内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょ

内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょ（ないかくそうりだいじんしめいせんきょ）とは、日本にっぽんの内閣ないかくの首長しゅちょうたる内閣ないかく総理そうり大臣だいじんを指名しめいする選挙せんきょである。首相しゅしょう指名しめい選挙せんきょ、首班しゅはん指名しめい選挙せんきょとも呼よばれる^[1]。

概説がいせつ

内閣ないかくが総そう辞職じしょくした場合ばあい、又または内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが欠かけた場合ばあい、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょうの規定きていにより、国会こっかいにおいて文民ぶんみんである国会こっかい議員ぎいんから内閣ないかく総理そうり大臣だいじんを指名しめいする。

通常つうじょうの議事ぎじとは異ことなり衆議院しゅうぎいんと参議院さんぎいんでの先議せんぎ・後こう議ぎはなく、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいは衆参しゅうさんの両りょう議院ぎいんがそれぞれ独立どくりつして行おこなう^[2]。

内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょの手続てつづきは、国会こっかい法ほう、議院ぎいん規則きそく、先例せんれいに基もとづいて、以下いかの通とおり行いっている：

衆議院しゅうぎいん、参議院さんぎいん双方そうほう別々べつべつに記名きめい投票とうひょうを行おこない、各かく院いん一いち名めいの指名しめい者しゃを決きめる。（過半数かはんすうの票ひょうを得えた議員ぎいんがその院いんの指名しめい者しゃになる。そのような議員ぎいんがいなければ、上位じょうい2人にんによる決選けっせん投票とうひょうでその院いんの指名しめい者しゃを決きめる）。
両院りょういんの指名しめい者しゃが一致いっちしていれば、その人物じんぶつを内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいする。
一致いっちしてなければ、両院りょういん協議きょうぎ会かいを開ひらく。
両院りょういん協議きょうぎ会かいで両院りょういんの意見いけんが一致いっちするか、もしくは出席しゅっせき協議きょうぎ委員いいんの3分ぶんの2以上いじょうの多数たすうを得えた被ひ指名しめい者しゃがでたらその人物じんぶつを内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいする。
そうならなかった場合ばあいは、衆議院しゅうぎいんの優越ゆうえつにより衆議院しゅうぎいんの指名しめい者しゃが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんになる。

以上いじょうのように、事実じじつ上じょう、衆議院しゅうぎいん議決ぎけつで過半数かはんすうを得えた候補こうほが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいされる。

その後ごに被ひ指名しめい者しゃは、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい6条じょうの規定きていにより、皇居こうきょでの親任しんにん式しきにおいて天皇てんのうによる任命にんめいを受うけて、正式せいしきに内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに就任しゅうにんする。

指名しめいの資格しかく

内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいを受うける資格しかくとして日本にっぽんの国会こっかい議員ぎいんであること（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう第だい1項こう）と文民ぶんみんであること（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい66条じょう第だい2項こう）が義務付ぎむづけられている。

国会こっかい議員ぎいん

内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは国会こっかい議員ぎいんの中なかから指名しめいされる（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう第だい1項こう）。

実際じっさいに、過去かこの内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめい選挙せんきょ(首班しゅはん指名しめい)において、参議院さんぎいん議員ぎいんが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいされたことは一いち度どもない。内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが事実じじつ上じょうの権限けんげんを持もっている衆議院しゅうぎいん解散かいさんにおいて、自みずからの議員ぎいん職しょくを賭かけない立場たちばで衆議院しゅうぎいん解散かいさんを行おこなうことについて否定ひてい的てきに捉とらえられていることや様々さまざまな法ほう規定きていで衆議院しゅうぎいんの優越ゆうえつ規定きていがあることから、政治せいじ的てき慣例かんれい上じょうとして「衆議院しゅうぎいん議員ぎいんが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに就任しゅうにんすることがふさわしい」という風潮ふうちょうが定着ていちゃくしている。

