(Translated by https://www.hiragana.jp/)
海牛目 - Wikipedia コンテンツにスキップ

海牛うみうし

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジュゴンから転送てんそう
海牛うみうし
ジュゴン
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
下綱しもつな : しんじゅう下綱しもつな Eutheria
上目うわめ : アフリカじゅう上目うわめ Afrotheria
階級かいきゅうなし : テチス獣類じゅうるい Tethytheria
: 海牛うみうし Sirenia
学名がくめい
Sirenia Illiger, 1811[1]
和名わみょう
海牛うみうし[2]
ステラーカイギュウ模型もけい

海牛うみうし (Sirenia) は、哺乳ほにゅうつなアフリカじゅう上目うわめ分類ぶんるいされる別名べつめいカイギュウジュゴン[3]水生すいせい生活せいかつ適応てきおうし、ぜんあしひれじょうになりあし退化たいかするというくじらるいのような外見がいけんつが、系統的けいとうてきにはちょうはな(ゾウるい)にもっときんえんである。植物しょくぶつしょくせいで、おも海草かいそうべる。

分類ぶんるい

[編集へんしゅう]
下位かい分類ぶんるい

以下いか現生げんなま分類ぶんるいぐん英名えいめいは、Shoshani(2005)にしたが[1]和名わみょう川田かわたら(2018)にしたが[2]

形態けいたい

[編集へんしゅう]

ぜんあしひれじょうになり、こうあし退化たいかしてえない[6]先端せんたんひらたく、ジュゴン半月はんつきがた、マナティーはうちわがたをしており、容易ようい区別くべつ可能かのう[6]。頸椎はジュゴンでは7たいし、マナティーでは6[6]。(哺乳類ほにゅうるいは頸椎が7普通ふつうだが、マナティー数少かずすくない例外れいがいである。)ぜん臼歯きゅうし退化たいかし、犬歯けんしもない[6]

現生げんなましゅ分布ぶんぷ生態せいたい

[編集へんしゅう]

現生げんなましゅはジュゴンとマナティーの2かれるが、ジュゴンはインド洋いんどよう太平洋たいへいよう沿岸えんがん浅海せんかいいき生息せいそくしており、マナティーは大西おおにしひろしフロリダなどのあさ沿岸えんがんいきアマゾン川あまぞんがわなど大西洋たいせいようそそ河川かせん生息せいそくしている[7][8]日本にっぽん南西諸島なんせいしょとう少数しょうすうのジュゴンが生息せいそくするが、これはジュゴン分布ぶんぷいき北限ほくげんである[8]

あたたかい地域ちいき浅海せんかいえるアマモなどの海草かいそうるい河川かせんえる淡水たんすいせい顕花植物けんかしょくぶつおもなエサとする[9]。(アマモは藻類そうるいではなく、たん子葉しようるい顕花植物けんかしょくぶつであり、陸上りくじょうくさちか植物しょくぶつである[9]。)

絶滅ぜつめつしたステラーカイギュウは、リング海りんぐかい中心ちゅうしん生息せいそく[10]寒冷かんれいうみにおいてコンブなどの海藻かいそうるい主食しゅしょくとした[9]

進化しんか

[編集へんしゅう]
アフリカじゅう上目うわめ
アフリカしょくむしるい
ツチブタ

ツチブタ
Orycteropodidae

Afroinsectivora
ハネジネズミ

ハネジネズミ

アフリカトガリネズミ

キンモグラ
Chrysochloridae

テンレック
Tenrecidae

きん蹄類
イワダヌキ

ハイラックス
Procaviidae

テティス獣類じゅうるい
ちょうはな

ゾウ

海牛うみうし

ジュゴン

マナティー

分子ぶんし系統けいとう解析かいせきもとづく海牛うみうし系統けいとうてき位置いち[11]

うみせい哺乳類ほにゅうるいには、くじらるいひれあしるい絶滅ぜつめつしたたばばしら本目ほんめであるカイギュウるいの4つの代表だいひょうてきグループがある [9](これらのほかに、ラッコなどもうみらす哺乳類ほにゅうるいかぞえられる。化石かせきしゅでは有毛ありげオオナマケモノるいうみせいだったとおぼしきたねいくらか確認かくにんされている)。一見いっけんアザラシるいやイルカるい姿すがたているが、カイギュウるいとこれらひれあしるいやクジラるいとのあいだ系統的けいとうてき類縁るいえん関係かんけいはなく [9]収斂しゅうれん進化しんかである。

カイギュウるいはじめしんのはじめに、きん蹄類の1しゅから分岐ぶんきしたとかんがえられるが、おなじくきん蹄類から派生はせいしたとかんがえられるゾウちょうはな)ときんえんである[9]。ゾウ海牛うみうしたばばしらは、テチスうみ周囲しゅうい初期しょき放散ほうさん開始かいししたとられ、「テチス獣類じゅうるい(テチテリア Tethitheria)」という上位じょういクレードにまとめられる[9]

