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毒液 - Wikipedia
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毒液どくえき

動物どうぶつが分泌ぶんぴつする毒素どくそ

毒液どくえき（どくえき、英えい: venom）は、毒どくの一種いっしゅ。動物どうぶつによって生産せいさんされ、咬傷こうしょう、刺傷ししょうなどを介かいして注入ちゅうにゅうされる[1][2][3]。毒素どくそは毒牙どくがや毒どく針はりなどといった特有とくゆうの進化しんかをたどった器官きかんによって伝達でんたつされ、そのプロセスは毒物どくぶつ注入ちゅうにゅう（英語えいご版ばん）と呼よばれる[2] 。毒液どくえきは、直接ちょくせつの摂取せっしゅや吸入きゅうにゅう、経けい皮がわ吸収きゅうしゅうにより伝達でんたつされる毒どく [4] や物理ぶつり的てきに伝達でんたつされる毒素どくそを指さす en:toxungen[5]とは区別くべつされる。

スズメバチの毒どく針はりから流ながれる毒液どくえき

毒液どくえきは、陸上りくじょうと海洋かいようの両方りょうほうの環境かんきょうで、捕食ほしょく者しゃか被ひ食しょく者しゃか、脊椎動物せきついどうぶつか無む脊椎動物せきついどうぶつかなどの区別くべつなく、様々さまざまな動物どうぶつが進化しんかさせてきた。毒液どくえきの毒素どくそでは、細胞さいぼうを壊死えしさせるネクロトキシンやサイトトキシン、神経しんけい系けいに影響えいきょうを与あたえるニューロトキシン、筋肉きんにくを損傷そんしょうさせるミオトキシン（英語えいご版ばん）、血栓けっせんを作つくり出だすヘモトキシンがよく知しられている。有毒ゆうどく生物せいぶつにより、毎年まいとし何なん万まん人にんもの人ひとが死亡しぼうしている。

毒液どくえきは多おおくが異ことなる毒素どくその混合こんごう物ぶつである。毒液どくえきの毒素どくそは、血栓けっせんや関節かんせつ炎えん、一部いちぶの癌がんを含ふくむ広範囲こうはんいの病気びょうきの治療ちりょうに使つかわれることがある。ヴェノミクス（英語えいご版ばん）の研究けんきゅうでは、他たの病状びょうじょうへの使用しようの可能かのう性せいを調査ちょうさしている。

進化しんか

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多様たような分類ぶんるい群ぐんにおける毒液どくえきの使つかい方かたは、収斂しゅうれん進化しんかの例れいの一ひとつとなる。どのようにしてこの特性とくせいが広範囲こうはんいに急激きゅうげきに広ひろまったかを正確せいかくに結論けつろんづけることは困難こんなんである。有毒ゆうどく生物せいぶつの毒どくの遺伝子いでんしをコードする多重たじゅう遺伝子いでんし族ぞくは自然しぜんに選択せんたくされ、より様々さまざまな機能きのうを持もつ毒素どくそを生産せいさんする。毒液どくえきは環境かんきょうや対象たいしょうに適応てきおうし、より特定とくていの獲物えものに特とく化かしたものとなる[注釈ちゅうしゃく 1]。その結果けっか、毒液どくえきは動物どうぶつの普段ふだんの食事しょくじに特とく化かする[6]。

作用さよう機き序じょ

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ミツバチの毒液どくえきに含ふくまれる酵素こうそのホスホリパーゼA2は脂肪酸しぼうさんを放出ほうしゅつし、カルシウムシグナリングに影響えいきょうを与あたえる。

生物せいぶつ学がく的てき効果こうかは毒液どくえきに含ふくまれる毒素どくそによって引ひき起おこされる。毒液どくえきには異ことなる種類しゅるいの毒素どくその複雑ふくざつな混合こんごう物ぶつであるものもある。主おもな毒液どくえきの毒素どくそには以下いかのようなものがある[7]。