過去かこに「参議院さんぎいん議員ぎいんは内閣ないかく総理そうり大臣だいじんになることができるのか」という質問しつもん主意しゅい書しょが衆議院しゅうぎいん議員ぎいん山井やまい和則かずのりから出だされたことがあり、2009年ねん（平成へいせい21年ねん）3月がつ10日とおかに麻生あそう内閣ないかくは『日本国にっぽんこく憲法けんぽうは、第だい六ろく十じゅう七なな条じょう第だい一いち項こう前段ぜんだんにおいて「内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは、国会こっかい議員ぎいんの中なかから国会こっかいの議決ぎけつで、これを指名しめいする」と規定きていしている』と答弁とうべんしている^[3]^[4]。

なお、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが国会こっかい議員ぎいんであることは選任せんにん要件ようけんであると同時どうじに在職ざいしょく要件ようけんでもあるとされている^[5]^[6]^{[注釈ちゅうしゃく 1]}。

文民ぶんみん

内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは文民ぶんみんでなければならない（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい66条じょう第だい2項こう）。志願しがん将校しょうこうとしては旧きゅう日本にっぽん海軍かいぐん少佐しょうさの中曽根なかそね康弘やすひろと旧きゅう日本にっぽん陸軍りくぐん少尉しょういの竹下たけした登のぼる、学徒がくと動員どういんでは旧きゅう陸軍りくぐん少尉しょういの宇野うの宗佑そうすけ、徴兵ちょうへいでは旧きゅう陸軍りくぐん軍曹ぐんそうの村山むらやま富市とみいちが軍ぐん歴れきを持もつが、いずれも旧きゅう軍ぐん解体かいたい後ごの日本国にっぽんこく憲法けんぽう下かで内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいされ任命にんめいされている。自衛隊じえいたい出身しゅっしん者しゃが指名しめいされた例れいはないが、同おなじく文民ぶんみんでなければならないとされる国務大臣こくむだいじん（防衛ぼうえい大臣だいじん含ふくむ）に自衛隊じえいたい退職たいしょく者しゃが就任しゅうにんした例れいはある。

詳細しょうさいは「文民ぶんみん」を参照さんしょう

指名しめいの手続てつづき

両院りょういんでの指名しめいの手続てつづき

内閣ないかくは国会こっかい法ほう第だい64条じょうに基もとづき、衆議院しゅうぎいんと参議院さんぎいんの議長ぎちょうに内閣ないかくの総そう辞職じしょく又または内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの欠かけ缺かけを通知つうちする。通知つうちを行おこなうのは内閣ないかく総そう辞職じしょくの場合ばあいには内閣ないかく総理そうり大臣だいじん、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの欠かけ缺かけの場合ばあいには内閣ないかく総理そうり大臣だいじん臨時りんじ代理だいりである^[7]。この通知つうちは会期かいき中ちゅうでない場合ばあいでも法定ほうていの事実じじつが発生はっせいしたときには直ただちに行おこなわれる^[7]（閉会へいかい中ちゅうに通知つうちされたときは開会かいかい後ごに指名しめい選挙せんきょが行おこなわれる）。

各かく院いんの本ほん会議かいぎにおいて、当該とうがい通知つうちを受うけた旨むねを議長ぎちょうが議員ぎいんに報告ほうこくし、その後ご直ただちに内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいを行おこなう（衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい1項こう及および参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう第だい1項こう）。

内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいは他たの全すべての案件あんけんに先立さきだって行おこなう（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう）。内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが指名しめいされないままの状態じょうたいにあることは国政こくせい上じょうにおいて重大じゅうだいな支障ししょうをきたすためである^[2]。ただし、条理じょうり上じょう、院いんの構成こうせいなど正常せいじょうな議事ぎじ運営うんえいを行おこない議院ぎいんが有効ゆうこうに活動かつどうするための前提ぜんていとなる手続てつづき（議長ぎちょう選挙せんきょや副ふく議長ぎちょう選挙せんきょなど役員やくいんの選任せんにん、会期かいきの決定けってい、議席ぎせきの指定していなど）については先決せんけつ問題もんだいとして内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょよりも前まえに行おこなわれることとなっており（昭和しょうわ53年ねん衆議院しゅうぎいん先例せんれい集しゅう69、昭和しょうわ53年ねん参議院さんぎいん先例せんれい録ろく77）、これは憲法けんぽうが予定よていするところあるいは憲法けんぽうの許容きょようするところと解ほぐされている^[2]^[8]^[9]^[7]^[10]。

