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トランスジェンダー - Wikipedia
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トランスジェンダー

出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつが自身じしんの性せい同一どういつ性せいと異ことなる者もの

トランスジェンダー（英語えいご: transgender）とは、出生しゅっしょう時点じてんの身体しんたいの観察かんさつの結果けっか、医師いしにより割わり当あててられ、出生しゅっしょう証明しょうめい書しょや出生しゅっしょう届とどけに記入きにゅうされた性別せいべつ、あるいは続柄つづきがらが、性せい同一どういつ性せい（ジェンダー・アイデンティティ）と異ことなる人々ひとびと、またはジェンダー表現ひょうげんと異ことなる人々ひとびとを示しめす総称そうしょうである[1][2][3][4][5]。

トランスジェンダー・プライド・フラッグ
2005年ねん10月1日にちにパリで行おこなわれたデモに参加さんかしたトランスジェンダーの活動かつどう家か

トランスジェンダーは「トランス（trans）」と短縮たんしゅくして表現ひょうげんされることがある[1]。また性的せいてき少数しょうすう者しゃのひとつとして挙あげられる[6]。Xジェンダーを含ふくめた多おおくのトランスジェンダーが自分じぶんの身体しんたいが自身じしんの性せい同一どういつ性せいと一致いっちしないことに苦痛くつうを感かんじ、ジェンダー・トランジションを試こころみることがある。単たんに趣味しゅみや性癖せいへきで異性いせい装そう（男装だんそうや女装じょそう）をする人ひとはトランスジェンダーに含ふくまれないが、出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつと性せい同一どういつ性せいが異ことなっているものの性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつなどを受うけていない人ひともトランスジェンダーの中なかにいる[1][7]。

概要がいようと定義ていぎ

編集へんしゅう

ジェンダー（gender）とは、社会しゃかい的てきに構築こうちくされたものであり、染色せんしょく体たい、ホルモン、生殖せいしょく器官きかんなど性的せいてき特徴とくちょうに基もとづく、女性じょせい、男性だんせい、インターセックスといった性別せいべつ（sex）とは異ことなる概念がいねんであるものの、相互そうご作用さようする[8]。ジェンダーが、出生しゅっしょう時じに割わり当あてられる性別せいべつと一致いっちする人ひともいれば、一致いっちしない人ひともいる[8]。性せい同一どういつ性せいは、性せい自認じにんやジェンダー・アイデンティティとも呼よばれ、自身じしんの性せい（ジェンダー）をどのように認識にんしきしているのかを指さすもので、自称じしょうではない[9]。性せい同一どういつ性せいがどのように決定けっていされるのかについて、単一たんいつの説明せつめいはできない。多おおくの専門せんもん家かは、遺伝いでん的てき影響えいきょうや出生しゅっしょう前まえのホルモンなどの生物せいぶつ学がく的てき要因よういん、または初期しょきの経験けいけん、青年せいねん期きまたは成人せいじん期きの経験けいけん、それらがジェンダー・アイデンティティの発達はったつに複ふく合あい的てきに寄与きよする可能かのう性せいがあると考かんがえている[10][11]。性せい同一どういつ性せいは3～4歳さいで認識にんしきし始はじめると言いわれている[12]。

また、一般いっぱん的てきに、ジェンダー表現ひょうげん（性せい表現ひょうげん）はその人物じんぶつの性せい同一どういつ性せいと関係かんけいしていることも多おおいが、必かならずそうであるわけではない[13][14]。特定とくていのジェンダーを連想れんそうされる、もしくは特定とくていの性せい役割やくわりにならった外見がいけん、行動こうどうや態度たいどは、必かならずしもそれと一致いっちした性せい同一どういつ性せいを持もつことを意味いみするわけではない。

「トランスジェンダー」とは、性せい同一どういつ性せいや性せい表現ひょうげんが、出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつと一致いっちしない人ひとを指さす包括ほうかつ的てきな用語ようごである[10][15][16]。性せい同一どういつ性せいという言葉ことばを使つかわず、「本人ほんにんの体験たいけんし表出ひょうしゅつするジェンダー」と説明せつめいされることもある[17]。「トランスジェンダー女性じょせい（トランス女性じょせい）」は、女性じょせいの性せい同一どういつ性せいをもち出生しゅっしょう時じに医師いしにより男性だんせいと割わり当あてられた人ひと、「トランスジェンダー男性だんせい（トランス男性だんせい）」は、男性だんせいの性せい同一どういつ性せいをもち出生しゅっしょう時じに医師いしにより女性じょせいと割わり当あてられた人ひとを指さす[1][18]。「MtF（Male to Femaleの略りゃく）」や「FtM（Female to Maleの略りゃく）」という言葉ことばも使つかわれていることはあるが、「トランスジェンダー女性じょせい」や「トランスジェンダー男性だんせい」の方ほうがより望のぞましい表現ひょうげんとされる[19]。ただし、本人ほんにんが呼よばれたい呼称こしょうを使用しようするのが大前提だいぜんていであるので、本人ほんにんが「MtF」や「FtM」という呼よび名なを希望きぼうし、「トランス女性じょせい」や「トランス男性だんせい」と呼よばれることを望のぞまないのであれば、強要きょうようすべきではない。性せい同一どういつ性せいが男女だんじょのどちらでもない人ひとはXジェンダーやノンバイナリーといった用語ようごを使つかう場合ばあいもある。「トランスジェンダー」は形容詞けいようしであるため、通常つうじょうは人ひとを形容けいようする言葉ことばとして、「トランスジェンダーの人ひと」「トランスジェンダー女性じょせい（トランスジェンダー男性だんせい）」「トランス女性じょせい（トランス男性だんせい）」などと、人ひとを指さす名詞めいしと併用へいようして使つかわれる[20][21]。

性せい同一どういつ性せい障害しょうがい（現在げんざいは性別せいべつ不ふ合ごうという診断しんだん名めい）という疾患しっかん名めいとして医学いがくで使つかわれる言葉ことばもある[22]。トランスジェンダーに性せい同一どういつ性せい障害しょうがいの人々ひとびとも含ふくまれるが、その用語ようごの成なり立たちや当事とうじ者しゃの使用しよう感覚かんかくの観点かんてんからも「トランスジェンダー = 性せい同一どういつ性せい障害しょうがい」ではない[23][24][25]。トランスジェンダーの人ひとの中なかには性別せいべつ違和いわを感かんじる人ひとも多おおく、それを解消かいしょうするためにホルモン補充ほじゅう療法りょうほうや性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを受うける人ひとがおり、そうした場合ばあいに医学いがく的てきな診断しんだんが必要ひつようとなる[7]。このような措置そちを望のぞまない、もしくは必要ひつようとしない人ひともいれば、金銭きんせん的てき、医学いがく的てき、制度せいど的てきな理由りゆうで選択せんたくできない場合ばあいもある[7][26]。

「トランスメディカリズム」も参照さんしょう

トランスジェンダーとは、複数ふくすうの性せい同一どういつ性せい（ジェンダー・アイデンティティ）の総称そうしょうで、出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつと対極たいきょくにある性せい同一どういつ性せい（トランス女性じょせいとトランス男性だんせい）の他ほかに、男女だんじょ（性別せいべつ二に元げん制せい）の枠わくにはまらない性せい同一どういつ性せい（Xジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダークィア、アジェンダーなど）も含ふくむ[27][28][29]。トランスジェンダーに第だい三さんの性別せいべつを含ふくむ場合ばあいもある[30][31]。

トランスジェンダーであることは、その人ひとのセクシュアリティ（性的せいてき指向しこう）とは独立どくりつした概念がいねんである[32]。すなわち、異い性愛せいあい、同性愛どうせいあい、バイセクシュアル、アセクシュアルなどを含ふくむ多様たようなセクシュアリティを持もつトランスジェンダーの人ひとがいる。

トランスジェンダーの人ひとがどれくらい存在そんざいするのかを把握はあくするのは困難こんなんだが、2020年ねんのアメリカの調査ちょうさによれば成人せいじん人口じんこうのうち約やく1.9％が[33]、2021年ねんのアメリカの国勢調査こくせいちょうさでは約やく0.6％がトランスジェンダーであるとされている[34]。

トランスジェンダーに含ふくまれないもの

編集へんしゅう

トランスジェンダーに、性的せいてき嗜好しこう（英語えいご: sexual preference）であるオートガイネフィリアは含ふくまれない[35]。この用語ようごを日本にっぽんに紹介しょうかいした精神せいしん科か医い、針はり間あいだ克己こっきによれば、オートガイネフィリアとは、男性だんせいが自身じしんが「女性じょせいだと想像そうぞうすること」によって性的せいてき興奮こうふんを得えることを指さす。針はり間あいだはまた、トランスジェンダーの定義ていぎが「性せい自認じにん」を問題もんだいにするものである以上いじょう、「性的せいてき嗜好しこう」であるオートガイネフィリアは区別くべつされるべきであるとの見解けんかいをしめしている。なお、この用語ようご自体じたいを否定ひていする立場たちばも存在そんざいする（後述こうじゅつ）。

また、トランスジェンダーという用語ようごは、クロスドレッサー（異性いせい装そうもしくは女装じょそう）やドラァグクイーンとは異ことなるものである[1]。とくにトランスジェンダー女性じょせいをクロスドレッサー（女装じょそう）とは表現ひょうげんできない[1]。

トランスジェンダーに対たいして、出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつと性せい同一どういつ性せいが一致いっちしている人ひと（トランスジェンダーではない人ひと）のことをシスジェンダーと形容けいようする[36]。

