ステラーカイギュウ (模型 もけい )
海牛 うみうし 目 め (Sirenia ) は、哺乳 ほにゅう 綱 つな アフリカ獣 じゅう 上目 うわめ に分類 ぶんるい される目 め 。別名 べつめい カイギュウ目 め 、ジュゴン目 め [3] 。水生 すいせい 生活 せいかつ に適応 てきおう し、前 ぜん 脚 あし と尾 お が鰭 ひれ 状 じょう になり後 ご 脚 あし が退化 たいか するという鯨 くじら 類 るい のような外見 がいけん を持 も つが、系統的 けいとうてき には長 ちょう 鼻 はな 目 め (ゾウ類 るい )に最 もっと も近 きん 縁 えん である。植物 しょくぶつ 食 しょく 性 せい で、主 おも に海草 かいそう を食 た べる。
下位 かい 分類 ぶんるい
以下 いか の現生 げんなま の分類 ぶんるい 群 ぐん ・英名 えいめい は、Shoshani(2005)に従 したが う[1] 。和名 わみょう は川田 かわた ら(2018)に従 したが う[2] 。
前 ぜん 脚 あし は鰭 ひれ 状 じょう になり、後 こう 脚 あし は退化 たいか して見 み えない[6] 。尾 お の先端 せんたん は平 ひら たく、ジュゴン科 か は半月 はんつき 型 がた 、マナティー科 か はうちわ型 がた をしており、容易 ようい に区別 くべつ が可能 かのう [6] 。頸椎はジュゴン科 か では7個 こ に対 たい し、マナティー科 か では6個 こ [6] 。(哺乳類 ほにゅうるい は頸椎が7個 こ が普通 ふつう だが、マナティー科 か は数少 かずすく ない例外 れいがい である。)前 ぜん 臼歯 きゅうし は退化 たいか し、犬歯 けんし もない[6] 。
現生 げんなま 種 しゅ はジュゴン科 か とマナティー科 か の2科 か に分 わ かれるが、ジュゴンはインド洋 いんどよう 、太平洋 たいへいよう の沿岸 えんがん 部 ぶ 浅海 せんかい 域 いき に生息 せいそく しており、マナティーは大西 おおにし 洋 ひろし 、フロリダ などの浅 あさ い沿岸 えんがん 域 いき やアマゾン川 あまぞんがわ など大西洋 たいせいよう に注 そそ ぐ河川 かせん に生息 せいそく している[7] [8] 。日本 にっぽん の南西諸島 なんせいしょとう に少数 しょうすう のジュゴンが生息 せいそく するが、これはジュゴン分布 ぶんぷ 域 いき の北限 ほくげん である[8] 。
暖 あたた かい地域 ちいき の浅海 せんかい に生 は えるアマモ などの海草 かいそう 類 るい や河川 かせん に生 は える淡水 たんすい 性 せい 顕花植物 けんかしょくぶつ を主 おも なエサとする[9] 。(アマモは藻類 そうるい ではなく、単 たん 子葉 しよう 類 るい の顕花植物 けんかしょくぶつ であり、陸上 りくじょう の草 くさ に近 ちか い植物 しょくぶつ である[9] 。)
絶滅 ぜつめつ したステラーカイギュウ は、ベ べ ーリング海 りんぐかい を中心 ちゅうしん に生息 せいそく し[10] 、寒冷 かんれい な海 うみ においてコンブなどの海藻 かいそう 類 るい を主食 しゅしょく とした[9] 。
分子 ぶんし 系統 けいとう 解析 かいせき に基 もと づく海牛 うみうし 目 め の系統 けいとう 的 てき 位置 いち [11]
海 うみ 生 せい の哺乳類 ほにゅうるい には、鯨 くじら 類 るい 、鰭 ひれ 脚 あし 類 るい 、絶滅 ぜつめつ した束 たば 柱 ばしら 目 め 、本目 ほんめ であるカイギュウ類 るい の4つの代表 だいひょう 的 てき グループがある [9] (これらのほかに、ラッコなども海 うみ で暮 く らす哺乳類 ほにゅうるい に数 かぞ えられる。化石 かせき 種 しゅ では有毛 ありげ 目 め オオナマケモノ類 るい に海 うみ 生 せい だったと思 おぼ しき種 たね が幾 いく らか確認 かくにん されている)。一見 いっけん アザラシ類 るい やイルカ類 るい と姿 すがた が似 に ているが、カイギュウ類 るい とこれら鰭 ひれ 脚 あし 類 るい やクジラ類 るい との間 あいだ に系統的 けいとうてき な類縁 るいえん 関係 かんけい はなく [9] 、収斂 しゅうれん 進化 しんか である。