内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょは投票とうひょうによって行おこなわれている（衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい1項こう及および参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう第だい1項こう）。衆議院しゅうぎいん規則きそく（第だい18条じょう第だい4項こう）及および参議院さんぎいん規則きそく（第だい20条じょう第だい4項こう）には、各かく院いんでの指名しめいについて「投票とうひょうによらず動議どうぎその他たの方法ほうほうで指名しめいできる」旨むねの規定きていがあるが、両院りょういんとも過去かここの方法ほうほうで指名しめいされた例れいはない。

投票とうひょう

内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょにて投票とうひょうする菅かん義よし偉えら（2020年ねん9月がつ16日にち、衆議院しゅうぎいん本ほん会議かいぎ場じょうにて）

内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいは単記たんき記名きめい投票とうひょうによって行おこなう^[7]。議長ぎちょう選挙せんきょが無む記名きめい投票とうひょうであるのに対たいして内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょは記名きめい投票とうひょうとなっている^[11]。

投票とうひょうに際さいして、衆議院しゅうぎいんにおいては議席ぎせきに配付はいふの投票とうひょう用紙ようしに被ひ選せん人じんの氏名しめいを記載きさいしなおかつ投票とうひょう者しゃ本人ほんにんの氏名しめいも記載きさいする。参議院さんぎいんでは議席ぎせきに配付はいふされた投票とうひょう用紙ようしには予あらかじめ投票とうひょう者しゃ本人ほんにんの氏名しめいが押印おういんされており被ひ選せん人じんの氏名しめいを記載きさいする。以前いぜんは木札きふだの名刺めいし札さつ（白色はくしょく）も添そえる必要ひつようがあったが、参議院さんぎいんでは1955年ねん以降いこうの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょでは廃止はいしされており^[12]、また、衆議院しゅうぎいんでも2008年ねんの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょ以降いこうは投票とうひょう用紙ようしのみとなっている。

議長ぎちょうは内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいを行おこなうことを告つげ、投票とうひょう方法ほうほうの説明せつめいののち参事さんじに点呼てんこを命めいじる。点呼てんこは議席ぎせき番号ばんごう順じゅんに行おこなわれ議員ぎいんは壇上だんじょう（衆議院しゅうぎいんは時計とけい回まわり、参議院さんぎいんは反はん時計とけい回まわり）に上あがり票ひょうを投とうじる^{[注釈ちゅうしゃく 2]}。投票とうひょう終了しゅうりょう後ご、議長ぎちょうが「投票とうひょう漏もれはありませんか」と投票とうひょう漏もれがないか確認かくにんし、投票とうひょう漏もれがなければ議長ぎちょうの「投票とうひょう漏もれなしと認みとめます。投票とうひょう箱ばこ閉鎖へいさ・開票かいひょう。」の宣告せんこくが入はいり開票かいひょう作業さぎょうに入はいる。なお、後述こうじゅつのように内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいなど選挙せんきょ手続てつづきにおける投票とうひょうの場合ばあいにおいては表決ひょうけつにおける記名きめい投票とうひょうの場合ばあいとは異ことなり議場ぎじょうを閉鎖へいさしない^[13]^[11]（表決ひょうけつの項目こうもくも参照さんしょう）。

慣例かんれいにより参議院さんぎいん議長ぎちょうは投票とうひょうしないこととなっている。衆議院しゅうぎいん議長ぎちょう及および両院りょういんの副ふく議長ぎちょうは投票とうひょうしている。衆議院しゅうぎいん議長ぎちょうが記入きにゅうした投票とうひょう用紙ようしは事務じむ総長そうちょうを通つうじて参事さんじに渡わたされ、参事さんじが代理だいりで票ひょうを投とうじる。