不適切ふてきせつな説明せつめい

編集へんしゅう

トランスジェンダーを「体からだの性せいと心しんの性せいの不一致ふいっち」と簡易かんい的てきに説明せつめいすることがあったが、これはもともと医療いりょうの現場げんばで必要ひつように応おうじて用もちいられてきたものであった[17]。トランスジェンダーを「体からだの性せいと心しんの性せいの不一致ふいっち」と表現ひょうげんするのは不正確ふせいかくであり、「元もと男性だんせい」「元もと女性じょせい」といったい方いかたも不適切ふてきせつである[19]。「生物せいぶつ学がく的てき男性だんせい」「生物せいぶつ学がく的てき女性じょせい」「遺伝いでん的てき男性だんせい」「遺伝いでん的てき女性じょせい」「男性だんせいに生うまれた」「女性じょせいに生うまれた」という説明せつめいも複雑ふくざつなものを単純たんじゅん化かしすぎており、反はんトランスジェンダーの活動かつどう家かによって多用たようされやすいので、使用しようは避さけた方ほうが良よいとされている[1]。とくに「生物せいぶつ学がく的てき性別せいべつ」という言葉ことばはトランスジェンダーの概念がいねんと対極たいきょくにあるかのように誤解ごかいされやすいが、実際じっさいは「性別せいべつ（sex）」という用語ようごは二元論にげんろんで語かたれるほどに単純たんじゅんではなく[37][38][39]、最もっとも権威けんいのある学術がくじゅつジャーナルの1つである『Nature』でも「性別せいべつは2つであるという考かんがえは安易あんいであり、現在げんざいの生物せいぶつ学者がくしゃは性別せいべつはスペクトラム（多様たような形態けいたい）であると考かんがえている」と説明せつめいされている[40]。

類似るいじの用語ようごとの違ちがい

編集へんしゅう

性せい同一どういつ性せい障害しょうがい（性別せいべつ不ふ合ごう・性別せいべつ違和いわ）

編集へんしゅう
詳細しょうさいは「性せい同一どういつ性せい障害しょうがい」を参照さんしょう

トランスジェンダーの人々ひとびとは過去かこには精神せいしん疾患しっかんとして扱あつかわれてきた歴史れきしがあったが、ICD-11によって、出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつと自分じぶんが認識にんしきするジェンダーが一致いっちしないことは性別せいべつ不ふ合ごう（Gender Incongruence）という呼称こしょうで定義ていぎされるようになり、精神せいしん疾患しっかんとしては扱あつかわれなくなった（以前いぜんは性せい同一どういつ性せい障害しょうがい、性せい転換てんかん症しょう、性別せいべつ違和いわと呼よばれたりもした）[41]。例たとえばICD-10にあった「性せい転換てんかん症しょう（トランスセクシュアリズム）」「子こどもの性せい同一どういつ性せい障害しょうがい」といった診断しんだんカテゴリは「成人せいじん期き・思春期ししゅんきの性別せいべつ不ふ合ごう」「小児しょうに期きの性別せいべつ不ふ合ごう」にそれぞれ置おき換かえられた[42]。この変更へんこうはあくまで脱だつ精神病せいしんびょう化かであり、なおも当事とうじ者しゃが望のぞめば性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつなどの医療いりょう行為こういを受うけることはできる[43]。

ICD-11に基もとづく医療いりょう分類ぶんるいの見直みなおしが各国かっこくに求もとめられており[44]、アメリカではICD-11は早はやければ2025年ねんに、遅おくれた場合ばあいでも2027年ねんまでに適用てきようする予定よていとなっている[45]。

トランスセクシュアル（トランスセクシャル）

編集へんしゅう

当初とうしょ、「トランスセクシュアル（transsexual）」という用語ようごは、医学いがく的てきな外科げか的てき処置しょち（性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつ）によって自分じぶんの身体しんたいを性せい同一どういつ性せいと一致いっちさせた人々ひとびとを指さしていた[46][47]。また、トランスジェンダー研究けんきゅう（英語えいご版ばん）の分野ぶんやでも用もちいられていた（例たとえば、サンディ・ストーン（英語えいご版ばん）の『The Empire Strikes Back: A Posttranssexual Manifesto（英語えいご版ばん）』）。

しかし、外科げか手術しゅじゅつまで望のぞまない当事とうじ者しゃの存在そんざいや、日本にっぽんなど性別せいべつ移行いこう当事とうじ者しゃに対たいする医療いりょうや法律ほうりつの整備せいびが遅おくれている国くにといった事情じじょうもあるため、このプロセスどおり進すすまない人ひとも大勢おおぜい存在そんざいする。当事とうじ者しゃが精神せいしん疾患しっかんなどと結むすび付つけられてきた過去かこもあり、この医学いがく界かいでよく用もちいられたトランスセクシュアルという言葉ことばを不快ふかいに感かんじる当事とうじ者しゃもいる[46]。そのため使用しようは避さける方ほうが望のぞましいとされる[46][48]。トランスジェンダーという言葉ことばはトランスセクシュアルという単語たんごと比くらべて、より包括ほうかつ的てきであり、当事とうじ者しゃのスティグマを悪化あっかさせることはない[46]。このため、公的こうてきな組織そしきの中なかにはトランスセクシュアルという用語ようごの使用しようを控ひかえる場合ばあいもある[49]。それでも医学いがく的てき処置しょちのうち、身体しんたい的てきな性別せいべつ移行いこう（トランジション）を希望きぼうした人ひとのなかには、トランスセクシュアルという呼称こしょうを希望きぼうする人ひともいるため[50][51]、個別こべつの当事とうじ者しゃを尊重そんちょうする必要ひつようがある。

この用語ようごは「性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつ済ずみのトランスジェンダー」を「トランスセクシュアル」と呼よび、「トランスジェンダー」の言葉ことばのほうには性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつをしていない人ひとも含ふくまれるといった誤あやまった二分にぶん法ほうに基もとづいて反はんトランスジェンダー活動かつどう家かによって恣意しい的てきに使つかい分わけられることがある[52]。こうした様々さまざまなトランスジェンダーの人々ひとびとから「真しんの」トランスセクシュアルを選えり分わけるような意図いとでもってこの用語ようごを使用しようするのは不適切ふてきせつである[53]。

なお、「transsexual（トランスセクシュアル）」と「transsexualism（トランスセクシュアリズム）」の2つの用語ようごは意味いみが異ことなる[53]。「transsexualism」は完全かんぜんに医学いがく的てきな用語ようごであり、日本語にほんごでは「性せい転換てんかん症しょう」とも呼よばれていたが、ICD-11によって、「gender incongruence（性別せいべつ不ふ合ごう）」という呼称こしょうに変更へんこうされた。

トランスヴェスタイト

編集へんしゅう

「トランスヴェスタイト（transvestite）」という言葉ことばは、女装じょそうや男装だんそうをする人ひとを服装ふくそう倒錯とうさく者しゃとしてみなした用語ようごであり、後のちに侮蔑ぶべつ的てきな言葉ことばとして認識にんしきされ、「クロスドレッサー」という言葉ことばに置おき換かえることが望のぞましいとされる[54][55][56]。クロスドレッサーやドラァグクイーンはジェンダー表現ひょうげんであるが、クロスドレッサーはプライベートなライフスタイルの選択せんたくで、ドラァグクイーンは主おもに仕事しごとのパフォーマンスである[57]。トランスジェンダーは初期しょきの頃ころは異性いせい装そうから自己じこ発見はっけんを始はじめることがあるものの、その体験たいけんはクロスドレッサーとは異ことなり、トランスジェンダーの人ひとは一いち日にちの終おわりなどに簡単かんたんに異性いせい装そうを解といたりできず、性せい同一どういつ性せいについてのときに絶たえ間まない苦悩くのうを経験けいけんすることになる[57]。

トランスジェンダリズム

編集へんしゅう

「トランスジェンダリズム（transgenderism）」という用語ようごは、基本きほん的てきにトランスジェンダー当事とうじ者しゃの間あいだでは使つかわれない[1][58]。トランスジェンダーの権利けんりに反対はんたいする言動げんどうを展開てんかいしており極右きょくうとの関連かんれんも指摘してきされているLGBアライアンスは、トランスジェンダリズムという言葉ことばを用もちいて活動かつどうしている[59][60]。他ほかにも、右派うはコメンテーターのマイケル・ノウルズ（英語えいご版ばん）は「トランスジェンダリズムは根絶こんぜつされなければならない」と発言はつげんした[61]。

LGBT関連かんれんの監修かんしゅうも行おこなっているGLAADは、トランスジェンダリズムという単語たんごは、反はんトランスジェンダー活動かつどう家かによって、トランスジェンダーの人々ひとびとを非ひ人間にんげん的てきに扱あつかい、危険きけんなイデオロギーのようにみなす際さいに用もちいられている言葉ことばなので、使用しようは避さけるべきであると注意ちゅういを促うながしている[1]。GLAADは「トランスジェンダリズムは、反はんトランスジェンダー活動かつどう家かによって作つくられた偽にせの用語ようごです。このレトリックは恐おそろしいほど無責任むせきにんで、罪つみのない人々ひとびとや子供こどもたちを危険きけんにさらしています。あらゆるプラットフォームでこのレトリックを使用しようする人々ひとびとを反はんトランス活動かつどう家かとして特定とくていする必要ひつようがあります」と声明せいめいを出だしている[62]。

