ラッコ

ラッコ
分類ぶんるい
ドメイン : 真ま核かく生物せいぶつ Eukaryota 界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 脊索せきさく動物どうぶつ門もん Chordata 亜あ門もん : 脊椎動物せきついどうぶつ亜あ門もん Vertebrata 綱つな : 哺乳ほにゅう綱つな Mammalia 目め : ネコ目め Carnivora 科か : イタチ科か Mustelidae 亜あ科か : カワウソ亜あ科か Lutrinae 属ぞく : ラッコ属ぞく Enhydra 種たね : ラッコ E. lutris
学名がくめい
Enhydra lutris （Linnaeus, 1758）
和名わみょう
ラッコ
英名えいめい
Sea otter

ラッコ（猟虎らっこ、海獺らっこ、Enhydra lutris、英えい称しょう：Sea otter）はネコ目め（食肉しょくにく目め） イタチ科か カワウソ亜あ科かに属ぞくする哺乳類ほにゅうるいの一種いっしゅである。体長たいちょうは55-130cm、体重たいじゅうも40kgを越こすことがあり、イタチ科かでは最もっとも大型おおがたの種たねである。千島ちしま列島れっとう、アラスカ、カリフォルニア州しゅうなどの北きた太平洋たいへいよう沿岸えんがんに生息せいそくしている。分布ぶんぷの北限ほくげんは北極ほっきょく海かいの氷こおり域いきであり、南限なんげんはカリフォルニアの「ジャイアントケルプ」の分布ぶんぷの南限なんげんと一致いっちしている。「ラッコ」の名なはアイヌ語ごの "rakko" に由来ゆらいする。

生態せいたい

海上かいじょうで生活せいかつし、陸りくに上あがることはめったにない。交尾こうび、出産しゅっさんは海上かいじょうで行おこなう。一いち度どの出産しゅっさんで通常つうじょう1子し（まれに2子し）が生うまれる。腹はらの上うえに仔こを乗のせながら、海上かいじょうで仔こ育そだてを行おこなう。

海中かいちゅうに潜もぐりアワビやウニなどを捕とらえて食たべる。水面すいめんで仰向あおむけになり、腹はらの上うえに置おいた石いしなどに打うち付つけることで、これら獲物えものの殻からを割わり中身なかみを食たべている。このような道具どうぐ使用しようは霊長れいちょう類るいを除のぞく哺乳類ほにゅうるいでは唯一ゆいいつの例れいである。海底かいていに固着こちゃくした貝かいを引ひき剥はがすときにも、石いしを道具どうぐとして使用しようすることがある。大食漢たいしょくかんであり、飼育しいく下かにおいては一いち日にちに体重たいじゅうの15%近ちかくの餌えさが与あたえられているほどである（鳥羽水族館とばすいぞくかん）。このため、ラッコの棲息せいそくする海域かいいきではアワビ、ウニなどの高級こうきゅう海産物かいさんぶつが大だい規模きぼな食害しょくがいにあい漁業ぎょぎょう関係かんけい者しゃに深刻しんこくなダメージを与あたえているが、国際こくさい条約じょうやくなどで保護ほご動物どうぶつとなっている場合ばあいが多おおいので地域ちいきの都合つごうで駆除くじょなどができない。

ラッコの分布ぶんぷ域いき（青色あおいろ）

アシカ亜あ目め、クジラ目め、ジュゴン目めといった他ほかの海うみ生せい哺乳類ほにゅうるいは、分厚ぶあつい脂肪しぼう層そうを持もつことで海中かいちゅうで体温たいおんを奪うばわれることを防ふせいでいるが、ラッコはこのような脂肪しぼう層そうを持もたず、「綿毛わたげ」と呼よばれる柔やわらかい下毛しもげが1平方へいほうセンチあたり10万まん本ほん以上いじょう密生みっせいしている。水中すいちゅうに潜くぐるときでも、綿毛わたげの間あいだに含ふくまれた空気くうきが断熱だんねつ層そうとなり、防寒ぼうかんの役目やくめを果はたしている。防寒ぼうかん効果こうかを維持いじするため、ラッコは頻繁ひんぱんに毛けづくろいをし、毛皮けがわを清潔せいけつに保たもっている。

ラッコの毛皮けがわは保温ほおん力りょくに優すぐれ、柔やわらかな手触てざわりを持もつため、最さい高級こうきゅうの毛皮けがわとして珍重ちんちょうされた。18世紀せいき以降いこうロシア人じんが極東きょくとうに進出しんしゅつしてきた理由りゆうの一ひとつにラッコの毛皮けがわ採集さいしゅうが挙あげられる。また乱獲らんかくが進すすんだため、20世紀せいき初頭しょとうには絶滅ぜつめつ寸前すんぜんまで減少げんしょうしたが、1911年ねんには国際こくさい的てきな保護ほご条約じょうやくが締結ていけつされ、その後ご生息せいそく数すうは徐々じょじょに回復かいふくしていった。絶滅ぜつめつ危惧きぐIA類るい (CR)（環境省かんきょうしょうレッドリスト）に指定していされている。