カイギュウるい最古さいこ化石かせきは、ジャマイカはじめしん地層ちそう発見はっけんされたペゾシーレン(ペゾシレン)Pezosiren である。ペゾシーレンは、水生すいせい適応てきおうしながらも、四肢ししち、陸上りくじょうでの体重たいじゅう負荷ふかえる関節かんせつのこしていたとられる[12]

マナティーのなかまは、中新ちゅうしん後期こうきごろから、水平すいへい交換こうかん進化しんかさせた[9]。これは、食物しょくもつとする淡水たんすいせい顕花植物けんかしょくぶつおおふくまれる二酸化にさんかケイ素けいそによる摩耗まもうへの適応てきおうである[9]。この水平すいへい交換こうかんは、ゾウのようにかぎりのあるものではなく、一生いっしょうつづ[9]

カイギュウるい分布ぶんぷいきおも熱帯ねったいから亜熱帯あねったいかぎられており、進化しんか史上しじょうあまり繁栄はんえいしなかった(中新ちゅうしん・鮮新にはそれなりに多様たようげているが)が、これは、エサとするアマモるい生息せいそくじょうきょうによる制限せいげんがあったためである[9]

そのようななか、ジュゴンのうちの1系列けいれつは、中新ちゅうしん以降いこう地球ちきゅう寒冷かんれいさいに、分布ぶんぷいきせばまったアマモるいから、はじめたコンブるいなどにしょくせいひろげ、からだ大型おおがたにすることで、つめたいうみ適応てきおうした[9]。かつてきた太平洋たいへいよう分布ぶんぷしたが、リング海りんぐかい一部いちぶ海域かいいきまで分布ぶんぷいきせばめたすえ乱獲らんかくによって1760年代ねんだい絶滅ぜつめつしたステラーカイギュウは、このタイプのカイギュウるい最後さいごの1しゅであった[9]脊椎動物せきついどうぶつ歴史れきしにおいて、海藻かいそうるいという非常ひじょう歴史れきしふるゆたかな蛋白たんぱくげん積極せっきょくてき利用りようするものは、この寒冷かんれい適応てきおうがたのカイギュウるい以外いがい、ほとんどられていない[9]にはウミイグアナがいる程度ていどである)。なお、ステラーカイギュウの仲間なかまは、退化たいか[9]前足まえあしゆび消失しょうしつなどの、マナティーにものジュゴンにもない特徴とくちょうっている。

日本にっぽんでの化石かせき

[編集へんしゅう]

海牛うみうし海牛うみうしるい)は、マナティーをす「海牛うみうし(カイギュウ)」からている。「マナティー」の一般いっぱんした現在げんざい現生げんなまのマナティーがこのばれることはほとんどなくなったが、絶滅ぜつめつしゅのステラーカイギュウをはじめ、化石かせきしゅおおくにも「○○○カイギュウ」のけられ、これら絶滅ぜつめつしゅは「カイギュウ(るい)」とばれることがおおい。

日本にっぽんではやく30かしょでカイギュウるい化石かせき発見はっけんされている。発見はっけんやく20かしょ北海道ほっかいどうであり、ステラーカイギュウとおな寒冷かんれい適応てきおうけいのカイギュウるいおおい。