もともとは1960年代ねんだいから医学いがく界かいの一部いちぶで用もちいられていた用語ようごで、トランスセクシュアルやトランスヴェスタイトを内包ないほうする言葉ことばだった過去かこがある[63]。トランスジェンダーを扱あつかう作家さっかで科学かがく者しゃであるジュリア・セラーノ（英語えいご版ばん）は、「トランスジェンダリズム」という用語ようごはトランスジェンダーの人々ひとびとを指さすコミュニティ内ないの言葉ことばであった歴史れきしがあり、トランスジェンダーの活動かつどう家かのいくつかの本ほんのタイトルとしても用もちいられたこともあったものの、2020年ねんの前後ぜんごあたりからトランスジェンダー差別さべつ的てきな人ひとたちが潜在せんざい的てきに危険きけんな政治せいじ的てきイデオロギーと混同こんどうさせるように故意こいに悪用あくようするようになったと解説かいせつしている[64]。この差別さべつ的てきな用もちい方かたの初期しょきの例れいとしては、2014年ねんのシーラ・ジェフリーズ（英語えいご版ばん）の著書ちょしょ『Gender Hurts: A Feminist Analysis of the Politics of Transgenderism』がある[64]。

また、前述ぜんじゅつの政治せいじ的てきイデオロギーと混同こんどうさせる事案じあんと同義どうぎの用法ようほうとして近年きんねんの日本にっぽんでは「トランスジェンダリズム」を「性せい自認じにん至上しじょう主義しゅぎ（性せい自認じにん主義しゅぎ）」と表記ひょうきする者ものがいる[65][66]。

オートガイネフィリア

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「オートガイネフィリア（autogynephilia）」という言葉ことばは、反はんトランスジェンダーな立場たちばをとる性せい科学かがく者しゃであるレイ・ブランチャード（英語えいご版ばん）が考案こうあんしたもので「（少すくなくとも一部いちぶの）トランス女性じょせいは自分じぶん自身じしんを女性じょせいとして見みることで性的せいてき満足まんぞくを得えているフェティシズムの男性だんせいである」と主張しゅちょうするために造語ぞうごした用語ようごである[67][68]。オートガイネフィリアの概念がいねんは一般いっぱんにはほとんど支持しじされておらず、科学かがく的てきとみなされていない[69][70]。この単語たんごは、トランスジェンダー差別さべつ主義しゅぎ的てきな人ひとたちの間あいだで使用しようされている[67]。

ノンバイナリー（Xジェンダー）

編集へんしゅう
詳細しょうさいは「Xジェンダー」を参照さんしょう

性せい同一どういつ性せいが男女だんじょのいずれでもない性別せいべつであると認識にんしきしている人ひとの中なかには「ノンバイナリー（Xジェンダー）」という言葉ことばを自分じぶんに当あてはめる者ものもいる[71][72]。「Xジェンダー」は主おもに日本にっぽんで使つかわれる用語ようごで、英語えいご圏けんにおける「ノンバイナリー」とほぼ同様どうようの意味いみである[73]。また、社会しゃかいにおける男女だんじょ二元論にげんろん的てきな規範きはんとは異ことなるかたちで自分じぶんを認識にんしきしたり、表現ひょうげんしたりする人ひとの総称そうしょうとして「ジェンダー・ノンコンフォーミング」という言葉ことばもある[74]。

また、「トランス」という接頭せっとう辞じが、「世間せけんにおいての、「男性だんせい」「女性じょせい」という二元論にげんろん的てき性別せいべつ観かんを前提ぜんていに一方いっぽうの性別せいべつから他方たほうの性別せいべつへの完全かんぜんな移行いこう」を表あらわすニュアンスをもつことから、例たとえば「Xジェンダー」のような独自どくじの性別せいべつをもつ者ものや、社会しゃかい的てき制度せいどとしてのジェンダー自体じたいを否定ひていする者ものは、ジェンダーベンダー（gender bender、性別せいべつをねじ曲まげる人ひと）、ジェンダーブレンダー（gender blender、性別せいべつを混合こんごうする人ひと）、ジェンダークィア（genderqueer、既存きそんの性別せいべつの枠組わくぐみにあてはまらない、または流動的りゅうどうてきな人ひと）と名乗なのる場合ばあいもある。

詳細しょうさいは「ノンバイナリー・ジェンダー」および「アンドロジナス」を参照さんしょう

ノンバイナリー（ジェンダー・クィア）の人々ひとびとも、トランスジェンダーを自認じにんすることがある。これらのアイデンティティは特とくに男性だんせいまたは女性じょせいに限かぎられるわけではなく、アジェンダー、アンドロジナス、バイジェンダー、パンジェンダー、ジェンダーフルイドである可能かのう性せいもあり[75]、シス規範きはん性せい（英語えいご版ばん）の外そとに存在そんざいするものである[76][77]。バイジェンダーとアンドロジナスは重複じゅうふくするカテゴリである。たとえば、バイジェンダーの個人こじんは、男性だんせいと女性じょせいの役割やくわりの間あいだを行いき来きしたり（ジェンダーフルイド）、同時どうじに男性だんせいと女性じょせいの両方りょうほうである（アンドロジナス）と自認じにんすることがある。そして、アンドロジナスの人々ひとびとは、ジェンダーを超こえている、またはジェンダーレスである（アジェンダ）、ジェンダーの間あいだにある（インタージェンダー）、ジェンダーを超こえて移動いどうする（ジェンダーフルイド）、同時どうじに複数ふくすうのジェンダーを示しめす（パンジェンダー）といった可能かのう性せいがある[78]。ノンバイナリーのジェンダー・アイデンティティは、性的せいてき指向しこうとは無関係むかんけいである[79][80]。

第だい三さんの性せい

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1908年ねん5月16日にちに撮とられたオスマン帝国ていこくの統治とうち下かのアルバニアの宣誓せんせい処女しょじょ

非ひ西洋せいよう文化ぶんか圏けんの一部いちぶでノンバイナリー（Xジェンダー）に近ちかい人々ひとびとが伝統でんとう的てきに第だい三さんの性せいとして認知にんちされていた。例れいを挙あげると、ナバホ族ぞくのナドゥル、南みなみアジアのヒジュラー、ドミニカ共和国どみにかきょうわこくのゲイヴドーシェあるいはマチィ・エムブラ、ザンビアのクウォル・アトゥムオル、フィリピン・セブ州しゅうのバヨットあるいはラキン・オン、インドネシアのワリア、タヒチのマフ、フィリピンのバクラやバベイラン、インドネシアのバンシ、タイのカトゥーイあるいはサーオプラペーッソーン（SP-2）、ミャンマーのアコルト、マレーのアクニュアー、オマーンのハンニース、トルコのコチェック、セネガルのゴールディグーナ、モロッコのハッサスなどがある[81]。

アルバニア・コソボ共和きょうわ国こく・モンテネグロなどバルカン半島ばるかんはんとうには、女性じょせいが長老ちょうろうに宣誓せんせいした当日とうじつから死しぬまでずっと男性だんせいとして生活せいかつする宣誓せんせい処女しょじょという、ローマカトリックやイスラム教いすらむきょうの団体だんたいも受うけ入いれている文化ぶんかがある。宣誓せんせい処女しょじょになることを希望きぼうした女性じょせいは、長老ちょうろうの前まえで誓ちかいを立たて、短髪たんぱつにして男性だんせい服ふくを纏まとい、煙草たばこを吸すいながら身みのこなし男性だんせいらしく見みえるようになるまで練習れんしゅうをする。誓ちかいを立たてた後のちに男性だんせい名めいに改名かいめいする者ものも多おおく、誓ちかい通どおり残のこりの人生じんせいを未婚みこんで生いきる[82][83]。

歴史れきし

編集へんしゅう
詳細しょうさいは「トランスジェンダーの歴史れきし（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

古代こだい

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現在げんざいの「トランスジェンダー」という言葉ことばが意味いみしている「出生しゅっしょう時じに身体しんたいで割わり振ふられた性せいが自身じしんの性せい同一どういつ性せいまたはジェンダー表現ひょうげんと異ことなる人々ひとびと」は新あたらしく現あらわれたものではなく、「トランスジェンダー」という言葉ことばが生うまれてもいない頃ころ、太古たいこの人類じんるいの歴史れきしから出生しゅっしょう時じの性別せいべつとは異ことなる性別せいべつで生いきてきた人ひとは存在そんざいしたと推察すいさつされており、それを示唆しさする考古学こうこがく的てき証拠しょうこは世界せかい各地かくちでいくつも発見はっけんされている[84][85][86]。

最もっとも初期しょきのものだと、紀元前きげんぜん5000年ねん - 3000年ねん頃ごろ、シュメール神話しんわの女神めがみイナンナに仕つかえた司祭しさいであるガラ（英語えいご版ばん）が挙あげられる[87]。

また、世界中せかいじゅうの多おおくの民族みんぞくの間あいだで、男女だんじょ二元論にげんろんに当あてはまらないさまざまな性別せいべつが存在そんざいしており、先住民せんじゅうみんの中なかには今いまもその文化ぶんかを継承けいしょうしているものもいる[86]。

性器せいきや生殖せいしょく能力のうりょくに基もとづいて男性だんせいと女性じょせいの2つに区分くぶんされるという現在げんざいに普及ふきゅうしている規範きはん的てき考かんがえは現代げんだい的てきな西洋せいよう価値かち観かんに基もとづいて広ひろまったものとされるが、実際じっさいは人類じんるいは歴史れきしのほとんどでさまざまな文化ぶんかの中なかで男性だんせい性せいと女性じょせい性せいの流動的りゅうどうてきな概念がいねんを持もって生いきてきた[88]。こうした事実じじつの発見はっけんが遅おくれた理由りゆうとして、考古こうこ学者がくしゃは、性別せいべつ二元論にげんろんに適合てきごうしない人ひとが大昔おおむかしにいるという証拠しょうこに定期ていき的てきに出でくわしても、「異常いじょう」または「曖昧あいまい」とみなして認識にんしきしてこなかったことが指摘してきされている[88]。

