サカキ

サカキ（榊さかき・賢けん木き・栄さかえ木き、学名がくめい: Cleyera japonica）は、モッコク科かサカキ属きぞくの常緑じょうりょく小しょう高木たかぎ。日本にっぽんの神道しんとうにおいては、神棚かみだなや祭壇さいだんに供そなえるなど神事しんじにも用もちいられる植物しょくぶつ。別名べつめい、ホンサカキ、ノコギリバサカキ、マサカキともよばれる。

サカキ
分類ぶんるい
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms 階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい eudicots 目め : ツツジ目め Ericales 科か : モッコク科か Pentaphylacaceae 属ぞく : サカキ属きぞく Cleyera 種たね : サカキ C. japonica
学名がくめい
Cleyera japonica Thunb. (1783)
シノニム
Cleyera japonica Thunb. var. hayatae (Masam. et Yamam.) Kobuski (1937) Cleyera japonica Thunb. f. serrata (Hayashi) Sugim. (1961)

名称めいしょう

和名わみょうサカキの語源ごげんは、神かみと人ひととの境さかいであることから「境木さかいぎ（さかき）」の意いであるとされる。常緑樹じょうりょくじゅであり、さかえる（繁しげる）ことから「繁しげる木き（さかき）」とする説せつもあるが、多おおくの学者がくしゃは後世こうせいの附会ふかいであるとして否定ひていしている。「榊さかき」という文字もじは平安へいあん時代じだいに日本にっぽんで会意かいいで形成けいせいされた国字こくじである。上代じょうだい（奈良なら時代じだい以前いぜん）では、サカキ、ヒサカキ、シキミ、アセビ、ツバキなど、神仏しんぶつに捧ささげる常緑樹じょうりょくじゅの総称そうしょうが「サカキ」であったが、平安へいあん時代じだい以降いこうになると「サカキ」が特定とくていの植物しょくぶつを指さすようになり、本ほん種しゅが標準ひょうじゅん和名わみょうのサカキの名なを獲得かくとくした。

類似るいじ植物しょくぶつと混同こんどうされやすいので、サカキは「ホンサカキ」（本ほん榊さかき）や「マサカキ」とも呼よばれ、近きん縁えんのヒサカキ（後述こうじゅつ）については、「シャシャキ」「シャカキ」「下草したくさ」「ビシャコ」「仏ふつさん柴しば（しば）」「栄さかえ柴しば（サカシバ）」などと地方ちほう名めいで呼よばれることもある。

学名がくめいは、植物しょくぶつ学者がくしゃで、江戸えど時代じだいに出島でじまオランダ商館しょうかん長ちょうを務つとめ、サカキをヨーロッパに紹介しょうかいしたアンドレアス・クレイエルにちなむ。

分布ぶんぷ・生育せいいく地ち

日本にっぽん列島れっとうでは本州ほんしゅうの茨城いばらき県けん・石川いしかわ県けん以西いせい、四国しこく、九州きゅうしゅう、沖縄おきなわに分布ぶんぷする。日本にっぽん国外こくがいではアジア東ひがし南部なんぶに分布ぶんぷし、朝鮮半島ちょうせんはんとう南部なんぶ、済州さいしゅう島とう、台湾たいわん、中国ちゅうごくが知しられている。ヒマラヤと中国ちゅうごく南部なんぶには、別べつ亜種あしゅが知しられる。陰かげ樹じゅで、山地さんちの照葉樹しょうようじゅ林りん内ないに生はえる。枝葉えだはは日本にっぽんの神社じんじゃでの神事しんじに使つかわれるため、神社じんじゃの境内けいだいに植うえられることも多おおい。

• var. wallichiana - ヒマラヤ産さん。花はなが大おおきい。
• var. parvifolia - 中国ちゅうごく南部なんぶ。葉はが小ちいさい。