キタヒロシマカイギュウ
北海道ほっかいどう石狩いしかり振興しんこうきょく管内かんない北広島きたひろしまから発見はっけん世界せかいでただ1たいのステラーカイギュウ化石かせきだったが、のち房総半島ぼうそうはんとうでもステラーカイギュウの化石かせき発見はっけんされた。正式せいしき名称めいしょうは、ステラーカイギュウ北広島きたひろしま標本ひょうほん体長たいちょうやく7m。やく100まんねんまえ
ヤマガタダイカイギュウ
1978ねん8がつ山形やまがたけん西村山にしむらやまぐん大江おおえまちよう(よう)の最上川もがみがわ河底かわぞこ岩盤がんばんから小学生しょうがくせい発見はっけん体長たいちょうやく3.8m。やく800まんねんまえ学名がくめいDusisiren dewana
アイヅタカサトカイギュウ
1980ねん福島ふくしまけん喜多方きたかた高郷たかさとまちきゅう耶麻やまぐん高郷たかさとむら塩坪しおつぼ阿賀川あががわほとり発見はっけん体長たいちょうやく3.7m。やく800まんねんまえ。ステラーカイギュウアイヅタカサトカイギュウぞく学名がくめい Dusisiren takasatensis 。 
タキカワカイギュウ
1980ねん8がつ北海道ほっかいどう空知そらち総合そうごう振興しんこうきょく管内かんない滝川たきがわながれる空知川そらちがわ発見はっけん北海道ほっかいどうのカイギュウ化石かせき研究けんきゅう嚆矢こうしのち道東どうとう地方ちほうでも同種どうしゅ化石かせき発見はっけんされている。体長たいちょう8m以上いじょうやく500まんねんまえ
ピリカカイギュウ
1983ねんなつ北海道ほっかいどう檜山ひやま振興しんこうきょく管内かんない今金いまかねまち美利河ぴりか地区ちくで、美利河ぴりかダムの建設けんせつ工事こうじともな道路どうろから発見はっけん復元ふくげんされたものとしては、世界せかい最大さいだいのカイギュウ化石かせき体長たいちょう8m以上いじょうやく120まんねんまえ。ステラーカイギュウぞく
ショサンベツカイギュウ
1967ねん北海道ほっかいどう留萌るもい振興しんこうきょく管内かんない苫前とままえぐん初山別しょさんべつむら発見はっけんされた、日本にっぽんはつのカイギュウ化石かせき。ただし、その地元じもと小学校しょうがっこう理科りか準備じゅんびしつながらく保管ほかんされ、研究けんきゅうしゃによってカイギュウと確認かくにんされたのは1990ねん非常ひじょうめずらしい、出産しゅっさん直前ちょくぜん胎児たいじともな妊娠にんしん個体こたい化石かせきであった。また、カイギュウ発見はっけん地点ちてんとしては国内こくないさいきただが、寒冷かんれい適応てきおうけいではなく、現生げんなまのジュゴンとおなじく温暖おんだんうみむカイギュウるいだった。母親ははおややく3.6m、胎児たいじやく1.5m。やく1,100まんねんまえ
  • 2003ねん8がつ札幌さっぽろみなみ砥山とやま豊平川とよひらがわ河床かしょうから、1,000まんねん - 750まんねんまえのカイギュウ化石かせき肋骨あばらぼね胸骨きょうこつ)が発見はっけんされた。寒冷かんれい適応てきおうがたカイギュウでは日本にっぽん最古さいこ後期こうき中新ちゅうしん(1,100まんねんまえ-530まんねんまえ)。

画像がぞう

[編集へんしゅう]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b Jeheskel Shoshani, "Order Sirenia," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Page 92 - 93.
  2. ^ a b 川田かわたしん一郎いちろう世界せかい哺乳類ほにゅうるい標準ひょうじゅん和名わみょう目録もくろく」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい58かん 別冊べっさつ日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2018ねん、1 - 53ぺーじdoi:10.11238/mammalianscience.58.S1
  3. ^ すみほんせい提言ていげん哺乳類ほにゅうるい日本語にほんご分類ぶんるいぐんめいとく目名めな取扱とりあつかいについて —文部省もんぶしょうの“目安めやす”にどう対応たいおうするか—」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい40かんだい1ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2000ねん、83-99ぺーじdoi:10.11238/mammalianscience.40.83 
  4. ^ Classification of the family Prorastomidae”. Fossilworks. 2017ねん1がつ1にち閲覧えつらん
  5. ^ Classification of the family Protosirenidae”. Fossilworks. 2017ねん1がつ1にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d はやし壽郎としお(1968)『標準ひょうじゅん現職げんしょく図鑑ずかん全集ぜんしゅう20 動物どうぶつⅡ』保育ほいくしゃ, 89ぺーじ
  7. ^ ジュリエット・クラットン=ブロック(2005)『ネイチャー・ハンドブック 世界せかい哺乳類ほにゅうるい図鑑ずかん新樹あらきしゃ, 312-313ぺーじ
  8. ^ a b 小宮こみや輝之てるゆき (2002)『フィールドベスト図鑑ずかん12 日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい株式会社かぶしきがいしゃ学習がくしゅう研究けんきゅうしゃ、194-195ぺーじISBN 978-4054013742
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 冨田とみた幸光ゆきみつうみ哺乳類ほにゅうるい」『新版しんぱん 絶滅ぜつめつ哺乳類ほにゅうるい図鑑ずかん伊藤いとうへいゆう岡本おかもと泰子やすこイラスト、丸善まるぜん出版しゅっぱん、2011ねん、137-155ぺーじISBN 9784621082904国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょしID:000011105647
  10. ^ Domning, D. 2016. Hydrodamalis gigas. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T10303A43792683. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T10303A43792683.en. Downloaded on 06 July 2019.
  11. ^ Tabuce, R.; Asher, R. J.; Lehmann, T. (2008). “Afrotherian mammals: a review of current data”. Mammalia 72: 2–14. doi:10.1515/MAMM.2008.004. https://doi.org/10.1515/MAMM.2008.004 2024ねん7がつ31にち閲覧えつらん. 
  12. ^ Doming, D.P. (2001). “The earliest known fully quadrupedal sirenian”. Nature 413 (6856): 625-627. doi:10.1038/35098072. ISSN 0028-0836. https://doi.org/10.1038/35098072.