『シートン動物どうぶつ誌し』によると、本来ほんらいは海辺うみべで生活せいかつする陸生りくせい動物どうぶつであり、日光浴にっこうよくをしている群むれをごく当あたり前まえに見みる事ことができたらしい。その頃ころは人間にんげんに対たいする警戒けいかい心しんもなかったため、瞬またたく間まに狩かり尽つくされてしまい、現在げんざいのような生態せいたいになったと記しるされている。

1989年ねん、アラスカのプリンスウィリアムス湾わんで超ちょう大型おおがたタンカー、「エクソン・バルディス号ごう」が座礁ざしょうし、27万まんバレルの原油げんゆが流出りゅうしゅつするという事故じこがあった。この事故じこによって約やく6000頭とうのラッコが死亡しぼうしたとされる（少すくなくとも1016頭とうの死亡しぼうが確認かくにんされている）。ラッコはアザラシ等ひとしと比くらべると体からだが小ちいさく皮下脂肪ひかしぼうが相対そうたい的てきに薄うすいため、体毛たいもうが油あぶらで汚染おせんされることで防寒ぼうかん効果こうかが低下ていかして凍死とうしし、また毛けの間あいだに蓄たくわえられた空気くうきがなくなり浮力ふりょくが減少げんしょうして溺死できししたのである。

亜種あしゅ

ラッコ

亜種あしゅとして次つぎの3種しゅが知しられている。体長たいちょう、頭部とうぶ、歯並はならびなどが異ことなっている。

• アジアラッコ （チシマラッコ, common sea otter, Asian sea otter, Kuril Sea otter,Russian Sea otter, E. l. lutris） (Linnaeus, 1758)：千島ちしま列島れっとう、コマンドルスキー諸島しょとう、太平洋たいへいよう西部せいぶに生息せいそくする。亜種あしゅの中なかで最もっとも体長たいちょうが大おおきく、頭部とうぶが広ひろく、鼻はなが小ちいさいことが特徴とくちょうである。

• カリフォルニアラッコ （southern sea otter, Californian sea otter, E. l. nereis） (Merriam, 1904)：カリフォルニア州しゅう中部ちゅうぶ沿岸えんがんに見みられる。頭部とうぶが狭せまく長ながい。口吻こうふん (rostrum) が長ながく、歯はが小ちいさい。

• アラスカラッコ （northern sea otter, Alaskan sea otter, E. l. kenyoni） (Wilson, 1991)：アリューシャン列島れっとう、アラスカに住すむ。オレゴン州しゅうなどに人工じんこう的てきに移うつされている。他たの2種しゅの中なか間あいだぐらいの外観がいかんで、下しも顎骨がっこつが長ながい。学名がくめいは、ラッコ研究けんきゅう者しゃのKarl W. Kenyonにちなんで付つけられたものだが、Kenyon自身じしんはこれが亜種あしゅとは考かんがえていなかった。

歴史れきし

日本にっぽんでは平安へいあん時代じだいには独どく犴の皮かわが陸奥みちのく国こくの交易こうえき雑ざつ物ぶつとされており、この独どく犴がラッコのことではないかと言いわれている。陸奥みちのく国こくで獲えれたのか、北海道ほっかいどう方面ほうめんから得えたのかは不明ふめいである。江戸えど時代じだいの地誌ちしには、気仙けせんの海島うみしまに海獺らっこが出でるというものと、見みたことがないというものとがあり、当時とうじ三陸海岸さんりくかいがんに希少きしょうながら出没しゅつぼつしていた可能かのう性せいがある。

かつて北海道ほっかいどうの襟裳岬えりもみさき周辺しゅうへんなどにはラッコが生息せいそくしていたが、明治めいじ時代じだいの乱獲らんかくによってほぼ絶滅ぜつめつしてしまった。このため、明治めいじ時代じだいには珍めずらしい動物どうぶつ保護ほご法ほう「臘虎膃肭獣じゅう猟りょう獲え取締とりしまり法ほう（明治めいじ四よん十じゅう五ご年ねん四よん月がつ二に十じゅう二に日にち法律ほうりつ第だい二に十じゅう一いち号ごう）」が施行しこうされている。現在げんざいでも時折ときおり、千島ちしま列島れっとうなどから来遊らいゆうしてくるラッコが北海道ほっかいどう東岸とうがんで目撃もくげきされることがあるが、定着ていちゃくするまでには至いたっていない。2003年ねん頃ごろから襟裳岬えりもみさき近海きんかいに一いち匹ひき定着ていちゃくしているがウニなどを大量たいりょうに食しょくすので漁業ぎょぎょう被害ひがいが問題もんだいになっている。