1800年代ねんだい

編集へんしゅう
 
フレデリック・パーク（右みぎ）とアーネスト・ボールトン（左ひだり）：2人ふたりはファニーとステラという名なでも知しられる（1869年ねん）

性せい同一どういつ性せいと性的せいてき指向しこうの現代げんだい的てきな概念がいねんはまだ存在そんざいしておらず、混在こんざいするように扱あつかわれた。例たとえば、性せい科学かがくの専門せんもん家かで人権じんけん社会しゃかい運動うんどう家かでもあるカール・ハインリッヒ・ウルリッヒス（英語えいご版ばん）は、男性だんせいの精神せいしんを持もっていて性的せいてき魅力みりょくを女性じょせいに感かんじる女性じょせいの身体しんたいの人ひとを「Urningin」、女性じょせいの精神せいしんを持もっていて性的せいてき魅力みりょくを男性だんせいに感かんじる男性だんせいの身体しんたいの人ひとを「Urning」と呼よぶことを提唱ていしょうした[89][90]。

出生しゅっしょう時じの性別せいべつどおりの規範きはん的てきな振ふる舞まいをしないこと（同性愛どうせいあいや異性いせい装そうを含ふくむ）は「ソドミー」と呼よばれ、1800年代ねんだいではアメリカの多おおくの地域ちいきではソドミーが違法いほうであり、異性いせい装そうをしたことで逮捕たいほされた人々ひとびとが大勢おおぜいいた。著名ちょめいな例れいとして、アーネスト・ボールトンとフレデリック・パーク（英語えいご版ばん）[91]やジョゼフ・ロブデル（英語えいご版ばん）[92]などが挙あげられる。

1900年代ねんだい：用語ようごの変移へんい

編集へんしゅう

性せい同一どういつ性せいと性的せいてき指向しこうの現代げんだい的てきな概念がいねんが作つくられて明確めいかくに区別くべつされるようになり始はじめ、現在げんざいの「トランスジェンダー」という言葉ことばが少すこしずつ構築こうちくされていったのが1900年代ねんだいである。

簡単かんたんに説明せつめいすると1910年ねんにTransvestite（トランスヴェスタイト、異性いせい装そう）という単語たんごが作つくられ、1949年ねんにはTranssexual（トランスセクシュアル）という単語たんごが生うまれ、1971年ねんにTransgender（トランスジェンダー）という単語たんごが出現しゅつげんした[84]。

詳くわしい経緯けいいとしてはまず、1910年ねん、ドイツの性せい科学かがく者しゃであるマグヌス・ヒルシュフェルトが「Transvestite」という用語ようごを生うみ出だし、異性いせい装そう者しゃを表あらわした[93]。また、1923年ねんには「Transsexualism」という言葉ことばも用もちいた[94]。

1949年ねん、デイビット・オリバー・コールドウェル（英語えいご版ばん）という性せい科学かがく者しゃが、「Transsexualism」という言葉ことばからインスピレーションを得えて「Transsexual」という単語たんごを考かんがえ出だした[95][96]。

1965年ねんにジョン・F・オリベン博士はかせは「Transgender」や「Transgenderism」という単語たんごを最初さいしょに使用しようし始はじめ、それは「Transsexual」と同おなじで、手術しゅじゅつによって移行いこうする人ひとを指さしていた[97]。

1970年代ねんだいに活動かつどう家かのヴァージニア・プリンス（英語えいご版ばん）が「Transgender」という言葉ことばを普及ふきゅうさせ、「Transsexual」とは別べつの意味いみで、当事とうじ者しゃの言葉ことばとしてこの「Transgender」が定着ていちゃくするようになった[97]。この当時とうじは、「Transvestite」は異性いせい装そうをした人々ひとびとを意味いみし、「Transsexual」は手術しゅじゅつによって性別せいべつを変かえた人々ひとびとを示しめし、「Transgender」は活動かつどうで用もちいられる言葉ことばとなり、3つの単語たんごが区別くべつされていた[97]。しかし、1990年代ねんだいになると「Transsexual」と「Transgender」の2つの単語たんごの区別くべつが薄うすれ始はじめた[97]。そして規範きはん的てきな性別せいべつの概念がいねんに適合てきごうしない幅広はばひろいアイデンティティを包括ほうかつする概念がいねんを表あらわす言葉ことばとして「Trans」を用もちいるようにもなった[97]。

20世紀せいきはメディアや医療いりょう技術ぎじゅつの発達はったつもあって、多おおくのトランスジェンダーの著名ちょめい人じんも登場とうじょうした。カール・M・ベーア（英語えいご版ばん）（1906年ねん）やアラン・L・ハート（英語えいご版ばん）（1917年ねん）は女性じょせいから男性だんせいへの性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを受うけた初期しょきの人物じんぶつとなり[98][99]、ドラ・リクター（英語えいご版ばん）（1930年ねん）やリリー・エルベ（1931年ねん）は男性だんせいから女性じょせいへの性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを受うけた初期しょきの人物じんぶつとなった[100][101]。1952年ねんにはアメリカのトランス女性じょせいクリスティーン・ジョーゲンセンによって性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつが広ひろく認識にんしきされるようになった[101]。

1900年ねん～2000年代ねんだい：権利けんり運動うんどう

編集へんしゅう
詳細しょうさいは「トランスジェンダーの権利けんり運動うんどう（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

性的せいてき少数しょうすう者しゃへの取とり締しまりが厳きびしくなった1950年代ねんだい、同性愛どうせいあい者しゃの権利けんり運動うんどうが散発さんぱつ的てきに動うごき出だす中なか、トランスジェンダーの権利けんり運動うんどうも同どう時期じきに起おき始はじめた。1952年ねん、ヴァージニア・プリンス（英語えいご版ばん）は「Transvestia: The Journal of the American Society for Equality in Dress」というニュースレターを始はじめ、これはアメリカ初はつの政治せいじ的てきなトランスジェンダーの出版しゅっぱん物ぶつであると考かんがえられている[102]。1959年ねんにはロサンゼルスのカフェでの警察けいさつによる逮捕たいほに反発はんぱつしてトランスジェンダーなどのグループが抗議こうぎし、これはクーパードーナツの反乱はんらん（英語えいご版ばん）と呼よばれた[103]。1966年ねんにはコンプトンズ・カフェテリアの反乱はんらんも起おきた[104]。

そんな中なか、1969年ねん6月がつ28日にち、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」が警察けいさつによる踏ふみ込こみ捜査そうさを受うけた際さい、居合いあわせた性的せいてき少数しょうすう者しゃらが警官けいかんに真まっ向こうから立たち向むかい、これはストーンウォールの反乱はんらんと呼よばれ、セクシュアル・マイノリティの権利けんり運動うんどうの転機てんきを迎むかえたとされる[105]。このストーンウォールの反乱はんらんで中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを果はたしたのが、有色ゆうしょく人種じんしゅのトランスジェンダーであった[105]。これを契機けいきにシルビア・リベラ（英語えいご版ばん）とマーシャ・P・ジョンソンが「Street Transvestite Action Revolutionaries（英語えいご版ばん）（STAR）」という当事とうじ者しゃ団体だんたいを結成けっせいした[105]。

1960年代ねんだいでは「ゲイ」という言葉ことばがセクシュアル・マイノリティの権利けんり運動うんどうの最前線さいぜんせんで用もちいられていた[106]。しかし、最初さいしょのプライド・パレードが1970年ねんに始はじまりだすも、一部いちぶの同性愛どうせいあい者しゃはトランスジェンダーの人々ひとびとを差別さべつし、運動うんどうから排除はいじょしようとした[107]。そもそも権利けんり運動うんどうの出発しゅっぱつ点てんに貢献こうけんしたのはトランスジェンダーだったにもかかわらず、その存在そんざいは過小かしょう評価ひょうかされた[108]。そんな状況じょうきょうを憂うれい、1990年代ねんだいにはトランスジェンダーも包括ほうかつしなければいけないという理解りかいが増まし、「LGBT」という用語ようごが登場とうじょうし、権利けんり運動うんどうで掲かかげられるようになっていった[108]。以降いこう、LGBTという用語ようごと共ともにトランスジェンダーの権利けんりが人権じんけんとして国際こくさい的てきに扱あつかわれている[109]。

2000年代ねんだい初頭しょとう、トランスジェンダーの当事とうじ者しゃがインターネット上じょうで互たがいに繋つながることで、独自どくじのサブカルチャーを築きずく機会きかいが増ふえた[110]。同時どうじに、2000年代ねんだい以降いこう、メディアに取とり上あげられることも増加ぞうかし、世間せけん一般いっぱんのトランスジェンダーに対たいする社会しゃかい的てき認知にんち度どが急増きゅうぞうした[110]。

性的せいてき指向しこう

編集へんしゅう
詳細しょうさいは「トランスジェンダーのセクシュアリティ（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