分布ぶんぷ

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毒液どくえきは分類ぶんるい学がく的てきに様々さまざまな生物せいぶつに分布ぶんぷしており、脊椎動物せきついどうぶつと無む脊椎動物せきついどうぶつ、水生すいせい生物せいぶつと陸生りくせい生物せいぶつ、捕食ほしょく者しゃと被ひ食しょく者しゃの両方りょうほうにみられる。以下いかでは、主おもな有毒ゆうどく生物せいぶつ群ぐんについて記述きじゅつする。

節足動物せっそくどうぶつ

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有毒ゆうどくな節足動物せっそくどうぶつには、鋏やっとこ角かくの牙きばを利用りようして毒液どくえきを注入ちゅうにゅうするクモ、脚あしを発達はったつさせた鄂肢を毒液どくえきの伝達でんたつに使つかうムカデ、毒どく針はりによる刺傷ししょうを通とおして毒液どくえきを注入ちゅうにゅうするサソリや一部いちぶの昆虫こんちゅうがいる。また、ミツバチやスズメバチにおいては、毒どく針はりは産卵さんらん管かんへと変化へんかしている。en:Polistes fuscatusは、メスの個体こたいは交尾こうび行動こうどうを誘発ゆうはつする性せいフェロモンを継続けいぞく的てきに放出ほうしゅつしている[16]。en:Polistes exclamansのようなスズメバチにおいては、毒液どくえきを巣すと連携れんけいし近ちかくのハチを引ひき寄よせて捕食ほしょく者しゃに攻撃こうげきするための警告けいこくフェロモンとして使用しようされる[17]。en:Parischnogaster striatulaなどの種たねにおいては、毒液どくえきは全身ぜんしんの抗菌こうきんに応用おうようされている[18]。

多おおくの毛虫けむしは、毒どく毛げと呼よばれる防御ぼうぎょのための特殊とくしゅな毛けのために毒腺どくせんを持もつ。ほとんどが軽かるい刺激しげきを与あたえる程度ていどの毒どくだが、ロノミア（英語えいご版ばん） の毒どくは人間にんげんにとって致命ちめい的てきになり得える[19]。

ミツバチ類るいは酸性さんせいの毒液どくえき（ハチ毒どく）を巣すや蓄たくわえられた食糧しょくりょうを守まもるために使用しようする一方いっぽう、スズメバチは獲物えものを麻痺まひさせるために化学かがく的てきに異ことなる毒液どくえきを用もちいる。スズメバチは幼虫ようちゅうの食たべ物ものを貯蔵ちょぞうするために獲物えものを生いきたままにする。 例示れいじしたもの以外いがいにも、毒液どくえきの使用しよう法ほうははるかに広範こうはんに渡わたっている。カメムシや多おおくのアリなども毒液どくえきを生産せいさんする[20]。アリの一種いっしゅのクロトゲアリは、病原菌びょうげんきんの滅菌めっきんのために局所きょくしょ的てきに毒液どくえきを使用しようする[21]。

その他たの無む脊椎動物せきついどうぶつ

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指ゆびの爪つめほどの大おおきさのハコクラゲのen:Malo kingiは、激痛げきつう、嘔吐おうと、血圧けつあつの急上昇きゅうじょうしょうなどの症状しょうじょうが起おこるイルカンジ症候群しょうこうぐんを引ひき起おこす、動物どうぶつの中なかでも最もっとも危険きけんな毒液どくえきを持もつ。

いくつかの門もんには、危険きけんなハコクラゲやクダクラゲ目めのカツオノエボシを含ふくむクラゲ[22]、刺とげ胞動物どうぶつのイソギンチャク[23]、棘皮動物きょくひどうぶつのウニ[24]、軟体動物なんたいどうぶつのイモガイ[25]やイカ、タコなど、有毒ゆうどくな無む脊椎動物せきついどうぶつが存在そんざいする[26]。