カイギュウ類 るい は始 はじめ 新 しん 世 よ のはじめに、近 きん 蹄類 の1種 しゅ から分岐 ぶんき したと考 かんが えられるが、同 おな じく近 きん 蹄類から派生 はせい したと考 かんが えられるゾウ目 め (長 ちょう 鼻 はな 目 め )と近 きん 縁 えん である[9] 。ゾウ目 め 、海牛 うみうし 目 め 、束 たば 柱 ばしら 目 め は、テチス海 うみ 周囲 しゅうい で初期 しょき の放散 ほうさん を開始 かいし したと見 み られ、「テチス獣類 じゅうるい (テチテリア Tethitheria)」という上位 じょうい クレードにまとめられる[9] 。
カイギュウ類 るい の最古 さいこ の化石 かせき は、ジャマイカ の始 はじめ 新 しん 世 よ の地層 ちそう で発見 はっけん されたペゾシーレン (ペゾシレン)Pezosiren である。ペゾシーレンは、水生 すいせい に適応 てきおう しながらも、四肢 しし を持 も ち、陸上 りくじょう での体重 たいじゅう 負荷 ふか に耐 た える関節 かんせつ を残 のこ していたと見 み られる[12] 。
マナティー科 か のなかまは、中新 ちゅうしん 世 よ 後期 こうき 頃 ごろ から、歯 は の水平 すいへい 交換 こうかん を進化 しんか させた[9] 。これは、食物 しょくもつ とする淡水 たんすい 性 せい 顕花植物 けんかしょくぶつ に多 おお く含 ふく まれる二酸化 にさんか ケイ素 けいそ による歯 は の摩耗 まもう への適応 てきおう である[9] 。この水平 すいへい 交換 こうかん は、ゾウ のように限 かぎ りのあるものではなく、一生 いっしょう 続 つづ く[9] 。
カイギュウ類 るい の分布 ぶんぷ 域 いき は主 おも に熱帯 ねったい から亜熱帯 あねったい に限 かぎ られており、進化 しんか 史上 しじょう あまり繁栄 はんえい しなかった(中新 ちゅうしん 世 よ ・鮮新世 よ にはそれなりに多様 たよう 化 か を遂 と げているが)が、これは、エサとするアマモ類 るい の生息 せいそく 状 じょう 況 きょう による制限 せいげん があったためである[9] 。
そのような中 なか 、ジュゴン科 か のうちの1系列 けいれつ は、中新 ちゅうしん 世 よ 以降 いこう の地球 ちきゅう の寒冷 かんれい 化 か の際 さい に、分布 ぶんぷ 域 いき が狭 せば まったアマモ類 るい から、増 ふ え始 はじ めたコンブ類 るい などに食 しょく 性 せい を広 ひろ げ、体 からだ を大型 おおがた にすることで、冷 つめ たい海 うみ に適応 てきおう した[9] 。かつて北 きた 太平洋 たいへいよう に分布 ぶんぷ したが、ベ べ ーリング海 りんぐかい の一部 いちぶ 海域 かいいき まで分布 ぶんぷ 域 いき を狭 せば めた末 すえ に乱獲 らんかく によって1760年代 ねんだい に絶滅 ぜつめつ したステラーカイギュウ は、このタイプのカイギュウ類 るい の最後 さいご の1種 しゅ であった[9] 。脊椎動物 せきついどうぶつ の歴史 れきし において、海藻 かいそう 類 るい という非常 ひじょう に歴史 れきし の古 ふる い豊 ゆた かな蛋白 たんぱく 源 げん を積極 せっきょく 的 てき に利用 りよう するものは、この寒冷 かんれい 適応 てきおう 型 がた のカイギュウ類 るい 以外 いがい 、ほとんど知 し られていない[9] (他 た にはウミイグアナがいる程度 ていど である)。なお、ステラーカイギュウの仲間 なかま は、歯 は の退化 たいか [9] や前足 まえあし の指 ゆび の消失 しょうしつ などの、マナティー科 か にも他 た のジュゴン科 か にもない特徴 とくちょう を持 も っている。
海牛 うみうし 目 め (海牛 うみうし 類 るい )は、マナティーを指 さ す「海牛 うみうし (カイギュウ)」から来 き ている。「マナティー」の名 な が一般 いっぱん 化 か した現在 げんざい 、現生 げんなま のマナティーがこの名 な で呼 よ ばれることはほとんどなくなったが、絶滅 ぜつめつ 種 しゅ のステラーカイギュウをはじめ、化石 かせき 種 しゅ の多 おお くにも「○○○カイギュウ」の名 な が付 つ けられ、これら絶滅 ぜつめつ 種 しゅ は「カイギュウ(類 るい )」と呼 よ ばれることが多 おお い。
日本 にっぽん では約 やく 30か所 しょ でカイギュウ類 るい の化石 かせき が発見 はっけん されている。発見 はっけん 地 ち の約 やく 20か所 しょ は北海道 ほっかいどう であり、ステラーカイギュウと同 おな じ寒冷 かんれい 適応 てきおう 系 けい のカイギュウ類 るい が多 おお い。
キタヒロシマカイギュウ