ジェンダー、ジェンダー・アイデンティティ、トランスジェンダーであることは、性的せいてき指向しこうとは異ことなる概念がいねんである[111]。性的せいてき指向しこうは、個人こじんが他人たにんに魅力みりょくを感かんじる一定いっていのパターン（ストレート、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、アセクシュアルなど）であるのに対たいして、ジェンダー・アイデンティティは、自分じぶん自身じしんのジェンダーに対たいする生うまれつきの認識にんしき（男性だんせい、女性じょせい、ノンバイナリーなど）を指さす[112]。トランスジェンダーの人ひとはどのような指向しこうでも持もつことがあり、一般いっぱんには生うまれつきの性別せいべつではなく、自分じぶんのジェンダーに対応たいおうするラベルを使つかう。たとえば、他たの女性じょせいにのみ惹ひかれるトランスの女性じょせいは一般いっぱんにレズビアンだと認識にんしきされ、女性じょせいにのみ惹ひかれるトランスの男性だんせいはストレートだと認識にんしきされる[112]。多おおくのトランスの人ひとは、他たの用語ようごに加くわえて、またはその代かわりに、自分じぶんの性的せいてき指向しこうをクィアと表現ひょうげんしている[113][114][115]。

20世紀せいきの大半たいはんは、トランスジェンダーのアイデンティティは同性愛どうせいあいや異性いせい装そうと混同こんどうされていた。初期しょきの学術がくじゅつ文献ぶんけんでは、性せい科学かがく者しゃはhomosexual and heterosexual transsexual（英語えいご版ばん）（同性愛どうせいあいおよび異性いせい愛あいのトランスセクシュアル）というラベルを使用しようして、トランスジェンダーの個人こじんの性的せいてき指向しこうを出生しゅっしょう時じの性別せいべつに基もとづいて分類ぶんるいしていた[116]。批判ひはん者しゃは、これらの用語ようごを「異性いせい愛あい差別さべつ主義しゅぎ（ヘテロセクシズム）」[117]、「時代遅じだいおくれ（archaic）」[118]、侮辱ぶじょく的てきである[119]と考かんがえている。最近さいきんの文献ぶんけんでは、男性だんせいに惹ひかれる（男性だんせい愛あい）、女性じょせいに惹ひかれる（女性じょせい愛あい）、両性りょうせいに惹ひかれる（バイセクシュアル）、どちらにも惹ひかれない（アセクシャル）などの用語ようごを使用しようして、性せい同一どういつ性せいに言及げんきゅうせずに人ひとの性的せいてき指向しこうを説明せつめいすることが多おおい[120]。セラピストは、クライアントのジェンダー・アイデンティティと好このみを尊重そんちょうして用語ようごを使用しようする必要ひつよう性せいを理解りかいするようになってきている[121]。

2015 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくトランスジェンダー調査ちょうさ（英語えいご版ばん）は、27,715人にんのトランスジェンダーおよびノンバイナリーの回答かいとう者しゃのうち、自分じぶんの性的せいてき指向しこうを一番いちばんよく表あらわしている単語たんごとして、21%がクィア、18%がパンセクシュアル、16%がゲイ、レズビアン、または同性愛どうせいあい、15%が異い性愛せいあい、14%がバイセクシュアル、10%がアセクシュアルだと答こたえている[114]。2019年ねんのカナダの調査ちょうさでは、2,873人にんのトランスおよびノンバイナリーの人ひとのうち、51%がクィア、13%がアセクシュアル、28%がバイセクシュアル、13%がゲイ、15%がレズビアン、31%がパンセクシュアル、8%が異い性愛せいあい、4%がtwo-spirit（英語えいご版ばん）、9%が不明ふめいまたはクエスチョニングと回答かいとうしている[115]。

宗教しゅうきょう

編集へんしゅう
詳細しょうさいは「トランスジェンダーの人々ひとびとと宗教しゅうきょう（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

ローマカトリック教会きょうかいは、数すう年ねんに渡わたってLGBTコミュニティへのアウトリーチ活動かつどうに携たずさわってきており、たとえば、コネチカット州しゅうハートフォードにあるOpen Hearts outreachなどのFranciscan urban outreach centersを介かいして現在げんざいも継続けいぞくしてアウトリーチを続つづけている[122]。一方いっぽうで、バチカンはトランスジェンダーの人々ひとびとが代だい父母ちちははになることはできないと考かんがえており、移行いこうを自じ傷きず行為こういと比較ひかくしている[123]。

イングランド国教こっきょう会かいは、2017年ねんの公おおやけ会議かいぎで、アングリカン・チャーチがトランスジェンダーの人々ひとびとを受うけ入いれられるようにする動議どうぎを可決かけつした[124]。ウェブサイトでは、トランスジェンダーの人々ひとびとをサポートするために、新あたらしい名前なまえが刻きざまれた聖書せいしょを贈おくることができるとさえ提案ていあんしている[124]。

フェミニズム

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詳細しょうさいは「トランスジェンダーのトピックに関かんするフェミニストの考かんがえ方かた（英語えいご版ばん）」および「トランスフェミニズム（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

トランスジェンダーの女性じょせいに関かんするフェミニストの見解けんかいは時代じだいとともに変化へんかしてきたが、一般いっぱん的てきにはよりインクルーシブ（包摂ほうせつ的てき）なものになってきている。第だい二に波はフェミニズムでは、トランスジェンダー女性じょせいは「本物ほんものの」女性じょせいとして見みられておらず、女性じょせいだけの空間くうかんを侵略しんりゃくしていると考かんがえられたため、トランスジェンダー女性じょせいに反対はんたいする多数たすうの衝突しょうとつが起おこった[125][126]。第だい二に波はフェミニズムでは性せいとジェンダーの区別くべつ（英語えいご版ばん）について議論ぎろんされたが、一部いちぶのフェミニストはトランスジェンダーのアイデンティティとフェミニストの大義たいぎとの間あいだに矛盾むじゅんがあると信しんじていた。たとえば、男性だんせいから女性じょせいへの移行いこうは女性じょせいのアイデンティティを放棄ほうきまたはその価値かちを毀損きそんしており、トランスジェンダーの人ひとは伝統でんとう的てきなジェンダーロールやステレオタイプを受うけ入いれていると考かんがえていた[127]。第だい三さん波はフェミニズムの出現しゅつげん（1990年ねん頃ごろ）までに、優勢ゆうせいな考かんがえ方かたは、トランスジェンダーとゲイの両者りょうしゃのアイデンティティをよりインクルーシブにする方向ほうこうに変化へんかした[128][129]。インターセクショナリティな第だい四よん波はフェミニズム（2012年ねん頃ごろに開始かいし）は幅広はばひろくトランスインクルーシブである。トランスジェンダーの排除はいじょは、トランス女性じょせいとシス女性じょせいの両方りょうほうにとってフェミニズムを弱体じゃくたい化かさせる[130]。

しかし、トランスジェンダーに排他はいた的てきなグループや考かんがえ方かたは少数しょうすう派はのままであるものの、世界せかい各地かくちで観察かんさつできる[131][128][132]。トランス女性じょせいも女性じょせいであることを受うけ入いれないフェミニストは、「トランス排除はいじょ的てきラディカルフェミニスト（TERF）」や「gender-critical feminists（ジェンダーに批判ひはん的てきなフェミニスト、ジェンダー・クリティカル・フェミニスト）」と呼よばれるようになっている[133][134][135]。こうした人ひとたちからなるロビー団体だんたいがいくつか存在そんざいし、それら団体だんたいは「人間にんげんは生うまれながらに決けっして変かえることのできない特定とくていの性的せいてき特徴とくちょうを持もっているのであって、女性じょせいであることが社会しゃかいでどのように扱あつかわれるかという点てんも合あわせて、独特どくとくの特徴とくちょうを共有きょうゆうしている。ゆえにトランスジェンダー女性じょせいは真しんの女性じょせいではない」という考かんがえ方かたを基盤きばんとしている[136]。

一方いっぽうで、これらの反はんトランスジェンダーを前提ぜんていにフェミニストを自称じしょうする人ひとたちに対たいして、フェミニズムの視点してんから異ことを唱となえるフェミニストもいる[137]。レズビアンでフェミニストでもある作家さっかのサラ・アーメッドは「生物せいぶつ学がく的てき性別せいべつに基もとづいてフェミニズムを定義ていぎしようとすることは、LGBTQ+フェミニスト活動かつどうの歴史れきしを無視むしすることであり、女性じょせいは家父長制かふちょうせい社会しゃかいによって生物せいぶつ学がくに基もとづいて定義ていぎを押おし付つけられてきた」と語かたっている[138]。

健康けんこう

編集へんしゅう
「LGBTとヘルスケア#トランスジェンダーの人々ひとびとに関連かんれんする問題もんだい」を参照さんしょう

一部いちぶのトランスジェンダーの人々ひとびとが、自分じぶんの外見がいけんを自分じぶんの性せい同一どういつ性せいにより近ちかづけるためにさまざまな取とり組くみを行おこない、このプロセスを「性別せいべつ移行いこう（トランジション）」と呼よぶ[139]。これは、服装ふくそう、名前なまえ、代名詞だいめいし、行動こうどうを変かえるなど個人こじん的てきなプロセスの他ほかに、ホルモン療法りょうほう、ボイス・トレーニング、脱毛だつもう、性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつなどのヘルスケアも含ふくまれ、身分みぶん証明しょうめい書しょの名前なまえや性別せいべつマーカーの変更へんこうなど法的ほうてき措置そちを講こうじる場合ばあいもある[139][140]。

トランスジェンダーの人々ひとびとは、そうでない人々ひとびとと比くらべて、メンタルヘルスの不調ふちょうを抱かかえている傾向けいこうがあり、また医療いりょうのアクセスに困難こんなんを経験けいけんしている[141]。

アメリカの調査ちょうさでは、トランスジェンダーの約やく38%が深刻しんこくな精神せいしん的てき苦痛くつうを報告ほうこくしており、約やく40％が生涯しょうがいに自殺じさつ未遂みすいをしたことがあると答こたえている[141]。また、うつ病びょうのリスクも4倍ばい近ちかく高たかくなるという研究けんきゅうもある[141]。