特徴とくちょう

常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅ。低木ていぼくを見みることが多おおいが、小しょう高木こうぼくで高たかさ12 m、胸むね高だか直径ちょっけいは30 cmになるものがある。一いち年ねん枝えだは緑色みどりいろで無む毛けだが、幹みきの樹皮じゅひは暗くら赤褐色せきかっしょくになり皮かわ目めがあり、ほぼ滑なめらかである。枝えだ先さきの冬芽とうがは裸はだか芽めで、互生ごせいする葉はの付つけ根ねにつき、長ちょう披針形ひしんけいで若葉わかばが巻まいて細長ほそながく鎌かま状じょうに曲まがるのが特徴とくちょう。冬芽とうがは枝えだと同色どうしょくである。頂いただき芽めはよく葉は上じょうに出でる。

葉はは二に列れつ生せいで互生ごせいし、葉は身みは長ながさ6 - 10センチメートル (cm) の長ちょう楕円だえん形がたで、厚あつみのある革質かくしつでつやがある、のっぺりとした表面ひょうめんで、葉は縁えんの鋸歯きょしは全まったくない。裏面りめんはやや色いろ薄うすく、両面りょうめんともに無む毛け。近きん縁えん種しゅのヒサカキには葉は縁えんに鋸歯きょしがある点てんで区別くべつできる。

花期かきは6 - 7月がつごろで、側がわ枝えだの基部きぶの側がわの葉腋ようえきから黄白こうはく色しょくの小ちいさな花はなを咲さかせる。花はなは5弁べんで、葉はの下した側がわから1 - 4個こが束たば状じょうに出でて、下向したむきに咲さく。花色はないろははじめは白しろく、のちに黄き味あじを帯おびてくる。果はて期きは10月がつごろで、果実かじつは直径ちょっけい7 - 8ミリメートル (mm) の液えき果はてで、11月頃ころには黒くろく熟じゅくす。果実かじつには柄えがある。

利用りよう

材ざいは緻密ちみつでかたいことから、器具きぐ材ざい、箸はし、櫛くしに使つかわれる。赤あか紫色むらさきいろに熟じゅくした果実かじつは、赤あか紫色むらさきいろの染料せんりょうに使つかわれる。

日本にっぽん文化ぶんかと“榊さかき”

榊さかき立だてに立たてた榊さかき

習俗しゅうぞくと生産せいさん・販売はんばい

日本にっぽんでは古ふるくから神事しんじに用もちいられる植物しょくぶつである。古来こらい、植物しょくぶつには神かみが宿やどり、特とくに先端せんたんが尖とがった枝えだ先さきは神かみが降おりるヨリシロとして若わか松まつやオガタマノキなど様々さまざまな常緑じょうりょく植物しょくぶつが用もちいられたが、近年きんねんは身近みぢかな植物しょくぶつで枝えだ先さきが尖とがっており、神かみの依より代だいにふさわしいサカキやヒサカキが定着ていちゃくしている。家庭かていの神棚かみだなにも捧ささげられ、月つきに2度ど、1日にちと15日にち（江戸えど時代じだいまでは旧暦きゅうれきの1日にちと15日にち）に取とり替かえる習ならわしになっている。神棚かみだなから下さげた榊さかきは、神社じんじゃでお焚たき上あげ、海うみや川かわに流ながす、土どに埋うめて自然しぜんに還かえすなどといった方法ほうほうが正式せいしきだが、近年きんねんは環境かんきょうに配慮はいりょし、水みずをふき取とり、塩しおでお清きよめをしてから白紙はくしに包つつんで処分しょぶんすることも多おおい。神棚かみだなでは榊さかき立りつを用もちいる。

サカキは神仏しんぶつに捧ささげる常磐木ときわぎの代表だいひょう樹じゅで、結婚式けっこんしき、安産あんざん祈願きがん、お宮参みやまいり、七五三しちごさんなどのい事わいごとの際さいに、神かみへ奉納ほうのうする玉串たまぐしに使つかわれる。神社じんじゃでは、サカキが供花きょうかとされ、境内けいだいにサカキがあると、小枝さえにおみくじが結むすばれるのを見みかける機会きかいも多おおい。