開票かいひょう

議長ぎちょうは投票とうひょう終了しゅうりょう確認かくにん後ご、投票とうひょう箱ばこの閉鎖へいさを宣告せんこくし、参事さんじに投票とうひょうの計算けいさん及および投票とうひょうの点検てんけんを命めいじる。

開票かいひょう作業さぎょうは参事さんじにより行おこなわれるが、衆議院しゅうぎいんでは閣僚かくりょう席せき後ご側がわのテーブル（内閣ないかく総理そうり大臣だいじんが座すわる箇所かしょの後のち側がわで、事務じむ次長じちょうなどが座すわる箇所かしょ）にて、参議院さんぎいんでは演壇えんだんにて行おこなわれたのち、事務じむ次長じちょうに集計しゅうけい・記録きろくを行おこなう。そして結果けっかが記載きさいされた用紙ようしを事務じむ総長そうちょうに最終さいしゅう確認かくにんし、議長ぎちょうに手渡てわたされる。

白紙はくしの票ひょう、国会こっかい議員ぎいん以外いがいの者ものを記載きさいした票ひょう、被ひ指名しめい者しゃの特定とくていが困難こんなんな票ひょう（同姓どうせいの国会こっかい議員ぎいんがいる場合ばあいで姓せいのみを記載きさいした票ひょうは按分あんぶん票ひょうとされず無効むこう票ひょうとされるのが先例せんれいである）、投票とうひょう者しゃの氏名しめいの記載きさいを欠かく票ひょう（投票とうひょう者しゃの記載きさいが必要ひつような衆議院しゅうぎいんのみ）などはすべて無効むこう票ひょうとなる^[12]。なお、後述こうじゅつの決選けっせん投票とうひょうとなったときは決選けっせん投票とうひょうの際さいに対象たいしょうとなっている者もの以外いがいの者ものを記載きさいした票ひょうも無効むこう票ひょうとなる^[12]。

衆議院しゅうぎいんにおいては、投票とうひょう結果けっかの報告ほうこくに先立さきだって衆議院しゅうぎいん議長ぎちょうが投票とうひょう総数そうすう及および本ほん投票とうひょうの過半数かはんすうと無効むこう票ひょうについて報告ほうこくし^{[注釈ちゅうしゃく 3]}、それに引ひき続つづいて事務じむ総長そうちょうから開票かいひょう結果けっかが報告ほうこくされる。参議院さんぎいんにおいては参議院さんぎいん議長ぎちょうが開票かいひょう結果けっかを報告ほうこくすることになっている。

指名しめい

衆議院しゅうぎいんにおいて内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいを受うけ一礼いちれいする鳩山はとやま由紀夫ゆきお（2009年ねん9月がつ16日にち、衆議院しゅうぎいん本ほん会議かいぎ場じょうにて）

投票とうひょう総数そうすうの過半数かはんすうの票ひょうを得えた議員ぎいんがその議院ぎいんにおける被ひ指名しめい者しゃとなる（衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい2項こう及および参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう第だい2項こう）。ここでいう投票とうひょう総数そうすうには白票はくひょうを含ふくむ無効むこう票ひょうを算入さんにゅうする^[12]^[14]。過半数かはんすう算定さんていの基準きじゅんは表決ひょうけつの場合ばあいには出席しゅっせき議員ぎいん数すうであるのに対たいして、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめい等とうの選挙せんきょの場合ばあいには投票とうひょう総数そうすうである^[13]。したがって、表決ひょうけつにおける記名きめい投票とうひょうとは異ことなり内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめい等とうの選挙せんきょの場合ばあいには出席しゅっせき議員ぎいん数すうを固定こていする必要ひつようはなく投票とうひょうの間あいだにも議場ぎじょうは閉鎖へいさされない^[13]^[14]。