脊椎動物せきついどうぶつ

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魚類ぎょるい

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毒液どくえきは、アカエイやサメ、ギンザメなどの200種しゅほどの軟骨なんこつ魚類ぎょるいや1000種しゅほどのナマズ、フサカサゴ（300種しゅ以上いじょう）やオニダルマオコゼ（80種しゅ以上いじょう）、ヒレナガカサゴ、クロハギ、メバル、シロカサゴ、ミシマオコゼ、en:blenny、en:rabbitfishes、en:velvetfishesの一部いちぶ、en:toadfish、en:corab croucher、en:red velvetfish、en:scatophagidae、en:tetraroginae、en:weever など11の分岐ぶんき群ぐんの棘とげを持もつ魚さかなにみられる [27]。

両生類りょうせいるい

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一部いちぶのイモリは、先端せんたんに毒液どくえきが付つけられた鋭するどい肋骨あばらぼねを突つき出だす防衛ぼうえい行動こうどうをとる[28][29]。ブラジルのカエルのうち2種しゅは頭蓋骨ずがいこつの周辺しゅうへんに小ちいさな毒どく針はりを持もち、対象たいしょうに衝撃しょうげきで毒液どくえきを伝達でんたつする[30]。

爬虫類はちゅうるい

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en:prairie rattlesnakeのen:Crotalus viridis (左ひだり) の毒液どくえきは、獲物えものの消化しょうかを助たすける金属きんぞくプロテアーゼ (右みぎ) を含ふくむ。

450種しゅほどのヘビは有毒ゆうどくである[27]。ヘビ毒どくは目めの下したの腺せん (下しも顎あご腺せん) で生産せいさんされ、対象たいしょうに管状かんじょうの牙きば (管かん牙きば) または溝みぞを持もつ牙きば (溝みぞ牙きば) を通とおして伝達でんたつされる。ヘビ毒どくは、ペプチド結合けつごうを加水かすい分解ぶんかいするプロテアーゼ、DNAのホスホジエステル結合けつごうを加水かすい分解ぶんかいするヌクレアーゼ、神経しんけい系けいの伝達でんたつを阻害そがいする神経しんけい毒どくなど、様々さまざまなペプチド毒素どくそを含ふくむ[31]。ヘビ毒どくは痛いたみ、腫はれ、壊死えし、低てい血圧けつあつ、痙攣けいれん、出血しゅっけつ (ヘビの種類しゅるいによる) 、呼吸こきゅう麻痺まひ、腎不全じんふぜん、昏睡こんすい、死しなどを引ひき起おこす[32]。ヘビ毒どくは、祖先そせんの唾液腺だえきせんに発現はつげんしていた遺伝子いでんし重複じゅうふくに由来ゆらいする可能かのう性せいがある[33][34]。

その他たにも、毒液どくえきはメキシコドクトカゲ[35]、アメリカドクトカゲ[36]、コモドオオトカゲなどのオオトカゲの一部いちぶ[37]などのいくつかの爬虫類はちゅうるいにもみられる。質量しつりょう分析ぶんせき法ほうにより、爬虫類はちゅうるいの毒液どくえきはヘビ毒どくと同等どうとうの複雑ふくざつさを持もつタンパク質たんぱくしつの混合こんごう物ぶつであることが示しめされている[37][38]。 一部いちぶのトカゲは毒腺どくせんを持もち、ヘビ亜あ目め、イグアナ下目しため、オオトカゲ科か、アシナシトカゲ科か、ドクトカゲ科かなどとともに有毒ゆうどく有ゆう鱗うろこ類るいのクレードに属ぞくする[39]。

哺乳類ほにゅうるい

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絶滅ぜつめつしたテロケファルス亜あ目めのユーシャンベルジアは、犬歯けんしに毒液どくえきを付着ふちゃくさせていたという仮説かせつがある[40]。

有毒ゆうどくな哺乳類ほにゅうるいのうち現存げんそんしているものには、ソレノドン、トガリネズミ、チスイコウモリ、雄ゆうのカモノハシ、スローロリスなどが存在そんざいする[27][41]。トガリネズミは有毒ゆうどくな唾液だえきを持もち、ヘビと同様どうようの進化しんかをたどったと考かんがえられている[42]。獣しし亜あ綱つなに属ぞくさない哺乳ほにゅう形がた類るいにおけるカモノハシに似にた足あし根ね骨こつの蹴爪けづめの存在そんざいは、毒液どくえきは哺乳類ほにゅうるいの祖先そせんが持もつ特徴とくちょうだったことを示唆しさしている[43]。