種たねの保全ほぜん状態じょうたい評価ひょうか

絶滅ぜつめつ危惧きぐIA類るい (CR)（環境省かんきょうしょうレッドリスト）

ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 2.3 (1994))

• 北海道ほっかいどう版ばんレッドデータブック - 希少きしょう種しゅ

ラッコを題材だいざいにした作品さくひん

• 『いたずらラッコのロッコ』（著者ちょしゃ：神沢かみさわ利子としこ、児童じどう文学ぶんがく）
• 『いたずらラッコとおなべのほし』（著者ちょしゃ：神沢かみさわ利子としこ、絵え：長ちょう新太あらた、児童じどう文学ぶんがく）
• 『海うみのけもの達たちの物語ものがたり―オットセイ・トド・アザラシ・ラッコ』（著者ちょしゃ：和田わだ 一雄かずお）
• 『およげラッコぼうや』（著者ちょしゃ：ナンシー・ホワイト・カールストローム、児童じどう文学ぶんがく）
• 『銀色ぎんいろラッコのなみだ―北きたの海うみの物語ものがたり』（著者ちょしゃ：岡野おかの 薫子かおるこ、児童じどう文学ぶんがく）
• 『ぼのぼの』（著者ちょしゃ：いがらしみきお）
• 『ラッコの道標どうひょう―ラッコが教おしえてくれた多様たような価値かち観かん』（著者ちょしゃ：中村なかむら 元はじめ）
• 『ラッコ物語ものがたり』（1987年ねん 東宝とうほう映画えいが）
• 『仮面かめんノリダー』（フジテレビ）石橋いしばし貴明たかあき扮ふんするラッコ男おとこが登場とうじょう。

日本にっぽんでラッコが見みられる施設しせつ

日本にっぽんにおける初はつのラッコの展示てんじ飼育しいくは、1982年ねん、伊豆いず・三津みつづシーパラダイスによる。あまり大々的だいだいてきには宣伝せんでんがなされなかったためか、翌年よくねん（1983年ねん）からの鳥羽水族館とばすいぞくかんによる飼育しいく展示てんじの方ほうが一般いっぱんには良よく知しられているかもしれない。

• マリンピア松島まつしま水族館すいぞくかん（宮城みやぎ県けん松島まつしま町まち）
• 鴨川かもがわシーワールド（千葉ちば県けん鴨川かもがわ市し）
• サンシャイン国際水族館さんしゃいんこくさいすいぞくかん（東京とうきょう都と）
• 横浜よこはま・八景島はっけいじまシーパラダイス（横浜よこはま市し）
• 下田しもだ海中かいちゅう水族館すいぞくかん（静岡しずおか県けん下田しもだ市し）
• 伊豆いず・三津みつづシーパラダイス（静岡しずおか県けん沼津ぬまづ市し）
• のんほいパーク（愛知あいち県けん豊橋とよはし市し）
• のとじま水族館すいぞくかん（石川いしかわ県けん七尾ななお市し）
• 鳥羽水族館とばすいぞくかん（三重みえ県けん鳥羽とっぱ市し）
• くじらの博物館はくぶつかん（和歌山わかやま県けん太地たいじ町まち）
• アドベンチャーワールド（和歌山わかやま県けん）
• 海鳴うみなり館かん（大阪おおさか市し）
• 須磨すま海浜かいひん水すい族ぞく園えん（神戸こうべ市し）
• 市立しりつしものせき水族館すいぞくかん 海うみ響ひびき館かん （山口やまぐち県けん下関しものせき市し）
• マリンワールド海うみの中道ちゅうどう（福岡ふくおか県けん福岡ふくおか市し）
• 大分おおいたマリーンパレス水族館すいぞくかん「うみたまご」（大分おおいた県けん大分おおいた市し）
• いおワールドかごしま水族館すいぞくかん（鹿児島かごしま県けん鹿児島かごしま市し）

参考さんこう文献ぶんけん

• 里見さとみ藤ふじ右みぎ衛門えもん『封ふう内ない土産みやげ考こう』、1798年ねん（寛政かんせい10年ねん）頃ごろ。仙台せんだい叢書そうしょ刊行かんこう会かい・編へん『仙台せんだい叢書そうしょ』第だい3巻かん（1923年ねん）に収録しゅうろく。

関連かんれん項目こうもく

• ラッコの保護ほご活動かつどう

外部がいぶリンク

• 日本にっぽんラッコ協会きょうかい
• ラッコの道標どうひょう 鳥羽水族館とばすいぞくかんでラッコ飼育しいくに関かかわった中村なかむら元はじめさんのページ