初回しょかいの投票とうひょうで有効ゆうこう投票とうひょう総数そうすうの過半数かはんすうの票ひょうを得えた議員ぎいんがいない場合ばあいには、上位じょうい2人にんによる決選けっせん投票とうひょうにより決けっする（衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい3項こう及および参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう第だい3項こう）^{[注釈ちゅうしゃく 4]}。衆議院しゅうぎいん規則きそく及および参議院さんぎいん規則きそくは決選けっせん投票とうひょうについては「過半数かはんすうを得えた者もの」ではなく「多数たすうを得えた者もの」と規定きていしており（衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい3項こう・第だい8条じょう第だい2項こう及および参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう第だい3項こう）、決選けっせん投票とうひょうの場合ばあいには過半数かはんすうではなく相対そうたい多数たすうで足たりる^[14]。過去かこの決選けっせん投票とうひょうの例れいでは、1979年ねん（昭和しょうわ54年ねん）11月6日にちに行おこなわれた衆議院しゅうぎいんでの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょの決選けっせん投票とうひょうで多おおくの野党やとう議員ぎいんなどが棄権きけんし、大平おおひら正芳まさよし138票ひょう、福田ふくだ赳夫たけお121票ひょう、無効むこう252票ひょうとなった例れいがある（四よん十じゅう日にち抗争こうそう）。なお、決選けっせん投票とうひょうの開票かいひょう結果けっかの報告ほうこくは初回しょかいの投票とうひょうとほぼ同様どうようであるが相対そうたい多数たすうとされているため決選けっせん投票とうひょうでは過半数かはんすうの報告ほうこくはない。

なお、開票かいひょうの結果けっかによっては、指名しめい手続てつづきにおいて抽選ちゅうせんをしなければならない場合ばあいを生しょうじることがある。初回しょかいの投票とうひょうで投票とうひょうの過半数かはんすうを得えた者ものがなく決選けっせん投票とうひょうを行おこなうべき2人ふたりを定さだめるにあたり得票とくひょう数すうが同おなじとき（1位いの者ものが同おなじ得票とくひょう数すうで3人にん以上いじょうあるいは2位いの者ものが同おなじ得票とくひょう数すうで2人ふたり以上いじょうおり決選けっせん投票とうひょう進出しんしゅつ者しゃを決けっする必要ひつようがある場合ばあい）または決選けっせん投票とうひょうで当選とうせん人じんを定さだめるにあたり得票とくひょう数すうが同おなじときには、得票とくひょう同数どうすう者しゃを対象たいしょうにくじ引びき（抽選ちゅうせん）を行おこない決選けっせん投票とうひょう進出しんしゅつ者しゃ又または当選とうせん者しゃを決けっする（衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい3項こう・第だい8条じょう第だい2項こう、参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう3項こう）。このときに使用しようされる抽選ちゅうせん札さつは、箱はこの中なかに銀紙ぎんがみに包つつまれた丸まる玉たまが2個こあり、包装ほうそうされている銀紙ぎんがみを解とき、黒くろ玉だまを引ひいた者ものがその議院ぎいんにおける被ひ指名しめい者しゃとなる。ちなみに過去かこの国会こっかいにおいてこの抽選ちゅうせんが実施じっしされた事例じれいは1度どもない。

以上いじょうの手続てつづきが終了しゅうりょうすると議長ぎちょうから指名しめいされた者ものの発表はっぴょうがなされる。上述じょうじゅつのように衆議院しゅうぎいんでは事務じむ総長そうちょうから投票とうひょうの結果けっかが報告ほうこくされるため、衆議院しゅうぎいんの場合ばあい、議長ぎちょうは事務じむ総長そうちょうによる投票とうひょう結果けっかの報告ほうこくに引ひき続つづいて「右みぎの結果けっか、○○○○君くんを、衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい2項こう（決選けっせん投票とうひょうで決きまった場合ばあいは、第だい3項こうと読よみ上あげる）により、本ほん院いんにおいて内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいすることに決きまりました」と宣言せんげんする。これに対たいして参議院さんぎいんでは参議院さんぎいん議長ぎちょう自みずから投票とうひょう結果けっかを報告ほうこくすることになっているため、参議院さんぎいんの場合ばあい、議長ぎちょうは自みずからの投票とうひょう結果けっかの報告ほうこくに引ひき続つづいて「よって、本ほん院いんは、○○○○君くんを内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいすることに決けっしました」と宣言せんげんする。