こうした健康けんこう問題もんだいを改善かいぜんするには、ジェンダー・アファーメーション（英語えいご版ばん）とメンタルヘルス・サポートを同時どうじに行いっていくことが望のぞましいとされる[142][143]。ジェンダー・アファーミング・ケアの有効ゆうこう性せいは専門せんもん家かによって証明しょうめいされている[144]。

調査ちょうさによると、トランスジェンダーの78%が、トランジションによって人生じんせいの満足まんぞく度どが向上こうじょうしたと答こたえている[145]。

逆ぎゃくに性別せいべつ移行いこう（トランジション）をやめることを「ディトランジション（英語えいご版ばん）」と呼よぶが、これは性別せいべつ移行いこうを後悔こうかいしているからという理由りゆうだとは限かぎらない[146]。以前いぜんのジェンダーに戻もどるための人ひともいれば、妊娠にんしんするために一時いちじ的てきにホルモンを中止ちゅうしした人ひと、何なんらかの事情じじょうで医療いりょうにアクセスできなくなった人ひとも含ふくまれる[146]。

法律ほうりつ

編集へんしゅう

国くにや地域ちいきでは、個人こじんが自身じしんの性せい同一どういつ性せいを反映はんえいするために、法的ほうてきな性別せいべつまたは名前なまえを変更へんこうする法的ほうてき手続てつづきが存在そんざいすることがある。その手続てつづきの手段しゅだんや条件じょうけんはさまざまで、国くにによっても大おおきく事情じじょうが異ことなる。

2006年ねんの国際こくさい人権じんけん法ほうの専門せんもん家か会議かいぎにおいて採択さいたくされた「ジョグジャカルタ原則げんそく」では、「法的ほうてき性別せいべつ変更へんこうの要件ようけんとして、性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつ、不ふ妊にん手術しゅじゅつまたはホルモン療法りょうほうその他たの医療いりょう処置しょちを受うけたことを強制きょうせいされない」と説明せつめいされている[147]。そのため、アルゼンチン、デンマーク、マルタ、アイルランド、フランス、ノルウェー、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、ルクセンブルクなどでは医師いしの診断しんだん書しょがなくても法的ほうてき性別せいべつ変更へんこうが認みとめられる[147]。また、スウェーデン、カナダ、イギリス、スペイン、アメリカの一部いちぶ、メキシコの一部いちぶなどでは性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを受うけなくても法的ほうてき性別せいべつ変更へんこうが認みとめられる[147]。2017年ねん4月がつ、欧州おうしゅう人権じんけん裁判所さいばんしょは、法的ほうてきな性別せいべつ認定にんていのために不ふ妊にん手術しゅじゅつを要求ようきゅうすることは人権じんけん侵害しんがいであるとの判決はんけつを下くだした[148]。

一方いっぽうで、医療いりょう処置しょちの強制きょうせいを条件じょうけんとしている国くにもある。例たとえば、日本にっぽんでは性せい同一どういつ性せい障害しょうがい者しゃの性別せいべつの取扱とりあつかいの特例とくれいに関かんする法律ほうりつによって、「生殖せいしょく腺せんの機能きのうを永続えいぞく的てきに欠かく状態じょうたい」やトランス女性じょせいに対たいしては「他たの性別せいべつの性器せいきの部分ぶぶんに近似きんじする外観がいかんを備そなえていること」と定さだめられ、つまりトランス女性じょせいは陰茎いんけい・陰嚢ふぐりなどの外そと陰部いんぶ切除せつじょ及および女性じょせい外がい陰部いんぶへの形成けいせいや精せい管かんの切除せつじょ並ならびにトランス男性だんせいには卵管らんかん・子宮しきゅうの切除せつじょ手術しゅじゅつなどで生殖せいしょく能力のうりょくを失うしなわなければ、戸籍こせき上うえの性別せいべつを変かえることができない[149]。こうした条件じょうけんの難むずかしさや手術しゅじゅつにかかる高額こうがくな費用ひようといった理由りゆうで、日本にっぽん全国ぜんこくのトランスジェンダーのうち、性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを受うけて戸籍こせき上じょうの性別せいべつを変更へんこうできた人ひとは、わずか2割わりにとどまっている[150]。これについて国連こくれんの自由じゆう権けん規約きやく人権じんけん委員いいん会かいからは改善かいぜんするように勧告かんこくする声こえが上あがっている[151][152]。

差別さべつ

編集へんしゅう
トランスジェンダーのヘイトクライムに関かんする短みじかいウェールズ政府せいふのビデオ。CCボタンから日本語にほんご字幕じまくを追加ついかできます。
「トランスフォビア」も参照さんしょう

トランスジェンダーの人々ひとびとは多おおくの差別さべつに晒さらされており、それらは当事とうじ者しゃの健康けんこうや命いのちを脅おどかしている。こうしたトランスジェンダーへの差別さべつや偏見へんけんは「トランスフォビア」と呼よばれている[153][154][155][156]。シスジェンダーのアイデンティティがトランスジェンダーのアイデンティティよりも評価ひょうかされるべきであるという文化ぶんか的てきおよび体系たいけい的てきなイデオロギーのことを「シスジェンダリズム（英語えいご版ばん）」ということもある[157]。

トランスジェンダー当事とうじ者しゃは、出生しゅっしょう時じにつけられた名前なまえとは別べつの名前なまえで生活せいかつしていることがある。現在げんざい使用しようしていない名前なまえを本人ほんにんの同意どういなく使用しようすることは「デッドネーミング」と呼よばれ、差別さべつにあたるので注意ちゅういが必要ひつようである[19]。本人ほんにんの性せい同一どういつ性せいと異ことなる性別せいべつで扱あつかうことは「ミスジェンダリング」と呼よばれ、その人ひとの生いき方かたを否定ひていする侮辱ぶじょく的てきな行為こういとして問題もんだい視しされる[158]。また、英語えいご圏けんなどでは性せい同一どういつ性せいに合あった代名詞だいめいしの利用りようを求もとめる当事とうじ者しゃもおり、中なかには「she/her」「he/him」以外いがいの代名詞だいめいし（「they/them」）などを使用しようすることがあるので、本人ほんにんの意思いしに反はんした間あいだ違ちがった代名詞だいめいしを利用りようしてはいけない[154]。ただし、代名詞だいめいしでトランスジェンダーかどうかを推定すいていすることはできない[159]。

トランスジェンダーの人々ひとびとの4人にんに1人ひとり以上いじょうが偏見へんけんのために職しょくを失うしない、4分ぶんの3以上いじょうが職場しょくばで何なんらかの形かたちの差別さべつを経験けいけんしている[160]。また、トランスジェンダーの児童じどう・生徒せいとの半分はんぶん（約やく51%）がトランスジェンダーであることを理由りゆうに学校がっこうでいじめを経験けいけんしている[161]。身分みぶん証明しょうめいを求もとめられる選挙せんきょには投票とうひょうを躊躇ちゅうちょするトランスジェンダー当事とうじ者しゃも少すくなくない[162]。

ワシントンD.C.のトランスジェンダーおよびジェンダー・ノンコンフォーミングを対象たいしょうに公衆こうしゅうトイレでの経験けいけんについて調査ちょうさした2013年ねんのレポートによれば、18％が男女だんじょ別べつトイレへのアクセスを拒否きょひされた経験けいけんがある答こたえ、68%が男女だんじょ別べつトイレで少すくなくとも1回かい以上いじょうは言葉ことばによる嫌いやがらせを受うけ、9％が男女だんじょ別べつトイレで少すくなくとも1回かい以上いじょうは身体しんたい的てき暴力ぼうりょくを受うけたと回答かいとうした[163]。トランスジェンダーの人々ひとびとにとって自分じぶんの性せい同一どういつ性せいに一致いっちする公衆こうしゅうトイレにアクセスするのは困難こんなんをともなうことがあり[164][165]、制度せいどや法案ほうあんで禁止きんしされてしまうことさえ起おきている[166][167]。こうした事情じじょうもあり、ユニセックストイレ（オールジェンダートイレ）の設置せっちが行おこなわれることがある。

トランスジェンダーの人々ひとびとはヘイトクライムのターゲットとされている。イギリスでは2020年ねんから2021年ねんに警察けいさつが記録きろくしたトランスジェンダーの人々ひとびとに対たいするヘイトクライムは2630件けんで、前年ぜんねんから16%増加ぞうかした[168]。それでもトランスジェンダーの人々ひとびとの88%が深刻しんこくな事件じけんを報告ほうこくしていないため、この数値すうちは依然いぜんとして大幅おおはばに過少かしょう報告ほうこくされているとされる[168]。ILGA-Europeの2023年ねん2月がつの報告ほうこくによれば、過去かこ10年ねんの中なかで2022年ねんはヨーロッパと中央ちゅうおうアジア地域ちいきにおいてクィアとトランスジェンダーの人々ひとびとが最もっとも暴力ぼうりょくに晒さらされた年としとなったことが示しめされている[169]。殺害さつがい予告よこくや脅迫きょうはくも起おきている[170]。