北海道 ほっかいどう 石狩 いしかり 振興 しんこう 局 きょく 管内 かんない 北広島 きたひろしま 市 し から発見 はっけん 。世界 せかい でただ1体 たい のステラーカイギュウ化石 かせき だったが、後 のち に房総半島 ぼうそうはんとう でもステラーカイギュウの化石 かせき が発見 はっけん された。正式 せいしき 名称 めいしょう は、ステラーカイギュウ北広島 きたひろしま 標本 ひょうほん 。体長 たいちょう 約 やく 7m。約 やく 100万 まん 年 ねん 前 まえ 。
ヤマガタダイカイギュウ
1978年 ねん 8月 がつ 、山形 やまがた 県 けん 西村山 にしむらやま 郡 ぐん 大江 おおえ 町 まち 用 よう (よう)の最上川 もがみがわ 河底 かわぞこ の岩盤 がんばん から小学生 しょうがくせい が発見 はっけん 。体長 たいちょう 約 やく 3.8m。約 やく 800万 まん 年 ねん 前 まえ 。学名 がくめい :Dusisiren dewana 。
アイヅタカサトカイギュウ
1980年 ねん 、福島 ふくしま 県 けん 喜多方 きたかた 市 し 高郷 たかさと 町 まち (旧 きゅう ・耶麻 やま 郡 ぐん 高郷 たかさと 村 むら )塩坪 しおつぼ の阿賀川 あががわ 畔 ほとり で発見 はっけん 。体長 たいちょう 約 やく 3.7m。約 やく 800万 まん 年 ねん 前 まえ 。ステラーカイギュウ亜 あ 科 か アイヅタカサトカイギュウ属 ぞく 、学名 がくめい Dusisiren takasatensis 。
タキカワカイギュウ
1980年 ねん 8月 がつ 、北海道 ほっかいどう 空知 そらち 総合 そうごう 振興 しんこう 局 きょく 管内 かんない 滝川 たきがわ 市 し を流 なが れる空知川 そらちがわ で発見 はっけん 。北海道 ほっかいどう のカイギュウ化石 かせき 研究 けんきゅう の嚆矢 こうし 。後 のち に道東 どうとう 地方 ちほう でも同種 どうしゅ の化石 かせき が発見 はっけん されている。体長 たいちょう 8m以上 いじょう 。約 やく 500万 まん 年 ねん 前 まえ 。
ピリカカイギュウ
1983年 ねん 夏 なつ 、北海道 ほっかいどう 檜山 ひやま 振興 しんこう 局 きょく 管内 かんない 今金 いまかね 町 まち 美利河 ぴりか 地区 ちく で、美利河 ぴりか ダムの建設 けんせつ 工事 こうじ に伴 ともな う取 と り付 つ け道路 どうろ から発見 はっけん 。復元 ふくげん されたものとしては、世界 せかい 最大 さいだい のカイギュウ化石 かせき 。体長 たいちょう 8m以上 いじょう 。約 やく 120万 まん 年 ねん 前 まえ 。ステラーカイギュウ属 ぞく 。
ショサンベツカイギュウ
1967年 ねん 、北海道 ほっかいどう 留萌 るもい 振興 しんこう 局 きょく 管内 かんない 苫前 とままえ 郡 ぐん 初山別 しょさんべつ 村 むら で発見 はっけん された、日本 にっぽん 初 はつ のカイギュウ化石 かせき 。ただし、その後 ご 地元 じもと 小学校 しょうがっこう の理科 りか 準備 じゅんび 室 しつ で長 なが らく保管 ほかん され、研究 けんきゅう 者 しゃ によってカイギュウと確認 かくにん されたのは1990年 ねん 。非常 ひじょう に珍 めずら しい、出産 しゅっさん 直前 ちょくぜん の胎児 たいじ を伴 ともな う妊娠 にんしん 個体 こたい の化石 かせき であった。また、カイギュウ発見 はっけん 地点 ちてん としては国内 こくない 最 さい 北 きた だが、寒冷 かんれい 適応 てきおう 系 けい ではなく、現生 げんなま のジュゴンと同 おな じく温暖 おんだん な海 うみ に棲 す むカイギュウ類 るい だった。母親 ははおや 約 やく 3.6m、胎児 たいじ 約 やく 1.5m。約 やく 1,100万 まん 年 ねん 前 まえ 。
2003年 ねん 8月 がつ 、札幌 さっぽろ 市 し 南 みなみ 区 く 砥山 とやま の豊平川 とよひらがわ 河床 かしょう から、1,000万 まん 年 ねん - 750万 まん 年 ねん 前 まえ のカイギュウ化石 かせき (肋骨 あばらぼね と胸骨 きょうこつ )が発見 はっけん された。寒冷 かんれい 適応 てきおう 型 がた カイギュウでは日本 にっぽん 最古 さいこ 。後期 こうき 中新 ちゅうしん 世 よ (1,100万 まん 年 ねん 前 まえ -530万 まん 年 ねん 前 まえ )。
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