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STARTTLS

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

STARTTLS(スタート・ティーエルエス)は、平文へいぶん通信つうしんプロトコル暗号あんごう通信つうしん拡張かくちょうする方法ほうほうのひとつ。

特徴とくちょう

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暗黙あんもくTLS(またはSSL以下いかたんにTLS)では、暗号あんごう通信つうしんのために専用せんようのポートをてなければならない。STARTTLSを利用りようすれば、専用せんようのポート番号ばんごうてずに、途中とちゅうから平文へいぶん通信つうしん暗号あんごう通信つうしんえることができる。

TLSはアプリケーション中立ちゅうりつである。たとえば、TLS 1.2の仕様しようしょである RFC 5246 では以下いかのようにべられている。

TLSの利点りてんひとつは、アプリケーションプロトコルから独立どくりつしていることである。上位じょういそうのプロトコルからてTLSは透過とうかてきである。しかしTLSは、標準ひょうじゅんでは、セキュリティをどのように実装じっそうするかまでは規定きていしていない。ハンドシェイクをどうはじめるか、交換こうかんされた電子でんし証明しょうめいしょをどう解釈かいしゃくするかは、TLSより上位じょういのレイヤの設計せっけい実装じっそうゆだねられている[1]

プロトコルのSTARTTLS対応たいおう規定きていするRFC

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IMAP, POP3, ACAP RFC 2595
SMTP RFC 3207
FTP RFC 4217
XMPP RFC 6120 (5せつ)
LDAP RFC 4511 (4.14せつ)
NNTP RFC 4642

このうち、POP3、IMAP、SMTPについては、RFC 8314 でSTARTTLSよりも暗黙あんもくのTLS接続せつぞく使用しよう推奨すいしょうとなっている。

SMTPにおけるSTARTTLS

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TLSを使つか方法ほうほうは、TLSとどうレイヤで動作どうさするそののプロトコルと同様どうようであり、複数ふくすうのTLSライブラリ実装じっそうでサポートされている。 TLSのSMTP拡張かくちょう (RFC 3207) で、クライアント(以下いかではCとする)とサーバ(以下いかではSとする)がセキュアなセッションを開始かいしするまでのやりとりは、たとえばつぎのようになる[2]

  S: <TCPポート25ばん接続せつぞく要求ようきゅうつ>
  C: <接続せつぞくをオープンする>
  S: 220 mail.example.org ESMTP service ready
  C: EHLO client.example.org
  S: 250-mail.example.org offers a warm hug of welcome
  S: 250 STARTTLS
  C: STARTTLS
  S: 220 Go ahead
  C: <TLSネゴシエーションを開始かいし>
  C & S: <TLSのネゴシエーション>
  C & S: <ネゴシエーションの結果けっか確認かくにん>
  C: EHLO client.example.org[注釈ちゅうしゃく 1]

最後さいごEHLOコマンドはセキュアチャネルをつうじておくられる。SMTP認証にんしょう利用りようする場合ばあい[注釈ちゅうしゃく 2]は、セキュアチャネルがひらかれたのちであれば、サーバからの応答おうとうAUTH PLAIN送信そうしんしても問題もんだいない。

2011ねん10がつ現在げんざい、STARTTLSをメール送信そうしんのために提供ていきょうしているフリーメールサービスにはGmail[3]iCloud[4]がある。

限界げんかい

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りょうエンドが1たい1でセッションを構築こうちくするTLSをメールの通信つうしん利用りようしても、間欠かんけつてき通信つうしんのサーバによる中継ちゅうけい前提ぜんていとした電子でんしメール[5]では、ホップあいだのセキュリティは確保かくほすることができるものの、

  • メールがわでTLS経由けいゆ指示しじするような情報じょうほうはなく、すべての中継ちゅうけいでTLSが使つかわれる保証ほしょうをする方法ほうほうがない[6]
  • 公開こうかいされるメールサーバの場合ばあい、TLS接続せつぞくによって受信じゅしんすることを強制きょうせいすることはできず[7]平文へいぶんおこなわれるSTARTTLSの部分ぶぶん改竄かいざんしてしまえば、あとの通信つうしん平文へいぶんおこなわれてしまう[6]。2014ねんには、インターネットサービスプロバイダによるSTARTTLSの妨害ぼうがい報告ほうこくされている[8]
  • DNS偽装ぎそうおこなわれた場合ばあいぜんホップのTLS接続せつぞくたもったままちゅうあいだしゃ攻撃こうげき成立せいりつさせられる[9]

など、電子でんしメールの完全かんぜんせい機密きみつせい担保たんぽ送信そうしんしゃ認証にんしょうなどはいずれも実現じつげんすることができない[10]電子でんしメールにたいしてこれらの保護ほご適用てきようするには、S/MIMEなど、上位じょういそうおこなうことが必要ひつようとなる[11]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ この時点じてんから暗号あんごう通信つうしん開始かいしされる(理解りかいしやすいようにこのくだりおぎなった)。詳細しょうさいはPaul Smithによるつぎのメーリングリストへの投稿とうこう参照さんしょうされたい(英文えいぶん)。Paul Smith (2009ねん1がつ26にち). “STARTTLS & EHLO”. ietf-smtp mailing list. Internet Mail Consortium. 2015ねん10がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ SMTPでは、認証にんしょう必須ひっすではないことに注意ちゅうい

出典しゅってん

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  1. ^ Tim Dierks; Eric Rescorla (August 2008). “The Transport Layer Security (TLS) Protocol”. RFC Editor. 2012ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  2. ^ Paul Hoffman (February 2002). “SMTP Service Extension for Secure SMTP over Transport Layer Security”. RFC Editor. 2012ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  3. ^ Per Thorsheim (October 2011). “More STARTTLS support!”. 2012ねん5がつ13にち閲覧えつらん
  4. ^ Postbox (November 2011). “Using Postbox with iCloud Accounts : Postbox Support”. 2011ねん11月13にち閲覧えつらん
  5. ^ 『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん、pp.408-409。
  6. ^ a b 『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん、p.406。
  7. ^ 『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん、p.400。
  8. ^ Jacob Hoffman-Andrews (2014ねん11月11にち). “ISPs Removing Their Customers' Email Encryption”. 電子でんしフロンティア財団ざいだん. 2014ねん11月21にち閲覧えつらん
  9. ^ 『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん、p.407。
  10. ^ 『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん、p.409。
  11. ^ 『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん、p.451。

参考さんこう文献ぶんけん

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Eric Rescorla、齋藤さいとう孝道たかみちもりさだ鬼頭おにがしら利之としゆきわけ)、2003、『マスタリングTCP/IP SSL/TLSへん』、ム社むしゃ ISBN 978-4274065422

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • SMTP TLS Tests and Tools(TLS接続せつぞく可能かのうかテストできるウェブサイト。"Receiver Test"をクリックしてメールアドレスを入力にゅうりょくすると、メールアドレスをホストしているメールサーバで、ほんこうべたSTARTTLSコマンド発行はっこう様子ようす確認かくにんできる。英文えいぶん