なお、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう前段ぜんだんの「内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは、国会こっかい議員ぎいんの中なかから国会こっかいの議決ぎけつで、これを指名しめいする」という規定きていは、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは国会こっかいの意思いし決定けっていによって指名しめいされることを意味いみするもので「指名しめい」とは別べつに改あらためて「議決ぎけつ」が必要ひつようであるという意味いみではない^[2]^[15]。1955年ねんの改正かいせい前まえの衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう及および参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょうは、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう前段ぜんだんにおける「議決ぎけつ」と「指名しめい」を別べつのものとみる前提ぜんていに立たっていたため、まず指名しめいすべき者ものを投票とうひょうで定さだめた上うえでその者ものを指名しめいすることの可否かひについて議決ぎけつを行おこなうという二に段階だんかいの手続てつづきがとられていた^[16]^[6]。

しかし、学説がくせつの多おおくは当時とうじから日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょうにおいて「指名しめい」とは別べつに「議決ぎけつ」が必要ひつようであるとみるのは無用むようかつ無意味むいみであるとみていた^[17]^[18]。実際じっさい、第だい2回かい国会こっかいでの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょにおいて、二に段階だんかいの手続てつづきをとるこのような方法ほうほうには問題もんだいがあることが露呈ろていした^[16]^[18]。この1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）2月がつ21日にちの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょの参議院さんぎいんでの指名しめい手続てつづきでは、一回いっかい目めの投票とうひょう（投票とうひょう総数そうすう218票ひょう、吉田よしだ茂しげる101票ひょう、芦田あしだ均ひとし99票ひょうほか）で過半数かはんすうを得えた者ものがいなかったため、決選けっせん投票とうひょうが行おこなわれた結果けっか、投票とうひょう総数そうすう216票ひょう、吉田よしだ茂しげる104票ひょう、芦田あしだ均ひとし102票ひょう、白票はくひょう7、無効むこう3で吉田よしだ茂しげるが指名しめいされた（下記かきの「衆議院しゅうぎいんと異ことなる参議院さんぎいんの議決ぎけつ」参照さんしょう）^[19]^[18] 。それに続つづいて、指名しめいされる者ものを吉田よしだ茂しげるとすることについて議決ぎけつが行おこなわれ、まず起立きりつ採決さいけつが行おこなわれたが異議いぎが出でたため記名きめい投票とうひょうとなり、その結果けっか、投票とうひょう総数そうすう218票ひょう、賛成さんせい105票ひょう、反対はんたい113票ひょうで否決ひけつされるという事態じたいを生しょうじた^[20]^[18]。参議院さんぎいん議長ぎちょうは一時いちじ休憩きゅうけいとし議院ぎいん運営うんえい委員いいん会かいに諮はかり、その結果けっか、参議院さんぎいん議長ぎちょうが議院ぎいん規則きそく上じょうの疑義ぎぎ裁定さいてい権けんを行使こうしして指名しめいのみを残のこして指名しめい後ごの議決ぎけつは無なかったものとし、参議院さんぎいんにおいては吉田よしだ茂しげるを指名しめいすることについて異議いぎなく承認しょうにんするという形かたちがとられた^[20]^[18]^[7]（衆議院しゅうぎいんでは芦田あしだ均ひとしが指名しめいされた）。各かく院いんの指名しめい手続てつづきにおいて「指名しめい」と「議決ぎけつ」の二に段階だんかいの手続てつづきをとることについては以上いじょうのような問題もんだいも生しょうじたことから、1955年ねん（昭和しょうわ30年ねん）に衆議院しゅうぎいん規則きそく及および参議院さんぎいん規則きそくは改正かいせいされている^[18]^[7]。ただ、参議院さんぎいん規則きそく第だい20条じょう第だい2項こうが単たんに「投票とうひょうの過半数かはんすうを得えた者ものを指名しめいされた者ものとする」と規定きていしているのに対たいして、衆議院しゅうぎいん規則きそく第だい18条じょう第だい2項こうは「投票とうひょうの過半数かはんすうを得えた者ものを指名しめいされる者ものとし、その者ものについて指名しめいの議決ぎけつがあつたものとする」と規定きていしており、参議院さんぎいん規則きそくと衆議院しゅうぎいん規則きそくとでは文言もんごん上じょうに多少たしょうの相違そういがあり^[7]、衆議院しゅうぎいん規則きそくの規定きていの仕方しかたに対たいしては未いまだに「議決ぎけつ」に拘泥こうでいしていると問題もんだいを指摘してきする見解けんかいがある^[20]。