2020年ねん10月がつ1日にちから2021年ねん9月がつ30日にちまでの間あいだに、世界中せかいじゅうで少すくなくとも375人にんのトランスジェンダー、ノンバイナリー、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人々ひとびとが殺害さつがいされた[171]。被害ひがい者しゃの96%はトランス女性じょせいまたはトランスフェミニンの人々ひとびとで、殺害さつがいされた人ひとの半分はんぶん以上いじょう（58%）はセックスワーカーであり、10人にんに4人にんは移民いみんとなっている[171]。アメリカではトランスジェンダーの中なかでも黒人こくじん女性じょせいがとくに危険きけんな目めに遭あっているとされ、この期間きかんにアメリカで殺害さつがいされた53人にんのトランスジェンダーのうち、有色ゆうしょく人種じんしゅは89％を占しめていた[171]。基本きほん的てきな統計とうけいでは一般いっぱんに15歳さいから34歳さいまでのアメリカ人じんの年間ねんかん殺人さつじん率りつは12000人にんに約やく1人ひとりだが、黒人こくじんのトランス女性じょせいの割合わりあいだけを見みると、2600人にんに1人にんという計算けいさんになり、非常ひじょうに命いのちが脅おびやかされていることが浮うき彫ぼりになっている[171]。

さらにトランスジェンダーの2人ふたりに1人ひとりは性的せいてき虐待ぎゃくたいや暴行ぼうこうを受うけており、細こまかく見みると15%は警察けいさつの拘留こうりゅう中ちゅうまたは刑務所けいむしょにいる間あいだに性的せいてき暴行ぼうこうを受うけたと報告ほうこくしており、10%が医療いりょう専門せんもん家かから性的せいてき被害ひがいに遭あっている[172]。

オンライン上じょうでもトランスジェンダーの人々ひとびとは頻繁ひんぱんに嫌いやがらせを受うけている。「Tranny」や「shemale」といった言葉ことばはトランスジェンダーを侮辱ぶじょくする際さいに用もちいられる[173]。SNSにおけるトランスジェンダー差別さべつ主義しゅぎ的てきな人ひとたちの間あいだでは恐竜きょうりゅうの絵文字えもじが揶揄やゆ的てきに使つかわれたりもする[174]。トランスジェンダーに関かんするデマや誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうが極きわめて広範囲こうはんいにわたって流布るふされる事態じたいも起おきている[175]。中なかには銃じゅう乱射らんしゃ事件じけんの犯人はんにんとトランスジェンダーを結むすび付つけて誤あやま情報じょうほうと共ともに差別さべつを助長じょちょうする事例じれいもあり、右翼うよく議員ぎいんや4chanがその発信はっしん源げんとなっている[176][177][178]。

報道ほうどう機関きかんがトランスジェンダーを誤あやまって報道ほうどうしている問題もんだいも「Trans Media Watch（英語えいご版ばん）」によって指摘してきされている[179]。ジェンダー・アイデンティティの信用しんよう性せいを落おとす狙ねらいで、「性せい自認じにんもありうるなら、特定とくていの人種じんしゅや動物どうぶつも自認じにんできるのだろうか」と話題わだいを逸そらす事例じれいもある[180]。

ネオナチなどの極右きょくうがトランスジェンダー差別さべつに関与かんよする事例じれいも確認かくにんされている[181]。トランスフェミニストのジュリア・セラーノ（英語えいご版ばん）は著書ちょしょ『ウィッピング・ガール（英語えいご版ばん）』[182]の中なかで、トランス女性じょせいはトランスフォビアと女性じょせい嫌悪けんおが組くみ合あわさってより過激かげきな攻撃こうげきの対象たいしょうとなることを説明せつめいし、これをトランスミソジニー（英語えいご版ばん）と呼よんでいる[183]。

トランスジェンダーの人々ひとびとはシスジェンダーの人々ひとびとよりも希まれ死し念慮ねんりょが高たかく、自殺じさつに追おい込こまれている[184]。

論争ろんそう

編集へんしゅう
「反はんジェンダー運動うんどう」も参照さんしょう

子こどもの年齢ねんれいで性別せいべつ移行いこうを考かんがえ始はじめる人ひともいるが「性別せいべつ移行いこうしたことを後悔こうかいしている子こどもが多おおい」という主張しゅちょうも一部いちぶで広ひろまっている[185][186]。しかし、イギリスのNHS（国民こくみん保健ほけんサービス）の報告ほうこく書しょによれば、NHSを使つかって性別せいべつ移行いこうをした3398人にんに調査ちょうさしたところ、性別せいべつ移行いこうを後悔こうかいしていたのは0.47%との結果けっかがでており、性別せいべつ移行いこうを後悔こうかいしている子こどもが多おおいことを裏付うらづけるようなデータはない[185]。にもかかわらず「性別せいべつ移行いこうをやめた人ひとは、本当ほんとうはジェンダー規範きはんによる抑圧よくあつに苦くるしんでいるだけで、ジェンダー・アイデンティティを誤認ごにんしている」という主張しゅちょうや、「トランスジェンダーの活動かつどう家かたちによって子こどもたちが性別せいべつ移行いこうへとそそのかされている」といった陰謀いんぼう論ろん的てきな主張しゅちょうが流布るふされることもある[187]。さらに子こどもへのジェンダー・アファーミング・ケアを児童じどう虐待ぎゃくたいであると主張しゅちょうする人ひとさえいる（LGBTグルーミング陰謀いんぼう論ろん）[188]。ホルモン療法りょうほうをしたトランスジェンダーは早死はやじににするといった虚偽きょぎ情報じょうほうもある[189]。

トランスジェンダーと自閉症じへいしょうには重複じゅうふく（交差こうさ性せい）があることが示唆しさされている[190]。一方いっぽうで「自閉症じへいしょうの子こどもがトランスジェンダーであると思おもいこまされて性別せいべつ移行いこうを強制きょうせいされている」と反はんトランスジェンダーの立場たちばにいる一部いちぶの人ひとが主張しゅちょうすることがあるが、そうした事実じじつはなく、自閉症じへいしょうの当事とうじ者しゃコミュニティはそうした偏見へんけんは自閉症じへいしょうに対たいする差別さべつであるとして抗議こうぎしている[191]。アメリカ心理しんり学会がっかいは、性別せいべつ違和いわがニューロダイバーシティの兆候ちょうこうであるという一部いちぶの主張しゅちょうは誤あやまっていると声明せいめいの中なかで解説かいせつしている[192]。

近年きんねんでは女性じょせい専用せんよう空間くうかんにトランス女性じょせいが立たち入いることについての是非ぜひが争点そうてんとなり、特とくに一部いちぶのフェミニストや宗教しゅうきょう団体だんたいの間あいだで議論ぎろんが起おき、女性じょせいが性せい犯罪はんざいなどの危険きけんに晒さらされると主張しゅちょうしている者ものもいる[193][194][195][196]。その議論ぎろんの中なか、まるでトランスジェンダーを性せい犯罪はんざい者しゃのように扱あつかう言説げんせつがSNSなどで目立めだち、事実じじつに基もとづかない主張しゅちょうで不安ふあんを煽あおり、トランスジェンダー当事とうじ者しゃを苦くるしめている状況じょうきょうがある[19][197][198]。アメリカでは、トランスジェンダー当事とうじ者しゃの人ひとのうち約やく7割わりがトイレのアクセスを拒否きょひされたり、トイレで嫌いやがらせを受うけたり、何なんらかの形かたちの身体しんたい的てき暴行ぼうこうを経験けいけんしたりしたという調査ちょうさ結果けっかも報告ほうこくされている[196]。カリフォルニア大学だいがくロサンゼルス校こうの研究けんきゅうによれば、トランスジェンダーの人々ひとびとに性せい同一どういつ性せいに合あったトイレなどの公共こうきょう施設しせつを使用しようさせることで一般いっぱんの安全あんぜん上じょうのリスクが高たかまるという証拠しょうこは確認かくにんされていない[199]。性せい同一どういつ性せいに基もとづいて法的ほうてきな性別せいべつの変更へんこうができる法律ほうりつが世界せかい各地かくちで作つくられているが、例たとえばアルゼンチンではそうした法律ほうりつの制定せいていから10年ねんが経過けいかしても、女性じょせいに対たいする暴力ぼうりょくが増加ぞうかしたという報告ほうこくはない[200]。すでに長年ながねんにわたって性せい同一どういつ性せいに基もとづく差別さべつを禁止きんししてきた地域ちいきがいくつもあるが、それらの地域ちいきで女性じょせい専用せんよう空間くうかんに侵入しんにゅうする性せい犯罪はんざい者しゃが増加ぞうかしたという報告ほうこくはなく、Equality Federation（英語えいご版ばん）のレベッカ・アイザックスは、トランス女性じょせいの立たち入いりを認みとめることは危険きけんであると流布るふする一連いちれんの主張しゅちょうは「燻製くんせいニシンの虚偽きょぎ」であると語かたっている[201]。一部いちぶの危険きけん主張しゅちょう派はの人々ひとびとは、男性だんせいの性せい犯罪はんざい者しゃが自分じぶんはトランスジェンダーであると嘘うそをついて罪つみを逃のがれようとする可能かのう性せいを心配しんぱいするが、その人ひとの性せい同一どういつ性せいがなんであれ、性せい犯罪はんざい行為こういをした時点じてんで性せい犯罪はんざい者しゃであることには変かわりなく、犯罪はんざいを誤魔化ごまかす有効ゆうこうな手段しゅだんにはならないとヒューマン・ライツ・キャンペーンは述のべている[201]。トランスジェンダーへの差別さべつを法律ほうりつや条令じょうれいで禁止きんしすると、「自分じぶんは女おんな」とトランスジェンダーを装よそおって自称じしょうすれば女おんな湯ゆなどの女性じょせいスペースに入いれてしまうといった声こえも一部いちぶで聞きかれるが、そのような事実じじつは存在そんざいせず、公衆こうしゅう浴場よくじょうなどの衛生えいせいや風紀ふうきに必要ひつような措置そちを講こうじるための男女だんじょを分わける措置そちを妨さまたげるものではなく、自分じぶんは女性じょせいであるとなりすましを行おこなう性せい犯罪はんざい者しゃなどの人物じんぶつがいたとしても、その人ひとのジェンダーが何なにであれ、例たとえば日本にっぽんであれば、迷惑めいわく行為こうい防止ぼうし条例じょうれい等とう、偽計ぎけい業務ぎょうむ妨害ぼうがい罪ざい、建築けんちく物ぶつ侵入しんにゅう罪ざいなどの構成こうせい要件ようけんの該当がいとう性せいを否定ひていしたり、違法いほう性せいを阻却するものではない[202][203][204][205]。