こうした用途ようとがあるため、日本にっぽんではサカキやヒサカキは市販しはんされている。中国ちゅうごくからの輸入ゆにゅうが9割わりを占しめるが、国内こくないでも生産せいさんに力ちからを入いれる農業のうぎょう協同きょうどう組合くみあいなどがあり、国産こくさん榊さかき生産せいさん者しゃの会かいという団体だんたいもある。

縁起えんぎ木きとして扱あつかわれるため、常緑じょうりょくを活いかした庭木にわきとしても使つかわれる。

栽培さいばいは、半はん日陰ひかげで土質どしつは壌土じょうどのところに深ふかく根ねが張はる。植うえ栽適期きは、植うえ付つけが3月がつ下旬げじゅん - 7月がつ・9-12月、移植いしょくは3 - 4月がつに行おこなうとされ、剪定せんていは3月がつ・6 - 7月がつ・9月 - 10月とされる。

花言葉はなことばは、「神かみを尊とうとぶ」である。

類似るいじの植物しょくぶつ

サカキは関東かんとう以南いなんの比較的ひかくてき温暖おんだんな地域ちいきで生育せいいくするため、関東かんとう以北いほくでは類似るいじ種しゅ（別べつ属ぞく）のヒサカキ（Eurya japonica）をサカキとして代用だいようしている。ヒサカキは仏壇ぶつだんにも供そなえられる植物しょくぶつである。花はなは早春そうしゅんに咲さき、独特どくとくのにおいがある。名なの由来ゆらいは小ちいさいことから「姫ひめ榊さかき」とも、サカキでないことから「非ひ榊さかき」とも。

店頭てんとうに並ならんでいるサカキとヒサカキを見分みわけるポイントは葉は縁えんで、葉はが小ちいさく、鋸歯きょしがある（ぎざぎざしている）ならヒサカキ、表面ひょうめんがツルツルしていて、葉は縁えんがぎざぎざしていない全ぜん縁えんならサカキである。また、サカキは茎くき頂いただきの芽め（冬芽とうが）が、鎌かま状じょうあるいは長刀ちょうとう状じょうに湾曲わんきょくして尖とがっていることでも見分みわけられる。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ『樹皮じゅひと冬芽とうが：四季しきを通つうじて樹木じゅもくを観察かんさつする 431種しゅ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年ねん10月がつ10日とおか、63頁ぺーじ。ISBN 978-4-416-61438-9。 
• 田中たなか潔きよし『知しっておきたい100の木き：日本にっぽんの暮くらしを支ささえる樹木じゅもくたち』主婦しゅふの友社ともしゃ〈主婦しゅふの友ともベストBOOKS〉、2011年ねん7月がつ31日にち、16頁ぺーじ。ISBN 978-4-07-278497-6。 
• 平野ひらの隆久たかひさ監修かんしゅう 永岡書店ながおかしょてん編へん『樹木じゅもくガイドブック』永岡書店ながおかしょてん、1997年ねん5月がつ10日とおか、84頁ぺーじ。ISBN 4-522-21557-6。 
• 正木まさき覚さとし『ナチュラルガーデン樹木じゅもく図鑑ずかん』講談社こうだんしゃ、2012年ねん4月がつ26日にち、61頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-217528-9。 
• 山やま﨑誠子こ『植うえ栽大図鑑ずかん［改訂かいてい版ばん］』エクスナレッジ、2019年ねん6月がつ7日にち、50 - 51頁ぺーじ。ISBN 978-4-7678-2625-7。 

• 北村きたむら四郎しろう・村田むらた源はじめ『原色げんしょく日本にっぽん植物しょくぶつ図鑑ずかん・木本もくほん編へんII』保育ほいく社しゃ、1979年ねん10月がつ。 

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