カモノハシに関かんする広範こうはんな研究けんきゅうでは、毒素どくそは遺伝子いでんし重複じゅうふくに由来ゆらいすることが示しめされた一方いっぽうで、データは毒液どくえきの進化しんかはかつて考かんがえられていたほど遺伝子いでんし重複じゅうふくに依存いぞんしていないエビデンスとなっている[44]。変性へんせいした汗腺かんせんはカモノハシの毒腺どくせんが発達はったつしたものである。爬虫類はちゅうるいやカモノハシの毒液どくえきは独自どくじに進化しんかしたことが証明しょうめいされているにもかかわらず、有毒ゆうどくな分子ぶんしへの進化しんかを助たすけるタンパク質たんぱくしつの構造こうぞうがあると考かんがえられている。このことは、なぜ毒液どくえきは同形どうけい形質けいしつを得えたのかや大おおきく異ことなる種たねが収束しゅうそく的てきな進化しんかをたどったのかについての更さらなるエビデンスとなる[13]。

人間にんげんとの関係かんけい

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毒液どくえきによる2013年ねんの死者ししゃは57,000人にんで、76,000人にんの死者ししゃが出でた1990年ねんと比くらべて減少げんしょうした[45]。毒液どくえきは173,000を超こえる種たねから見みつかっている。毒液どくえきは広範囲こうはんいの病気びょうきの治療ちりょうに役立やくだつ可能かのう性せいがあるとされ、5,000を超こえる科学かがく論文ろんぶんで調査ちょうさが進すすめられている[36]。

薬くすりとして、ヘビ毒どくのタンパク質たんぱくしつは血栓けっせん、関節かんせつ炎えん、一部いちぶの癌がんなどの治療ちりょうに使つかわれている[46][47]。アメリカドクトカゲの毒液どくえきはエキセナチドを含ふくみ、2型がた糖尿とうにょう病びょうの治療ちりょうに使つかわれる[36]。ヒアリの毒液どくえきから採取さいしゅされるソレノプシン（英語えいご版ばん）は、癌がんから乾癬かんせんまで、生物せいぶつ医学いがく的てき応用おうようができると証明しょうめいされている[48][49]。科学かがくの分野ぶんやの一ひとつであるヴェノミクス（英語えいご版ばん） は、毒液どくえきに関連かんれんしたタンパク質たんぱくしつについてや毒液どくえきの個々ここの成分せいぶんを製薬せいやくに利用りようする方法ほうほうについての研究けんきゅうを行おこなうことを目的もくてきに設立せつりつされた[50]。

耐たい性せい

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詳細しょうさいは「捕食ほしょく回避かいひ」を参照さんしょう
 
 
カリフォルニアジリスは、オレゴンガラガラヘビの強力きょうりょくな毒液どくえきに耐たい性せいを持もつ。

毒液どくえきは、多おおくの捕食ほしょく者しゃに武器ぶきとして使つかわれてきた。捕食ほしょく者しゃと被ひ食しょく者しゃの共きょう進化しんかは毒液どくえきの抵抗ていこうの原動力げんどうりょくであり、動物どうぶつ界かいを通とおして進化しんかが重かさねられてきた[51]。有毒ゆうどくな捕食ほしょく者しゃと耐たい性せいを持もつ被ひ食しょく者しゃの間あいだの共きょう進化しんかは、化学かがくの軍拡ぐんかく競争きょうそうのように捉とらえられる[52]。この共きょう進化しんかは長期間ちょうきかんにわたって続つづくことが見込みこまれている[53]。耐たい性せいを持もたない個体こたいは捕食ほしょく者しゃに狙ねらわれるため、生存せいぞんできる個体こたいは捕食ほしょくを回避かいひできるものに限かぎられる[54]。捕食ほしょく者しゃは次第しだいに耐たい性せいを持もつ個体こたいを獲えることが出来できなくなり、それにつれて時間じかんの経過けいかとともに耐たい性せいを持もつ個体こたいは増加ぞうかする[55]。捕食ほしょく者しゃと被ひ食しょく者しゃの両方りょうほうにとって、毒液どくえきの耐たい性せいを得えることには高たかいコストがかかる[56]。被ひ食しょく者しゃにとって、生理学せいりがく的てきな耐たい性せいにコストを支払しはらうことの見返みかえりは生存せいぞん可能かのう性せいの上昇じょうしょうだが、それにより捕食ほしょく者しゃは栄養えいよう面めんでのニッチへの進出しんしゅつが可能かのうになる[57]。