トランスジェンダーのアスリートのスポーツ大会たいかいへの参加さんかはしばしば論争ろんそうのまとになってきた[206]。一部いちぶの人ひとはトランスジェンダーの参加さんかはスポーツ競技きょうぎに不公平ふこうへいを招まねくと懸念けねんの声こえをあげ、地域ちいきによってはトランスジェンダーのアスリートを競技きょうぎから締しめ出だす動うごきもある[207][208]。とくにトランスジェンダーのアスリートがスポーツ大会たいかいで好成績こうせいせきをおさめると批判ひはん的てきな注目ちゅうもくが高たかまりやすいが、一方いっぽうでトランスジェンダーであれシスジェンダーであれスポーツ選手せんしゅが競技きょうぎで記録きろく的てきな実績じっせきをだすことは別べつに珍めずらしいことではなく、トランスジェンダー特有とくゆうの異常いじょうな出来事できごとであることを示しめすデータはない[209]。アメリカ心理しんり学会がっかいのような研究けんきゅう者しゃ組織そしきやアメリカ自由じゆう人権じんけん協会きょうかいのような人権じんけん団体だんたいも、トランスジェンダーのアスリートが自分じぶんの性せい同一どういつ性せいに合あったチームでプレイすることが、スポーツや競技きょうぎの公平こうへい性せいに影響えいきょうを与あたえるという主張しゅちょうを裏付うらづける証拠しょうこはないとしている[210]。国際こくさいスポーツ医学いがく連盟れんめいはトランスジェンダーの選手せんしゅの出場しゅつじょうを制限せいげんすることは五輪ごりん憲章けんしょうの原則げんそくに反はんするとしている[211]。

出生しゅっしょう時じに割わり当あてられた性別せいべつどおりの外見がいけんや行動こうどうをとっていない人物じんぶつを特定とくていし、規範きはん的てきなジェンダー表現ひょうげんを課かしたり強制きょうせいしたりする、もしくはトランスジェンダーではないかと疑うたがって決きめつけるような行為こういをする者ものもおり、「ジェンダー・ポリシング（英語えいご版ばん）」と呼よばれている[212]。

こうした一連いちれんの「トランスジェンダーが社会しゃかいの秩序ちつじょや規範きはんを乱みだす」ことを前提ぜんていとした虚偽きょぎ情報じょうほうや陰謀いんぼう論ろんを取とり込こんだ反はんトランスジェンダーの主張しゅちょうはモラルパニックとされている[213]。

イベント

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2005年ねん10月がつ1日にちにパリで行おこなわれたトランスジェンダーのためのデモ
 
2005年ねん10月がつ1日にちにパリで行おこなわれたデモに参加さんかしたトランスジェンダーのカミーユ・カブラル・パリ第だい17区く・区く議会ぎかい議員ぎいん
 
パリのゲイ・パレードに参加さんかしたNGO・PASTTのパフォーマンス、2005年ねん6月25日にち
 
パリのゲイ・パレードに参加さんかしたトランスジェンダーのアクティヴィストのチーム、2005年ねん6月25日にち

国際こくさいトランスジェンダー認知にんちの日ひ

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詳細しょうさいは「国際こくさいトランスジェンダー認知にんちの日ひ」を参照さんしょう

トランスジェンダー認知にんち週間しゅうかん

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詳細しょうさいは「トランスジェンダー認知にんち週間しゅうかん」を参照さんしょう

トランスジェンダー追悼ついとうの日ひ

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詳細しょうさいは「トランスジェンダー追悼ついとうの日ひ」を参照さんしょう
 
トランスマーチ「Existrans」2017年ねん

トランスマーチ

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詳細しょうさいは「トランスマーチ（英語えいご版ばん）」を参照さんしょう

毎年まいとし、世界中せかいじゅうでトランスジェンダーの問題もんだいについて行進こうしん・プロテスト・集会しゅうかいが行おこなわれている。LGBTの人々ひとびとのために地元じもとで行おこなわれるプライド・パレードの時期じきに行おこなわれることが多おおい。トランスマーチのイベントは、コミュニティを構築こうちくし、人権じんけん問題もんだいに取とり組くみ、認知にんち度どを高たかめるために、トランスジェンダーのコミュニティーによって頻繁ひんぱんに開催かいさいされている[214][215][216][217]。

日本にっぽんでは、TransGender Japanにより、2021年ねん11月20日にちに初はじめて東京とうきょう都と新宿しんじゅくでトランスマーチが開催かいさいされ、500人にん近ちかくの人ひとが参加さんかした[218][219]。

旗はた・シンボル

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LGBTの旗はた・シンボルとして、虹色にじいろの旗はたが知しられるが、トランスジェンダーの旗はたとして、「トランスジェンダー・プライド・フラッグ（Transgender Pride Flag）」が知しられている[220] 。

 
トランスジェンダー・プライド・フラッグ

トランスジェンダー・プライド・フラッグは、アメリカのトランス女性じょせいモニカ・ヘルムズ（英語えいご版ばん）によって1999年ねんに創つくられ、2000年ねんに米国べいこくアリゾナ州しゅうフェニックスのプライドパレードで初はじめて発表はっぴょうされた[221][222]。

この旗はたは、トランスジェンダーコミュニティを表あらわし、中央ちゅうおうに5つの水平すいへいストライプ（ライトブルー2つ、ピンク2つ、ホワイト1つ）から構成こうせいされている。

ヘルムズはトランスジェンダー・プライド・フラッグの意味いみを次つぎのように記述きじゅつしている[223][224]。

「上下じょうげの水平すいへいストライプは、男おとこの赤あかちゃんの伝統でんとう的てきな色いろのライトブルーで、その隣となりのストライプは女おんなの赤あかちゃんの伝統でんとう的てきな色いろのピンク。中間ちゅうかんのストライプは白しろで、間あいだ性せい、移行いこう中ちゅう、または中立ちゅうりつ的てきや未定義みていぎの性別せいべつを持もっていると考かんがえている人ひとのためのものです。あなたがこの旗はたをどのように掲かかげても、それは常つねに正ただしいものであり、私わたしたちの生活せいかつの中なかで正確せいかくさを見出みいだすことを意味いみしています」

英国えいこくでは、ブライトン・アンド・ホヴ評議ひょうぎ会かいが、トランスジェンダー追悼ついとうの日ひにこの旗はたを掲揚けいようしている[225]。ロンドン交通こうつう局きょくはまた、2016年ねんトランスジェンダー認知にんち週間しゅうかんに、ロンドン地下鉄ちかてつのブロードウェイ55番地ばんち（英語えいご版ばん）本部ほんぶから旗はたを掲揚けいようした。

2012年ねん11月19日にちと20日はつかに初はじめて、サンフランシスコのカストロ地区ちくの大おおきな公共こうきょう旗はた掲揚けいよう台だい（通常つうじょうはレインボー・フラッグが掲揚けいようされる）から掲かかげられた[223][226][227]。トランスジェンダー追悼ついとうの日ひを記念きねんしたもので、旗はたを掲かかげる式典しきてんは地元じもとのドラァグクイーンLa Monistatによって主宰しゅさいされた[227][228]。

2014年ねん8月がつ19日にち、モニカ・ヘルムズはトランスジェンダー・プライド・フラッグ（現物げんぶつ）をスミソニアン国立こくりつアメリカ歴史れきし博物館はくぶつかんに寄贈きぞうした[229]。

2016年ねん、サンタクララ郡ぐんはトランスジェンダー・プライド・フラッグを掲かかげる、米国べいこくで最初さいしょの郡ぐん政府せいふになった[230]。

異ことなるトランスジェンダー・プライド・フラッグ

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モニカ・ヘルムズのオリジナルのトランスジェンダー・プライド・フラッグのデザインに加くわえて、多おおくのコミュニティが独自どくじのバリエーションを作つくっている。

ブラック・トランス・フラッグ

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「ブラック・トランス・フラッグ（Black Trans Flag）」と呼よばれるトランスジェンダー・プライド・フラッグは、トランス活動かつどう家かで作家さっかのRaquel Willis（英語えいご版ばん）により作つくられた。中央ちゅうおうには、オリジナルの白しろいストライプの代かわりに、黒くろいストライプが使用しようされている。Willisは、より大おおきなトランスジェンダー運動うんどうとは対照たいしょう的てきに、黒人こくじんのトランスコミュニティが直面ちょくめんするより高たかいレベルの差別さべつ、暴力ぼうりょく、殺人さつじんを表現ひょうげんするシンボルとして作成さくせいした。はじめに彼女かのじょのFacebookアカウントに投稿とうこうされた[231]。2015年ねん8月がつ25日にち、ブラックトランスジェンダー活動かつどう家かたちにより、Black Trans Liberation Tuesdayの一部いちぶとしてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく中ちゅうで初はじめて実際じっさいに使用しようされた[232][233]。Black Trans Liberation Tuesdayは、年間ねんかんを通つうじて殺害さつがいされた黒人こくじんのトランスジェンダー女性じょせいのために、Black Lives Matterと併あわせて開催かいさいされた。

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
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参考さんこう文献ぶんけん

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