの機能きのうを除のぞけば）同おなじように動作どうさ可能かのうというものであった。しかし実際じっさいにはCarbonLibには問題もんだいも多おおく、デベロッパはMac OS 9とMac OS X用ようにコードを書かき分わけねばならない場面ばめんも多おおかった。ユーザーのMac OS Xへの移行いこうも迅速じんそくに進すすんだため、結局けっきょく両方りょうほうのOSで動作どうさ可能かのうというメリットが活いかされることはあまりなかった。

Mac OS X v10.2からMac OS X v10.4にかけて、CarbonはCocoaを模もしたHIObject(カスタムコントロールを作成さくせいするための機能きのうセット)の導入どうにゅうや、Mac OS X全体ぜんたいの共有きょうゆう基盤きばんといえるCore Foundationとの互換ごかん性せい強化きょうかなど、当初とうしょはCocoa同等どうとうの開発かいはつ基盤きばんとして徐々じょじょに構造こうぞうの近代きんだい化かが計はかられた。

しかしながらMac OS X v10.5での64ビット対応たいおうはUI部分ぶぶんが見送みおくられ、64ビット完全かんぜん対応たいおうにはCocoaへの移行いこうが必須ひっすとなるなど、AppleはGUIフロントエンドとしてのCarbonを徐々じょじょにフェードアウトさせ、Cocoaをメインとする姿勢しせいを強つよめていった。Mac OS X v10.6では従来じゅうらいCarbonベースだったQuickTimeとFinderがCocoaで作つくり直なおされている。

さらにMac OS XはPowerPC CPUのみならず、インテルCPU上じょうへも移植いしょくされ、Intel MacではCocoaアプリケーションとMach-O Carbonアプリケーションは再さいコンパイルすることでネイティブに動作どうさするとされていた一方いっぽう、CFM Carbonのアプリケーションはネイティブ動作どうさせず、Rosetta環境かんきょう上じょうでの動作どうさとなった。

Rosetta環境かんきょうはMac OS X Lionで廃止はいしされ、次つぎのOS X Mountain LionではCarbon自体じたいの利用りようが非ひ推奨すいしょうとなった。macOS Catalinaからは32bitアプリケーションへの対応たいおうと共ともにCarbonも廃止はいしされたため、Cocoaで作つくり直なおされていないCarbonアプリケーションは完全かんぜんに動作どうさしなくなった。