カリフォルニアジリスはオレゴンガラガラヘビの毒液どくえきに対たいする耐たい性せいを持もち、その程度ていどには個体こたい差さがある[58]。耐たい性せいは毒素どくその除去じょきょにも関係かんけいし、個体こたい数すうに依存いぞんする。ガラガラヘビが高密度こうみつどで生息せいそくしている場所ばしょでは、リスの抵抗ていこう力りょくは高たかくなる[59]。ガラガラヘビは毒液どくえきの効果こうかを高たかめることで局地きょくち的てきに対応たいおうした[60]。

アメリカのキングヘビは、多おおくの毒どくヘビを捕食ほしょくする大蛇おろちであり[61]、年齢ねんれいや曝露ばくろ方法ほうほうに影響えいきょうを受うけない毒どくへの抵抗ていこう力りょくを発達はったつさせた[55]。キングヘビはアメリカマムシやヌママムシ、アメリカ北部ほくぶのガラガラヘビなどの身近みぢかな環境かんきょうに生息せいそくするヘビの毒液どくえきに耐たい性せいを持もつ一方いっぽう、キングコブラやブラックマンバの毒液どくえきには耐たい性せいを持もたない[62]。

 
カクレクマノミはイソギンチャクの毒どくに耐たい性せいを持もち、その触手しょくしゅの中なかで生活せいかつする。

海洋かいよう生物せいぶつでは、ウナギは、種たねによって異ことなるニューロトキシンやミオトキシン（英語えいご版ばん）、ネフロトキシンなどの複雑ふくざつな混合こんごう物ぶつであるウミヘビの毒液どくえきに耐たい性せいを持もつ[63][64]。ウナギは特とくに主おもな捕食ほしょく者しゃであるウミヘビの毒液どくえきに耐たい性せいを持もち、そうでないウミヘビの毒液どくえきに対たいする耐たい性せいはほとんどない。このことは共きょう進化しんかが起おこったことを示しめしている[65]。

クマノミは常つねに有毒ゆうどくなイソギンチャクの触手しょくしゅの中なかで生活せいかつし（クマノミにとって必要ひつよう不可欠ふかけつな共生きょうせいである）[66]、その毒どくに耐たい性せいを持もつ[67][68]。イソギンチャクのうちクマノミの宿主しゅくしゅとなることが知しられているのはわずか10種しゅであり、特定とくていのクマノミとイソギンチャクの組くみ合あわせのみが共生きょうせい可能かのうである[69][70]。イソギンチャクは全すべて刺とげ胞と分泌ぶんぴつされた粘液ねんえきを介かいして伝達でんたつされる毒液どくえきを生産せいさんする。その毒素どくそはペプチドとタンパク質たんぱくしつにより構成こうせいされている。この毒液どくえきは獲物えものを獲えるためのほか、痛いたみや筋肉きんにくの失調しっちょう、組織そしきの損傷そんしょうなどにより捕食ほしょくされることを防止ぼうしするためにも利用りようされている。クマノミはイソギンチャクの非ひ自己じこの識別しきべつと刺とげ胞の発射はっしゃを防ふせぐ化学かがく的てきカモフラージュまたは高分子こうぶんし擬態ぎたいとして働はたらく保護ほご粘液ねんえきを持もつ[71][72][73]。クマノミは粘液ねんえきを特定とくていのイソギンチャクに順応じゅんのうさせている可能かのう性せいがある[73]。

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 特とくに獲物えもののイオンチャネルに正確せいかくに作用さようするようになる。

出典しゅってん

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