両院りょういんでの指名しめい後ごの手続てつづき

各かく院いんともに指名しめい後ごは散会さんかいあるいは暫時ざんじ休憩きゅうけいとなる場合ばあいが多おおい。「暫時ざんじ休憩きゅうけい」は一方いっぽうの議院ぎいんがまだ確定かくていしていない場合ばあいで衆議院しゅうぎいんがほとんどである。両院りょういんとも指名しめいされた者ものが同一どういつであれば暫時ざんじ休憩きゅうけいがそのまま散会さんかいとなる。

各かく議院ぎいんにおいて内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいを議決ぎけつした時ときは国会こっかい法ほう第だい86条じょうの規定きていにより、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの指名しめいについて他ほかの議院ぎいんに通知つうちされ、両院りょういんにおける指名しめいの議決ぎけつ（被ひ指名しめい者しゃ）が同どう一いち人にんであるときは、その議員ぎいんが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんとなる。

両院りょういんで被ひ指名しめい者しゃの議決ぎけつが異ことなった場合ばあいは、参議院さんぎいんは両院りょういん協議きょうぎ会かいを求もとめなければならない（国会こっかい法ほう第だい86条じょう2項こう）。両院りょういん協議きょうぎ会かいで両院りょういんの意見いけんが一致いっちせず、あるいは出席しゅっせき協議きょうぎ委員いいんの3分ぶんの2以上いじょうの多数たすうを得えた被ひ指名しめい者しゃがなかったときは、衆議院しゅうぎいんの優越ゆうえつによって衆議院しゅうぎいんの議決ぎけつが国会こっかいの議決ぎけつとなる（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう第だい2項こう）。また、衆議院しゅうぎいんでの議決ぎけつ後ご、国会こっかい休会きゅうかい中なかの期間きかんを除のぞいて10日とおか以内いないに参議院さんぎいんが議決ぎけつをしないときは衆議院しゅうぎいんの議決ぎけつが国会こっかいの議決ぎけつとなる（日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい67条じょう第だい2項こう、自然しぜん指名しめい）。

事実じじつ上じょう、衆議院しゅうぎいんの議決ぎけつで過半数かはんすうを得えた候補こうほが内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいされる。国会こっかい法ほうの規定きていにより、議決ぎけつは衆議院しゅうぎいん議長ぎちょうが内閣ないかく（総そう辞職じしょく後ごであるため職務しょくむ執行しっこう内ない閣かく）を経由けいゆして奏上そうじょうする（国会こっかい法ほう第だい65条じょう）。それとは別べつに、衆議院しゅうぎいん議長ぎちょうが参内さんだいして天皇てんのうに直接ちょくせつ報告ほうこくすることも慣行かんこう上じょう行おこなわれている。

その後ごに被ひ指名しめい者しゃは、日本国にっぽんこく憲法けんぽう第だい6条じょうの規定きていにより、皇居こうきょでの親任しんにん式しきにおいて天皇てんのうによる任命にんめいを受うけて、正式せいしきに内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに就任しゅうにんする。

一覧いちらん及および先例せんれい